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本編
最終話:レギオンという男は
しおりを挟む気がつけば俺はレギオンのベッドで眠っていた。
どうやら気絶してしまったらしい。
何度か中に出されたことは覚えているが、腹の底に溜まっている感覚はない。行為で汗ばんだ身体の気持ち悪さもなく、さっぱりしている。そして髪の毛は僅かに湿っていた。部屋に備え付けられているシャワーで洗われたのだろうか。有難いと思う反面、兄に行為だけでなく全身を洗われるという醜態をさらすことになってしまった。
いや、もう今更気にすまい。とんでもない口約束もしてしまったし、悲しいが慣れるしかないのだ。
とりあえず起き上がるかと、上半身に力を入れる。
「うっ……!!」
腰の痛みに思わず声が漏れる。そりゃそうだ、あれだけ激しくやったのだからこうなる。
俺が声を上げた瞬間だろうか、誰かが近づいてくる音がした。と言っても、この状況では誰だかは分かり切っている。天蓋ベッドのカーテンが開き、レギオンが顔を覗かせた。
「ユリス、身体は大丈夫かい?」
あんなことをした張本人だというのに心配してくるなんて本当に変わった兄だ。大丈夫かどうかで言えば、腰と尻の穴がすごく痛い。だがそんなこと言ってもどうしようもないので「大丈夫です」と返事をした。するとレギオンはベッドに上がり込み、四つん這いでこちらに近づいてくる。
もしかしてまた始まるのか!? と身を強張らせるとレギオンは静かに首を振った。
「落ち着いてくれ、今日はもうしない」
「きょ……今日は……?」
「うん? 今後は私がすると決まったよね? ユリスもとても気持ちよさそうだったし、Win-Winじゃないか」
いや、確かに気持ち良かったけど……やっぱりあの口約束は絶対なのか。あれだけ焦らして返事をさせたがっていたし、拒否も許されないだろう。今後の事を思うと気が重くなっていく。
「初めてだし負担も大きいだろう、ディナーまで休んでいると良い。講習も数日間休みを入れたから身体を労わってくれ。
……しかし私より一回り小柄な身体で、よく私の全てを受け止めてくれたね。柔らかいのにしなやかで力強い、美しい身体だった」
レギオンはいつものように俺の頭を優しく撫でる。昨日までは正直あまり良い気はしなかったが、今ではすごく心地よかった。
だからお返しと言わんばかりに俺もレギオンの頭を撫でた。
正直身体はまだ重く、誰かを撫でた経験も無かったためレギオンのようにうまく手を動かせなかった。だがレギオンは驚いたように目を見開いたあと、うっとりとした顔で目を細めた。もっと撫でてほしいと言わんばかりに自ら頭を俺の手の方へ傾ける。
「……嬉しい。ずっとこうされてみたかった。とても心地いい、もっと撫でてくれ」
「撫でられたこと……ないんですか?」
「私の面倒は殆ど乳母が見ていた。父上も母上も幼い頃他界した上に厳しい方だったからね。言葉や態度の節々に愛情は感じていたけれど、撫でられた事はなかった」
「そうですか……」
アデレーゼ家は両親が他界しているとは知っていたが、どれくらいの時期に亡くなったかまでは知らなかった。そしてこれだけ俺を撫でてくるレギオンが、撫でられた経験が無いのはもっと驚いた。
「父上と母上が亡くなって、お前が唯一の肉親になった。だから兄として、ユリスには私の分までいっぱい愛情を注いで可愛がってあげたいと思っていたんだ。でもなかなか思うようにいかなかった。
数年前ユリスに『しつこい! 来るな!』と叫ばれ、お前は他者に苛立ちをぶつける暴れん坊に育ってしまった。それに対してつい私もユリスから離れ、突き離すような態度をとってしまった。それで尚更お前は横暴になってしまい……今では本当に反省している」
……いや、いやいや!
ゲーム本編のユリスの性格が捻くれていた原因はレギオンだったんかい!! 両親も居ない上に屋敷の当主であるレギオンに逆らえる使用人も居ない生活環境だ。そりゃこれだけ束縛の激しい過保護な兄とか性格も捻くれるわ!!
「ユリスが寄り添ってくれたおかげで、本当はずっと埋めたかった心の溝を埋めることが出来た。再びユリスと親密になっていく過程で、兄という感情から逸脱した愛情を抱くようになっていった。駄目だとは分かっていたが止めることが出来なかった。でもお前は私の全てを受け入れてくれた。それが嬉しくて嬉しくてたまらない」
待て、確かに性処理云々の事は返事をしたが全てを受け入れるなんて言った覚えはないぞ?
なんでそういう解釈になっているんだ。当主としてはしっかりしているのに、なんで愛情に関することには頭のネジがぶっ飛んでるんだ?
「待ってください、俺はレギオン兄様の事を兄としてしか見れないです。あと、さっき行為中は性処理を任せるとか言ってしまいましたがそれも撤回させていただきたく……」
「よしよし、照れなくていいよ私のユリス。一週間後も私に任せてくれ。本を捨てる前はいつもそれくらいの頻度で自慰していた事は把握しているよ」
「あああああ!! もう!!」
頭をかきむしって暴れたい気分だったが、レギオンに抱きつかれ、あやすように全身を撫でられる。しばらくそうやって撫でられていると、なんかもうどうでも良くなってきた。
ゲームのレギオンという男はとんでもないヤンデレだとプレイヤーには知られていた。ルートによって主人公すらも処刑させる。どこまでも追いかけてくる。とにかく人を選ぶ性格をしている。
だが彼の愛情の全てを受け入れれば、彼はずっと愛する者のために一途に行動する。離れるなどの彼にとって受け入れられない要求以外は真摯に対応してくれる。そんなキャラクターだ。
俺が諦めて、全身の力をぬくと、レギオンは幸せそうに笑った。
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