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闇-23
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アレックスはそっと静寂の結界を張った。
「娘は…今、ゴドリバー帝国で無事に安全に生きているということですね」
マルセルは一息ついて落ち着いたはずだが瞳が潤んでいる。
「あぁ、そうだ。手紙の通り俺の家にいて問題なく生活をしている。そして、俺にこれを託したんだ」
目はツキヨに似ているな…とアレックスはマルセルの目を見つめる。
「不甲斐ない父親で娘には苦労をさせて…いや、今は立て直そうと計画をしています…時間はかかると思います…そんな中、大変厚かましいですがそれまでアレックスさんがよければ娘を置いてもらえませんか。お願いします!こんなみっともない姿で父として娘の前に顔を出せません!亡くなった妻のオリエにも顔向けできません!娘にお金が必要なら帝国で血でも内臓でも売ります!お願いします!!」
アレックスを見つめ返して頭を下げる…ツキヨに目が似ていると思ったのは、意思の強いこの目かもしれない。
「…ちょっと聞きたいんだが計画って何かあるのか?」
「はい。今は土地屋敷、農園などが愛人の手筈でマリアンナ名義に変更されましたが屋敷からかなり離れたところの雑草だらけで何も採れない枯れた土地と小屋が私の名義で残っています…ちょっとこの本を見てください」
マルセルは一冊の古い本を取り出して「繊維」という項目にある草を見せた。
「これは『シウク』という南部特有の草です。その草の繊維を糸にすると美しい糸になるのですが…実は私に残された土地に雑草として大量に生えています。
しかし何故、糸はあっても布が流通しないかというと…布にする手間がかかりいつの間にか継ぐ人が誰もいなくなってしまったのです」
「織るやつがいないと糸だけじゃだめだろう…」
「いろいろ試しても布にはできませんでしたが、妻のオリエは遠い遠い東の国の一族の出身で彼女は木を組み合わたせた不思議な織機で布をよく織っていたことを最近思い出しました。
シウクは絹以上に繊細で今の織機では糸がすぐに切れてしまいます。でも、妻の織機は既にありませんが再現できれば織れるかと思い記憶を元に試行錯誤をしています。シウクを布にすれば絹より価値のある布ができると考えて妻に秘密で行動をしています」
顎に手を当ててアレックスは考えた。一発逆転、再起を図るマルセルの強さがツキヨに通じるものがあり何か機会を与えようと。
「よし、分かったぜ。俺は計画を信じて手助けをするぜ。そうだな…アルフレッドとして3日後にまた来る。
ただし、手助けの条件としてマリアンナと娘2人、後は愛人の処遇を俺に任せることだ」
アレックスはニヤリと悪い笑顔をする。
「妻たち…ですか…」
「おう、ツキヨも酷い目に合わせて愛人もいて…まだ、あんな奴らに未練でもあるのか?
悪いけど、俺はツキヨが…笑顔で…立派な父親に再会するためだけに…ううぅぅ…動いているんだ。うぅう…」
マルセルは違うハンカチをアレックスに貸した…おぃおぃと泣いて鼻をかんだ。
「わ、わかりました。娘のために…マリアンナたちはアレックスさんで何か処遇をしてください」
返されたずぶ濡れのハンカチをさっと机の脇に置いたマルセルは腹を括った。
「よし、いいぜ。手助けするぜ。今度来るのは3日後だからよろしくな。
さて、俺はアルフレッドに戻って玄関から帰らないとな…」
再びアレックスは靄に包まれてアルフレッドの姿になった。
「お、そうだ。ツキヨの住んでいた小屋の前に何か花は咲いたりしたか?」
「いいえ…むしろ小屋は目障りだとツキヨが行方不明になってすぐに取り壊してしまいました。その後に花は見かけてはいませんが球根ならまだ咲く可能性もあると思うので注意して見ておきます」
「では、それは引き続きお願いします。さて…私は、そろそろお暇をさせていただきます」
「かしこまりました。わざわざ遠方からありがとうございました」
マルセルは公爵様のために扉を開けると…ドテン!とマリアンナたち3人が扉にぶつかって倒れた。
「あ、まぁ!し、失礼しましたわ!おほほほほ…3人でちょうど転んでしまいまして…お恥ずかしいですわぁ…アルフレッド様はお帰りでございますか、おほほ…」
扉は厚いが念のため結界を張っていて正解だったがアレックスは頭が痛くなったが、ニッコリと笑顔のまま、階段を降り玄関の前で「遅くまで申し訳ございませんでした。手紙もその旅人が以前お世話になったことを熱心にお礼を述べている内容で素晴らしい手紙でした…お優しいご家庭ですね」と手紙について彼女らがマルセルに詮索しないように貴公子スマイルと公爵家地位攻撃をしておいた。
「そんな、お優しいだなんて…ほほほ…娘もとても優しいよくできた子たちなので、また是非当家へ足をお運びくださいませ…ほほほ…」
またマリアンナは扇子でばっしんばっしんと壁を叩く。
「えぇ。まだしばらくここの地域周辺に滞在をしていますので、その際は是非…」
「わたくしたちも、アルフレッド様をお待ちしておりますぅ」
娘2人も息を合わせて大歓迎のようだ。
「それでは、失礼いたします。マルセルさんもまたよろしくお願いします」
「何もおもてなしもできませんが、お待ちしております」
力強くマルセルは一礼をしてアレックスを見送った。
玄関が閉まり、キィキィと門を開けてしばらく道を歩いた…変な汗をかいたのか風が冷たく感じた。
アレックスは元の姿に戻り、さっさと影に身を投じた。
「お疲れ」
レオが憐みの顔でアレックスを迎える。
「おう…」
「顔が死んでる…」
「…あぁ。ちょっと結界を張るぜ」
「はぁ…?」
アレックスは結界がピッタリと張られたことを確認をした。
「あああああああああああああ!もううううううううううううううう!いーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーだーーーーーーーーーーーーーー!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!ツキヨのためだから、やるけどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ああああああああああ!
なんなんだよおおおおお!!!!!わああああーー!俺はーーーーーー死ぬーーーーやだーーーーーーーーー!あああああぁぁぁぁあああああああああ!!」
ドタバタ暴れて泣き喚いているおっさんを見てレオは心から同情をした。
【俺も無理…】
「娘は…今、ゴドリバー帝国で無事に安全に生きているということですね」
マルセルは一息ついて落ち着いたはずだが瞳が潤んでいる。
「あぁ、そうだ。手紙の通り俺の家にいて問題なく生活をしている。そして、俺にこれを託したんだ」
目はツキヨに似ているな…とアレックスはマルセルの目を見つめる。
「不甲斐ない父親で娘には苦労をさせて…いや、今は立て直そうと計画をしています…時間はかかると思います…そんな中、大変厚かましいですがそれまでアレックスさんがよければ娘を置いてもらえませんか。お願いします!こんなみっともない姿で父として娘の前に顔を出せません!亡くなった妻のオリエにも顔向けできません!娘にお金が必要なら帝国で血でも内臓でも売ります!お願いします!!」
アレックスを見つめ返して頭を下げる…ツキヨに目が似ていると思ったのは、意思の強いこの目かもしれない。
「…ちょっと聞きたいんだが計画って何かあるのか?」
「はい。今は土地屋敷、農園などが愛人の手筈でマリアンナ名義に変更されましたが屋敷からかなり離れたところの雑草だらけで何も採れない枯れた土地と小屋が私の名義で残っています…ちょっとこの本を見てください」
マルセルは一冊の古い本を取り出して「繊維」という項目にある草を見せた。
「これは『シウク』という南部特有の草です。その草の繊維を糸にすると美しい糸になるのですが…実は私に残された土地に雑草として大量に生えています。
しかし何故、糸はあっても布が流通しないかというと…布にする手間がかかりいつの間にか継ぐ人が誰もいなくなってしまったのです」
「織るやつがいないと糸だけじゃだめだろう…」
「いろいろ試しても布にはできませんでしたが、妻のオリエは遠い遠い東の国の一族の出身で彼女は木を組み合わたせた不思議な織機で布をよく織っていたことを最近思い出しました。
シウクは絹以上に繊細で今の織機では糸がすぐに切れてしまいます。でも、妻の織機は既にありませんが再現できれば織れるかと思い記憶を元に試行錯誤をしています。シウクを布にすれば絹より価値のある布ができると考えて妻に秘密で行動をしています」
顎に手を当ててアレックスは考えた。一発逆転、再起を図るマルセルの強さがツキヨに通じるものがあり何か機会を与えようと。
「よし、分かったぜ。俺は計画を信じて手助けをするぜ。そうだな…アルフレッドとして3日後にまた来る。
ただし、手助けの条件としてマリアンナと娘2人、後は愛人の処遇を俺に任せることだ」
アレックスはニヤリと悪い笑顔をする。
「妻たち…ですか…」
「おう、ツキヨも酷い目に合わせて愛人もいて…まだ、あんな奴らに未練でもあるのか?
悪いけど、俺はツキヨが…笑顔で…立派な父親に再会するためだけに…ううぅぅ…動いているんだ。うぅう…」
マルセルは違うハンカチをアレックスに貸した…おぃおぃと泣いて鼻をかんだ。
「わ、わかりました。娘のために…マリアンナたちはアレックスさんで何か処遇をしてください」
返されたずぶ濡れのハンカチをさっと机の脇に置いたマルセルは腹を括った。
「よし、いいぜ。手助けするぜ。今度来るのは3日後だからよろしくな。
さて、俺はアルフレッドに戻って玄関から帰らないとな…」
再びアレックスは靄に包まれてアルフレッドの姿になった。
「お、そうだ。ツキヨの住んでいた小屋の前に何か花は咲いたりしたか?」
「いいえ…むしろ小屋は目障りだとツキヨが行方不明になってすぐに取り壊してしまいました。その後に花は見かけてはいませんが球根ならまだ咲く可能性もあると思うので注意して見ておきます」
「では、それは引き続きお願いします。さて…私は、そろそろお暇をさせていただきます」
「かしこまりました。わざわざ遠方からありがとうございました」
マルセルは公爵様のために扉を開けると…ドテン!とマリアンナたち3人が扉にぶつかって倒れた。
「あ、まぁ!し、失礼しましたわ!おほほほほ…3人でちょうど転んでしまいまして…お恥ずかしいですわぁ…アルフレッド様はお帰りでございますか、おほほ…」
扉は厚いが念のため結界を張っていて正解だったがアレックスは頭が痛くなったが、ニッコリと笑顔のまま、階段を降り玄関の前で「遅くまで申し訳ございませんでした。手紙もその旅人が以前お世話になったことを熱心にお礼を述べている内容で素晴らしい手紙でした…お優しいご家庭ですね」と手紙について彼女らがマルセルに詮索しないように貴公子スマイルと公爵家地位攻撃をしておいた。
「そんな、お優しいだなんて…ほほほ…娘もとても優しいよくできた子たちなので、また是非当家へ足をお運びくださいませ…ほほほ…」
またマリアンナは扇子でばっしんばっしんと壁を叩く。
「えぇ。まだしばらくここの地域周辺に滞在をしていますので、その際は是非…」
「わたくしたちも、アルフレッド様をお待ちしておりますぅ」
娘2人も息を合わせて大歓迎のようだ。
「それでは、失礼いたします。マルセルさんもまたよろしくお願いします」
「何もおもてなしもできませんが、お待ちしております」
力強くマルセルは一礼をしてアレックスを見送った。
玄関が閉まり、キィキィと門を開けてしばらく道を歩いた…変な汗をかいたのか風が冷たく感じた。
アレックスは元の姿に戻り、さっさと影に身を投じた。
「お疲れ」
レオが憐みの顔でアレックスを迎える。
「おう…」
「顔が死んでる…」
「…あぁ。ちょっと結界を張るぜ」
「はぁ…?」
アレックスは結界がピッタリと張られたことを確認をした。
「あああああああああああああ!もううううううううううううううう!いーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーだーーーーーーーーーーーーーー!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!ツキヨのためだから、やるけどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ああああああああああ!
なんなんだよおおおおお!!!!!わああああーー!俺はーーーーーー死ぬーーーーやだーーーーーーーーー!あああああぁぁぁぁあああああああああ!!」
ドタバタ暴れて泣き喚いているおっさんを見てレオは心から同情をした。
【俺も無理…】
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