6 / 6
6.ルディとアメリアの手合わせ
しおりを挟む
寂れた道を歩き、中央の広場を突っ切って別の道を通った先。
迷宮の入り口に比較的近い場所に、ひと際大きい建物が鎮座していた。音を鳴らしながら立て付けの悪い扉を開くと、僅かな酒の臭いと湿気が感じられる。
冒険者ギルドは二階建てで、一階は受付と依頼が貼っている掲示板、そして小規模の酒場、二階は応接室やギルドマスター室といった部屋がある。
現在、時間的に冒険者は依頼を受けて迷宮に潜っているので、ギルド内に人は少ない。ただ、酒場にちらほらと酒を飲んでいる冒険者はいる。
彼らから向けられる好奇の視線を無視しながら、ルディはアメリアを連れて訓練場へ向かった。
「ここが訓練場か…」
アメリアは呟く。
広さは大体日本の一般的な体育館ぐらい。天井は無いので雨天の時は面倒だが、室内ではないので湿気が溜らないようになっている。
ルディは入り口付近に置いてある貸し出しの木剣を二つ手に取り、そのうち一本をアメリアに放り投げた。
「わ、わっ⁉いきなり投げないでくれ!」
「ははッ、わりぃわりぃ」
文句を言うアメリアを軽くあしらいながら、ルディは目をつけていた空いている場所に足を向ける。
今の訓練場に人は殆どおらず、数人だけだ。
「じゃあやるぞ。『スキル』及び『ギフト』の使用は無し、使っていいのは強化だけだ」
「…分かった」
この手合わせはアメリアの力量を測ることが目的だ。だから最初は魔力を体に漲らせて身体能力を向上させる‛強化’だけに制限した。
「さあ来い」
両者の間は約五メートル。
その距離がアメリアの踏み込みによって―――――
一瞬にして縮まった。
「へぇ」
滑らかな体重移動によって接近したアメリアは、ルディの喉目掛けて突きを放つ。
いくら木剣とはいえ、まともに当たったら余裕で怪我する突きを、ルディは半身になって避ける。
避けられたと悟ったアメリアは足を踏み込み直角に方向転換して攻撃を警戒。
再び両者の距離が開いた。
そのまま無言でアメリアは剣を構える。両手で柄を握り、剣先をルディへまっすぐ向けて右腰に両手で握った柄を添えた。
「瞬風舞剣術か」
ルディはその独特な構えに覚えがあった。
瞬きよりも速く剣を振り、風の様に舞うという思想の世界三大剣術の一つ。その手数で攻めるという形態から女性や小柄な剣士が多かった。
「―――っ!」
腰に添える構えはそのままに、アメリアはルディに接近。
先程と同じように両手で突きを放つ。
剣先から柄まで一直線に維持した構えから放たれる突きは、人間の目に錯覚を与える。剣先と自分の距離が分かりにくくなるのだ。
が、分からないなら相手の腕の動きを見れば良い。
ルディは良く鍛錬しているなと思いながらその突きを避けた。
アメリアは突きの勢いを追い越すように地面を蹴ってルディに背を向けるように回転。
回転の勢いをつけたまま剣でルディを斬りつける。
それをルディは普通に防御、同時に剣と剣が接触する瞬間に過剰に力を入れてアメリアの剣を叩く。
その衝撃に抗うわけでもなく、吹っ飛ばされるわけでもなく、アメリアは衝撃を攻撃に利用した。
常に動き回り、流動的に剣を振る。
正に風の様に舞う剣術だ。
辺りに響く空気を斬る音と木剣が交差する音。
風の様に舞って手数で攻める、と言っても一回一回振る剣が軽いわけではない。
的確な位置を狙い、緩急をつけて攻める様は一定以上の実力を有していると言っていいだろう。
ルディはそう思って防御から攻撃に転じることにした。
「くっ――!」
アメリアの剣術と比べたら、荒々しく美しさの欠片もない。
そもそも、ルディはまともに剣術を習ったことは無く、魔物との殺し合いの中で培われた剣だ。
アメリアの剣はどちらかと言うと対人、ルディの剣は魔物。
なので、ルディのは剣術と言うよりかは剣を使う戦闘技術と言った方が良い。
徒手格闘、暗器、そして剣。
型や技といったのもは存在せず、ただただ相手を殺すためだけに磨かれた独自の戦闘技術。
死線を幾つも潜り抜けてきたルディに、アメリアが敵うはずがなかった。
「あっ…」
ルディによってアメリアの剣が手から吹き飛ぶ。
吹き飛んだ剣は地面に落ちて乾いた音を鳴らす。
「お前の力量は分かった。終わりだ」
「むぅ…」
ルディはなんてことないように言うが、アメリアは明らかに不満そうにぶすっとした。
「これから迷宮行くんだからここで力尽きても仕方ねぇだろ」
「迷宮行くのかっ⁉」
「ああ。だからさっさと用意するぞ」
「うむっ!」
不満そうな表情から一転。
目を輝かせて満面の笑みで頷くアメリア。
その後ろ姿は飼い主に付いていく犬の様だった。
迷宮の入り口に比較的近い場所に、ひと際大きい建物が鎮座していた。音を鳴らしながら立て付けの悪い扉を開くと、僅かな酒の臭いと湿気が感じられる。
冒険者ギルドは二階建てで、一階は受付と依頼が貼っている掲示板、そして小規模の酒場、二階は応接室やギルドマスター室といった部屋がある。
現在、時間的に冒険者は依頼を受けて迷宮に潜っているので、ギルド内に人は少ない。ただ、酒場にちらほらと酒を飲んでいる冒険者はいる。
彼らから向けられる好奇の視線を無視しながら、ルディはアメリアを連れて訓練場へ向かった。
「ここが訓練場か…」
アメリアは呟く。
広さは大体日本の一般的な体育館ぐらい。天井は無いので雨天の時は面倒だが、室内ではないので湿気が溜らないようになっている。
ルディは入り口付近に置いてある貸し出しの木剣を二つ手に取り、そのうち一本をアメリアに放り投げた。
「わ、わっ⁉いきなり投げないでくれ!」
「ははッ、わりぃわりぃ」
文句を言うアメリアを軽くあしらいながら、ルディは目をつけていた空いている場所に足を向ける。
今の訓練場に人は殆どおらず、数人だけだ。
「じゃあやるぞ。『スキル』及び『ギフト』の使用は無し、使っていいのは強化だけだ」
「…分かった」
この手合わせはアメリアの力量を測ることが目的だ。だから最初は魔力を体に漲らせて身体能力を向上させる‛強化’だけに制限した。
「さあ来い」
両者の間は約五メートル。
その距離がアメリアの踏み込みによって―――――
一瞬にして縮まった。
「へぇ」
滑らかな体重移動によって接近したアメリアは、ルディの喉目掛けて突きを放つ。
いくら木剣とはいえ、まともに当たったら余裕で怪我する突きを、ルディは半身になって避ける。
避けられたと悟ったアメリアは足を踏み込み直角に方向転換して攻撃を警戒。
再び両者の距離が開いた。
そのまま無言でアメリアは剣を構える。両手で柄を握り、剣先をルディへまっすぐ向けて右腰に両手で握った柄を添えた。
「瞬風舞剣術か」
ルディはその独特な構えに覚えがあった。
瞬きよりも速く剣を振り、風の様に舞うという思想の世界三大剣術の一つ。その手数で攻めるという形態から女性や小柄な剣士が多かった。
「―――っ!」
腰に添える構えはそのままに、アメリアはルディに接近。
先程と同じように両手で突きを放つ。
剣先から柄まで一直線に維持した構えから放たれる突きは、人間の目に錯覚を与える。剣先と自分の距離が分かりにくくなるのだ。
が、分からないなら相手の腕の動きを見れば良い。
ルディは良く鍛錬しているなと思いながらその突きを避けた。
アメリアは突きの勢いを追い越すように地面を蹴ってルディに背を向けるように回転。
回転の勢いをつけたまま剣でルディを斬りつける。
それをルディは普通に防御、同時に剣と剣が接触する瞬間に過剰に力を入れてアメリアの剣を叩く。
その衝撃に抗うわけでもなく、吹っ飛ばされるわけでもなく、アメリアは衝撃を攻撃に利用した。
常に動き回り、流動的に剣を振る。
正に風の様に舞う剣術だ。
辺りに響く空気を斬る音と木剣が交差する音。
風の様に舞って手数で攻める、と言っても一回一回振る剣が軽いわけではない。
的確な位置を狙い、緩急をつけて攻める様は一定以上の実力を有していると言っていいだろう。
ルディはそう思って防御から攻撃に転じることにした。
「くっ――!」
アメリアの剣術と比べたら、荒々しく美しさの欠片もない。
そもそも、ルディはまともに剣術を習ったことは無く、魔物との殺し合いの中で培われた剣だ。
アメリアの剣はどちらかと言うと対人、ルディの剣は魔物。
なので、ルディのは剣術と言うよりかは剣を使う戦闘技術と言った方が良い。
徒手格闘、暗器、そして剣。
型や技といったのもは存在せず、ただただ相手を殺すためだけに磨かれた独自の戦闘技術。
死線を幾つも潜り抜けてきたルディに、アメリアが敵うはずがなかった。
「あっ…」
ルディによってアメリアの剣が手から吹き飛ぶ。
吹き飛んだ剣は地面に落ちて乾いた音を鳴らす。
「お前の力量は分かった。終わりだ」
「むぅ…」
ルディはなんてことないように言うが、アメリアは明らかに不満そうにぶすっとした。
「これから迷宮行くんだからここで力尽きても仕方ねぇだろ」
「迷宮行くのかっ⁉」
「ああ。だからさっさと用意するぞ」
「うむっ!」
不満そうな表情から一転。
目を輝かせて満面の笑みで頷くアメリア。
その後ろ姿は飼い主に付いていく犬の様だった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる