拾った子供は勇者でした。弟として接していましたが彼には姉ではないと拒否されてます。

三園 七詩

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18.旅立ち

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「ニケ、ニケ」

私はふわふわとした気持ちの中心地よい声に薄く目を開ける。

すると目の前に心配そうな顔で覗き込むアルフレッドの姿が見えた。

「アルフレッド・・・?」

ボーッとしながら名前を呼ぶとホッとした顔をしてベッドに寝かされた。

どうやら抱き上げられ運ばれていたのでふわふわしていたようだ。

「あれ、私・・・」

昨日いつ寝たのか思い出せない。
楽しくみんなでずっとおしゃべりしていた記憶があるのだが途中から何も覚えていないのだ。

「痛っ」

ズキズキと頭が痛くて二日酔いの症状が出ている。
こんなになるまで飲んだのは初めてだった。

頭を押さえているとアルフレッドが慌てて部屋を出ていきアレクサンドラさんを連れてきた。

「ニケに回復魔法をかけてくれ」

アレクサンドラさんも私以上にお酒や料理を食べていたのにケロッとした顔をしている。

「ニケ、今すぐかけるわ」

私の様子に杖を出すとすぐに回復魔法をかけてくれた。

すると嘘のようにスーッと痛みが消えて驚いてしまう。

「凄いです、全然痛くありません」

「良かった」

アレクサンドラさんがニッコリ微笑むとアルフレッドが私の事を自分の方へと引き寄せる。

「あとは僕が見ます」

「いえ、また体調が悪くなるなら私が側にいた方がいい」

アレクサンドラさんが私の腕を掴み自分の方へと引っ張った。

なんかアルフレッドとアレクサンドラが私の看病をすると取り合っているような構図になってしまった。

「二人とももう平気ですから」

そんな事で喧嘩しないで欲しいとなだめるとお互い仕方ないと納得して離してくれた。

「アレクサンドラ、私にもかけてー」

するとズルズルと這いながらペグさんが部屋へとやってきた。

「大丈夫ですか!」

駆け寄るとペグさんが頭を抱える。

「大きい声、出さないで・・・」

私と同じように二日酔いになったようだ。

ならアレクサンドラさんが回復してあげればいいのかと見るが動こうとしない。

「ア、アレクサンドラさん?」

「そのくらい我慢すれば半日で回復しますから」

どうやら回復魔法をかける気はないようだ、先程は私にすぐにかけてくれたのにと首を傾げる。

「そう言わずアレクサンドラさん、ペグさんにもかけてあげて下さい」

私が頼むと仕方ないと重い腰をあげて回復魔法をかけてくれた。

「あー助かった。薬切らしちゃってて」

ペグさんがそう言うとアレクサンドラさんが私を見た。

「ニケにお礼言って、私はかける気なかったの」

「ニケちゃんありがとう!」

ペグさんはアレクサンドラさんの振る舞いに気にした様子もなく私に抱きついてお礼を言ってくる。

「ニケは大変な時言って、何時でも回復してあげる」

アレクサンドラさんがいつもなら動かない目尻を軽く提げて笑った。

その美しい笑顔に私は赤面してしまう。

「は、はい」

ポーッとしながら答えるとアルフレッドが不機嫌そうに後ろから抱きついてきた。

「なんか仲良くなってる」

不満そうな声に顔を見あげると頭の上から二人を睨んでいた。

「そんな顔しないで、私は二人と仲良くなれてすごく嬉しい」

「ニケが嬉しいなら」

アルフレッドにそう答えると睨むのはやめてくれたが私から離れそうになかった。

その後どうにか離れて旅支度をする。元々そんなに持っていく服などは無いが、キッチン用品は全部持っていけずに迷っているとアルフレッドがやってきた。

「どうしたの?」

「フライパンとかどれを持っていこうかと悩んでて」

全部持っていく訳には行かないので慎重に選んでいたらアルフレッドがそれを掴んだ。

「僕が持つから全部持っていこう」

「全部は重いから無理だよ」

私が冗談かと思い笑うとアルフレッドは一番大きな鍋を掴んでカバンにしまった。

「あっ!」

昨日ペグさん達にも見せてもらった魔法のカバンだ。

しかもペグさん達のよりもたくさんはいるのか次々にしまっている。

「アルフレッドそのくらいでいいよ、あなたの荷物入らなくならない?」

心配になって聞くとアルフレッドは無感情に首を振る。

「まだまだ入るから大丈夫、ニケの荷物は僕が全部持つから」

当たり前のようにそう言うとまた荷物をしまい出した。

「ありがとう、でも持てるものは持つよ」

全然頼りきってしまうのは申し訳無いのでできる限り自分でも持つことにした。

そんな私をアルフレッドが愛おしそうに見つめていることに気が付かないでいた。
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