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9章

470.ポルクスの村

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ミヅキ達はその日は崖の上で一泊すると次の日改めて町を目指す事にした。

「どうする?プルシアの籠に乗ってすぐに行く?」

ミヅキがみんなに聞くと

「いや、俺は走る。お前らは乗ればいいんじゃないか?」

アランさんが言うとベイカーさんも一緒に走ると言う。

【俺も運動不足だから走るか…】

シルバが言うとコハクも走りたいと言い出した。

「じゃあ走りたい人と無理な人達とで別れよう!はい!無理です!」

私はいの一番に手を上げた!

「私も今回はミヅキ様とプルシアさんの籠に乗りたいです!」

イチカは私とがいいと…あとはとデボットさん達を見ると

「いや、無理だぞ!あの人達についていけるわけないだろ!」

無理無理と手を振る。

まぁそうだよね…ポルクスさんも無理だしシンクは飛ぶ必要ないし…ムーは走らないし…レムは…?

【レムは走れるの?】

気になって聞くと

【走れますが遅いので乗せて下さい…】

申し訳なさそうに言われてしまった。

【ち、違うよ!走れるのか気になっただけだよ!一緒に乗ろうね!】

慌ててレムを抱き上げる!

「じゃあ走るのはいつもの人達って事で…」

私達は籠を出すとベイカーさん達を置いて乗り込んだ。

【プルシア!お願いします!】

【何処に向かえばいいんだ?】

プルシアが方向を聞いてくる。

「あっ!私もわかんないや…それにその前にポルクスさんの村にも寄らないとね!」

私がポルクスさんとイチカを見るとイチカがビクッと顔を強ばらせる。

「じゃあ俺が見ながら案内するよ」

ポルクスさんはイチカの変化に気が付かずに籠の端に行く。

ポルクスさんの案内でプルシアが飛び立つと…

【プルシアベイカーさん達が下を走るから少しスピード落として飛んであげてね】

【了解だ】

【ミヅキ!プルシア!もっと早くて大丈夫だ!】

シルバが駆けながら声をかけてきた。

【だって!シルバ、コハクが無理そうなら言ってね】

【コハクはミヅキが思うより強いからな】

そうなの?あんなに可愛いのに…

下を覗くとシルバを先頭にアラン、ベイカー、コハクと走っていた。

ちょこちょこと動くコハクの足が可愛らしい。

私はよいしょっとイチカの隣に座った。

「ミヅキ様…」

少し元気のないイチカが私に笑いかける。

「イチカ、どうしたの?ポルクスさんと喧嘩でもしたの?」

いつでも仲がいい二人なのでそんな心配をした事が無かったが一応聞いてみる。

もしかしたら一緒にいることでポルクスさんの嫌な所ができてしまったのかも…

ドキドキしながらイチカの言葉を待つまでいると

「実は…ポルクスさんの村に行くのが、少し怖くて…」

「えっ?なんで?」

なんか思っていたのとは違っていた…

「私…元は奴隷ですよ…ポルクスさんのお母さんは村長さんだって聞いてますし…私の事ポルクスさんには相応しくないって思ってるかもしれないです…」

「イチカ…可愛い!」

私はしゅんとしているイチカを抱きしめる!

「大丈夫だよ!ポルクスさんのお母さんだよ!イチカが好きになった人のお母さんがそんな酷い人のわけないじゃん!」

「そ、そうですよね」

イチカが少しほっとして顔が緩む。

「きっと働き者で可愛いイチカの事気に入ってくれるよ!」

「だといいです…私、親はいないからポルクスさんのお母さんが初めてのおかあさんになるんです…お母さんってどんなでしょうか?」

「きっと今イチカが想像してる通りじゃない?」

緊張しながらもどこか嬉しそうにしているイチカの顔を見つめると

「早く会いたいね!」

「はい…」

私とイチカは二人で微笑みあった。


たまに休憩をしながら二日もしないでポルクスさんの村の近くに来た。

【シルバ達はどうする?】

村に入るか聞くと

【俺はそこは窮屈だから外で待ってる】

【私もたまには元の大きさでのんびりしよう】

シルバとプルシアは近くの高台へと向かう事にした。

【ここくちゃい!】

コハクが付いてくると村に入ろうとして鼻をつまむ!

【あー魔物避けと牛の臭いかな】

コハクも耐えられずにシルバ達の元に向かった。

「じゃあ行くか?」

ポルクスさんが先頭にたって村に入ると…

「あれ?ポルクスじゃないか!おかえり!」

村の人が早速ポルクスさんに気がついた。

「おーい!みんなポルクスが帰ってきたぞー!」

大声で叫ぶと…ゾロゾロと村人が出てくる、なんだか前に来た時より人が増えた気がすると…

「見ない顔が多いな…」

ポルクスさんが戸惑っている。

やはり村人が増えたようだった。

「ミヅキちゃんも、ベイカーさんも久しぶりですね!知らない顔の人も増えてますね!」

知った顔のおじさんが話しかけて来ると

「お久しぶりです!おじさんまた牛乳沢山下さいな!」

「もちろん!ミヅキちゃんのおかげでこの村は生き返ったよ!今じゃ牛乳御殿が建ってるからね!」

「牛乳御殿!?」

村の奥に案内されるとそこは牛舎が立派になり食事ができる施設ができていた!

「すごい!」

「綺麗です…」

私とイチカが眺めていると

「あれミヅキちゃん可愛い子を連れてるね!」

みんながイチカに気がついた。

「もしかして…ベイカーさんのあれかい?」

おじさんがニヤニヤとすると

「残念ながら俺じゃねぇよ」

ベイカーが苦笑する。

「てことは…もしかして」

まさかと村人の視線がポルクスに行くと二人が恥ずかしそうに頬を赤く染めていた…

『えっーーー!!!』

村人達が大声で驚くと

「うるさーい!牛達がびっくりするじゃないか!お前ら静かにしないか!」

後ろから豪快なお母さんが大声で注意した…

「いや…村長の方が声でかいし…」

村人がボソッと愚痴ると

「なんだい?」

ジロリと村人を睨みつける。

「い、いえ…村長、それよりも大変だよ!ポルクスが嫁さんを連れて帰って来たんだ!」

村人がポルクスさんが言う前にエミリーさんに話してしまう。

「ポルクス?」

エミリーさんがこちらを見ると…

「ミヅキちゃん!久しぶりだね!あっ!もしかしてお嫁さんてミヅキちゃん!」

エミリーさんの顔が綻ぶと…

「いやいや!違うから!俺の大切な人はこっちだ」

ポルクスがイチカを前に軽く押すと、恥ずかしそうに前に出た。

「その子が?」

エミリーさんはイチカを見つめると何も言わずに立ち尽くした…
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