貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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267.バルトとカイル

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バルトとカイルはスルスルと問題なく木を登っていた。

「バルト…ちょっと聞いていいかい」

登りながらカイルが話しかけると

「なんだ…」

答えはするがこちらを振り返る事無く速度を緩める気はないようだ。

カイルは必死について行きながら

「ローズのことなんだが…」

「だろうな…」

バルトはボソッとつぶやくと

「なんか…俺達がローズに気持ちを伝えたの…覚えてない…って事は無いよな?」

カイルが伺うように聞くと

「そうだな、覚えてない」

バルトがはっきりと言うと、カイルは木の枝を踏み外しそうになる。

「あ、危ない…」

思わず下を覗き込む、もう地面は遥か遠く…落ちたらただでは済まなそうだ。

「気をつけろ」

そうは言いながらもバルトは気にせず上を目指す。

「覚えていないとはどういうことなんだ!」

カイルは堪らずに聞くと

「お前達が無理をさせすぎだからだろ、あの後ローズは気を失って気がつくとその事を忘れていた」

「なんだって…」

「スチュアート曰く自分で処理しきれなくなり心の奥に無意識にしまい込んだ…と言っていた」

「無かった事になっているのか…」

カイルがガッカリとしていると

「いや…何かの拍子に思い出す事もあると言ってたぞ…」

カイルのあまりに落ち込んだ様子にバルトはしょうがなくスチュアートの言っていた言葉を伝える。

「また普通に接していりゃそのうち思い出すだろ…だがそれにローズがなんと答えるかはわからんがな!」

バルトは登ってから初めてカイルをみた。

「お前は公爵とやらの偉いやつなんだろ?ローズは領土に帰るんだ、お前はここであの王子を守るつもりなら、変に期待を持たせてローズを傷つけてみろ…許さんからな…」

バルトが牙を向くと

「ふふふ…ああわかった肝に銘じておく」

カイルが笑うと

「何を笑っている!」

「いや…まるで妹を心配する兄のようだと思ってな」

「兄?ローズが妹…って事か?」

バルトが考え込むと…

「怖い兄に、厄介な父親と弟…ローズは難解だ…」

カイルが苦笑すると

「なら諦めな」

バルトが再び登り出す。

「それは出来ないなぁ…」

カイルのつぶやきをバルトは聞こえない振りをした。


おしゃべりは終わりだと登るのに集中すると、徐々に枝が細くなっていった。

「そろそろ俺は無理そうだな…」

カイルが少し太めの枝で止まると

「じゃあここからは俺だけで行く、実を取ったら一度ここまで戻って来るぞ」

「頼む」

カイルは頷くとバルトを見送った。

バルトはスルスルと登ると実の香りが強くなってきた。

あった…

先程の実より小ぶりな果実を見つけた。

バルトはその実に近づくと…

「シャー!」

側にバルトよりも小さな動物がその実を狙っていた。

「ふん…お前が先に見つけたかもしれんがこちらも譲れん」

バルトが爪を出して攻撃しようとすると…

「しゃぁー!」

「フッー!」

それよりも少し小ぶりの同じ種の動物が飛び出してきた。

「なんだ…兄弟か?」

バルトは少し間合いを取って様子を見ていると

三匹が喧嘩をはじめた…

「なんだなんだ?」

バルトが何事かと様子を伺っていると、どうやら最初にいた動物が怪我をしているようだった…それを庇うように弟達が守ろうとしていた。

バルトは爪をしまうと…

「その実は小さい…お前らにやるよ」

庇いあう小動物にバルトはサッと背を向けた。

確かもう一つ向こうにあったはず…

バルトは違う実を目指してさらに登っていった。
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