俺を処刑するはずのヤンデレ兄様に溺愛されるなんて聞いてない【本編完結】

ノノノ

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本編

第6話:怒らせてしまった

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 俺にとってもレギオンにとっても、このままではきっと良くない。しばらく悩んである提案をすることにした。

「レギオン兄様、俺も下町へ遊びに行ってもよろしいでしょうか?」

「町へ行きたいのか。分かった、今度予定を開けるから2人で一緒に行こう」

 予想通りの反応だ。
 だが今回はこのまま流されるわけにはいかない。俺はブンブンと首を横に振った。

「いえ、俺1人で行きたいです! 1人で自由に歩き回りたいです……!!」

 1人で、と言った瞬間、腰に添えられてレギオンの手がピクリと動いたのを感じた。何故か嫌な予感がしたが、現状打破の為に今更引き返せない。

 しばらくの沈黙の後、レギオンは口を開く。

「……ユリス、お前は今でこそ見違えるほど良い弟になったが、以前はかなり横暴で町の者から嫌われていた。今のお前を知らない民は、今でもそう思っているだろう。お前を嫌う者たちがはびこる危険な場所に、1人で行かせるわけにはいかない」

 それは分かっている。レギオンには言えないが、俺はこのノベルゲームをプレイしたプレイヤーだ。ゲームは主人公視点の話だったが、それでもユリスに関する不満の声はNPCから何度も聞いていた。わがままで乱暴で手がつけられない、面汚しの貴族だと語られていた。

 だからこそ、陰キャの俺はこの屋敷から出なかったのだ。

「それは分かっています。でも兄様が見直してくれたように、努力すれば町の民たちだって認めてくれる可能性はあります。俺が自立できるようになる為にも、1人で行動する必要だってあります」

 でもそんな俺でも険悪な関係だったレギオンや教授とも親しくなれた。町の民だって、全員は無理でも真摯に対応すれば見直してくれる人はいるかもしれない。

 何より今の生活がつらい!!
 常にと言っていいほどレギオンの監視があり、何をするにも彼の許可が必要だ。いつの間にか密かな楽しみであった官能小説も本棚から全て消え、読む本すらも制限されている。とにかく自由がない。

「駄目だよ。1人で外出は認めない。無理に自立する必要もない。家族なのだから私に頼れば良い。私はユリスの兄だから、ユリスの面倒は全て私が見守る義務がある。一時であろうと屋敷から……いや、私から離れることは絶対に認めない!!」

 レギオンの表情が険しくなっていく。優しく腰に添えられた手は逃さないと言わんばかりに強く掴んで引き寄せてくる。怒りや殺気のようなドス黒い感情が渦巻く瞳が、俺をじっと見つめてくる。
 離れたくて腕でレギオンの身体を押すと、その腕も掴まれた。ギュッと痛いほど強く握られて、思わず顔をしかめる。

「そういう重いところが耐えられないんだ!!」

 思わずそう叫んでしまった。
 今でもレギオンに対する恐怖心はある。だがそれと同時に怒りも湧く。俺はもう、こんな生活は我慢の限界だった。

「……そうか」

 長い沈黙の後、レギオンはポツリと呟いた。深く俯かれた表情は見えない。
 分かってくれたか? と一瞬思ったが、手の力は一向に緩まない。急に不安が押し寄せてきた。

 ……いや待て、俺は今とんでもない事を言ってしまったのではないだろうか? 相手は愛が重いヤンデレキャラだったはず。そんなキャラが激昂する言葉を、俺は知っている。
 レギオンがゆっくり顔を上げた時、俺は恐怖心で「ヒッ…」と小さな悲鳴を上げた。狂気の色に染まったレギオンの顔が、すぐ目の前にあった。

「んむっ……!」

 突然のことで何が起きたか分からなかった。
 顔を上げたレギオンは、そのまま俺の唇に口付けしてきたのだ。舌が口の中に入り込み、俺の口内を蹂躙していくように動き回る。
 舌を絡めさせられ、なすがままにされていた。混乱する頭で何とか離れようとしても、レギオンが俺の身体をがっしり掴んで離さない。椅子の膝おきに押さえつけられるように、レギオンがのしかかってくる。レギオンに比べれば小柄で、引きこもりの俺は力では敵わなかった。

 深い口付けて頭が呆然としてきたころ、レギオンの手が俺の胸を撫でる。シャツのボタンを乱暴に外され、その隙間からするりとレギオンの手のひらが滑り込んできた。この後何をされるか理解してしまった。

「ふあ……まっ……むぐ……」

 何かを言おうと唇から逃れようとしても、すぐに頭を掴まれ、唇を奪われる。レギオンの手が俺の胸部の……乳首に触れた瞬間、思わず身体がおおげさなくらいビクッと跳ねた。

 まずい、まずい、まずい!!
 パニックになり、まともに物事を考えられなくなる。俺はこの状況を逃れようとし、ほぼ無意識に思い切り腕を振った。


 パンッ!!


 その瞬間、肌と肌が思い切りぶつかる音が部屋中に響く。

「あ、ああ……」

 俺は先ほど振った自分の手のひらを見つめる。自分の血の気がどんどん引いていくのを感じていた。頭がクラクラして眩暈がする。

 レギオンの頬を思い切り叩いてしまった。

「あ……兄様……申し訳、ございま……」

 叩かれて反動で横を向いていたレギオンの顔がこちらを向く。その顔は不気味なほど無表情で、怒りも悲しみも感じなかった。それが一層怖かった。逃げなきゃ、助けを呼ばなきゃと思っているのに、生来の臆病な性格が邪魔してかすれた小さな声が出るだけ。

 その時、レギオンはフッと小さく笑った。それはまるで、何かを諦めたような顔をしていた。

「ユリス、約束を守ろう」

「へ……?」

「私にはユリスが道を踏み外しそうになった時は、叱って正してやる義務がある」

「あっ……ああ……」

 震える身体で後ずさろうとしても、ここは椅子の上なのでそれも出来ない。何よりレギオンにしっかり身体を掴まれたままだ。

「お仕置きが必要だね、ユリス」

 目を細めて笑うレギオンは俺の身体を引っ張り、軽々と持ち上げた。


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