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6章

249.契約△

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いきなり座り込んだ私にアラン隊長とカイト隊長が素早く駆け寄ってきた。

「ミヅキどうしたんだ!」

「大丈夫ですか?」

二人が心配そうに私を囲んだ。

「どうしよう・・・・・・」

絶望的な声を出す。

「どうしたんですか!」

カイト隊長が声を荒らげている。

「ヒポグリフと契約しちゃいました」

「「えっ?」」

二人は一瞬理解出来ないような顔をして私を見つめる。

「名前がヒポグリフって長いから、縮めてヒポって呼んでいいって言ったら従魔として契約しちゃったの」

そう言うと二人は少しホッとしたように力を抜いた。

「何やってるんだよ、ただ定期便を頼むだけじゃなかったのか?」

「まぁ、ミヅキらしいですが」

アラン隊長は呆れ顔を見せ、カイト隊長にまで笑われる。

「もう暴れないだろうから檻から出すね」

私は土魔法で作った檻を壊すとヒポを自由にした。するとシンクの側に来てスっと頭を下げ跪いた。

シンクはそれを見つめると仕方なさそうに嘴でヒポの頭をクシュっと甘噛みする。

するとヒポは嬉しそうに今度は私に寄ってきた。

【シンク今の何?】

【僕に弟分として挨拶してきたから僕が了承してあげたの、僕はヒポのお兄ちゃんだね】

シンクが少し嬉しそうな声で説明してくれた。

【シンクもヒポもそんなに喜んでくれるならまぁ結果オーライかな】

私は二人の頭をよしよしと撫でた。

【ヒポにお願いがあるんだけど、もし嫌なら断っていいよ。私の従魔になったからってなんでも言うこと聞かなくっていいんだからね。したい事をして好きなように生きていいから。あっでも人を傷つける事はしないでほしいな、やられてやり返すのはいいけどね!】

【クェ!】

ヒポは私の言う事を理解しているようで返事をする。

【じゃ改めてこの王都とこれから行く霧の里を定期的に飛んで荷物とかを運んで欲しいんだけど、どうかな?】

【クェ!?】

ヒポの言葉をシンクが通訳してくれる。

【ミヅキは何処にいるんだって】

【私は基本色々と動き回ってるかな、ずっと王都か霧の里にいる訳じゃないよ】

【グェー!】

ヒポは不満そうな声をあげる。

【ミヅキが居ないなら飛びたくないみたい。多分ミヅキの所に帰るなら荷物も運ぶんじゃないかな?】

【そっか・・・・・・じゃヒポ以外の飛べる子捕まえた方がいいかな?】

【グェグェ!  グェー!】

どうしうかと考えているとヒポが興奮して翼を羽ばたかせる。そして急に空高く飛び立っていってしまった。

「えっ?」

唖然としてシンクを見る。

【なんかちょっと待っててって、仲間を連れて来るって言ってたよ】

「えー!  なんで仲間を連れてくるの」

【ミヅキが他の子捕まえるって言ったからじゃない?】

【ど、どうしよう!  ヒポグリフが数頭で王都来たら不味くない!】

「アラン隊長ー!  カイト隊長ー!」

私は大事になる前に急いで二人の隊長に説明する事になった。


私から話を聞いた隊長達は部下に王都に向かってくるヒポグリフは私の従魔なので攻撃しないようにと、伝令を走らせた。

「まぁ、ミヅキの名前で皆さん大体理解するでしょう」

カイト隊長が笑う。

「そんな説明だけで大丈夫ですか?」

「問題ありません」

カイト隊長が自信満々に答える。

「本当に?  そんだけで上手く伝わるかなぁ」

私が心配しているとアラン隊長も心配無いと言ってくる。

「そりゃ大丈夫だろ、ドラゴンやらフェンリルを従魔にしてんだ。ヒポグリフぐらいみんな納得だ!」

まぁ、そうなのか・・・・・・な?

渋々納得すると、ヒポグリフが帰ってくるのを待つことにした。





今日中には無理そうなのでギースさん達やリュカ達にはいつも通り仕事をしてもらう事にした。

基本レアルさんとデボットさんは指示を出さずにギースさんとビリーさんが表立って動いている。

黙々とリバーシを作っている従業員達を見て回るとチラッとこちらに視線が向くがすぐに仕事に集中している。
みんなにはデボットさんの妹が見学に来ていると説明してもらっていた。

「さすがみんなの面接に通っただけあるね、真面目でよく働くなぁ」

そんな中視線を感じて顔を向けると一人のおじさんと目が合った。おじさんはサッと顔をそらして仕事をしてるフリをするがチラチラとこちらを気にしていた。

「あれ?  あの人どっかで見たなぁ」

今度は私がじぃーっとそのおじさんを見つめた。

「誰だったかな?」

私はおじさんに近づき声をかけた。

「こんにちは~」

おじさんはビクッとして持っていたリバーシの石を落としてしまう。

「コ、コンニチハ~」

顔を引き攣らせてガチガチに緊張した様子で答える。

私は石を広い返しながらおじさんの顔を覗き込んだ。

「おじさん、どっかで会いませんでしたっけ?」

「えっ?」

おじさんが驚いた顔を見せる。

「なんかおじさんの顔どっかで見たんですよね~」

「あ、あの・・・・・・面接の時に会いました」

おじさんがオドオドと答える。

「あーあの時の!」

いきなり大声を出してしまい皆の視線が集まるとデボットさんが慌てて飛んできた。

「ミヅキ!  何やってんだ」

「あっ、デボ・・・・・・トおにいちゃんごめんね。見た事あるおじさんに会ったからつい話しかけちゃった!」

「お、おに・・・・・・いちゃん」

デボットさんがフリーズしてしまう。

「あれ、おにいちゃんどうしたの?」

デボットさんの服を引っ張るとハッとしていた。

「ちょ、ちょっと待て!  今レアルさんを呼んでくる!」

デボットさんは顔を赤くして引き返してしまった。

「なんだあれ?」

デボットさんのおかしな様子に首を傾げる。

「あのミヅキ・・・・・・さん?」

おじさんがおずおずと話しかけてきた。

「ちゃんでいいですよ、おじさんの名前は?」

「俺はファングって言います。あの時はありがとうございました。ずっとお礼が言いたかった」

「面接の事ですか?  あれは私に甘いおにいちゃん達が決めたんですよ。それにファングさんが使える人だと思ったからみんなも納得したんです。この仕事を掴んだのは紛れもなくファングさんの力だと思いますよ」

私は笑って答えた。

「ありがとう。選んでくださった皆さんの為にも一生懸命頑張ります!」

ファングさんは立ち上がるとペコッと頭を下げた。

「適当に手を抜いていいと思いますよ。根を詰め過ぎるのは良くないですから」

そう言うとファングさんは不思議そうに私を見つめる。

「ミヅキちゃんは大人みたいだね」

「って!  デボットにいちゃんが言ってましたよ!」

慌てて付け足して誤魔化した。

「それでもありがとう」

ファングさんが笑いながらお礼をいい手を差出してきた。
しかし自分の汚れた手を見てサッと後ろに隠してしまう。

「すみません。デボットさんの妹さんに失礼な態度をこんな汚い手で・・・・・・」

「デボットさんの妹だから失礼なの?  私は私だよ失礼だなんて思わないよ」

私が手を差し出すとファングさんも恐る恐る手を出し私の手に握手する。

「ファングさんの手って働き者の手だね。ゴツゴツしてかっこいい優しい手だと思うよ」

そう言って笑いかけるとファングさんの瞳から涙が零れた。

「ミミ・・・・・・?」

「ファングさん?」

どうしたのかと顔を覗き込むと急いで涙を拭き取りニカッと笑う。

「ミヅキちゃんありがとう。今久しぶりに娘に会えた気がしたよ」

ファングさんはなにか付き物でも落ちたように嬉しそうに笑った。

「ミヅキー!  大人しくしてなさいっと言ったでしょうが」

デボットさんになにか言われたのかレアルさんが叫びながらこちらに走ってくる。

「レアルさんが慌ててる!」

「ヤバい、すげぇ怖い」

従業員達はいつも冷静なレアルさんの思わぬ一面に見てはいけないと思い視線をそらした。

「大人しくしてるよーねぇファングさん?」

「えっ?  あぁそうだね」

ファングさんがすっとぼける私をみて苦笑いする。

「従業員達の邪魔はしない約束ですよね!  しかもデボットさんを使用不可にして一体何をしたんですか?」

「えーデボットおにいちゃんのことは知らないよ。名前呼んだら急にどっか行っちゃったんだもん」

「デボットにいちゃん?」

「うん、おにいちゃん!」

「それだ・・・・・・」

レアルさんは一人で納得すると、私を抱き上げた。

「皆さんミヅキがお騒がせしました。仕事を続けてください」

レアルさんはニッコリと微笑むとサッと仕事場から遠ざけた。

「なんかえらい可愛がられてるみたいだな」

ボソッと誰かが呟くと周りの人達が苦笑いしていた。

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