仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

文字の大きさ
71 / 218

第71話 吾輩はシャムネコになど屈しないのである!

しおりを挟む
 この街に新入社員が配属された。
 彼女の名前は〝ニヤ〟と言う。

 いや、本当の名前は知らないが、周りの猫達は皆そう呼んでいる。
 恰好を見るに、どうも飼い猫らしいのだ。

 我輩はまだ本猫に会った事がないから噂だけしか知らない。
 それでも評判だけは相当に高い。

 光り輝くブルーの瞳は人間達の愛でる宝石に酷似。
 スレンダーなボディにそぐわぬ黒い長靴が足元を飾るオシャレさ。
 気品高いベリーショートなその体毛は、泥汚れなのか黄ばんだホワイト。
 聞く限りでは相当に美猫ではないのか?

 既にニャン吉やニャー吉、ニャン太郎までもが恋の虜になっているラシイ。
 日々貢物を咥えて彼女のところへ足繁く通っているそうである。

 そんなある日、我輩と彼女は遂にボーイミィトゥガールを果たす! 
 それは、美也殿に追いかけ回されていたときに起きた。

 右手にマジックリンを持った彼女は、我輩で何かを試そうとしていたらしく、それはもう三毛別の羆よりしつこく追い回して来た。

 必死で逃げ回っている我輩が病院近くを通りかかると、手招きする猫が!
 直ちに進路を変えてそちらの方へ!

 {バシッ}
 「ニギャッ!」

 本気の猫パンチをお見舞いされた。
 しかもカウンターとなり、そのダメージは計り知れない。
 どうもヤツは我輩を呼んでいたのではなく、単に前足で顔を洗っていたようだ。

 文句の一つも言ってやろうと、その猫を改めて見た途端、

 「ニャギャッ!」

 大爆笑をしてしまった。
 なんとコヤツは猫のくせに服を着ているではないか!
 これが笑われずにいられるか!

 転げまわって笑う我輩に今度は爪全開の猫キックが襲う。
 危険を感じた我輩は回避の為、バックステップで病院から脱出!
 
 {パパ――――――――ン}
 
 {ドン}
 「フギャ!」

 偶然通りかかった車に轢かれてしまった。
 のし猫の出来上がり。
 申し訳なく思ったのか、その猫は我輩の方へと歩み寄る。
 そして近くでストンと腰を落とした。

 よく見るとコヤツはメスではないか?
 その青い瞳を見るに、噂の〝ニャ〟では?

 彼女は上半身をグッと近づけ……猫パンチをしてきた。
 それも全身のばねを使った懇親の一撃を。
 なぜ彼女は我輩を攻撃対象としているのだろうか?
 この近辺でスターの我輩に嫉妬とか?
 いや、まさかな……。
 
 呑気にそんな事を考えるも、トドメを貰った我輩は既にグロッキー。
 しかも悪い事は更に続く。

 「あ、ニャゴロー発見! ……ちょっとあんたボロボロじゃない?」

 悪魔大王美也殿に発見されてしまう。

 「キャアァァァッ! 何この猫かわいぃぃぃぃっ! 服がチョー似合ってるじゃん!」

 この時点でヨレヨレな我輩の事などどうでもよくなった美也殿。
 逃げるなら今かも。

 「ちょっとニャゴローどこ行くのよ?」

 脱出失敗。
 我輩の死刑が確定した瞬間。


 次の日、フリフリラブリーな服を着た全身まだらハゲのハチワレが、町の至る所で目撃されたそうな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...