ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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5巻

5-3

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「ラウンもお嬢ちゃんを気に入ったみたいだな」
「ラウン、レアルさんを乗せてあげてね」

 よしよしと撫でると、ラウンはレアルさんを見て仕方なさそうにフンと鼻息を出した。

「任せろだって」
「ミヅキ、言葉がわかるのですか?」
「まさか、わかんないよ。だけどなんとなくそう言ってる気がする」

 ねー、とラウンを撫でると嬉しそうに鼻を鳴らした。
 借馬のおじさんにお金を払い、ラウンを借りる事になった。

【シルバお待たせ~】

 私は、外で待たせていたシルバに駆け寄る。

【ミヅキ、なんで怪我なんてしたんだ?】

 シルバが不機嫌そうに聞いてくる。

【ちょっと、ぶつかっただけだよ。心配してくれてありがとう】

 傷ついた手を見るが、シンクの回復魔法のおかげですでに綺麗に治っていた。

【そいつの為みたいだが、無理するなよ】

 シルバが大事そうに私の腕を舐めた。

【うん、ごめんね。わかってるんだけど、あそこで逃げたらあの子はもう二度と人を信じられなくなりそうだったから】
【そういうミヅキが好きだが、シンクがいない所ではやめてくれ。俺では怪我は治せないからな】
【……】
【おい! 返事は!】
【う、うん】

 私が困った顔をしているとラウンが側に寄ってきて、シルバとの間に入ろうとする。

【コイツ……】

 シルバの雰囲気がピリッと変わる。
 ラウンは硬直しながらも私を守るようにシルバの前に立ち塞がった。

【ふんっ、なかなかいい根性してるな】

 震えながらも私を守ろうとするラウンに、シルバがフッと笑いかけた。
 緊張した空気が解けて力を抜く。

【こいつなら一緒に行けそうだな】
【そうだよね】
「ラウン、シルバは私の王子様なんだよ。ラウンも私を守ろうとしてくれたんだね、ありがとう。シルバは私の為に怒ってただけだからね」

 ラウンは私の説明を理解したのか、シルバに頭を下げると後ろに下がった。

【なかなかよくわかってるな】

 二人の相性も良さそう。私は可笑しくなって笑ってしまった。
 皆で門を出ると、私はシルバに乗って、レアルさんがラウンにまたがる。

【シンクは飛ぶ? 私の肩に止まってる?】
【飛びながら何か来ないか見ておくよ】

 そう言うと空高く飛んで行った。

【じゃ、シルバ。あの稲穂いなほの所までよろしくね、ラウンがついてこれる速さでお願い】
【ああ】
「レアルさん、ラウン行くよー! 速かったら言ってね!」
「了解だ」

 シルバが走り出すとラウンが後ろから元気よくついてきた!
 さすがにプルシアに乗せてもらっていくほど早くは着けないが、順調な速さで進んで行く。後ろを振り返ると、ラウンが嬉しそうに軽快に駆けていた。

【速さも問題なさそうだな】

 シルバがラウンの様子を窺っている。

【でも一回休憩しようか? どっかに木陰こかげでもないかな?】

 周りを注意しながら探してみるが、私からはよく見えない。

【ミヅキ、この先の南の方に少し行くと木陰こかげがあるよ】

 シンクが上から見た景色を教えてくれる。

【ありがとうシンク! シルバ、南の方だって!】

 シルバが左の方角に少し進路を変えて走ると岩場と木が茂る場所が見えてきた。スピードを落としてその場所に止まる。

「着きましたか?」

 レアルさんがラウンの上から聞いてくる。

「もう少し先なんだけど一回休憩しましょ!」

 私がシルバから降りると魔法で手に水を出す。

【はい、シルバ、水飲んで。いつもありがとう】

 シルバは美味しそうに私の手のひらから湧き出る水を飲む。

【シンクも飲む?】
【うん!】

 シルバは喉が潤って満足そうに木陰こかげに横になる。それと交代してシンクが水を飲む。そして私は、そのままラウンの元に向かった。

「ラウン、お水だよぉ」

 ラウンがゴクゴクと凄い勢いで飲み始めた。

「あれ? ラウン、喉乾いてたのかな? 疲れちゃった?」
【ミヅキの水が美味いんだろう】

 シルバが何気なく言う。

【えっ? ただの水だよ?】
【いや、ミヅキが魔法で出す水はかなり美味いぞ。疲れが取れるからな】

 何それ?

「ラウンは美味しそうに飲みますね」

 レアルさんが喉を鳴らす。

「レアルさんも飲みます? シルバが美味しいって言ってるから……」
「いいですか? なら少し」

 レアルさんが自分の収納魔法からコップを出したのでそこに水を注ぐ。

「つ、冷たい! しかも美味い」

 レアルさんが驚いて水を見てから、自分の体を確認する。

「少しですが、体が楽になったような気がします」
「あっ、本当なんだ……シルバが疲れが取れるって言ってたけど、お世辞せじかと思った」
世辞せじなんて言わないぞ! ミヅキに対してはいつも本気だ!】

 シルバが心外だと唸る。

「何故こんなに冷たい水が?」
「えっ? だって冷たい方が美味しくないですか?」

 何を当たり前の事を言っているんだと私は首を傾げた。

「ミヅキさん、コップありますか?」

 いきなりそう言われて首を振ると、レアルさんは自分のコップを洗いだした。

「私ので申し訳ないですが、ウォーター!」

 そして、魔法で水を注いで差し出してくる。

「頂きます!」

 ゴクゴクっと飲むと思わず真顔になる。

ぬるい……」
「私が特別ぬるいわけではなくて、皆このような感じですよ」
「そうなんだ」

 私が思い浮かべているのは冷蔵庫にある水のイメージだからかなぁ……

「しかも、微量ですが回復魔法みたいな効果があるようですね」
「お疲れ様って気持ちを込めて出したからかな!?」

 凄くない! とレアルさんを見る。

「私達以外にはあまり出さないようにお願いしますね。しかし、あの人達は知っているんでしょう?」
「あの人達?」
「ベイカーさん達です」
「今気がついたから知らないと思うよ」
「そ、そうですか……」

 ん? なんかレアルさん嬉しそう?

「とりあえず他の人には知られないようにしておきましょうね」
「えー、そんなに回復するわけでもないしいいんじゃない」
「ほら、ベイカーさんやデボットさんが焼きもちを焼きますよ。ミヅキからの水の差し入れなんて特別でしょう。特別な事ははやっぱり身内だけにしておきましょうね」
「そうかな……?」
「そうです! ね、シルバさん達もそう思いますよね!」

 シルバ達に助け舟を頼んでいる。

【そうだな、ミヅキからの水なんてベイカー達にだってあげなくていい】
「えー」

 レアルさんが私の顔を覗き込む。

「シルバさんはなんと?」
「ベイカーさん達にもあげなくていいって」
「ははは……それは」

 苦笑いを浮かべる。少し納得いかないものの、水を出さない事を約束させられた。

【そろそろ行くか】

 シルバが立ち上がったので皆も用意をする。

【後半分くらいで着くだろう】
「後半分くらいだって!」
「大分回復出来ましたので一気に行ってしまいましょう。ラウン、頼みますよ」

 ラウンは「ブルン!」と鳴き、行く気満々だった。
 しばらく走っていると、空を飛ぶシンクから声がかかる。

【ミヅキー、稲穂いなほが見えて来たよ】

 稲穂いなほと聞いて気分が上がる!

【シルバ! 早く、早く!】

 思わず急がせてしまうとシルバが加速する。後ろにいたラウンとレアルさんはあっという間に離れていく私達を唖然と見つめていた。

【あっ! レアルさん達と離れちゃった】
【僕が誘導しとくからミヅキ達は先に行っていいよ】

 シンクが空を大きく旋回するとレアルさん達の元へ向かってくれる。

【シンク! ありがとう】

 私達は一足先に稲穂いなほへと向かった。シルバのおかげであっという間に稲穂いなほの元にたどり着く。

「ふわぁ~! 着いた! 何度見てもグッとくる光景!」
【ほら俺が刈り取ってやるから、ミヅキはそれをしまっていけ】

 シルバが風魔法でどんどん根元から刈り取る。

【ありがとう~。でも少しは残しといてね、全部刈らなくていいよ】
【なんでだ? 全部食べちまえばいいだろ?】
【自然に生えたんだもん、ちゃんと残しておかないと】

 そんなもんか? とシルバは言いつつも、少し残しながら刈り取っていく。
 目標の半分も刈り取っていると、レアルさん達が遅れて到着した。

「ミヅキ!」
「あっ、レアルさん、ごめんね。先に来ちゃって」
「いきなり加速するからびっくりしましたよ。これが稲穂いなほですか? 美しい光景ですね」

 一面に広がる黄金の絨毯にレアルさんが息を呑む。

「こんな稲穂いなほの畑をあの土地に作りたいんです! それで毎年米を収穫出来るようになればスラムのみんなも仕事が出来るし、美味しいお米が食べられるし、一石二鳥だよね!」
「そんなにコメとやらは美味しいのですか?」

 レアルさんが稲穂いなほを触りながら聞いてきた。

「レアルさんは試食がまだだったね」
【シルバ、シンク。ちょっと早いけどお昼にしようか?】

 私は作業を中断するとお弁当を取り出した。
 シルバとシンクには唐揚げと玉子焼きとおにぎりをワンプレートにして出してあげる。

「ラウンには野菜と果物がいいかな?」

 土の桶を作ると、その中に食べ物を入れて食べやすいように石の台も作ってやる。

「レアルさんと私はお弁当ね」
「おべんとう?」
「携帯出来るご飯の事なの。国王様達に渡したのと同じものだよ」
「そのような高価なものをもらっていいのでしょうか」

 レアルさんは国王と聞いて畏縮したようだ。

「いいの、いいの! さぁ食べよう。いただきまーす」

 構わずお弁当箱の蓋を開けると、レアルさんも続いた。

「どれが、コメですか?」
「この白い丸いのが米で作ったおにぎりって言います。おかずは唐揚げとミートボールと玉子焼きね、おかずを食べて米を食べるのがおすすめです」

 玉子焼きをフォークで刺して口に入れ、続けておにぎりを頬張る。

「うーん! やっぱり外で食べるお弁当は格別に美味しい~!」

 そんな私を見て、レアルさんもお弁当に手を伸ばす。唐揚げを摘むと口に放り込んだ。

「……」

 何も言わないレアルさんに気が付き、声をかける。

「レアルさん、口に合わなかった? 他の物食べますか?」

 何かあったかなと収納の中をあさってみる。

「い、いえ大変美味しいです。これは国王も喜びそうだと……」

 私が驚いてレアルさんをじっと見つめていると、怪訝けげんな顔を向けてきた。

「なんですか?」
「レアルさんに一回で褒められた」

 国王に渡す物で褒められたのは始めてだった。嬉しいなぁとじわじわと喜びが込み上げる。

「これは油もよく切ってありますし、味付けも丁度いいので」

 何故か言い訳っぽく話すレアルさんに笑ってしまう。

「お米も食べてください! これがメインですからね」

 レアルさんが頷き、姿勢を直しておにぎりを一口で食べた。

「お、美味しい!」
「でしょ!」

 私はレアルさんの反応に胸を張る。

「僅かな塩気が甘味を引き出していますね!」

 レアルさんは今度はミートボールを食べてすぐさまお米を口に含んだ。

「これは止まりませんね。いくらでも食べられそうです。パンの代わりかと思っていましたが、また違った美味しさで別物ですね」

 次に玉子焼きを手に取った。一つは私が、一つはキッシュさんが作ったものだった。
 レアルさんは玉子焼きを食べて、また驚いた様子でそのままおにぎりを食べる。そしてもう一つの玉子焼きを口に入れると動きを止めた。

「どうしたの?」

 急に固まるレアルさんを不思議に思った。

「この卵料理は、玉子焼きと言ってましたよね? 味が違うので何故だろうと思いまして」

 いけない、味にまで差がついちゃったか……私が作った方が形が歪な事もあり、申し訳なく思う。

「美味しくなかった?」

 すまなそうにしているとレアルさんはニコッと微笑んだ。

「いえ、どちらも大変美味しいです……ただ私は、こちらの玉子焼きのほうが大変好みですね」

 そう言って私が作った形の崩れた玉子焼きを指さす。

「でも、こっちの方が形が綺麗だよ?」
「ええ、こちらも美味しいですよ、ただ私はこちらが好きです。何か心の奥からホッコリとした温かさを感じます」

 急に自分の作った玉子焼きを絶賛されて顔が熱くなる。
 恥ずかしがっていると、その様子に気が付いたレアルさんがハッとした。

「ま、まさか! これはミヅキが?」

 コクンと頷く。

「料理人達が作ったのではないのですか? いつもお店では彼らが調理をしていましたよね?」
「お店ではルンバさん達が担当してるけど私もよく作るよ。この玉子焼きは、こっちの形がちょっと悪いのが私で、綺麗な方がキッシュ副料理長が作ったの。気に入ってくれてよかった」

 少し恥ずかしくなり頬を染めていると、レアルさんは何も言わずにじっと玉子焼きを見つめていた。
 そしてそのまま言葉少なめに、お弁当を二人で食べた。
 お弁当も食べ終わり、私はレアルさんに改めて聞く。

「レアルさん、お米はどうだった? あの土地で育てていってもいいと思う?」
「大変美味しいものでした。しかし作るとなると……それにかかる費用と期間を考えてみないとなんとも言えませんね」
「別に売り出す気はないよ。自分達の分を確保出来ればいいから」
「多分この味なら国王達も気に入るはずだし、あのお店の客も欲しがるかもしれないなぁ……そしたらまぁ国から予算を貰って拡張してもいいかもしれん」

 ブツブツとつぶやきながらレアルさんは眉間に皺を寄せて何か考えている。

「どうかな?」
「なんとかなるでしょう!」
「やったー!」

 レアルさんからも了承され、気合を入れて残りの稲穂いなほも刈り取っていく。

「ミヅキ、あなたの収納魔法、おかしくないですか?」

 レアルさんが次々に収納していく私の収納魔法がおかしな事に気が付き、声をかけてきた。

「えっ?」

 あっそっか、レアルさん知らなかったんだ。

「あー、私の収納魔法の容量、小さい村ぐらい入るんだ」

 てへっと笑って誤魔化すが、レアルさんの顔が引きつる。

「国に色々と黙っていたのですね。国王は薄々気が付いていたようですが……確かにミヅキにこの国を去られたら大損害になりそうです」
「えっ? なんの事?」
「いえ、こちらの話です。あなたの見た目に騙されて過小評価をして王宮を追われ、あなたに仕える事になりましたが……本当に恐ろしい子ですね。まだまだ掘り下げれば何か出てきそうだ」

 ブツブツとレアルさんが呟いている。

「えっ? 何、レアルさんなんか言った?」

 レアルさんは私の顔を見るとふっと肩の力が抜いた。

「いえ、さぁ早く刈り取って戻りましょう」

 レアルさんは小さく微笑むとこちらへゆっくりと歩いてきた。



  三 従魔


 順調に稲を刈り取っていると、シルバがふと顔をあげて空を見上げた。

【なんか来るなぁ……】
【空からだね】

 そう言うと、シンクが羽ばたいて空に飛び上がって行った。私も空を見上げると、大きな鳥のようなものがギャーギャーとうるさく騒ぎながら飛んでくるのが見えた。

【何あれ?】

 遠くてよく見えないからじっと目を凝らして見つめる。

「ミヅキ! こちらに」

 するとレアルさんも異変に気が付き、私を抱えて木の陰へと連れていった。

「レアルさん、あれ何?」

 木の陰に隠れながら上を見上げる。

「あれは、魔物のようですね。フレズベルクでしょうか」

 翼竜のような翼を持った魔物が群れで飛んでいた。

【僕が追い払うよ】

 シンクが散歩にでも行くように魔物へと向かっていく。

【えっ! シンク大丈夫? 相手の方が数が多いし大きいよ!】

 相手の魔物は一匹がシンクの五倍くらいはありそうだった。

【問題ないだろ、シンクだぞ。俺の体に傷をつけられるんだからな】

 シルバが余裕で答えるが私は心配でハラハラする。
 だってシンクは見た目が可愛くて、全然強そうに見えないから……

【あれ? なんか咥えてるよ】

 シンクの声にフレズベルクをよく見ると、何かを咥えている。投げながら飛んでいるようだった。

【シンク、その魔物、何を咥えてるの?】
【うんとね、ちっちゃい獣みたいなのを咥えてるよ。えーと、こいつらの巣に入ってきて悪戯した奴みたい、だから興奮してるんだね。何処かに捨てようとしてるのかな】
【えっ! 助けられないかな?】

 なんだか可哀想……

【うーん、わかんないけどやってみるね】

 シンクはフレズベルクの前に出ると炎で周りを取り囲む。
 その瞬間、驚いた魔物が口を開け、獣が地面へと落ちてくる。

「危ない!!」

 私は受け止めようと落下地点へと走りだした!

【まったく……】

 夢中で走るが私の足では到底追いつけない! 必死になっていると、ヒョイとシルバに咥えられた。そして落下地点まで一瞬で駆けつける。
 ドスン! 間に合った!
 落下してきた獣をどうにか受け取ると同時に、シルバが衝撃を吸収してくれた。

【シルバありがとうー】

 シンクが心配そうに飛んできて私の肩に止まる。

【あっ、シンクもありがとうね! 魔物はどうなった?】
【脅かしたら逃げちゃった】

 空を見上げると、列を乱して慌てて逃げていくフレズベルクの群れが見えた。

【この子どうしよう?】

 腕の中でぐったりしている獣を見ると、所々赤黒く汚れていた。

【イタチ? それともタヌキかなぁ、キツネにも見えるけどなんだろ? 見たことない動物だなぁ】
「大丈夫ですか!」

 獣を優しく撫でていると、レアルさんも慌てて駆けつけてきて私の腕の中を覗き込んだ。

「ミヅキ、これも魔物ですよ! ケイパーフォックスの子供でしょうか?」
「ケイパーフォックス?」
「化け狐です。まぁ、まだ子供ですし魔力もそんなにないんじゃないでしょうか。怪我もしてますし、そのまま捨てて置けばそのうちに事切れるでしょう」

 パシッ! レアルさんの頭に手刀をいれる!

「いたっ!」

 レアルさんが頭を押さえた。

「なんてこと言うの! 魔物でも怪我してる子供だよ! 可哀想でしょ!」
「しかし、元気になって大人になれば攻撃をしてきますよ」

 たいしたダメージもなかったのだろう、レアルさんが頭をかいて困った顔をする。
 それでも……私はケイパーフォックスの子供に回復魔法をかけた。

【ミヅキ、そいつがもし攻撃してきたら、俺も手刀をするからな】

 シルバが警戒しながら、私の隣にピッタリと張り付いている。

【シルバがやったら、せっかく治った怪我がさらに酷くなっちゃうよ!】

 慌ててケイパーフォックスを隠すと腕の中でモフモフの感触が動き出す。大きな瞳を開けて周りを窺うようにしているので、優しく撫でながら声をかける。

「もう鳥の魔物はいないから大丈夫だよ。ほらお水飲んで……」

 私が魔法で手のひらに水を出すと、警戒しながらもぺろぺろと水を舐めだした。どうやら余程喉が乾いていたようで、ビクビクしながらも凄い勢いで水を飲んでいる。

「ふふふ、可愛いね。そんなに喉が乾いてたんならお腹も空いてるかな?」

 収納からおかずの残りの唐揚げをだして顔の前に差し出すと、クンクンと匂いを嗅いでガブッと咥える。そして、腕の中からヒョイと逃げ出して草むらへと走り出した。

【あいつ! 飯だけ取って逃げやがった!】

 シルバが反応したが、それって唐揚げにだよね?

【いいよ、元気になったみたいでよかった。私も攻撃されてないから大丈夫だよ】

 立ち上がり、両腕を見せるとシルバもレアルさんもホッとする。

「さぁ! 魔物もいなくなったし稲刈りしちゃおう!」

 私は怒っているシルバに抱きつきながら稲穂いなほの方へと歩き出した。魔物の事などすっかり忘れて稲刈りに夢中になっていると、ものの数分で目標の半分を刈り取ってしまった。

「うーん! もういいかな、そろそろお店に帰ろうか」

 立ち上がって伸びをすると皆に声をかける。
 レアルさんは頷き、帰り支度を整えるとラウンにまたがった。

【じゃあシルバ、帰りもよろしくね】
「ラウン、レアルさん! 行くよー、準備は大丈夫?」
「ああ、問題ない」

 シルバが走り出すとラウンも後ろをついてくる。しばらくすると、シルバが後ろを気にし始めた。

【ミヅキ、あの魔物が後を追いかけてくるよ】


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