【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩

文字の大きさ
35 / 35

35.ユウリとユリア

しおりを挟む
「はぁ、はぁ」

僕は久しぶりに高熱を出した。

こんな時にお父様とお母様は王宮に呼び出されていて屋敷にいない。

心細くて広いベッドの中で小さく丸くなる。

こうしているとこの世界で一人になってしまった気がして苦しくなった。

「うっ……」

泣きそうになると温かい手が僕に触れる。

「おにーたま?」

「ユ、リア……」

それは愛しい僕の妹だった。

最近2歳になり1人歩きをするようになると人の目を掻い潜って僕の部屋へと忍び込んで来るのだ。

「ユリア、今日はここにきちゃだめだよ」

ユリアに熱が移ったら大変だと屋敷の者たちが部屋に近づけないでいたのにどうやったのかここに来てしまったようだ。

「おにーたま、だいじょぶ?」

大きな瞳が心配そうにゆらめき、僕の手をギュッと握る。

ユリアに触れられると少し楽になった気がした。

「ありがとう、大丈夫だから部屋に戻って」

「やだ!おにーたまといる」

ユリアはベッドに登ってくると僕の横で寝転んだ。そしてギュッと僕のことを抱きしめる。

温かい……

寂しくて凍えそうだった心がユリアの気持ちでポカポカになる。

そうすると不思議に気分も楽になった。

「ユリア……ありがとう」

すると急に眠気が襲ってきて僕はユリアに抱きしめられながら眠りについた。





「はぁ!はぁ!  ユウリ!」

私は王宮からの呼び出しで王都にウィリアムと行っていた。

しかし用事を終えてユウリ達にお土産を買って帰ろうとしていた所にユウリが熱を出したと知らせが届いたのだ。

私とウィリアムは急いで屋敷へと戻ってきた。

休まずに走り続けたおかげでだいぶ早く帰ってくると、ユウリの元に一直線に向かう。

扉を開けると、そこには幾分落ち着いているユウリとそこに寄り添うように眠るユリアがいた。

「え?ユリアがなんでここにいるの?」

驚くが今はユウリの容態が心配だ!

おでこに手を当てると、少し熱いがだいぶ熱が引いているように感じる。

「良かった、あんまり熱も高くないみたい」

私がそう言うとウィリアムもホッとする。

「ユリアは他の部屋で寝かせよう」

「そうね」

ウィリアムがユリアを抱き上げようとすると、その手はがっしりとユウリの服を掴んで離さないでいた。

「や~」

寝ぼけながらもユウリと離されるのを嫌がっている。

「本当にこの子はユウリが好きね」

自分の娘ながら呆れてしまう。

「ユリア、お兄ちゃんが元気になったら一緒に寝ましょうね」

そう言って掴んでいた手をゆっくりと引き剥がした。

ユリアはウィリアムに任せて私はユウリの看病をする。体を拭いてやりおでこに冷たいタオルを当てるとユウリが目を覚ました。

「お母様?」

ボーッとした顔で私を見上げている。

「ユウリ、大丈夫?  水を飲んで、他に欲しいものはない?」

まずは水を飲ませようと口に給水器を当てる。

ユウリがゆっくりと飲むのを確認しながら傾けた。

「お母様のおかゆが食べたい……」

「ふふ、わかった後で持ってくるわ」

そう言うとユウリはハッとする。

「やっぱりいいです、お母様も忙しいのにすみません……」

こんな時なのに寂しいことを言ってくる。

私はユウリの暑くなったおでこに軽くデコピンをする。

「いた……?」

ユウリがびっくりしているのでわざとらしく頬を膨らませた。

「ユウリはしっかりしすぎよ、たまにはお母様に甘えてよ……」

そう言うと恥ずかしそうにしながら熱くなった目で私を見つめた。

「やっぱりおかゆ食べたいです……あと今夜はそばにいて欲しいです……」

「今夜だけと言わず、ずっとでもいいのよ」

そう言うとユウリのデコピンしてしまったおでこにキスをする。

「待っててね」

ユウリの事はメアリーに頼みおかゆを作りに向かった。

キッチンに立つとウィリアムが心配そうにユリアを抱きながらやってきた。

「ユウリはどうだい?」

「熱は少し下がってるみたい、おかゆを食べたいって食欲もあるみたいだから大丈夫よ」

そう言うとホッとしている。

「いや、こういう時は本当プルメリアは頼もしいな」

ウィリアムにそう言われにっこりと笑う。

「あと今夜はユウリと寝るわ、ウィリアムはユリアをよろしくね」

「わかった……でもユウリが治ったら……」

ウィリアムは意味ありげな顔をして私の頬にキスをする。

「あー!  ユリアもー」

「はいはい、お姫様」

ウィリアムはユリアにも、同じようにキスをすると部屋に連れていった。

私は笑いながらおかゆを作りユウリの部屋に戻る。

「ユウリ、大丈夫?」

小さな声をかけるとモゾモゾと起き上がった。

「お母様?」

「おかゆを作ったわ、食べられそう?」

「はい、食べたいです」

ユウリの背中にクッションを並べて寄りかからせるとおかゆをすくってフーフーと息をふきかけ冷ましてあげる。

「はい、あーん」

「一人で、食べられます」

ユウリは恥ずかしいのか口を開けてくれない。

「ユウリ駄目よ、今は風邪をひいてるの。こんな時くらい甘えてよ」

悲しそうな顔をするとユウリが怯んだ。

なんだかんだ優しい子で私の頼みをいつも聞いてくれる。

「今日だけですよ……」

チラチラと部屋に誰もいないのを確認してあーんと口を開けてくれた。

私は目を細めてゆっくりと口におかゆを運ぶ。

全部食べ終えるとユウリはまたウトウトとしてきた。

「さぁ、横になって」

ゆっくりと横にしてあげるとユウリが私の手を掴んだ。

「おかーさま」

顔を見るともうその瞳は閉じている。
どうやら無意識に私の手を掴んだみたいだ。

「ふふ、可愛い」

まだなんだかんだいっても6歳だ。

しっかりしているようでまだまだ子供である。

ユウリはユリアの手前お兄ちゃんになろうと最近なかなか甘えてくれない。

しかし熱で弱った今、少し本音がみえた気がした。

「ずっとここに居るわ」

私はユウリの手を握りしめて一晩中看病をした。





「んん」

僕は昨日とは違いスッキリとした目覚めに体を伸ばす。

すると左手がなにかに掴まっていて顔を向けた。

「お母様……」

するとそこには椅子に座りながら僕のベッドにうつ伏せになり、手を握りしめてくれていたお母様の姿があった。

昨日の熱の中会話した事を思い出す。

「お母様、一晩中いてくれたんだ……」

手を離したくなくてギュッと握りしめるとお母様が目を覚ましてしまった。

「あっ!  ユウリ!」

お母様は目が覚めるなり僕の心配をしてくれた。

目が合うとホッとした顔をして笑顔を見せる。

「顔色が良くなったわね。熱はどうかしら?」

顔を近づけるとおでこをくっ付けた。

綺麗なお母様の顔がすぐそばで僕を心配してくれる姿は申し訳ないが嬉しい気持ちになる。

「うん、熱が下がったみたい」

良かったとお母様が立ち上がるのを見て僕は寂しくなり服を握りしめてしまう。

「あっ……」

しかし恥ずかしくなり慌てて手を離した。

「も、もう大丈夫です。お母様も部屋に戻って休んでください」

そう言うとお母様は「わかったわ」と立ち上がる。

自分で言っておきながら少し後悔しているとお母様はそのまま僕のベッドに横になった。

「眠いからこのままユウリのベッドで休ませて」

いたずらっ子のような顔でウインクする。

「今日だけですよ……」

僕は本当はすごく嬉しい癖に平気なフリをしてお母様の横で一緒に眠りについた。
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

きちきち
2026.02.01 きちきち
ネタバレ含む
解除
くーちゃん
2026.01.30 くーちゃん

可愛くて素敵なお話でした。
ありがとうございました😊

2026.01.31 三園 七詩

お読み頂きありがとうございます。
番外編も書きましたので良かったら読んで見てください!

解除
すとりーむ
2026.01.03 すとりーむ

おすすめにあったので見てみたら設定とか凄く好みで続きが気になりました!
長編とあるのでこれからが楽しみです!

解除

あなたにおすすめの小説

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。