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「はぁ、はぁ、はぁ…もう無理…」

ケントはシルビオを背負ってかなり遠くまで移動した。

「と、とりあえず…今日は…ここで…」

休もうと言いたいが口が動かない。

倒れこんでバッグから飲み物を取り出して一気に飲み干した。

イブにも飲み物を渡すと同じように飲み干す。

「ケント…ちょっとまってて…」

イブはふらっとどこかに行ってしまった。

追いかけたいがもう体が動かない…

「イブ…」

声をかけるがイブはすぐに見えなくなってしまった。

少しするとイブがふらっと帰ってくる。

「ケント、こっち」

イブが手招きして来た方向を指さす。

「向こうに隠れる場所があったよ」

「本当か?」

「うん!」

「よくやった!」

ケントはもう一度力を振り絞ってシルビオをおんぶするとイブの後を追った。

「ここ」

イブが連れてきたのは大きな木の根元だった。

何か動物が掘った穴の様なものが開いている。

「ここ、入れる?」

「どうにか一人ずつなら行けそうだ」

まずイブが先に入るとシルビオを布の上に寝かせて布事引っ張る。

その後穴を隠す物を探して木の葉や枯れ木などで穴を隠しながら賢人も中に入った。

更に中から土で塞いで完全に見えなくするが少しだけ空気穴を作っておいた。

「真っ暗…」

イブの声がするが姿が見えない、賢人はバッグに手を突っ込んでパソコンを取り出す。

パソコンの明かりで周りが少し見えた。

そのまま買い物でランタンを購入すると周りにいくつか置いて灯りを確保した。

「中は結構広いな」

穴は狭かったが中は案外広く三人が入っても余裕だった。

「ここならしばらく身を隠せそうだ、この女が目を覚ますまでここで休もう」

賢人がそう言うとイブはほっとしたのかガクッと腰を下ろした。

「だ、大丈夫か!?」

突然崩れたイブに慌てて駆け寄るとイブは震えていた。

「だ、大丈夫…なんかほっとして…疲れた…」

そしてそのままバタンッ!と眠ってしまった。

「イブ!」

イブを抱き上げると息をしているか確認する。

口元に耳を近づけると寝息が聞こえた…

「な、なんだよ。寝ただけか…」

びっくりして賢人もドサッと座り込む。

自分も凄く疲れていることに気がつくと急に眠気が押し寄せてきた。

でもこのままこの二人を放置はできない…

賢人は眠い目を擦って布団やら毛布に包帯や消毒液、使えそうな物を片っ端から買い込んだ。

マットレスを買って地面に敷くと布団を置く。

大人用はバッグから出せなくて買えなかったが子供用は買えた。

3セット買って並べて敷くとイブとシルビオを寝かせる。

「手当てをするからな」

気を失っているシルビオに声をかけて服を脱がせる。

温かいお湯を沸かして体を服と手当てをして包帯でグルグル巻きにした。

さすがに服は着せられない…

それにもう自分が限界だった。

「もう無理…」

賢人は気を失うようにバタンと布団に倒れ込んだ。
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