58 / 675
4巻
4-1
しおりを挟むプロローグ
私、ミヅキは前世で事故に遭い、命を落とした。
気がつくと幼子に転生してこの世界で一人さまよっていたのだ。そこで私はミヅキと名乗り、前世の時に飼っていた愛犬の銀にそっくりなフェンリルのシルバと、可愛い鳳凰のシンクに出会う。
私はシルバとシンクと従魔の契約をして意思疎通が出来るようになった。
町では過保護なベイカーさんや怒らせると怖いセバスさん達に助けられ、トラブルに巻き込まれながらも楽しい生活を送っている。
そんなある日、お世話になってる食堂の女将リリアンさんに頼まれて、王都でお店を開く手伝いをする事になったけど……案の定トラブルに巻き込まれて誘拐されてしまった。
しかし、以前に出会った元奴隷商人のデボットさんやベイカーさん、シルバ達に気がついたら助けられた。
そしてとうとう私は、王都でレオンハルト様と再会した。
神様、せっかく来たこの世界……もう少し、ほっといて下さい……
一 日常
久しぶりの再会に私と話をしたそうなレオンハルト様。
私の誘拐の件でお仕事があるらしく、側近のユリウスさんとシリウスさん達に挟まれ、デボットさんを連れてゼブロフ商会に向かっていった。ゼブロフ商会と親密な関係にある誘拐事件の関係者、ビルゲートの事も話しておいたので見つけてくれる事を期待する。
残念そうなレオンハルト様達を見送ると、私達は一度落ち着こうとマルコさんの屋敷に戻る事にした。コジローさんがドラゴン亭に寄って私達の事を伝えておいてくれるらしい。そしてそのまま一度ギルドに戻ってライアンの取り調べを行うそうだ。
「ミヅキさん!」
「ミヅキ!」
マルコさんやエリー、屋敷の皆が心配した顔で出迎えてくれた。
「ご無事でよかった……」
マリーさんは私の姿を確認すると目に涙をためて喜んでくれている。エリーも泣くほど心配してくれたのか目が赤く腫れていた。
「ご心配おかけしました。皆さんが街中捜し回ってくれたとお聞きしました。本当にありがとうございます」
安心させるために笑顔でお礼を言うと、屋敷の人達もやっと人心地がついたように安堵の表情を見せた。
「ドラゴン亭に来ていた貴族の方々もお力を貸して下さいました。これもミヅキさんの人柄のおかげですよ」
マルコさんの言葉に皆も同意するように頷く。
「もう無事だって事は、捜してくれてる皆には伝わったんですかね?」
これ以上騒がせても悪いし……恐る恐る聞く。
「ええ。ジルさんが皆に伝えて瞬く間に広がっていきましたので大丈夫ですよ」
ジルさん! ありがとう~。今度お店に来たらコロッケを奢ろう!
「あっ、そうだ! 今回迷惑をかけた人達に何かお礼をしたいんだけど……いいかな?」
シルバ達とベイカーさんをうかがうように上目遣いで見ると、好きにしろと苦笑される。
「ミヅキ、何か作るなら手伝うぞ!」
コジローさんから話を聞いて屋敷に急いで戻ってきたルンバさん達が、ちょうど私達の話が聞こえたようで声をかけてきた。
「俺にも出来る事があるなら手伝うよ!」
ポルクスさんも笑っている。二人がいれば心強い! よーし! 何作ろうかなぁ……
美味しい物を作って皆が喜ぶ顔が目に浮かぶ!
ドラゴン亭は申し訳ないけどあんな騒ぎがあったので臨時休業にして三日後にお世話になった皆を招待する事にした。ルンバさんとポルクスさんと何を作ろうかと話し合う。
準備を進めている最中、ゼブロフ商会に行ったシリウスさん達から連絡があり、王宮に行き誘拐された経緯を詳しく話す事に。ちなみにビルゲートの行方は分かっておらず、まだ捜索が行われているが、どうも王都は出ていってしまったらしく捕まえるのは難しそうだ。
私はシルバ、シンク、ベイカーさんと王宮に向かう。
もうどこに行くにもこの三人がピッタリと離れなくなってしまっていた……
まぁしょうがないよね……
話は通ってるらしく王宮の門もスムーズに通って、レオンハルト様とユリウスさん、シリウスさんの待つ部屋へと案内された。案内された部屋に行くと扉の前に兵士が立っていて扉を開けてくれる。お礼を言って中に入ると、三人が待っていた。
「この度は御足労いただきありがとうございます」
ユリウスさんがそう言って席へと促す。私は頷いて中央の椅子に座り、膝にシンクが、横にベイカーさんとシルバが当然のように座った。
「凄いガードだな……」
今なら誰もミヅキに手を出せなそうだとレオンハルト様も唖然としている。
王子よりも手厚い警護ってどうなんだ?
「それでどうなりました?」
ベイカーさんが尋ねるとレオンハルト様が頷き話し出した。
「ゼブロフ商会とブスターの屋敷の地下からは色々とやばい物が見つかった。まずは奴隷達だ、表にいたのは全て子供で大人になるとどこかに連れて行かれていたようだ……」
ユリウスさんが顔を歪めると、続きを話す。
「ブスターは屋敷の地下で違法な実験を繰り返していたようです……ミヅキが捕まっていた更に奥の部屋から人骨が見つかりました……そして保護した奴隷達も体の一部分が欠損している子も……本当に胸糞悪い屋敷だ」
嫌悪感を露わにする。
私はオイの事を思い出す。オイのツギハギだらけの体……奴隷達の体を使っていたのかもしれない。オイも奴隷達もあのブスターの犠牲者だ。
「奴隷達は一度保護したが、また奴隷として売り出される事になると思います」
「えっ……? だって、そんな酷い扱いを受けていたのにまた奴隷になるの?」
「そうですが……奴隷である以上しょうがないのです。彼らは自分の値段を稼いで自分で自分を買う以外、奴隷から抜けられないのですから……」
「デボットさんは?」
「彼は犯罪奴隷です。決められた刑期を奴隷として過ごさなければなりません!」
シリウスさんが語尾を強くする。デボットさんへのあたりが皆強い……
「彼らは買い取った主人がいなくなったので、再び買われるまでそのままです。しかし体が不自由な彼らが買い取られる事はあまりないかも知れません」
確かデボットさんは買い取られずに残されて、そのまま奴隷商人になったと言っていた。
その子達もそうなってしまうのだろうか……何それ……酷すぎる。
「買い取られないとどうなるの?」
「そのままそこで働く道もありますが、傷が酷い者はそこから病気になったりして……」
ユリウスさんも言いながら複雑そうな顔をする。全てを助ける訳にはいかないのだろう……
「ゼブロフ商会は取り潰しとなりました。従業員達には事情を知らない者もいたようなので、これから詳しく事情を聞いて各々処分を言い渡していきます。深く関わっていた側近達は皆犯罪奴隷落ちですね」
私は複雑な気持ちになる……なんか、誰も幸せになれない終わり方なんてやるせない。
「それで? 当のブスターが死体も何も見つかっていないんだか?」
レオンハルト様が私を見てくるので、捕まってからの経緯を話した。
バーン‼
ベイカーさんとシリウスさんが私の話を聞くなり机を思いっきり叩いた。
びっくりした……私は思わず竦んでしまう。
「ミヅキ……その話は聞いてないぞ。馬乗りになって叩かれたって?」
ベイカーさんが殺気を放って私の方を見る。周りの空気がピリつくのが分かった。
「だ、だって……聞かれてないし、今でもアイツの顔を思い出すと震える。でもここで怖がって閉じこもって泣いたりなんかしたらアイツに負けた気がする! そんなの助けてくれたオイの為にもしちゃいけないと思うんだもん」
ベイカーさんの目を見てしっかり答えると殺気が緩んだ……思わずホッとして息を吐いた。
「で? そのクソ野郎の死体はどうしたんだ? そのオイって子供が真っ二つにしたんだろ? そんな死体どこにもなかったぞ」
「それは……」
シルバを見ると、言えばいいと頷かれる。
「シルバが闇魔法で消滅させちゃった」
はは……笑って誤魔化してみるが、皆の顔が引き攣っているのが分かった。
「闇魔法だと……使える奴に会うのは二人目だ。まぁフェンリルだから当然なのか?」
えっ? そんなに珍しい魔法なの? ていうか二人目って事は……
「もう一人って誰ですか?」
「ミヅキも会っただろ。アルフノーヴァだ」
ああ、納得。アルフノーヴァさんはセバスさんの師匠のエルフで何百年と生きているらしい。レオンハルト様の教育係で、この国の重役でもある人だ。
「相変わらずデタラメな従魔だな……」
そう言われるが……私にとってシルバは頼りになる優しいモフモフの家族なんだけどな。
「まぁ、ブスターが生きていたとしても死ぬまで奴隷でしょうね。自業自得の因果応報、問題ないのでは?」
ユリウスさんがそう言うと皆が頷いた。
「あとは……その魔石を使った人体実験ですね……今の所その事を話してる関係者はいませんでしたがもう少ししっかりと聞いてみましょう」
「ビルゲートが何か知ってるかもしれんが、全然足取りが掴めない。人当たりもよく、そんなに悪い噂もなかったがブスターと関わりがあった以上無実とは思えんな」
ユリウスさんとシリウスさんが渋い顔をする。
「じゃあ、デボットさんとビルゲートの契約は無効になるの?」
私は期待を込めて聞いてみる。
「こんだけ騒ぎが大きくなっているのに出てこないところを見るとやましい事があるんだろう……契約は無効だな」
その言葉を聞いてホッとする。よかった、あの人の所にはデボットさんはいちゃいけない気がしてたから。一つ心配事がなくなった。
「デボットさんもまた他の奴隷と一緒に売られちゃうの?」
「そうなりますね、ブスターの奴隷達と共に市場に出します」
市場に出す……そう聞いていい考えが浮かび、キランと目を輝かせた。
「その市場って私も行ってもいいんですか?」
私の問いに皆が怪訝な顔をする。
「ミヅキ何を考えてる?」
ベイカーさんがジロッと睨みつけて来るがふいっと顔を逸らした。
「べ、別に……デボットさんがどうなってるか見に行きたいなって思っ……」
「駄目だ!」
食い気味に言われた!
「お前の考えそうな事だが許さんぞ!」
まだ何も言ってないのに~! 私はプーッと頬を膨らませる。
「アイツはお前を誘拐したんだぞ! そんな奴を側に置くなんて俺は認めない」
ベイカーさんの言葉を聞いて皆も反応してきた。
「ミヅキ……もしかしてあの奴隷買うつもりか?」
シリウスさんの心配する顔に「駄目かな?」と笑ってみせた。皆の心配する顔を見ると申し訳なく思うが、地下で会ったデボットさんはそんな事をする人には見えなかった。
「奴隷って主人に逆らえないんでしょ? どういう原理か知らないけど」
「確かに魔法で契約して縛るから逆らえないな……そう考えると手元に置いとくのも悪くないのか?」
レオンハルト様の発言を受けて皆が一斉に王子を睨む。問題はアイツが私の側にいる事なのだとベイカーさんが怒っている。
「デボットさんにはやって欲しい事があるんだよね~!」
ニコッと笑うとベイカーさんがため息をついた。きっと私の顔を見て何を言っても無駄だと気がついたのだろう。
◆
「いいか! 絶対に! 側を! 離れるなよ!」
ベイカーさんからこの言葉を朝から何回聞いた事か……
もしかして振り? これは離れろって振りなのか? 私がベイカーさんのボケに乗るべきか真面目に悩んでいるとヒョイッと抱き上げられてシルバの背に乗せられる。
「ここから降りるなよ! まだビルゲートも見つかっていないんだから!」
【そうだ、ミヅキずっと乗っていていいんだぞ】
「はーい!」
私はシルバの背に乗ってご機嫌になる。
モフモフのシルバの背中!
ここならずっといてもいいや!
さすがにレオンハルト様やシリウスさんやユリウスさんは市場には来られないのでベイカーさんとシルバ、シンク、あと……
「ここからは少し治安も悪いですから気をつけて下さいね」
マルコさんが私達の会話に苦笑いを浮かべる。
「そうですよ、ミヅキ様。ちゃんと皆様の言う事を聞いて下さい!」
マリーさんにまで言われてしまうなんて……
私達だけだと市場の事はよく分からないので、商人でありこの王都にも詳しいマルコさんがついてきてくれる事になった。その護衛件お世話係のマリーさんも一緒に!
皆で歩いて行くといかがわしげなお店が増えてきた……何が材料なのか分からないような瓶詰めに、見た事もない生物の干物、なんのお店かも分からない。
キョロキョロと周りを見ながらシルバにしっかり掴まっている。
「あーははは! 子どーもだー! いぬだー! いぬつれてるーははは!」
大声で喚く男が私とシルバを指しながら大笑いしていた。その男の焦点は合っておらずどこか空を見ているようだった。
【あのおじさん、どうしたんだろ?】
【別に変な感じはしないが、うるさい奴だな】
シルバが言うには敵意も嫌悪も向けてはいないらしい……ただただ思った事を口に出しているようだった。怪訝に思い見ていると、男がいる店の主人らしきおじいちゃんが出てきた。
「あー、お嬢ちゃんすまないね。息子……こいつは娘を亡くしてから不安症になっちまってね」
おじいちゃんが寂しそうに話した。この男の人はおじいちゃんの息子さんのようだ。
「娘が病にかかっちまってその治療の為に借金までしたんだが、結局娘は死んじまってこいつも奴隷落ちしちまったんだよ」
ははは! 男は悲しむおじいちゃんの横で構わずに笑っている。
「普段は大人しく物を運ぶくらいは出来るんだが……お嬢ちゃんくらいの子供を見ると騒ぎ出しちまうんだ。嫌な思いさせて悪かったな、決して手を出したりはしないから気にせず通ってくれ」
そう言ってお店の中に戻って行った。私はシルバに頼んで男の人に少し寄ってもらう。
「おじさん、娘さんの為にもしっかりしなきゃ。お父さんがそんなんじゃ安心して娘さんが眠れないよ」
そう言うと男の頭をそっと撫でた。
「おじさんは頑張ったよ。だからもう自分を許してもいいんだよ」
そう言って笑いかけると、バイバイと手を振ってベイカーさん達の後を追った。
◆
「ファング、この荷物外に運べるか?」
お店のおじいさんが息子に声をかけた。
しかし反応がない。不審に思い近づくと男は壁にもたれて眠っていた。
「おい! ファング起きろ!」
全くこんな所で寝やがって、そう思い揺すり起こすとゆっくりと目を開いた。
「お、親父……?」
男は目を覚ますと目の前のおじいさんに声をかけた……その目は正気を取り戻している。
「お……前、俺が分かるのか?」
おじいさんが驚き震える声で聞き返す。
「俺は……ミミ……」
ファングは頭を抱えて目を閉じた。そして思わず娘の名前を口にする。何故急に正気に戻ったのか分からなかったが、また娘の事を思い出させてもよくないと思いおじいさんは黙っていた。
「親父……俺が不甲斐ないばかりにミミが泣いてたよ」
やはりまだミミが生きてると勘違いしているのか……おじいさんはなんと言ってやればいいのかと戸惑ってしまった。しかし男は泣きながら笑っていた。
「俺はミミの為にもちゃんと生きなきゃな、じゃなきゃミミが安心出来ないんだ」
「お前……ミミの事、覚えているのか?」
「娘の事を忘れるものか、一回は逃げちまったけど、もう目を背けねぇ……」
そう言うが涙が止まらない。
「だから…今だけ少し泣かせてくれ……ミミ……」
男は静かに涙を流した……
◆
「ミヅキ、あんまり知らない人に話しかけるなよ!」
ベイカーさんはあっちこっちに意識が向く私にハラハラしている。
だって市場は見た事もないものが沢山で気になって仕方ない。シルバは危険がないと判断すると私の言う通りに動いてくれるので、あっちにフラフラこっちにフラフラしてしまう。
「ミヅキ! アイツを買いに行くんだろが、とりあえずそこに集中しろ!」
ベイカーさんに目的を思い出させられた。
「そうだね! ベイカーさんもシルバも急いで! 急いで!」
私はシルバに急ぐようにお願いして、ベイカーさんに早く早くと手招きする。呆れるベイカーさん達を連れて目的の奴隷商にようやく到着する。そこには鉄の柵に入れられている奴隷達がいた……その中の一人の男が私と目が合うと叫び出した。
「お前……お前のせいで! お前さえいなければ!」
他の者はチラッと私達を見ると、生気のない目で下を向く。
「お前がブスター様に逆らったりするから、俺達はこんな場所に入れられちまった! どうしてくれるんだ!」
男は血走った瞳で柵に掴みかかりながら叫び続けている……大人の男に急に怒鳴られ、私は思わずビクッと身がすくみシルバの毛をギュッと握りしめた。
自分のした事で不幸になった人がいる……その事実を目の当たりにして何も言えなくなってしまった。
するとベイカーさんが私を庇うように前に出て男を睨みつけた。
「ふざけるな! 自分のしでかした事を棚に上げて人のせいにするな」
【ミヅキ……降りろ。あのメイドの側にいるんだ】
シルバに言われ私はマリーさんの側に行った。マリーさんも男の言葉に血管を浮かしていたが、私が側に行くとニコッと笑い抱き上げてくれる。
「あんな馬鹿な人の言う事など聞かなくていいんですよ」
そう言うと私を優しく抱きしめて、大きな胸に顔を押し付けられた。
シルバは私がマリーさんに抱っこされるのを確認するとベイカーさんの隣に並んだようだ。
「自分の罪を子供に押し付けるなよ……」
ベイカーさんの怒気を孕んだ声が聞こえてきた。隣ではシルバも一緒に唸り声をあげている。
「な、なんだよ、俺に勝手に手を出す事なんて出来ないぞ! しかもこの忌まわしい檻の中だ、傷つける事も出来ないだろ!」
ベイカーさん達が手を出せないのをいい事に男の態度が大きくなった。
「ふん! 俺はもう今は奴隷だ! 人の物になっちまったんだよ。だから俺を傷つける事は犯罪だ」
【何が犯罪だ、そんなもの知るか!】
シルバが牙を剥き出し唸っている。
「ヒィ! そ、そんなバカでかい獣だってこの檻を通れまい!」
シルバの唸りに男は震え上がっている。だが檻の中にいるからか安全だと思っているみたいだ。
騒ぎを聞きつけ奴隷商人が奥から出てきた。ベイカーさん達が奴隷と揉めているのを見つけると駆け寄ろうとするが、マルコさんがそれを止めた。
「あっ! マルコ様いつもありがとうございます」
「すみません、この方達は私の連れなんですよ」
マルコさんはベイカーさんとシルバを見つめる。
「中の奴隷が彼らの大切な人を傷つけましてね……少しお仕置きをしても大丈夫ですか?」
マルコさんがニッコリと笑って奴隷商人に尋ねた。
「す、すみません! あの奴隷まだ自分の立場がよく分かってないらしく……死ななければ何しても大丈夫ですから!」
奴隷商人は青い顔をしてどうぞどうぞと手を差し出した。マルコさんは満足そうに頷くと頭を軽く下げて、ベイカーさん達の元へ向かい何か耳打ちする。
そしてマリーさんと私の方にやって来た。
「ミヅキさん、あんな奴隷の言う戯言など気にしなくていいんですよ。あんな汚い言葉をあなたが聞く必要はありません。しばらく耳を塞いでおいた方がいいですよ」
ニッコリ笑うとマリーさんに目配せをした。
マリーさんは頷くと私の顔を見つめてゆっくりと耳を塞いだ。
えっ?
気がつけばあっという間にガッチリホールドされてしまう……でもマリーさんの柔らかい胸が気持ちいい。私は心地いい弾力にウットリしてしまった。
◆
俺はミヅキがこっちを見てない隙にシルバに声をかける。
「シルバ、死なない程度に教えてやっていいぞ」
今にも襲い掛かりそうなシルバにボソッとつぶやく。
「な、なんだ!」
檻の柵の間隔からシルバが入れないのは分かっているのだろうが……あまりの迫力に限界まで男は下がった。シルバが檻に前脚をかけた瞬間グニャッと粘土のようによじれる。
今起きた事が信じられないようで男が言葉を失っていると、シルバは男の周りの檻を次々に曲げていく……
「う、うわぁぁ!」
男はシルバを避けるように檻の中を動く。
それに対してシルバは追い詰めるように檻を狭めていった。
「や、やめろ! やめてくれ!」
男はシルバが曲げた檻に挟まれ身動き取れなくなった。シルバは更に脚を乗せて、格子ごとグッグッと押し付ける。
【このまま潰してやろうか】
シルバが唸ると、パタッと男は気を失い檻の中で倒れ込んだ。
【チッ、軟弱だな】
パシャ! 水魔法で顔に水をぶちまけると男の意識がすぐに戻る。
「何寝てんだ?」
「た、助けてくれ!」
男は格子の間から手を伸ばして俺の足にしがみつこうとする。
「そこにいれば安心なんだろ? 誰もお前を傷つけられないんじゃないのか? そこから出ていいのかよ、今度はそのままぺちゃんこにされるぞ」
突き放すように言うと男の手を蹴り飛ばした。
「そ、それは……」
476
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~
土偶の友
ファンタジー
サクヤは目が覚めると森の中にいた。
しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。
虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。
歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。
それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。
9/28~10/6 までHOTランキング1位!
5/22に2巻が発売します!
それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。
異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)
なかじまあゆこ
ファンタジー
可愛いもふもふ達とアリナは異世界でスローライフをします。
異世界召喚された安莉奈は幼女の姿になっていた。神様に与えられた能力を使い眷属聖獣猫モフにゃーや魔獣のライオン魔獣鳥に魔獣の日焼けとお料理を創造します!
熊元安莉奈(くまもとありな)は黄色のバスに乗せられ異世界召喚された。 そして、なぜだか幼女の姿になっていた。しかも、日本の地球人だったことを忘れていたのだ。 優しいモリーナ夫妻に養子として引き取れた安莉奈はアリナになった。 モリーナ夫妻はカフェ食堂を経営していたが繁盛しておらず貧乏だった。料理が出来ないアリナはお皿洗いなどのお手伝いを小さな体ながらしていたのだけど。 神様から日本料理を創造する力が与えられていた! その力を使うと。
地球では辛い生活を送っていた安莉奈が異世界ではアリナとしてお父さんに激愛され幸せに生きている。
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
幼子は最強のテイマーだと気付いていません!
akechi
ファンタジー
彼女はユリア、三歳。
森の奥深くに佇む一軒の家で三人家族が住んでいました。ユリアの楽しみは森の動物達と遊ぶこと。
だが其がそもそも規格外だった。
この森は冒険者も決して入らない古(いにしえ)の森と呼ばれている。そしてユリアが可愛い動物と呼ぶのはSS級のとんでもない魔物達だった。
「みんなーあしょぼー!」
これは幼女が繰り広げるドタバタで規格外な日常生活である。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
【5/22 書籍1巻発売中!】
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

