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第三十八話 限界集落(1)
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「村を諦める?」
「はい。この村は終わるのです」
ヘレンさんは真剣な表情でそう言い、言葉を続けた。
「この村に住む人たちの数はもう、100人程度しかいません。しかも、そのほとんどが60歳以上の老人です。ここから一番近いベイクの町へも数日かかり、国から年に数回派遣されてくる商隊以外は、行商人も滅多にやって来ません。今は自給自足で何とかなっていますが、満足に動ける老人も年々少なくなり、すでにこの村は、村としての機能を果たせなくなりつつあります」
確かに、この村に入ってからここに来るまでの間でもあまり人は見かけなかった。
見かけた人たちもどこか覇気がなかったのはそう言うことか。
「国からもこの村を廃村にするよういわれており、住人はベイクの町へ移住することになっています」
「ベイクの町にですか?」
「はい。この村もベイクの町と同じオーグラント男爵領の一部ですので」
ほうほう。領主の名前はオーグラント男爵って言うのね。
一応覚えておこう。面倒ごとに巻き込まれても嫌だしね。
え?フラグ?そんなのあるわけないじゃない。マンガやラノベじゃあるまいし。
「村の者達は皆、この村を離れたがらず、村長までもが移住を拒否していてなかなか話が進んでいないのです」
「あー」
なるほどね。
生きるためとは言え、泣く泣く生まれ育った故郷を捨て、しかもその故郷も消滅してしまうとなれば意固地になるのも分からなくはない。
それに、自分たちが故郷を捨てることが、その故郷を消滅させる事に直結しているわけだから、とても容認できるものではないのだろう。
「それで、村人達を追い出すために、俺たちに説得をして欲しいって事か?なんでただの冒険者の俺たちにそんな事を?領主の決めた事なら強制的に進める事も出来るだろ」
「それはそうなのですが、私ではろくに話も聞いてもらえず・・・」
なるほど。ヘレンさんはギルドマスターとしては若すぎるし、しかも女性だ。
頭の固い老人達を説得するには相性が悪すぎるにも程があるね。
ヘレンさんの苦労がとても偲ばれる。
てか、だいたいよく考えたらこれ、ただのギルドマスターであるヘレンさんの仕事じゃない。
村長の仕事だ。
その村長が移住を拒否しちゃってるもんで、ヘレンさんに仕事が回って来たんだろうね。
ギルマスって大変だなあ。
「ってか、そもそも俺たちは魔物の調査で来ただけなんだけど」
「分かっています。この村とは何の関係もないあなた方にこんなお願いをしたのは、その件もあったからなんです」
「どう言うことだ?」
「ベイクの町のギルマスからの手紙によれば、あなた方の調査対象の魔物はセイブウルフだそうですね」
「ああ」
頷くクロイス。
そういえば魔物調査に来たてたんだった。
ちょっと展開が急すぎて忘れてたよ。
「確かに、セイブウルフは数週間程前から、この村の近くで目撃されるようになりました。最近になって村の外に出た人が襲われるという騒ぎが増え始めたので、ベイクの町からも冒険者事派遣してもらい、村の周辺の魔物退治を行なっていたのですが・・・」
「何かあったのか?」
途中で言葉を詰まらせるヘレンさん。
続きが気になるな。もしかして上位種のセイブウルフがいたとかかな?
「先日、この村の中に魔素溜まりが発生し、そこから一匹のセイブウルフが生まれたのです」
「な!?」
「はい。この村は終わるのです」
ヘレンさんは真剣な表情でそう言い、言葉を続けた。
「この村に住む人たちの数はもう、100人程度しかいません。しかも、そのほとんどが60歳以上の老人です。ここから一番近いベイクの町へも数日かかり、国から年に数回派遣されてくる商隊以外は、行商人も滅多にやって来ません。今は自給自足で何とかなっていますが、満足に動ける老人も年々少なくなり、すでにこの村は、村としての機能を果たせなくなりつつあります」
確かに、この村に入ってからここに来るまでの間でもあまり人は見かけなかった。
見かけた人たちもどこか覇気がなかったのはそう言うことか。
「国からもこの村を廃村にするよういわれており、住人はベイクの町へ移住することになっています」
「ベイクの町にですか?」
「はい。この村もベイクの町と同じオーグラント男爵領の一部ですので」
ほうほう。領主の名前はオーグラント男爵って言うのね。
一応覚えておこう。面倒ごとに巻き込まれても嫌だしね。
え?フラグ?そんなのあるわけないじゃない。マンガやラノベじゃあるまいし。
「村の者達は皆、この村を離れたがらず、村長までもが移住を拒否していてなかなか話が進んでいないのです」
「あー」
なるほどね。
生きるためとは言え、泣く泣く生まれ育った故郷を捨て、しかもその故郷も消滅してしまうとなれば意固地になるのも分からなくはない。
それに、自分たちが故郷を捨てることが、その故郷を消滅させる事に直結しているわけだから、とても容認できるものではないのだろう。
「それで、村人達を追い出すために、俺たちに説得をして欲しいって事か?なんでただの冒険者の俺たちにそんな事を?領主の決めた事なら強制的に進める事も出来るだろ」
「それはそうなのですが、私ではろくに話も聞いてもらえず・・・」
なるほど。ヘレンさんはギルドマスターとしては若すぎるし、しかも女性だ。
頭の固い老人達を説得するには相性が悪すぎるにも程があるね。
ヘレンさんの苦労がとても偲ばれる。
てか、だいたいよく考えたらこれ、ただのギルドマスターであるヘレンさんの仕事じゃない。
村長の仕事だ。
その村長が移住を拒否しちゃってるもんで、ヘレンさんに仕事が回って来たんだろうね。
ギルマスって大変だなあ。
「ってか、そもそも俺たちは魔物の調査で来ただけなんだけど」
「分かっています。この村とは何の関係もないあなた方にこんなお願いをしたのは、その件もあったからなんです」
「どう言うことだ?」
「ベイクの町のギルマスからの手紙によれば、あなた方の調査対象の魔物はセイブウルフだそうですね」
「ああ」
頷くクロイス。
そういえば魔物調査に来たてたんだった。
ちょっと展開が急すぎて忘れてたよ。
「確かに、セイブウルフは数週間程前から、この村の近くで目撃されるようになりました。最近になって村の外に出た人が襲われるという騒ぎが増え始めたので、ベイクの町からも冒険者事派遣してもらい、村の周辺の魔物退治を行なっていたのですが・・・」
「何かあったのか?」
途中で言葉を詰まらせるヘレンさん。
続きが気になるな。もしかして上位種のセイブウルフがいたとかかな?
「先日、この村の中に魔素溜まりが発生し、そこから一匹のセイブウルフが生まれたのです」
「な!?」
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