ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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5巻

5-1

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  プロローグ


 私、ミヅキは前世で事故に遭い、命を落とした。
 ……そして気がつくと幼女の体に転生してこの世界をさまよっていたのだ。
 そんな私を主人と認め、従魔になってくれたフェンリルのシルバ。命を助けたことをきっかけに、これまた従魔になってくれた鳳凰ほうおうの子供のシンク。
 可愛い彼らと一緒にこの世界をのんびりと楽しもうと思っていたら、多くの人に出会うことになった。身寄りのない私の親代わりとなってくれた冒険者のベイカーさんや、私を誘拐して捕まり、罪を償って従者になったデボットさん。
 私はこの世界で、優しく厳しいみんなと楽しく過ごしていた。
 そんなある日、前世の記憶をもとにハンバーグを作ったら、たちまち人気になり王都に呼ばれることに。目立たず大人しく暮らしていきたいという気持ちとは真逆に注目を集めてしまったのだ。
 王都では、ハンバーグを作ったドラゴン亭のお手伝いとして、店主のルンバさんと女将さんのリリアンさんと働いていた。そこでも事件に巻き込まれ……誘拐されたり、ドラゴンが来たりと私の周りは大騒ぎ。
 しまいには、念願のお米を見つけて大興奮!
 早速お米を増やそうと田んぼをもらったはいいけど、人員が足りない。そこで、スラムの身寄りのない子どもたちを引き取ることに。人員を無事確保出来た私は、本格的にお米作りに乗り出すことにしたんだけど……でも、周りはそんな私をほっといてくれない。
 私、もっと静かに暮らしたいんだけど……神様、もう少しだけほっといて下さい!




  一 準備


 ルンルンルン♪
 私は朝から機嫌よくお米を炊いていた。マルコさんによると、今日中に宰相であるロレーヌ様とレアルさんが来て、私がもらう予定の土地まで案内してくれるそうだ。
 その前に、二人に渡すための試食用のお米を炊いておかねばとせっせと米を洗う。
 お米を持たせるならお弁当だよね! と勝手な偏見でお弁当を用意する事にした。

「おにぎり弁当といえば玉子焼きだよねー。あとは唐揚げとミートボールがいいかなぁ」

 お米が炊けるのを待つ間におかずの用意。材料を確認して何を作ろうかと考えていると、ダージルさん達料理人組がチラチラと私の手元を覗いていた。
 気にせずに料理を作っていると、ルンバさんが話しかけてくる。

「ミヅキ、さっきから何を作ってるんだ?」
「これは国王達に試食してもらう為のお弁当だよ。おにぎりと言えばお弁当だからね!」
「おべんとう……」

 聞きなれない言葉にルンバさんがお弁当箱を見つめる。

「この箱の中にご飯とおかずを詰めるんです」
「唐揚げと卵と肉団子か? これをおかずにおにぎりを食べるんだな」
「そうです、でもこれは玉子焼きで、これはミートボールって言うの」
「ミートボール? 肉団子でいいんじゃないか」

 まぁ同じ意味か……でもお弁当に入れると考えるとミートボールって言いたくなる。

「味見してみる? この玉子焼きは、砂糖と少しだけ塩が入ってるんだよ」

 一切れ持ってあーんとルンバさんに差し出すと、パクっと食いつく。

「おっ、甘いな、美味いもんだ!」
「はい、ミートボール! これはトマトベースのタレを絡めてあるの」

 またあーんと口に運んであげていると、その様子を見ていたダージルさんとキッシュさんが近づいてきた。

「ミヅキちゃん、俺達にも味見させてよ」
「いいですよ! この切れ端の方を食べてね、真ん中は国王のお弁当に入れる予定だから」

 私は玉子焼きを切って端の部分を二人に渡す。

「なんだ? あーんはルンバさんだけか?」

 キッシュさんが残念そうに言う。

「えっ、そんな事して欲しいの?」

 ダージルさんも頷くので、二人にもあーんで味見してもらった。

「この玉子焼きは形が面白いな、層になっているのか?」
「肉団子も濃いめの味付けでこれならコメに合いそうだな」

 二人共じっとおかずを見つめる。

「褒めてくれて嬉しいけどもう駄目だよ、あとはお弁当に入れるんだから」

 まだ食べたそうにする三人から玉子焼きを隠すと、さっさとお弁当箱に入れる。

「ミヅキちゃん、玉子焼きだけもう一度作る所を見せてよ」

 キッシュさんがお願いと両手を合わせる。
 ダージルさんとルンバさんも見たいというので、私は仕方なくフライパンを用意した。

「玉子焼きは、まず卵を割って混ぜるでしょ。またいっぱい食べそうだから……三個割るね。よく混ぜたら砂糖をスプーン二杯と塩を少々、そしてさらに混ぜます」

 カシャカシャカシャといい音で卵をかき混ぜる。

「フライパンに油をひきます。そしたらこの卵液らんえきを薄く広げて流しこみます」

 フライパンを器用にぐるっと動かし、卵液らんえきを満遍なく広げる。

卵液らんえきが固まってきたら端からクルクルって巻いていくの。そしてまた、フライパンの空いてる所に同じように卵液らんえきを流して巻くのを繰り返すと……」

 同じ作業を何度か繰り返して玉子焼きの形を整える。

「上手いもんだな!」
「ミヅキちゃんが使ってるその細い棒もいいね」

 キッシュさんが菜箸さいばしに注目する。

「これ、シルバと一緒に作ったの! 菜箸さいばしっていうんだよ。でもみんなには使いづらいと思うよ」

 日常的に箸を使う人ならともかく、この世界では流行らないだろうと苦笑いをする。

「ミヅキは器用に掴むな」

 ダージルさんも私の菜箸さいばし使いに関心している。
 玉子焼きを切り分けていると、匂いを嗅ぎつけてベイカーさんが姿を現した。

「なんかいい匂いがする……」

 はぁ、作ったそばから無くなりそうだ。もっと作っておけばよかったと後悔していると、いい考えが浮かんだ。

「あっ! ルンバさん達も作ってみれば!」
「いいな! 俺やりたい!」

 キッシュさんが手をあげた。

「私は見てるから作ってみて」

 キッシュさんは卵を割ると調味料を入れてササッと混ぜ、フライパンに液を流し入れる。

「ミヅキ、そのサイバシ貸してくれよ」

 私はいいよと菜箸さいばしを渡す。

「キッシュさん持ち方が違うよ~。二本を一緒に握るんじゃなくて、一本を親指と人差し指の間で固定してみて、それでもう一本はペンを持つみたいに動かすの」

 キッシュさんの手に添えて教えてあげる。

「なるほど、意外と難しいな」

 それでもさすが料理人、上手に卵を巻いていく。

「キッシュさん……上手!」

 初めてなのに私より綺麗な玉子焼きを作るキッシュさんを見つめる。

「なんか、私のよりも美味しそう」

 キッシュさんが味見してくれと言って、器用に箸を使って玉子焼きを私の口に運ぶ。

「あーん……ふむふむ、うん! ふわふわで美味しい~」

 ほっぺを押さえて味を噛みしめる。
 ベイカーさんとルンバさん達が玉子焼きを手で掴むとパクッと一口。

「あー! みんなはもう食べたでしょ。ポルクスさんとゴウ達の分を取っといてよ!」
「これもドラゴン亭で出してみるか?」

 ルンバさんが私の注意を聞き流し、玉子焼きをメニューに加えようかと悩んでいた。

「うーん、あんまりドラゴン亭のメニューっぽくないけどなぁー」
「ミヅキが考えた料理なら大丈夫だろ。みんな食べたがると思うぞ」
「もうみんな作れるよね? 判断はルンバさんに任せます!」

 わかったとルンバさんが頷くと、ダージルさんに相談しに行ってしまった。

「ミヅキ、こっちのも食っていいのか?」

 ベイカーさんが玉子焼きの隣にあったミートボールを見つめている。

「もう、一個だけだよ」

 新しい料理を作ると、こうやって直ぐに本筋から脱線するな……
 私は他の人が集まらないうちに急いでお弁当箱におかずを詰めていった。

「よし! 完成!」

 お弁当箱を一つずつ布で包みフォークを添える。残りのおかずはお皿に移しておいた。

「ミヅキ、ロレーヌ様が来たぞ」

 デボットさんが知らせて声をかけてきた。やっと来た!

「はーい!」

 私は急いでデボットさんの後を追う。
 ロレーヌ様達は店の奥の部屋で待っていた。トントントンと扉を叩く。

「失礼します」

 声をかけて部屋へと入ると、笑顔のロレーヌ様と無表情のレアルさんが立っていた。

「ミヅキさん、約束の物が用意出来たよ」

 待ってました!

「ロレーヌ様、急いで頂いたみたいでありがとうございます。なんか……お疲れですか?」

 少し顔色が悪いロレーヌ様を心配する。

「いや、ちょっと上の二人に仕事を押し付けられてね」

 こめかみがピクピクしている。どうやら怒っているようだが、表に出さないように笑っている。
 あの二人何したんだ?

「大丈夫ですか?」

 心配して顔を見上げると、ロレーヌ様はニコッと笑って頭を撫でてきた。

「ああ、癒されるなぁ」

 ロレーヌ様の表情が柔らかくなる。

「コホン!」

 私の頭を撫で続けるロレーヌ様に、デボットさんが咳払いをした。

「いや、つい和んでしまいました。ではまずはレアル!」

 ロレーヌ様に名前を呼ばれ、私の前へと促されたレアルさん。

「この度は寛大な対応をありがとうございました。これよりミヅキ様の元で働かせて頂くことを嬉しく思います」

 レアルさんはそう言って私に頭を下げた。皆がその様子を見ている中、私だけが怪訝けげんな顔をする。

「誰?」
「いや、レアルだろ? ミヅキが欲しいって言ったんじゃないか!」

 ベイカーさんがつっこんだ。

「違うの、レアルさんなんだけど、別人みたいで気持ち悪いからつい!」

 へへへと笑って誤魔化す。

「レアルさん、思ってもない事は口にしなくていいよ。私はありのままのレアルさんがいいんだから」

 頭を下げたまま動かなかったレアルさんが顔をあげる。なんだかびっくりしているみたい。

「そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」

 レアルさんの表情を読み取って文句を言ってみたら、皆には無表情に見えていたようだ。

「レアル、驚いてるのか?」

 ロレーヌ様がレアルさんの顔を覗き込んでマジマジと見つめる。

「いえ……まぁ、少しだけ。あまり表情には出ない方だとは思っていましたが、そんなにわかりやすかったですかね?」
「いや、少しどころか、全然変わってねーぞ」

 ベイカーさんが失礼な事を言うが、レアルさんは気にした様子も無かった。

「とりあえずうちにくるなら様付け禁止ね! あとは色々とやりたい事があるから、その相談にのって欲しいんだけど……」
「私はミヅキ……さんの従者となりましたので、なんでも仰って下さい」

 レアルさんの敬語を聞いて、私は鳥肌が立った!

「さっきからなんなのそれ? 気持ち悪いから止めてくれない? いつもみたく普通でいいよー」
「ミヅキさんは私達の主人となる方です。主人に対してきちんと敬う態度をとらないのは、従者として失格です。それを望まないのであれば従者として雇わなければいい」

 きたきた! 私はそっと口角をあげる。

「確かに主人が間違っている場合は苦言をさす事もありますが、それ以外で主人を軽んじるなどもっての外です。あなたはもう少し、皆の主人である事に自覚を持ちなさい」
「「「おおー」」」

 パチパチパチと拍手がなる。

「お前いい事言うなぁ」

 ベイカーさんがレアルさんの言葉に感心する。

「やっと、まともな人が来た」

 デボットさんも心なしか喜んでいた。いや、いつも通りでいいって言ったけど……あれ? 私失敗したかな? なんかレアルさんが、ベイカーさん以上におかんに見える。

「いや! 主人かもしれないけど、私が目指してるのは家族、みんなが平等で助け合えるような関係性なの!」
「では、私は従者ではないのですね」
「うん、なんでもいいよ。レアルさんのしたいようにすれば。その従順で気持ち悪い感じがいいならしょうがない、私も頑張って慣れるよ!」
「気持ち悪いって、普通はそういうもんだろ」

 デボットさんが呆れる。

「いいの! よそはよそ、うちはうち! うちは基本放任主義だからね」
「ま、まぁそこら辺はおいおい皆で話し合ってもらって。ミヅキさん、次は土地へ案内しよう」

 そう言ってロレーヌ様が席を立った。ああ、これで米作りが開始出来る!
 私は土地と聞いてご機嫌でロレーヌ様の後を追った。
 店の外に出ると、カイト隊長とガッツ隊長にあと数名の各部隊兵士が待っていた。

「あー! カイト隊長にエドさん、ガッツ隊長まで、なんで第一部隊と第二部隊が一緒に?」

 珍しい組み合わせに首を傾げる。

「どちらもミヅキの護衛に出ると譲らなくて、隊長達以外はじゃんけんで決めたんだ」

 ロレーヌ様が苦笑して部隊長達を見る。皆はサッと顔を逸らした。

「ミヅキ、乗るか?」

 エドさんがブライを撫でながら聞いてきた。

「いえ、ミヅキさんこちらにどうぞ」

 カイト隊長がメリルを撫でて爽やかに微笑む。

「お前達はもういいだろ! 今度は私の馬に乗ってください」

 ガッツ隊長が前に出る。

「ガッツ隊長の馬はなんてお名前なの?」

 体の大きいガッツ隊長を乗せる馬はブライやメリルより大きかった。

「私の相棒はレターと言います」

 レターは大きな黒い馬で、ガッツ隊長に撫でられて誇らしそうだ。

「レターごめんね、今日は私も相棒がいるんだ」

 レターを撫でながら謝ると、三人を見る。

「隊長達もありがとうございます。でも今日はシルバと行くから! みんなとは少し離れて歩くね」

 またねーとシルバの元に駆け寄ると、三人はガックリと肩を落とした。

「あいつら大丈夫か?」

 ベイカーさんが成り行きを見ていたようで私に聞いてくる。

「みんなお仕事熱心だよねー」
「多分違うんじゃねえかなぁ」

 ベイカーさんは憐れみの表情で三人を見ていた。


 ◆


 ロレーヌ様に案内されて王都の郊外へとやってくる。

「ここだ、どうかな?」

 ロレーヌ様はそう言って、だだっ広い何も無い土地を見せてくれた。

「どうですかって、川以外見事に何にも無いな」

 ベイカーさんの言葉に他の人達も周りを眺める。

「いいですね! 何処まで使っていいんですか?」

 そんな微妙な空気の中、私一人が喜んでいた。まさにこういう土地が欲しかった!


 しかも王都の郊外なら、少しくらい騒いだって問題ないだろう!

「ここら辺一体は全部ミヅキさんのものだ。見てわかるように何もないからな」
「本当に!? じゃ明日から早速使わせてもらいます!」
「それはいいんだが、ここで何を作るんだ?」
「ああ! 忘れてた」

 私は先程作っていたお弁当を収納から取り出した。

「この中に詰めている白いものが、これからここで作る予定の食材です。米って言って、おかずと一緒に食べるとおいしいんですよ。国王達の分も作ったので、帰ってみんなで食べてください」

 そう言ってお弁当を渡した。

「ありがたくいただくよ。もし人手が必要なら、こちらの部隊兵を使って構わないから声をかけてくれ」

 ロレーヌ様は喜んでお弁当を受け取ってくれた。

「それと……」

 ロレーヌ様が言葉を濁す。

「まさか……この前の事?」

 人手確保でスラムへ行った時の出来事がもうバレたのかと驚くが、ロレーヌ様はなんの事かと首を傾げる。

「いえ、前の事とは……また何かあったのですか?」
「あっいえ……なんでもないです」

 チラッとガッツ隊長を見ると、私の視線に気が付いたのか近づいてくる。ロレーヌ様にちょっと失礼しますと告げてその場を離れ、ガッツ隊長を手招きして端に連れていく。

「この前の事、報告してないんですか?」
「何も無かったと仰っていたので建物の崩壊の件だけ報告致しました。老朽化が原因ではとの見解でしたが、何か問題でも?」

 ブンブンと勢いよく首を振る。

「ナイス! ガッツ隊長!」
「えっ?」
「ああ、なんでもない。私の事を報告しないでくれてありがとうございます」

 私がお礼を言うと、ガッツ隊長が思案顔をして真面目な顔を向けた。

「では、ひとつお願いがあるんだが……」
「なになに? 私に出来ることならいいよー」

 何か食べ物系かなとガッツ隊長の言葉に耳を傾けた。


 ◆


「またなんかやってるなぁ、あいつ」

 俺は物陰に隠れてガッツ隊長と話しているミヅキに目を向ける。

「この前の事じゃないですか?」

 デボットがスラムであった騒動の事だろうと考察する。

「ベイカーさん、デボットさん。この前の事とは?」

 レアルが俺達の会話に割り込んできた。

「ああ、お前もミヅキの従者になるなら話しておいた方がいいかな?」
「そうですね」

 デボットが頷いたので、昨日の経緯を軽く話す。レアルは顔色一つ変えずに聞いている。

「さすがミヅキが見込んだだけあるな、ミヅキの奇行きこうについて聞いても動揺しないとは」

 俺が感心していると、当の本人が近づいてきた。

「ベイカーさん達、何話してるのー」

 自分の事だとは思ってないのだろう。ミヅキは緊張感のない顔をしている。

「いや、レアルに昨日の事を少し話しておいたんだ」

 へーとレアルを見るとミヅキがギョッとする。

「ちょっ! レアルさんどうしたの?」

 ミヅキが慌ててレアルに駆け寄ると、レアルはガクッと膝をつきしゃがみ込んだ。

「えっ? 何が起きたんだ?」

 俺とデボットはわけがわからずに目を合わせる。

「レアルさん顔色が悪いよ! ちょっとベイカーさん何言ったの?」

 いきなりミヅキに責められてこちらが慌てる。

「い、いやミヅキが建物を崩壊したのと、腕の件を話しただけだぞ」
「それだけでこんなに顔色悪くならないでしょ!」

 他に何を話したんだ! と詰め寄よられていると……

「ほ、本当なんですか?」

 しゃがみ込んでいたレアルが喋った。

「何がですか?」

 ミヅキが首を傾げて聞き返す。

「本当にミヅキ様も魔法を? しかも建物を崩壊出来るような強い魔力をお持ちで?」
「えっ、う、うん」
「腕は? 腕を付けたと言うのは?」
「そのままの意味だよ。まぁ、それは私が治したっていうより、シンクのおかげだけどね。デボットさんもそれで治したんだもんね」

 デボットがそうだと頷いた。

「ああ、俺は腕も目も無かったのを、ミヅキがシンクに頼んで治してくれたんだ」
「そ、それは……」

 レアルが再び固まる。

「それは?」

 ミヅキが首を傾げて顔を覗き込んだ。

「〝それだけ〟で済ませられる事ではありません! なんですかその情報! 聞いてませんよ! ミヅキ様の事件は従魔や従者達がやっていたのではないのですか!?」

 レアルさんが急に興奮してまくしたてた。ミヅキはレアルの肩に手を起き、落ち着いた様子で目をつぶり首を振る。

「レアルさん、駄目だよ。様付けになってるよ」

 その言葉を聞いて、レアルは再び力が抜けたようでガックリと肩を落とした。
 俺達も突っ込みたくなったが……どうやらミヅキにとってはそちらの方が重要らしい。

「はぁ……もういいです」

 レアルはため息をつき立ち上がる。

「後でしっかりと、細かく説明してくださいね! 〝ミヅキ〟!」

 レアルからの呼び捨てに、ミヅキの顔がみるみる明るくなる。

「うん! なんでも教えるよ、だからこれからよろしくね」

 ミヅキが手を差し出すと、レアルはその小さい手を掴んだ。


 ◆


 土地の確認を終えたあと。私達は一度お店に戻り作戦会議をする事にした。
 さぁ帰ろうとシルバに乗ろうとすると、ロレーヌ様が手招きする。
 シルバに待っててもらい近づくと……ロレーヌ様は何やらコソコソと話し出す。

「ミヅキさん、実はルイズ子爵がもう一度ミヅキさんに会いたいと言っているんだ。伺いたい事があるそうなんだが……」

 申し訳なさそうに聞いてくる。すると話を聞いていたカイト隊長が声をかけてきた。

「発言をよろしいでしょうか? ロレーヌ宰相!」

 あまり口を挟んでこない隊長にびっくりしたのか、ロレーヌ様は背筋を伸ばした。


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