狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

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21.ラーミアお嬢様……メイドの心うち

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私はこの御屋敷のメイドをしている。

私が仕えているのはカートレット侯爵家の奥様リリア様だ。
奥様はそれはお優しく綺麗で私はここで働かせて貰えることを誇りに思っていた。

旦那様も大変いい方で奥様を愛している気持ちが強すぎる事以外は素晴らしい方である。

そんな尊敬して止まないお二人に待望のお子様が誕生した。

名はラーミア様と言い、髪はふわふわで奥様に似て目元はキリッとした旦那様に似て将来はきっと美しい令嬢に成長するだろうと確信した。

お嬢様はそれは大人しい子供でほとんど手を煩わせることなどない……が、ただ一つ旦那様が苦手だった。

あんな優しい旦那様だが部屋に来るなり体が硬直して、いつもならほとんど泣かないのにこの時ばかりは大声で泣く。

そんな様子に旦那様は毎回肩をこれでもかと落としていた。
奥様もそんなラーミア様の様子に困っていて、ある時医者を呼んだ事でその理由がわかった。

お嬢様は男性が苦手だったのだ。

確かにお嬢様のお世話をするのは私をはじめメイドだけで、部屋に入ってくる事もない。

唯一お嬢様の周りにいた男性が旦那様だったのだ。

それがわかってからは屋敷の男性は極力息を潜めていた。

お嬢様が部屋から出ることもないのでそんなにも注意する事はないが側近のアデリー様や警護するステファン様は大変そうだった。

しかし女性にはお嬢様はいつも通りの天使の笑顔を見せてくれる。
特に旦那様が来るとお嬢様は私にしがみついて助けを求めて来るのだ。

旦那様には申し訳ないが腕の中で怯えるお嬢様を見ると部屋に近づかないで欲しいと思ってしまう。
この屋敷の主になんて事をと思うがお嬢様の辛そうな姿は見たくなかった。

しかしある時、旦那様が魔獣から身を対してお嬢様を助けた事で事態は変わってきた。

お嬢様が旦那様に怯えることが無くなったのである。
その後の旦那様の溺愛ぶりは凄かった。
気持ちはわからなくもないが、お嬢様も空気を読んでか面倒そうに旦那様に付き合っているように見える。
まさか3歳の子供にそんな事は無いと思うが・・・

しかしお嬢様は時折私達も気を使うような素振りをみせるのだ。
3歳の女の子がメイドに気を使うなど聞いたことも見たこともない。

可愛らしく、天使のようなお嬢様に迷惑をかけられる事など一切ないのに・・・むしろ迷惑かけて欲しいとさえ思える。


そんなお嬢様に弟が生まれ更にしっかりとしてきた時にとうとうこの日がやってきた。

お嬢様の街デビューの日だ!

お嬢様は一度お屋敷の外に出かける日があったがその頃はまだ男性恐怖症も続いておりお嬢様が嫌がったので中止となった。

もちろんお嬢様は行きたく無いなど、駄々をこねた訳では無い!これだけは言っておく!

お嬢様は馬車に乗ろうとすると顔色を悪くされたのだ、私が声をかけ心配するとお嬢様は「大丈夫」と全然大丈夫では無い顔で笑ったのだ。

準備してくれたみんなに迷惑がかかると我慢していたのを私がすぐに旦那様達に知らせて中止してもらったのだ。

もちろん旦那様はお嬢様、第一なのでこの日のお出かけは中止となった。

しかしこれは後にとてもいい判断だった。
この時奥様は妊娠していたがそれに奥様自身も気が付かないでいた。

あの時馬車での長時間の移動などしていたら胎児に何かあったかもしれない。
お嬢様はこの屋敷の次期当主のお命を救った事にもなるのだ!

「ナディアー!」

そんな思いにふけっているとお嬢様から名前を呼ばれた。
街に行くのにこの私にも着いてきて欲しいとお嬢様から名指しされたのである。
お嬢様から信頼されていると思うと鼻の頭がツーンとしてきた。
馬車に乗るからと私を呼ぶお嬢様。

「はい、お嬢様」

私に天使の笑みを浮かべ、楽しそうに手を振るお嬢様・・・私は愛しのお嬢様に今日も笑顔で近づいて行く。
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