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第10話 吾輩は病院が大嫌いである
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今日は久々の休日。
小織殿の運転する英国生まれの小さな爆音を垂れ流す車でドライブと洒落こむ。
少しだけ理解できないのはケージに入れられての外出ということだ。
普段は車内でも自由にしている我輩。
しかし今回は外の一切見えない籐で編まれた籠に押し込められている。
景色が眺められない我輩の出来ることといえば、この場で大人しく丸まるのみ。
結構退屈かも。
仕事をしていたほうがマシだな。
{キキッ! バッタン}
数十分経たぬうちに車の停車した振動が伝わる。
暫くこのまま放置され、寝てしまった。
「お待たせニャゴロー、これでも食べてなさいよ」
彼女が突然籠の蓋を開けて中へ放り込んだのは、〝クサヤ〟。
魚を発酵、乾燥させたウンコ臭全開の食べ物である。
臭いは強烈だが、悲しいことに我輩嫌いでは無い。
いや、寧ろ大好きなのだ。
どうせすることも無いので、我輩の顔よりかは幾分小さく千切られたそのクサヤを食べることにした。
- 5分後 -
「さー着いたわよニャゴロー! アナタはこのまま籠の中で大人しくしていてね!」
どうやら籠ごとどこかへ移動させられたらしい。
クサヤに夢中でまったく気付かなかった。
それにしても車を降りてどれ程移動したのだろうか?
分かっているのは今は何か建物の中に居るという事実のみ。
見知らぬ場所を不用意に出歩くのは得策でないと、半野性の我輩は知っている。
縄張り争いや跡目争いに巻き込まれるのはゴメン被りたいものだ。
となれば今尤も安全なのはこの籠の中か。
「すぐ終わるからねニャゴロー」
終わる?
何が?
様々な想定を試みるも、今一つどれもピンとこない。
するとあちらこちらから人語以外の言葉が聞こえてきた。
(うー……苦しいよぉ……)
(いたいいたいいたいいたーい!)
(たすけてぇぇぇぇ!)
(うわあぁぁぁ! 帰りたいいぃぃぃっ!)
(あっ……羽の生えた小さな人間が見えるよ)
(なんだか僕もう眠くなっちゃった……)
まさかっ!
まさかまさかまさかっ!
「三河ニャゴローさーん! 中へどうぞーっ!」
「さて、行くわよニャゴロー」
もしかしてもしかしてもしかしてぇっ!
「こんにちはニャゴロー君。今日はお注射しましょうねー」
蓋を開けられ、最初に見えたのは小織殿ではなく白い服を着たジジィ。
やられた!
我輩は背中の皮を摘ままれてヒョイッと籠の外へ。
一瞬視覚へと飛び込んでくる実験室にも似たオゾマシイ空間。
至る場所には刃物や先の尖った器具などの拷問道具。
自身は今、冷たい金属でできた解剖台の上に置かれているといった緊急事態。
大至急脱出せねば!
「ウニャッ!」
「はいはーい、直ぐ済むからねー」
瞬く間に後ろ脚へ関節技を決められると完全に動けなくなってしまった。
ジジィは慣れた手つきで素早く我輩の太腿に……プスリ。
「にゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
激痛が走る!
そう、今日は串刺しの刑(予防接種)を執行されたのだ!
いったいなんの罪に問われているのだ我輩はっ!?
クサヤの時点で気づくべきだったのだ。
あの強力なウンコ臭により、病院特有である消毒などの臭いを誤魔化された。
切れ者小織殿、恐るべし。
「ごめんよニャゴロー。今日はアンタの好きなスルメをあげるから勘弁してね」
いや、腰が抜けるから。
……キライじゃないけど。
久しぶりの休日で地獄めぐりをした我輩だった。
小織殿の運転する英国生まれの小さな爆音を垂れ流す車でドライブと洒落こむ。
少しだけ理解できないのはケージに入れられての外出ということだ。
普段は車内でも自由にしている我輩。
しかし今回は外の一切見えない籐で編まれた籠に押し込められている。
景色が眺められない我輩の出来ることといえば、この場で大人しく丸まるのみ。
結構退屈かも。
仕事をしていたほうがマシだな。
{キキッ! バッタン}
数十分経たぬうちに車の停車した振動が伝わる。
暫くこのまま放置され、寝てしまった。
「お待たせニャゴロー、これでも食べてなさいよ」
彼女が突然籠の蓋を開けて中へ放り込んだのは、〝クサヤ〟。
魚を発酵、乾燥させたウンコ臭全開の食べ物である。
臭いは強烈だが、悲しいことに我輩嫌いでは無い。
いや、寧ろ大好きなのだ。
どうせすることも無いので、我輩の顔よりかは幾分小さく千切られたそのクサヤを食べることにした。
- 5分後 -
「さー着いたわよニャゴロー! アナタはこのまま籠の中で大人しくしていてね!」
どうやら籠ごとどこかへ移動させられたらしい。
クサヤに夢中でまったく気付かなかった。
それにしても車を降りてどれ程移動したのだろうか?
分かっているのは今は何か建物の中に居るという事実のみ。
見知らぬ場所を不用意に出歩くのは得策でないと、半野性の我輩は知っている。
縄張り争いや跡目争いに巻き込まれるのはゴメン被りたいものだ。
となれば今尤も安全なのはこの籠の中か。
「すぐ終わるからねニャゴロー」
終わる?
何が?
様々な想定を試みるも、今一つどれもピンとこない。
するとあちらこちらから人語以外の言葉が聞こえてきた。
(うー……苦しいよぉ……)
(いたいいたいいたいいたーい!)
(たすけてぇぇぇぇ!)
(うわあぁぁぁ! 帰りたいいぃぃぃっ!)
(あっ……羽の生えた小さな人間が見えるよ)
(なんだか僕もう眠くなっちゃった……)
まさかっ!
まさかまさかまさかっ!
「三河ニャゴローさーん! 中へどうぞーっ!」
「さて、行くわよニャゴロー」
もしかしてもしかしてもしかしてぇっ!
「こんにちはニャゴロー君。今日はお注射しましょうねー」
蓋を開けられ、最初に見えたのは小織殿ではなく白い服を着たジジィ。
やられた!
我輩は背中の皮を摘ままれてヒョイッと籠の外へ。
一瞬視覚へと飛び込んでくる実験室にも似たオゾマシイ空間。
至る場所には刃物や先の尖った器具などの拷問道具。
自身は今、冷たい金属でできた解剖台の上に置かれているといった緊急事態。
大至急脱出せねば!
「ウニャッ!」
「はいはーい、直ぐ済むからねー」
瞬く間に後ろ脚へ関節技を決められると完全に動けなくなってしまった。
ジジィは慣れた手つきで素早く我輩の太腿に……プスリ。
「にゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
激痛が走る!
そう、今日は串刺しの刑(予防接種)を執行されたのだ!
いったいなんの罪に問われているのだ我輩はっ!?
クサヤの時点で気づくべきだったのだ。
あの強力なウンコ臭により、病院特有である消毒などの臭いを誤魔化された。
切れ者小織殿、恐るべし。
「ごめんよニャゴロー。今日はアンタの好きなスルメをあげるから勘弁してね」
いや、腰が抜けるから。
……キライじゃないけど。
久しぶりの休日で地獄めぐりをした我輩だった。
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