貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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266.虫

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「それよりも今は実だ!誰か登って取ってくるんだ!」

「しかし…上までは男の我々では登れないのです…」

ロイとカイルが覚えがあるのか頷く。

「そうか…体重が…」

「誰か身軽な者はいないのか?」

「王宮に戻れば数名は…」

「よし!すぐに連れてくるんだ!」

ロイ達がバタバタと慌てていると…

「ローズ!」

上の方からバルトの声が聞こえる。

ローズが上を見ると…

「バ、バルト!!」

バルトは大樹に登りあの果実を取りに行っていた…

バルトはローズの乗る馬の上に着地すると、実をローズに渡す。

「さぁ食べろ!」

「いやいや!駄目だよバルト、この実は国の物だからね」

ローズは実をロイ王子に渡そうとすると…

「俺は魔物だ、その俺が取ったものが国に関係あると思うのか?」

「た、確かに…」

ロイが伸ばした手を止めると…

「なぁバルト、提案があるんだ…上には実がいくつあった?」

「後二つだ、だが他の魔物達も狙っているかもな…早くしないと無くなるぞ」

「ならその二つを君が取ってきてくれないか?そしたらその一つは君の好きにしていい」

「ロイ王子!いいのですか?」

兵士達がロイの発言にザワつくと

「いいも何もバルトにこの国の法を守る義務はないからなぁ…それなら一つ渡して残りの二つを確実に確保する方がいいだろ」

「そうだな…今から登れる兵士を待って…それから登る…かなり時間がかかりそうだ」

カイルがロイの提案に頷くと

「どうだ?」

バルトに聞くと…

「いいだろう、その代わりこれはローズに食べさせる」

「ああ、それは俺達も望む事だ…」

ロイは呟いた。

バルトは早速と登ろうとすると…

「おい!バルト二つ同時に持って来れるのか?」

どう見てもバルトが咥える以外に持って来れそうにない。

「無理に決まってるだろ、一個取ったら戻ってくる」

「なら俺が途中まで行こう!前に登ったから大体はわかる」

カイルは身につけていた剣や鎧を外して身軽になると木に手をかけた。

「お前を待つ気はないからな」

バルトはひょいひょいとあっという間に上に登っていく。

「では行ってきます」

カイルはロイ達に声をかけてバルトの後を追った!

ローズは心配そうに登る二人を見ていた。

「でも…ロイ様あんな約束しても大丈夫なんですか?」

ローズはバルト達が見えなくなるとロイに問いかけた。

「ん?実の事かい、それなら大丈夫だ。今まで一個も手に入らなかった物が一つでも手に入るならうるさい研究者達も納得するだろう…それにローズの怪我を最優先するように父も言っていた。問題無いよ…ただ…」

「ただ、なんだ」

チャートが凄むと

「い、いや…その食べるなら一応研究者達や国王の前でお願いしたい…どうせなら怪我がどの程度治るか検証もしたいから…」

「そんな事でしたら…」

ローズが了承するとロイはローズに近づいてその手を掴む

「もちろん俺やカイルもそばにいるから変な事はさせないよ」

ロイがローズの手を顔に近づけて行くと…

「ていっ!」

チャートがロイの手を払った!

「お父さん!」

ローズが不敬では無いのかと慌てると

「いえ…が付いていたのでな…悪い虫が…」

ジロリとロイを上から睨みつける。

「はは、まぁ今はローズの怪我を治す方が先だね、続きはまたカイルが降りてきてからかな」

「続きなどない」

チャートが断言する。

ローズはロイに掴まれた手を見つめる…

なんだろ…確かこうやって前にも…

何か大事な事を思い出せそうになっていると…

「ローズ、大丈夫か?」

チャートが話しかけてきた。

「あっ…うん大丈夫」

ローズは今はバルトとカイルが無事に降りてくるのを待つ事に集中した。
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