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シルビオはその日エミリアに呼び出された。

「どうされましたか?」

きっとケントの事だろうと思っていたが顔に出さずに話を聞いた。

「ケントの事ですが、また口をわりません。あれから何も与えてないと言うのに…男の癖に意外としぶといです」

まだ生きていると聞いてほっとした。

「それで私は何を?」

「イブはどうしてますか?」

「イブ?イブは私のところで元気に…」

少し嘘をついた。
イブはあれからもずっとケントを心配していた。

ケントがいなくなってから家から出なくなった。そしてこの村の女達に会いたくないと口を聞くのもやめていた。

「そうですか、ではそのイブに仕事を…ケントを説得するように協力させて下さい。もう村にはストックの飴もチョコも無くなりました。皆の我慢も限界でこのままでは暴動が起きそうです」

「わかりました…では私がイブを牢まで連れて行きます」

「お願いします…ところであなた飴もチョコももうありませんか?」

「ひとつだけ…まだあります」

それは最初にケントから貰った飴だった。
あんな事があって後ろめたくてシルビオはあれから飴を食べていなかった。

「それを…ひとつ頂けませんか?もちろんただとは言いません。一万…いえ!二万出します」

「エミリア様…」

いつもは聡明で穏やかなエミリア様が必死な形相で飴を欲しがる。

その事にシルビオはガッカリした。

「すみませんがこれはイブの物でもあります。それに今は飴も貴重ですから売るわけには…」

シルビオはやんわりと断った。

「まぁ…そうですよね。私でも売りませんから。ではケントの件よろしくお願いします」

エミリア様は残念そうに諦めた。

シルビオは挨拶をして部屋を出ると早速家へと向かった。

「イブ!」

シルビオは扉を閉めてイブに声をかける。
しかしイブからの反応はない…

「どうした?」

机に突っ伏しているイブを揺するとパシっ!と手を払われた。

「きらい!きらい!みんなきらい!大きらい!ケントを返して!ケントに会わせて」

イブはこんなところに来なければよかったと泣き出した。

「イブ…ごめん」

シルビオはイブを抱きしめ優しく語りかける。

「イブ、今日ケントがいる牢に行けることになった…そこでケントを助けよう…そしてイブはケントとこの村から逃げろ」

「え?ケントに会える?逃げ…る?」

「そうだ、逃げろ。お前達はここにいちゃ駄目になる」

イブはシルビオの真剣な顔に涙を拭いた。

「うん!イブケント助けて逃げる!逃げるの得意だもん!」

「そうだ。この村を出て北に行け向こうは寒いから私達は近寄らないたくさん服を入れて置いてやる…前にお前達を捕まえた場所を覚えているか?そこに食べ物や荷物を置いといてやる。一度ケントとそこに行け」

イブはこくっと頷いた。

「よし、準備をしたらケントのところに行くぞ」

「はい!」

イブは急いで荷物をまとめた。
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