仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

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第196話 吾輩は全て愛される世界になってほしいのである①

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 新しい部下が配属された。
 ラブラドールのゴン太くんである。


 先日の大脱走事件で犬達は全匹お縄となった。
 しかしその哀れさが人々の同情を引き、殆どがこの町で飼われる事となる。

 幸いなことに、狭い檻へ入れられまともな食事を与えられなかっただけの彼等。
 特に殴られるなどといった暴行の後は見受けられない。
 同じ虐待でも痛みを伴う行為は受けなかった模様。

 そのせいか、人間に対しても特に警戒心があるわけではなかったのだ。
 寧ろ人懐っこく、直ぐに飼い主が決まった。

 そしてこのゴン太くんは、盲導犬教育を受けていて大変賢い。
 残念ながら中途半端な訓練を積んでいたため、本物の盲導犬にはなれない。
 しかしながら頭の良さを買われ、商店街のマスコットとして飼われることに。
 それも放し飼いで。
 客寄せパンダとはまさに彼の為にある言葉だな。

 本来リード無しで犬を飼う事は禁止されている我が国。
 彼は特例で警察にもキチンと許可を受けている。
 尤も、その他のバカ犬は全て鎖に縛られたのだが……

 そして彼は今回の騒動を解決したのが我輩と勘違いしている。
 そのせいか、忠臣の如く従順で思い通りに動いてくれるのだ。
 非常に有難い。
 
 只、毎回顔を合わせるときに舐め回されるのは勘弁願いたい。
 ベチョベチョになるし、その……クッサイから。

 当初は商店街のアーケード下しか行動を許されなかったゴン太くん。
 町の協力もあり、公園に立派な犬小屋が建てられた。
 今ではすっかり癒し系キャラとしての地位を確立。
 毎日彼を探索する人間までいる始末。

 これは商店街だけではなく、町にすら様々な恩恵をもたらす事となる。
 彼のおかげで人々が表に出始めたのだ。
 
 いつもなら家から一歩も出てこない者まで巻き込んでの熱狂ぶり。
 となれば、彼の行動範囲内にある商店や自販機も人が集まり潤い始める。
 知らないうちに経済効果を町全体へともたらしていた。

 これには町会長をはじめ、商工会の会長も大喜び。
 きっといつか彼の銅像が建てられると思うな。

 まあ、愛されるのは悪いことではなかろう。
 きっとその事が我輩の仕事に役立つとおもうから。


 誰にでも愛されるゴン太くん。
 実は彼に反感を抱くものも少なからず存在。
 いつものバカ猫達である。

 ニャゴローの言う事は聞く癖に自分達には冷たく接する彼。
 時にはその牙を剥くことも。

 勿論それには理由がある。
 当然原因はバカ猫達に。
 結果、逆恨みをしているだけだった。

 ―― つづく ――
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