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第2章 前世 シャルル視点
1 人質王子は皇太子と出会った
シャルルがフェラード王国の人質として、アステリア帝国に送られたのは5歳の時であった。
シャルルは王家の特徴といわれる金髪と碧眼を持っていた。そして、それは歴代王族の中でも最も美しい黄金の髪と碧眼の王子だった。
王太子妃である母はシャルルを抱きしめ涙を流した。王子のアステリア帝国での生活が、苦しいものになることがわかっていたからである。
国王はシャルルに「許せ」とただ一言いった。
アステリア帝国において、シャルルはたくさんいる人質の一人だった。特段大切にされることもなく、廃れた小さな離宮に軟禁された。
シャルルにとって寂しい生活が始まった。
シャルルは国で父母や乳母、年の近い親類の子供たちに囲まれて王宮で暮らした日々が懐かしく、思いだすと涙が滲んだ。
基本的にシャルルはいつも1人だった。
◇◇◇
帝国に来て半年すぎた頃のこと。
シャルルはいつものように庭で鳥たちにパンくずを与えていた。
運が良い日は、みたこともない鮮やかな色の鳥も混じっていて、それを見るのも楽しみだった。
(今日はいつもより少し多いな。わあ、初めて見る子がいる。)
黄色の小鳥が混じっている。チュンチュンとご飯を催促しているみたいだ。
シャルルはうれしくなり、夢中でパンをちぎっていた。
バサバサ
突然、鳥たちが四方八方に飛んで逃げた。
「みんなどうしたの?」
しゃがんでいたシャルルに影が差して見上げると、黒髪に金色の瞳の少年が、魅入られたようにシャルルを見ていた。
初めてみる金色の瞳にシャルルの胸はドキドキした。母上が持っていた、指輪みたいな目だ。
少年の後ろには護衛騎士が4人従っている。
金色の瞳の少年は目を細めた。
「見たことのない顔だな。人ではなく天使かと思ったぞ。こんなところで何をしている?」
「ぼくはフェラード王国のシャルルです。鳥に餌をやっていました」
「ああ、フェラードの王子か。私はアステリア帝国皇太子アレクサンダーだ」
「アレクタンダ―皇太子様」
「アレクサンダーだ。皇太子様はいらない」
「アレクタンダー」
うーむとアレクサンダーは眉根をよせた。
「〝サ〟の発音が難しいか。では、アレクでよい」
「アレク」
「よし、それでよい」
褒められたようで、ちょっとだけシャルルはうれしくなった。
「シャルル様!」
遠くでシャルルを叫ぶ声が聞こえた。
宮から転がり出てきた侍女のマリアンがアレクサンダーを見て、ひれ伏した。
マリアンはフェラード王国からついてきた唯一の侍女である。
「皇太子殿下! お初にお目にかかります、侍女のマリアンでございます! シャルル殿下が何か……!」
「いや? ここで会ったので挨拶をしていただけだ。この離宮は人が住んでいたのだな」
「はい。シャルル殿下が住まわれています」
見るからにほっとした表情をしたマリアンの袖をひっぱり、シャルルは、
「アレクと一緒に宮でお茶したい」と頼んだ。
「いけません! 皇太子殿下はお忙しいお方です。一緒にお茶をいただくのは、事前にお約束してからにしましょうね」
シャルルはマリアンにやんわりと諦めるよう諭されたが、アレクサンダー自身が「よい」といったので、そのままお茶をすることになった。
宮の中へと移動するアレクサンダーの後ろを、護衛騎士と一緒にちょこちょことシャルルはついていった。
シャルルを振り返り、アレクサンダーは、
「まるで、金色のひよこのようだな」といってシャルルの黄金の髪をかきまぜた。
その手はとても暖かくて、金色の瞳は優しくて、いつも寂しかったシャルルの胸が温かいもので満たされた。
(アレク。好き)
これが、シャルルの初恋だった。
シャルルは王家の特徴といわれる金髪と碧眼を持っていた。そして、それは歴代王族の中でも最も美しい黄金の髪と碧眼の王子だった。
王太子妃である母はシャルルを抱きしめ涙を流した。王子のアステリア帝国での生活が、苦しいものになることがわかっていたからである。
国王はシャルルに「許せ」とただ一言いった。
アステリア帝国において、シャルルはたくさんいる人質の一人だった。特段大切にされることもなく、廃れた小さな離宮に軟禁された。
シャルルにとって寂しい生活が始まった。
シャルルは国で父母や乳母、年の近い親類の子供たちに囲まれて王宮で暮らした日々が懐かしく、思いだすと涙が滲んだ。
基本的にシャルルはいつも1人だった。
◇◇◇
帝国に来て半年すぎた頃のこと。
シャルルはいつものように庭で鳥たちにパンくずを与えていた。
運が良い日は、みたこともない鮮やかな色の鳥も混じっていて、それを見るのも楽しみだった。
(今日はいつもより少し多いな。わあ、初めて見る子がいる。)
黄色の小鳥が混じっている。チュンチュンとご飯を催促しているみたいだ。
シャルルはうれしくなり、夢中でパンをちぎっていた。
バサバサ
突然、鳥たちが四方八方に飛んで逃げた。
「みんなどうしたの?」
しゃがんでいたシャルルに影が差して見上げると、黒髪に金色の瞳の少年が、魅入られたようにシャルルを見ていた。
初めてみる金色の瞳にシャルルの胸はドキドキした。母上が持っていた、指輪みたいな目だ。
少年の後ろには護衛騎士が4人従っている。
金色の瞳の少年は目を細めた。
「見たことのない顔だな。人ではなく天使かと思ったぞ。こんなところで何をしている?」
「ぼくはフェラード王国のシャルルです。鳥に餌をやっていました」
「ああ、フェラードの王子か。私はアステリア帝国皇太子アレクサンダーだ」
「アレクタンダ―皇太子様」
「アレクサンダーだ。皇太子様はいらない」
「アレクタンダー」
うーむとアレクサンダーは眉根をよせた。
「〝サ〟の発音が難しいか。では、アレクでよい」
「アレク」
「よし、それでよい」
褒められたようで、ちょっとだけシャルルはうれしくなった。
「シャルル様!」
遠くでシャルルを叫ぶ声が聞こえた。
宮から転がり出てきた侍女のマリアンがアレクサンダーを見て、ひれ伏した。
マリアンはフェラード王国からついてきた唯一の侍女である。
「皇太子殿下! お初にお目にかかります、侍女のマリアンでございます! シャルル殿下が何か……!」
「いや? ここで会ったので挨拶をしていただけだ。この離宮は人が住んでいたのだな」
「はい。シャルル殿下が住まわれています」
見るからにほっとした表情をしたマリアンの袖をひっぱり、シャルルは、
「アレクと一緒に宮でお茶したい」と頼んだ。
「いけません! 皇太子殿下はお忙しいお方です。一緒にお茶をいただくのは、事前にお約束してからにしましょうね」
シャルルはマリアンにやんわりと諦めるよう諭されたが、アレクサンダー自身が「よい」といったので、そのままお茶をすることになった。
宮の中へと移動するアレクサンダーの後ろを、護衛騎士と一緒にちょこちょことシャルルはついていった。
シャルルを振り返り、アレクサンダーは、
「まるで、金色のひよこのようだな」といってシャルルの黄金の髪をかきまぜた。
その手はとても暖かくて、金色の瞳は優しくて、いつも寂しかったシャルルの胸が温かいもので満たされた。
(アレク。好き)
これが、シャルルの初恋だった。
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