仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

文字の大きさ
68 / 218

第68話 吾輩は包丁を見ると寒気がするのである

しおりを挟む
 先日『回転ずし』前で思い出に浸った我輩。
 今から偵察を兼ねて内部情報をかき集める事にしよう。

 最初は店側もピリピリしていると思われ、警備レベルもマックスに近いと予想。
 捕まったら何をされるか分からない。
 ここは一つ、商店街を縄張りとするニャン吉にバイト君となってもらおう。

 入り口からズラリと並ぶ人間ども。
 そんな時間があるならば仕事しろと言いたい。
 しかし今はそんな事を言っている場合ではなく、店のセキュリティー確認が先。

 アーケードを支える為にある柱の陰で息をひそめ、ニャン吉の行動に目を配る。
 彼にはボンド君となってもらいスパイ活動を依頼。
 
 列を作る人間どもを横目に、悠々自適と我が道を歩いてゆくニャン吉。
 店の入口扉前に着いた早々地べたに腰を下ろす。
 かと思えばゴロリと転がり、片足上げて玉袋周りの毛づくろいを開始。
 
 おおあのポーズは!
 早速突撃の合図か!?
 
 彼には作戦もへったくれもないのだろうという事は敢えて置いておく。
 それよりも、いよいよ突入の時とワクワクドキドキの我輩!
 どんなにこの時を待ったことか。

 「次の方どうぞ―!」

 店員が外の客を引き入れる隙に中へ侵入するニャン吉。
 さすが商店街一の泥棒猫!

   
 ――― 20秒後 ―――

 「この小汚い三毛猫めっ! 二度とウチの敷居を跨ぐんじゃないぞコラァ!」

 「フギャアアアアァァァァァァァ――――――――――ッ!」

 なんということだ!
 あのすばしこいニャン吉が1分持たないだと?
 しかも、すし屋の親父と一緒で従業員の手には刀があるではないか!?
 こっわ!

 あれを見るに相当強固なセキュリティシステムが備えられているようだな。
 これはおいそれと侵入できないぞ?
 ウーム。

 我輩は外に放り出されて転がりまわるニャン吉を見ながら色々考えてみる。
 これはどうしたものかと……。
 
 因みに彼はねっちょりとした絵具で全身緑色に染まっていた。
 特に鼻や肛門などの粘膜ある場所には、塊でこねくりつけられている。
 なんかこの国の妖怪〝リバーモンスター〟みたいで少しカッチョイイな。
 あれで頭頂部にバリカンを入れられれば完璧だったのに、それだけが残念。

 転がりまわって疲れたのか、店の前で寝てしまったニャン吉はとりあえず放置。
 この店を攻略するならば、改めてもう一度作戦を練り直す必要がありそうだな。
 そんな訳で今日は諦めるか。
 
 それにしてもニャン吉は寝相が悪いな?
 ピクピクピクピク痙攣しよってからに。
 まあ、今日はご苦労であったぞ。

 結局今日は無収穫。
 新規開拓に手ごたえを掴めず、トボトボ帰宅の途につく我輩。
 その途中で……

 「ウーニャーン?」

 偶然出会って話し掛けてくるニャー吉とニャン太郎。
 彼等二匹を見てピンと来た!

 この間4匹で行った商店街の新しい店へ行けば刺し身が食べ放題だと伝える。
 その証拠に腹一杯で動けなくなったニャン吉が入り口の近くで寝ているぞとも。

 「ニャギッ?」

 二匹はまだ話半ばなのに、全速力のチーターを超えるスピードで消えて行った。
 なんと気の早い事か。
 フフフ。
 
 
 一時間後、店には緑色に染まった起毛の雑巾二枚と、新メニュー〝謎肉の握り〟が増えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...