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第四幕 愉比拿蛇
第二三話
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落ちる瞬間は景色がスローモーションで見えた。
なのに、その衝撃は痛いほど背中から伝わってきた。
突然の事で受け身なんてとる暇もなく、弥生は背中から地面に激突したのだ。
「…っ」
あまりの痛みに目から火花が飛び散ったかのようだった。
出口はもはや見えず、諦めて別の出口を探したほうが得策だろう。
痛む体に鞭打って弥生は歩き出す。
ここに居ては、いつ蛇の胴体に押し潰されるかもわからない。
ふらふらと歩く弥生の前に次々と霊魂が現れた。
タイミングから見てもこの蛇の――愉比拿蛇の使い魔だろう。
次々と襲い掛かってくる霊魂に霊具を展開して応戦しようとするが、数が多すぎる。
狙いを絞る暇もなく襲われては逃げる事しかできない。
「きゃっ」
必死に走る弥生だが、地中から少しだけ顔を出した胴体につまずき、その場に転んでしまった。
弥生が起き上がるよりも早く、次々と霊魂達が弥生を襲う。
霊魂の突撃する威力はすさまじく、まるで拳の雨に打たれているかのよう。
抵抗も防御も出来ず、弥生はただただ殴られるままだ。
打たれる度に揺れる体は、人間サンドバッグといったところか。
(あたし…このまま死んじゃうのかな?ようやく姫守にまでなれたのに…)
薄れゆく思考の中で、脳裏に浮かんだのは兄の顔だった。
弥生は啼々鏡家の中でも霊力が低く、姫巫女になるのは無理だと言われてきた。
父母でさえ弥生に対して諦めにも近い感情を抱いていた。
そんな中、唯一味方になってくれたのが兄の誠士郎である。
誠士郎自身も体が弱く、疎まれて生きていた。
霊力が物を言うこの里の決まりは理解している。
父母や啼々鏡の血を恨んだ事は一度もない。
だが、見返してやろうとは思った。
姫巫女の最高位、姫神になって、自分や兄を蔑んだ人々を見返してやろうと頑張ってきた。
もちろん、姫巫女には見返すだけでなく心の底から『なりたい』とも願っていたが。
(あたし…ちゃんと役目、果たしたよね?)
姫神であることりを守るのが姫守の弥生の役目である。
ことりが無事に逃げる為の駒にされたようなものではあるが、役目を果たした事には違いない。
最早痛みすら感じなくなった体に、弥生は半分諦めていた。
(お兄様、あたし、がんばったよ…)
『弥生さん』
意識を失いかけた時、ふと声が聞こえたような気がした。
(冬…?)
ここに居るはずがないと頭では分かっていても、その目は姿を探してしまう。
居ない事を確認すると、ジワリと涙が浮かんできた。
霊魂達の猛攻が止み、体が力なく倒れる。
抵抗する気力はもう、ない。
(忠告…ちゃんと聞けばよかった…)
何かに引っ張られるように、意識が遠のく。
助けが来ない事は絶望的で。
誰も助けになんて来ないとわかっているけれど。
(冬ならきっと……来てくれるよね?)
なのに、その衝撃は痛いほど背中から伝わってきた。
突然の事で受け身なんてとる暇もなく、弥生は背中から地面に激突したのだ。
「…っ」
あまりの痛みに目から火花が飛び散ったかのようだった。
出口はもはや見えず、諦めて別の出口を探したほうが得策だろう。
痛む体に鞭打って弥生は歩き出す。
ここに居ては、いつ蛇の胴体に押し潰されるかもわからない。
ふらふらと歩く弥生の前に次々と霊魂が現れた。
タイミングから見てもこの蛇の――愉比拿蛇の使い魔だろう。
次々と襲い掛かってくる霊魂に霊具を展開して応戦しようとするが、数が多すぎる。
狙いを絞る暇もなく襲われては逃げる事しかできない。
「きゃっ」
必死に走る弥生だが、地中から少しだけ顔を出した胴体につまずき、その場に転んでしまった。
弥生が起き上がるよりも早く、次々と霊魂達が弥生を襲う。
霊魂の突撃する威力はすさまじく、まるで拳の雨に打たれているかのよう。
抵抗も防御も出来ず、弥生はただただ殴られるままだ。
打たれる度に揺れる体は、人間サンドバッグといったところか。
(あたし…このまま死んじゃうのかな?ようやく姫守にまでなれたのに…)
薄れゆく思考の中で、脳裏に浮かんだのは兄の顔だった。
弥生は啼々鏡家の中でも霊力が低く、姫巫女になるのは無理だと言われてきた。
父母でさえ弥生に対して諦めにも近い感情を抱いていた。
そんな中、唯一味方になってくれたのが兄の誠士郎である。
誠士郎自身も体が弱く、疎まれて生きていた。
霊力が物を言うこの里の決まりは理解している。
父母や啼々鏡の血を恨んだ事は一度もない。
だが、見返してやろうとは思った。
姫巫女の最高位、姫神になって、自分や兄を蔑んだ人々を見返してやろうと頑張ってきた。
もちろん、姫巫女には見返すだけでなく心の底から『なりたい』とも願っていたが。
(あたし…ちゃんと役目、果たしたよね?)
姫神であることりを守るのが姫守の弥生の役目である。
ことりが無事に逃げる為の駒にされたようなものではあるが、役目を果たした事には違いない。
最早痛みすら感じなくなった体に、弥生は半分諦めていた。
(お兄様、あたし、がんばったよ…)
『弥生さん』
意識を失いかけた時、ふと声が聞こえたような気がした。
(冬…?)
ここに居るはずがないと頭では分かっていても、その目は姿を探してしまう。
居ない事を確認すると、ジワリと涙が浮かんできた。
霊魂達の猛攻が止み、体が力なく倒れる。
抵抗する気力はもう、ない。
(忠告…ちゃんと聞けばよかった…)
何かに引っ張られるように、意識が遠のく。
助けが来ない事は絶望的で。
誰も助けになんて来ないとわかっているけれど。
(冬ならきっと……来てくれるよね?)
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