四季の姫巫女(完結)

襟川竜

文字の大きさ
53 / 103
第参幕 霊具

第十六話

しおりを挟む

人間界で生まれた命は、人間もモノノケも関係なく聖霊結合種ファギウスの影響を受けている。
聖霊結合種ファギウスというのは、精霊の時代の終わりに生まれた種族で、わたし達の祖先にあたるの。
精霊の時代が終わりを告げて間もなく、空から巨大な隕石が落下してきて、世界は滅亡の危機にさらされた。
当時人間の祈りや怖れといったものを糧としていた精霊達が人間達と人間界を守る為に人間と融合し、新たな力を持った種族が生まれたの。
それが聖霊結合種ファギウス
火の精霊と融合した、あるいは炎の力を受け継いだ人間は赤い髪と赤い目を、水の精霊ならば青い髪と青い目を、風の精霊ならば緑の髪と緑の目を、地の精霊ならば茶色の髪と茶色の目を、という感じで一目見ただけでわかるんだよ。
現在は色んな種族が混ざり合って髪と目が同じ色の人はほとんどいない。
けれども属性と呼ばれる基本の能力…というか相性みたいなものは目の色を見ればわかるの。
宿祢は空色、つまり青系統だから水属性。
あられやささめさんは青だけど、水というよりは氷みたい。
雪ん子だしね。
世界を構成する四大元素と呼ばれる地水火風に基本的には割り当てられるんだけど、そこから派生している属性とか絡んでくるから、学術的には結構細かい区分があるみたい。
基礎中の基礎として四大元素と相性について覚えておけばいいって、前に秋ちゃんが言ってた。

今回の場合、姥妙は氷の塊を出してくることから見ても氷属性なのは明らか。
宿祢は水属性だから水の術と相性がいいわけだけど…。
水なんて出したら冷気にやられてあっという間に凍っちゃう。
氷を溶かす為にはやっぱり火なんだけど、炎を自在に操ってくれる迦楼羅丸様は、今回手を貸してくれないみたいだし…。
うーん、どうしたらいいのかなぁ?

『やっぱり、宿祢の炎じゃ威力が足りないみたいね。氷は砕けても、おそらくは鱗が邪魔をしてダメージは与えられないわ』
「正確に防がれちゃってるのは、やっぱり勢いが足りないせい?」
『ええ。迦楼羅ほどとは言わないけれど、もう少しスピードを上げないと囮にもならないわ』
「そっか…」
宿祢が放つ火の玉は、姥妙が吐き出す氷のつぶてに相殺され、たどり着く事すらできない。
あられの雪竜巻が視界を遮るものの、尻尾のひと薙ぎであっという間に消されてしまう。
攻撃しているのはわたし達なのに、こっちが防戦一方になっている気がしてくる。
姥妙は氷の塊の形をツララのようにとがったものや、ボールのような球状のものに変える事ができてバリエーション豊かなのに対し、あられは雪を自在に操る事しかできないみたい。
吹雪のように激しく吹かせても、目くらましにはいいけれどダメージなんて与えられない。
さっき出した氷の塊は、何度も使えるものじゃないみたいだし。
まして宿祢は接近戦で本領発揮だがら、近づけないと意味がない。
姥妙が大蛇の姿になって大ぶりな攻撃しかしてこない今の内に何とか勝機を見出したいけど……。
やっぱり、作戦も何もないんじゃ勝てない。
連携プレーなんて出会ったばかりのわたし達には無理すぎる。
一度姥妙から離れて作戦を練らなくちゃ。
でもその為にはこの氷の壁を何とかしなくちゃいけないよね。
わたしの力じゃ砕くどころか傷一つつかなそうだし……そうだ!
「宿祢、錫杖に炎を纏わせる事ってできる?」
「これに、でござるか?」
「うん。このままじゃ絶対に勝てないし、一度逃げて作戦を立てよう」
「戦略的撤退という訳でござるな、承知」
ひらりと舞い降りてきた宿祢はわたしのお願いした通り錫杖に妖術をかける。
錫杖に炎がまるで蛇のように巻きついた。
「あられ!吹雪で視界を遮って!」
「まかせてっ」
わたしの考えを瞬時に理解してくれたらしく、あられが強烈な吹雪を引き起こす。
わたし達の前から完全に姥妙が消えた。
「はっ!」
バキィィィン
すぐさま宿祢が炎付き錫杖で氷壁を攻撃する。
わたしの考え通り氷壁は簡単に砕く事が出来た。
砕けなかったらどうしようかと思ったけど、何とかうまくいって良かった。
安堵する時間も惜しんですぐさま走り出す。
もちろん雪で足跡を消すのも忘れない。
あられが生み出した吹雪の追い風も受け、文字通り風のように駆けた。
わたしはやっぱり途中で宿祢に抱き上げられたけど。
雪の上を走る訓練もしなくちゃダメかなぁ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

処理中です...