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2巻
2-1
しおりを挟むプロローグ
朝から気持ちのいい陽光を浴びて、私はぐいっと伸びをした。
今日は朝ご飯を食べたら冒険者ギルドに行く予定だ。
私には日本で会社員をしていた記憶がある。しかし、不幸にも交通事故に遭い、前世の記憶を持ったまま小さな女の子、ミヅキに転生してしまったのだ。
なぜこんな子供に……と不憫に思うだろうが、心配はご無用!
なんと私は、この世界の優しい人達に拾われ冒険者になったのだ。それに――
【ミヅキおはよう】
【ミヅキ! おはよう】
イケメンフェンリルのシルバと可愛い鳳凰のシンク、この二匹が私の従魔となってくれてテイマーとしてお仕事をしているのである。
【シルバ、シンクおはよう】
二人に笑顔で挨拶をして朝ご飯の準備に入る。仕事の前にはしっかりと食べないとね!
今日はなにを作ろうかな~。
シルバ達に食べたいものを聞くと、すぐに肉が食べたいと返事があった。……朝から肉か、まぁ皆よく食べるしいいか!
その時、ベイカーさんが「おはよう」と眠そうな顔で自室から出てきた。
ベイカーさんはここの家主で、異世界に転生して一人途方に暮れていた私を、家族同然に迎え入れてくれた親代わりのような人。たまに溺愛が過ぎるけど、とっても頼りになる大好きな人だ。
「なんか美味そうな匂いだな」
ベイカーさんは朝ご飯を作っていた私の手元を覗き込む。
朝ご飯はシルバがリクエストした肉を使って、ミノタウロスのハンバーガーにすることにした。
まずはミノタウロス肉をミンチにしてハンバーグのパティを作る。
次に、フライパンを用意する。火はシンクにおまかせ。シンクは火魔法が得意なので、火の調節はバッチリ!
ジューッとパティが焼けるいい音が聞こえる。
「お! ハンバーグか?」
顔を洗って戻ってきたベイカーさんが、朝から肉かと嬉しそうに頬を綻ばせる。
ベイカーさんにパンを出して焼いておいてもらい、私は野菜の準備に取りかかる。トマトをスライスして菜っ葉を洗っておく。
パティにいい感じに火が通ったところで、チーズを載せてシンクに火を止めてもらう。
「ベイカーさん、パン焼けましたか?」
振り返るとベイカーさんがすでにパンを用意していた。
熱いのでとりあえずお皿に載せてもらい、半分にスライスしてもらう。
そこにトマト、菜っ葉、パティを載せてパンでフタをして、朝からガッツリ肉汁が滴るミノタウロスハンバーガーの出来上がり。
さぁ、どうぞと皆の分を皿に取り分ける。
シンクは小さいので私と半分こ、仲良くハンバーガーを二つに切った。
いただきますと手を合わせると、三人とも美味いと言って食べてくれる。その顔を見るのがなによりも楽しみ!
満足して微笑むと、私もハンバーガーにかぶりついた。
うん、美味しい! だけどそろそろ日本食が恋しいなぁ。お米、味噌、醤油、市場にはなかったけど……いつか見つかるかな?
今度コジローさんに聞いてみようかな。
ちなみに、コジローさんは私がギルドで初めて講習を受けた際に、講師を引き受けてくれた青年だ。忍者のような装いをしていて、右目に大きな傷があり、とっても優しくてかっこいい!
忍者ルックに日本人らしい名前……もしかして、コジローさんの故郷は日本と似た文化が根づいているのだろうか。だとしたら日本食についてなにか知っているかも。
私が転生したことは、シルバ達従魔しか知らない秘密なので、バレない程度に聞き出そうと心に決める。
「そろそろギルドに行くか?」
朝食を食べ終えるとベイカーさんが声をかけてきた。
「はーい」と返事をして出かける用意をする。といっても身ひとつだけだが。
私がシルバの背に乗ると、シンクが肩にとまった。
これで準備完了! いざ出発!
私達は意気揚々と玄関の扉を出たのだった。
「ミヅキ、依頼はどうする? コジローについてきてもらうか?」
ギルドに着き、依頼を受けようとすると、早速ベイカーさんの過保護が発動した。
初めての依頼だが、コジローさんだって自分の仕事があるだろうし、シルバもシンクもいる。私は丁重に断った。
それでも苦い顔をするベイカーさんに、危ない依頼は受けるつもりはないからと説得すると、
「じゃあ、この依頼にしろ」
渋々一枚の依頼書を指さした。
〈依頼書〉
ヤク草採取……五本一組を十束
シブキ草採取……五本一組を十束
「ヤク草とシブキ草……」
首を傾げながら、内容を読み上げた。すると、ベイカーさんがなぜかびっくりしてこちらを凝視する。
「ミヅキ……お前字も読めるのか?」
えっ……ああ、そういえば普通に読めた。見たことない文字だけどちゃんと理解できる。
「うん、読めるよ」
コクリと頷いてベイカーさんを見上げる。
彼がピシリと固まったと思ったら、今度はなんだか悶えている……しばらく様子を窺っていると、諦めたように「まぁ、ミヅキだしな」とボソッと呟いた。
この世界に来て、最初こそ舌足らずだったけど、今はレベルが上がったからなのか、従魔と契約したからなのか、かなりスムーズに話せるようになった。それと同時に、文字を読む能力も上がったのかもしれない。
「ミヅキ、冒険者はあんまり字を読んだり書いたりできないんだ。このことはなるべく人に言うなよ。まぁ、歳のわりにしっかりしてるし、シンクを助けたことで少し成長したみたいだしな。もしバレたらそう言って誤魔化せよ」
ベイカーさんは屈むと私の耳元に顔を寄せ、こっそり教えてくれる。
「はい」
黙ってますと小さく頷いておいた。
「ベイカーさんは読めるの?」
「B級以上の奴ならほとんど読める。じゃないとできない依頼が多いしな」
字が読めないとお仕事もできないのか! 大変だなぁ……
じゃあ、他の人はどうしているのだろうか。気になって尋ねたところ、読める人もたまにはいるけれど、普通は受付の人に聞いたりするのだそうだ。
いろいろ大変だし面倒だが、仕事をするのにそこまで問題はないとか。とはいえ、それなりに上のランクに行きたいならやはり読み書きは必須らしい。
ただ私ぐらいの歳で読めるとなると流石に目立つようで、なるべく読めない振りをしていたほうがいいとのこと。目立つのよくないしね。
「で、依頼に問題ないか?」
ベイカーさんが聞いてくるので、
「ヤク草は分かるんだけど、シブキ草が分かりません」
正直に分からないと首を横に振る。
「シブキ草は毒消し草の材料だ。匂いが少しするんだが……」
ベイカーさんはそこで一旦言葉を区切り、収納魔法で亜空間からシブキ草を取り出してくれた。
「これだな」
シブキ草を手渡される。
くんくんと嗅いでみると少し独特な匂いだった。多分鑑定で分かるかな。
大丈夫そうなのでこの依頼にすることにした。
というか、ベイカーさんがこれ以外は駄目だって言うし……
私が頷いたのを確認した後、彼は満足そうに微笑み、壁から依頼書を剥がした。そして、これを頼むと言って、受付嬢のフレイシアさんに渡す。
「ミヅキさん、初めての依頼ですね。頑張ってくださいね」
フレイシアさんが笑顔で声をかけてくれる。
他の冒険者の人達も、すれ違うたびに「頑張れ」と声をかけてくれた。本当に皆、優しい人達ばかりだ……
私は嬉しくなって、ピシッと手を上げて「頑張ります」と宣言した。
それからギルドの外へ出て、ベイカーさんとはそこで別れるつもりだった。
だが、ベイカーさんがくどくど注意事項を言ってくる……しかし、初めての依頼に浮かれている私は、右から左に聞き流していた。
シルバもシンクもいるし大丈夫でしょ!
最後にベイカーさんから「絶対、遠くまで行くなよ!」と念を押される。
まったく子供じゃないんだし、そんなに同じこと何度も言わなくてもいいのに……って私、今子供だった。
心配してくれるのは嬉しいが、もうちょい信用してくれてもいいんじゃない?
心配性のベイカーさんと別れて、シルバに乗って町の門まで行くと、門番のお兄さんに止められる。
「どこに行くんだい?」
そう声をかけてくれたので、依頼書を見せた。
「依頼で採取に行ってきます」
初めての依頼が嬉しくてつい堂々と見せると、くすくす笑われてしまった。
「頑張ってな。暗くなる前には戻るんだぞ」
お兄さんが優しく目を細めて、送り出してくれる。
私はバイバイと手を振り、シルバに頼んで森のほうへと進んでもらう。
以前コジローさんに講習を受けた辺りまで来て、鑑定をしながらヤク草とシブキ草を探した。しばらく一生懸命になってヤク草を探していると、突然シルバから声がかかった。
【ミヅキ! 魔物が出たぞ】
【えっ! 魔物?】
ハッとして顔を上げ、どこどこと周りを見るが見当たらない。
【あそこの草むらの陰に兎の魔物がいる】
シルバが鼻先で教えてくれる。
シルバが見るほうにじっと目を凝らす。その時、草むらが動き、兎の形をした気味の悪い獣が姿を現した。
【うわっ! どこが兎? 可愛くないね】
私が顔を顰めると、シルバが倒してもいいかと聞いてくる。
【うん! お願いしてもいい?】
頷く私を一瞥して、ちょっと離れていろと言いながらシルバは魔物に向かって一歩踏み出した。私は素直に従って、シンクと共に木の陰に隠れながら様子を見守る。
【風弾】
シルバが風魔法を放つと、兎の魔物は一瞬にして跡形もなく消え去った。魔物がいた場所にポッカリ穴が開いている。
「……」
あまりの衝撃に一瞬唖然としてしまう。しかし、すぐに我に返り、必要以上の攻撃をしたシルバを注意する。
【シルバ! なにしてるの、ちょっとやりすぎじゃない!】
【これでいい】
シルバはなぜか得意げになって、ふんっと鼻を鳴らす。
満足そうなシルバを見ていると、なんだか怒気が削がれてしまう。まぁ、楽しそうならいっか。
私はまたヤク草採取に戻った。
「ふー!」
そろそろいいかな?
その後、集中してひたすら集めたヤク草とシブキ草を束ね、収納魔法でしまっておく。
鑑定を使うと楽チンで、どんどん見つかり楽しかった!
ルンルンと機嫌よくシルバ達を見て、声をかける。
【シルバ、シンク。そろそろ帰ろっか~】
【……ああ、乗れミヅキ。ちょっと走って帰るからな】
【まだ暗くないし、急がなくてもいいよ?】
なぜか早く帰りたがるシルバを不思議に思い、別に走らなくてもいいと伝える。だが、シルバは駄目だと首を横に振った。
【いや、きっとベイカーが心配してるぞ。早く帰ってやろう】
ベイカーさんのことも思いやれるなんて、シルバは本当に優しくてできる子だなぁ! いい子には頭をなでなでだっ。
シルバを優しく撫でると、ちょっと機嫌が悪そうだったのが、すっかりご機嫌になった。ふさふさの尻尾が左右に揺れている。
【よし、行くぞ】
シルバの背に乗り、しっかりと掴まってから、よろしくと言おうとして口を開いたその時。
――ビュン!
「えっ?」
気が付くと、あっという間に門の前に着いていた。
【は、早いね……】
【ああ、たまには動かないとな】
そんなに運動してなかったのかな……。運動不足はよくないから、今度、全力で体を動かせるようにどこかへお出かけしよう。
門番のお兄さんも突然現れた私達に驚きながらも「おかえり、早かったね」と笑って声をかけてくれた。それに「ただいま」と照れながら答え、門を通りすぎる。
シルバ達とギルドに戻り、フレイシアさんに依頼書と採ってきたヤク草とシブキ草を出す。
「ちょっとお待ちください」
フレイシアさんがにっこり笑って、私の手から薬草を受け取り、奥のほうに下がっていく。
言われた通りに大人しく待っていると、ほどなくして彼女が戻ってきた。
「確認いたしました。確かに依頼通りです。こちら依頼報酬になります」
フレイシアさんはそう言って、銅貨六枚を差し出した。
わぁー! 異世界に来て初めてのお給料だ、なんか感動する。
私は「ありがとうございます」と笑みを浮かべながら伝え、両手でしっかりと受け取った。
銅貨六枚ってことは、日本だと六百円くらいの価値かな? まぁ、草を摘んだだけだもんね。それだけ貰えればいいほうかな!
そんなこんなで、私は初めて自分で稼いだお金にウキウキとするのだった。
一 厄介な客
ミヅキが依頼を受けていた時、その様子をずっと見ていた男がいた。
男はミヅキが一人で森に行くのを確認すると、仲間のもとに戻った。黒髪の男は一軒のボロ屋に入り鍵をかけた。
「どうだった?」
小屋の中には三人の男女がいた。その内一人の女――C級冒険者のビークワイが男に声をかける。
「今日依頼を受けて、先程森に向かいました」
「そう……じゃちょっと様子見がてら行ってみようかしら。あんた達、分かってるでしょうね」
男の言葉を受けて、ビークワイは意地の悪い笑みを浮かべる。そして、自分の背後に控える男達をジロリと睨んだ。
「「はい!」」
「……」
彼女の視線を受けて、背後の男達は大きく頷き、一斉に返事をした。その様子を、黒髪の男は複雑そうな面持ちで見つめる。
それからビークワイと男達四人は小屋を出て、森へと向かった。
――数時間後。
バタン!
慌てた様子でビークワイ達が小屋に戻ってきた。
「なんなの! あれ……」
彼女は冷や汗を流しながら、ブルブルと体を震わせる。
「あ、あの従魔。ずっと俺達を見てたぞ……気配も消して、あんなに離れていたのに……」
男達の顔にも同様に、嫌な汗が滴り落ちる。
「分かってて、風魔法であの兎の魔物を攻撃したのよ!」
「あんなのが側にいたらなにもできないぞ!」
「ちょっと、作戦を変えましょう。まずはあの従魔達を、あの目障りな子供から離さないと……」
「だがあれだけの速さだぞ、全然追いつけなかった……」
「分かってるわよ! 別にあの従魔に喧嘩を売るつもりはないわ! 要はあの子供がいなくなればいいんだから」
ビークワイは男達に怒鳴ったあと、忌々しげに爪を噛む。
「あれからベイカーさんも、私と約束していた依頼の期限を延ばすし……あの子供に振り回されてばっかりよ! あの子さえいなければベイカーさんはこっちを見てくれるはず……やっぱり、あの男に頼むしかないかしら」
彼女がそう呟くと、
「あいつとは縁を切るんじゃなかったのか」
男達が顔を顰めてビークワイを見つめる。
「これで最後よ。あの子を売って王都に帰ってもらえばいいでしょう?」
ビークワイはすっと目を細めると、ご機嫌に笑った。
◆
――トントントン。
ふいにノックの音が響き、部屋にいた副ギルドマスターのセバスが「どうぞ」と声をかける。すると、受付のフレイシアが気まずそうに扉から顔を覗かせた。
そしてわしの姿を認めると、おずおずと口を開く。
「ギルマス、下にお客様が……」
「誰だ?」
予定はなかったはずだと考えながら、返事をする。
「レオンハルト様かと……」
嫌な相手の名前を聞いてしまった。
わしは思わずはぁーと深いため息をつきながら、顔を手で覆う。
「まずいですね」
セバスも渋い顔をする。
「アルフノーヴァのせいか?」
「多分、そうでしょう」
わしが聞くと、セバスは首肯した。
「とりあえずアルフノーヴァを呼べ。それまでここで待っててもらおう」
フレイシアは頷いて、セバスの師であるアルフノーヴァを呼びに向かった。わしはセバスと共に足取り重く、レオンハルト様のもとへと向かった。
「遅ーい! いつまで待たせるんだ!」
受付まで下りると、碧眼、金髪の見目のいい男の子が仁王立ちになってわしを待ち構えていた。その両隣には獣人の双子が佇んでいる。彼はわしを見るなり大声で喚く。
「お待たせいたしました。レオンハルト様、こちらにどうぞ」
とりあえずここではまずいので、わしの部屋へと案内する。
部屋に着くなり、レオンハルト様はドカッとソファーに座り込む。そして、わしに生意気な視線を寄越した。
「久しぶりだな、ディムロス」
孫ほど歳の離れた子供に上から挨拶をされる。
「お久しぶりです、レオンハルト様。今日はどのようなご用件で、このような田舎のギルドにおいでくださったのですか?」
「いや、大した用はないが、師匠が来ていると聞いて、弟子としてついて行こうと思ってな! 久しぶりだし、お前にも挨拶をしておこうとこうして来てやった訳だ」
嫌味っぽく聞いたのだが、まったく効いてない。しかも余計な気遣いを……ならば、こう言えば流石に怯むか?
「お父上様は、知ってるんですか?」
「あ、いや、まぁな」
歯切れが悪い答えが返ってきた。これは内緒で来たなと思い歯噛みする。
この図々しい子供はレオンハルト様、このウエスト国の王子だ。確か歳は十二歳、見目麗しい顔立ちに加え、王子と言う立場から我儘放題に育てられた。
「それよりも、さっきギルドの連中が話していたハンバーグとやらを食べてみたい! なにやら新しくできた料理で大層美味いと聞いたぞ!」
レオンハルト様は前のめりになりながら興奮している。なるほどこれが目当てか……
ならさっさと食べさせて、アルフノーヴァと一緒にとっとと王都に帰ってもらおう。隣にいたセバスも同じように思ったようで、うんうんと頷いていた。
「なるほど、ハンバーグですね。店だと混んでおりますのでこちらに運ばせましょう」
下手に出歩かれては面倒だからな。だが、そんなこちらの気持ちも知らず、構うなと断られる。
「今回は師匠の弟子として来た。普通の貴族として扱えばいいぞ、名前もレオンと呼べ」
普通の貴族の子供はギルマスを呼び捨てにはしないものだが……なんと面倒くさい。
「町も勝手に見て回るから問題ない、構わなくていいからな」
レオンハルト様は、気楽そうに笑っている。
そんなことできるか! 生意気なガキでも一応この国の王子、なにかあればこの町の問題となる。まったく……頭が痛くなる。
「警備も要らんぞ。こいつらがいるからな」
そう言ってレオンハルト様は、先程から微動だにせず後ろに佇む獣人の双子を指さす。それから、じゃあ行くかと席を立とうとするので、わしは慌てて止めた。
せめてアルフノーヴァが来るまでは引き留めたい。
「もうすぐ、アルフノーヴァが来ますのでそれまではお待ちください!」
「いや、師匠に迷惑をかける訳にいかない。後で自分から挨拶に行くから、黙っていてくれ」
そう言うなり、獣人達を連れてギルドを出て行ってしまった。本当に挨拶するためだけに来たようだ……
「どうしましょう」
セバスがわずらわしそうに眉を顰めた。
「ほっとこうぜ」
もう面倒くさい、いっそ知らなかったことにしたいくらいだ……
「そういう訳にはいきません。仮にも王子ですよ。なにかあればこの町の責任になります」
考えたくなかったことを突きつけられる。
「はぁー」
わしは盛大なため息をついた。
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