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11章

673.忘れ物

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「ミヅキ……お前、もしかして…」

ベイカーさんがじっと伺うようにこちらを見つめているのでニコッと笑いかけた。

「ベイカーさん……心配かけてごめんね」

「えっ!?ま、まじか!?記憶がもう戻ったのか?」

喜んだのもつかの間…疑うように眉をひそめた。

「何その顔…」

ムッと頬を膨らませると…

「どうした?」

ディムロスじいちゃんも心配して駆けつけてきた。

それをいい事にベイカーさんがじいちゃんを引き寄せると…

「この強面のジジイは誰だ!?」

「ベイカーさん…ディムロスじいちゃんでしょ…」

私が何を当たり前の事をと呆れて答えると

「いや…これはさっき紹介したからあてにならんな…」

私の答えに考え込んだ。

【こいつは何を考えてるんだ?】

シルバも呆れている。

【もう傷つきたくないから確かな確証が欲しいのかもな…まぁ気持ちはわかる】

プルシアが苦笑している。

「ミヅキ!こいつは!?」

今度はコジローさんを連れてきた…コジローさんもシルバ達の様な悲しそうな顔を見せている。

「コジローさん心配お掛けしました!もう大丈夫ですよ」

「え!ミヅキ…本当に戻ったのか?」

【お前まで疑うのか?】

シルバがコジローに話しかけた。

【シ、シルバさん!ミヅキ…本当に治ったんですか!記憶も…俺の事も?】

【ああ、大丈夫だ】

シルバがコクリと頷くと…

ガクッ!

コジローさんが膝から崩れ落ちた。

「よかった…」

心の底から安心した様に声を絞り出す。

ええ!そんなに…

コジローさんの喜び方に若干引いてしまう。

「いや…わからんぞ!ミヅキなら戻った振りぐらい出来る子だからな…」

それでもベイカーさんが疑いの目を向ける。

「おいおい!一体何を騒いでる」

そんな騒ぎにレオンハルト王子がニコニコと笑いながらこちらに向かってきた。

なんだろ?なんかすごい機嫌が良さそう

首を傾げていると…

「やぁミヅキ!気分はどうだ?大丈夫なら向こうでお茶なんてどうだろう?友達同士いいだろ?」

レオンハルト王子が笑ってお茶に誘ってきた。

「はっ?」

なんの冗談だと顔をしかめる。

「なんでレオンハルト王子とお茶を?」

「え?あれ?なんかその顔…いつも通りに…」

レオンハルト王子が私の顔をまじまじと見つめる。

「もしかして…」

声をかけようとすると…

「みなさーん!」

ハミルさんが手を振りながらこちらにかけてきた。

はぁはぁと息を切らして立ち止まると呼吸を整えてみんなを見回す。

「今、ギルドに報告しておきました…冒険者の女の子が記憶喪失だと…そのうちに返事が来ると思いますが…」

「「何!?」」

ベイカーさんとディムロスじいちゃんが同時に叫んだ!

「な、なんで知らせたんだ!まだなんにも詳しい事がわかってないのに!?」

「そ、そうだぞ!ギルド…どのギルドに知らせたんじゃ!本部か?本部だよな!」

すごい剣幕でハミルさんに詰め寄ると

「えっ…そ、そりゃ本部とディムロスギルマスのギルドですけど…ミヅキさんはそこで登録したんですよね?」

ハミルさんが怪訝そうに慌てるディムロスとベイカーを見つめた。

「なんてこった!」

「やばい、やばい、やばい…セバスさんに知られる…」

「えー!」

ベイカーさんとディムロスじいちゃんが顔を真っ青にした。

私もまずいと声をあげる。

「何か報告したらまずかったですか?」

ハミルさんが弱々しく伺うと…

「まずいに決まってるだろ!どうする…どうする?ギルマス!なんか考えろよ」

ベイカーさんがじいちゃんに叫ぶと

「ハミル!知らせは何で伝えた!?」

「は、はい。いつもの様に伝書鳥で…」

「じいちゃん!ベイカーさん!それならプルシアで追いつくんじゃない!?」

私が慌てて提案すると

「そうじゃな!それなら途中で回収できるかもしれん!」

「それしかねぇな…ってミヅキ…お前やっぱり戻ってるのか!」

「さっきからそう言ってるじゃん!それよりも今は知らせの回収だよ!絶対に怒られる~」

セバスが怒る姿を想像して私は右往左往して頭を抱えた。

「今すぐ発つぞ!」

ベイカーさんの言葉に我に返る!

「うん!シルバ!みんな!準備して!」

【おいおい、なんだか慌ただしいなぁ】

プルシアが笑いながら元の大きさに戻った。

私は急いで籠を取り出すと

「コジローさん!じいちゃん!乗って!」

【みんなも早く!】

私も急いでみんなの後に続き籠に乗り込んだ!

「え?なんだ?ミヅキ帰るのか?」

慌ただしく支度をする私達にロバートさん達獣人が唖然としている。

「うん!ロバートさんお世話になりました!私達帰るね!」

私は戸惑う顔をしている獣人達に笑顔で手を振った!

「なにー!ミヅキなら俺達も!」

レオンハルト王子が一緒に行こうとすると

「王都には寄りませんよ!」

待てと手を出してレオンハルト王子を止めた。

「な、なんだよ…ちょっと寄ってくれてもいいじゃないか…」

「駄目です!セバスさんに手紙が渡っちゃいますからね!もし来るって言うなら王都で上から捨てます」

「す、捨てる…」

「はい!」

「いいんじゃないかい?飛び降りればいいんだろ?」

話を聞いてたアルフノーヴァさんがにっこり笑っている。

「「「えっ!」」」

そんなアルフノーヴァさんをレオンハルト王子とシリウスさん達が凝視した。

「ほら!決めて!早くしないともう出るよ!」

みんなが乗り込んだのを確認して私は四人に声をかけた。

「う、うぅぅ~…」

レオンハルト王子は唸なりながら悩んでいたが覚悟を決めたようにガバッと顔を上げた!

「行くぞ!」

そう言って私の方に駆け出してきた、その様子に思わず笑みがこぼれる。

「「は、はい!」」

走り出したレオンハルト王子に続いてシリウスさん達が慌てて駆け出した!

「ふふふ…またプルシアさんに乗れますねぇ…」

アルフノーヴァさんがニコニコ笑いながら慌てる様子もなく歩いてきた。

乗り込む四人を見てみんな乗ったことを確認すると…

「あれ?なんか…忘れているような…」

なんだか胸の奥に引っかかるものに首を傾げた。






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