二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩

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その後の事はあまり覚えていない。

看護師さんや先生が駆けつけ優里亜に何かしているのをぼんやりと覚えている。

しばらくするとみんなが動きを止めてこちらをみた。

先生が何か言って看護師さんが紙に何か書き込んでいる。

「残念です」

先生の言葉に私は膝から崩れ落ちた。

優里亜の葬儀はひっそりと行われた。看護師さんが色々と教えてくれてお金が無いので家で簡易的にした。

本当は華やかに送り出してあげたかった。

小学校にも行ってない優里亜は友達と呼べる人はおらず私も優里亜に付きっ切りで親しい人もいなくて家に来たのはお世話になった大家さんぐらいだった。

一応元旦那にも知らせないとと電話をしてみたが...

「もしもし...」

「なんだよ、もう連絡してくるなよ」

久しぶりに聞く夫の声は迷惑さを隠そうともしていなかった。

「優里亜が...亡くなったの」

絞り出すように言うと驚いた声がする。

「え?  まだ生きてたのか?」

その先の言葉を聞いて頭が真っ白になる。

「あー、まぁ生きられないって言ってたしなー仕方ないだろ」

「何言ってるの...」

わなわなと怒りが湧き上げる。

怒鳴ってやろうと拳を震わせていると元夫の電話から女の声が聞こえてきた。

「ねー、誰と電話してんのよー早くして、寒いんだから」

誘うようにクスクスと笑う声にスーと気持ちが冷めていく。

「あーじゃ忙しいからもう連絡しないでくれ」

こちらの返事も聞かないうちに電話を切られてツーツーと虚しい音を聞いていた。

「うっ...」

悔しさや怒りなど色んな感情が溢れ出し情けなくなる。

優里亜に申し訳なくて仕方なかった。
親として何もしてあげられなかった事が...

優里亜を一人寂しく逝かせてしまったことが悲しかった。

優里亜の前でしばらく泣いた後私はスッと立ち上がった。

ここにいる意味が無いことに気がついた。

優里亜がいないこの世に未練は無い。

私は飛び降りようと部屋を出ていこうとするとバタッと何かが落ちる音がする。

振り返ると優里亜が大切にしていた本だった。

優里亜の写真の前に置いてあったのが落ちたようで、私は戻そうと拾い上げる。

すると本の間から一枚の紙が飛び出していた。

本が壊れたのかと開いて見るとそれは手紙だった。

優里亜の幼い字で書かれている。

楽しかったこと、嬉しかったこと、病気が治ったらしたいこと...

そしてもし、自分の病気が治らなかったらお母さんに幸せに生きて欲しいと...

まだ若いんだから新しい恋人を作って私にユウリみたいに可愛い弟を作って欲しい!  なんて書いてあった。

「あの子ったら...」

優里亜らしいと思い、笑いながら泣いてしまった。

「ごめん、ごめんね」

今死のうとしていた事を優里亜に止められ、怒られた気がした。

それから私は優里亜に心配をかけないようにと、しっかりとご飯を食べて寝る事にした。

優里亜が亡くなってから初めてゆっくり寝る事ができた。

数日間気持ちが沈む事もあったが、その度に優里亜の手紙を読んで元気をもらっていた。

ピンポン!

人なんか来ない家に久しぶりにインターホンが鳴った。

私が出ると目の前には元夫が立っている。

「なんですか?」

何の用かと怪訝な顔をして警戒する。

「なんだよ、久しぶりに会ったのに相変わらず陰険なやつだな!」

部屋に入ろうとするので扉を閉めようとすると、足をねじ込められる。

「ちょっとーこんな所で揉めないでよ。部屋に入れてくんない?」

後ろには今付き合っている彼女を連れてきているようで呆れてしまった。

「優里亜に線香上げさせてくれよ」

そう言われると入れるわけにもいかず私はいやいや2人を家にあげた。

「わー、狭いアパート」

女はキョロキョロと部屋を見渡しながら失礼なことを言ってくる。

「優里亜はここよ」


私は早く帰ってもらおうと仏壇に2人を連れていった。

元夫は軽く手を合わせるとそそくさと立ち上がりこちらを見つめる。

「それでさ、あれおりたんだろ?」

「あれ?」

私は何を言っているのかと眉間に皺を寄せた。

「保険金だよ、保険金!  優里亜にかけてたやつだよ」

元夫の必死な顔に私はこいつは何を言い出すのかと口をポカンと開けて固まってしまう。

そんな私の呆れ顔に気が付かないのか話を進める。

「ちょっと金に困っててさー、沢山下りたならちょっとくれよ」

「ちょっとじゃなくて半分は貰えるでしょー」

後ろから女が口を挟む。

「何言ってるの?」

私は怒りを込めて2人を睨んだ。

「怖ーい」

女は元夫の後ろに隠れて馬鹿にしたように笑っている。

「離婚して親権も手放しているでしょ! あなたに渡すお金なんてないわ、さっさと帰って!」

私は2人に出ていくように玄関を指さした。

「なんだよ、金は俺だって出しただろ!」

「そうよー、もらう権利あるわ」

文句を言って帰りそうもない2人に私は呆れて携帯を取り出す。

「出ていかないなら警察を呼ぶわ」

その言葉に元夫は怒りに顔を赤くした。

「てめぇー!ふざけんな!」

携帯を叩き落とされ私は冷たく睨みつける。

「壊れてたら弁償してもらうから」

落ちた携帯を拾おうと頭を下げるとガンッ!という鈍い音がして頭に激痛が走った。

倒れ込む私が最後に見たのは青ざめている元夫の顔だった。
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