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しおりを挟む私の親友はすごくモテる。
尋常じゃないほどモテる。
ふわふわした薄栗色の髪に、薔薇色の頬、うっすらピンク色の薄い唇、長いまつ毛に縁取られた大きな瞳、すべてをとってみても美少女だ。決して平々凡々ではない。
そんな彼女はここ何年も大きな悩みを抱えている。それはモテないということだ。
彼女は知らない。今まで彼女に告白しようとしたものたちの人数と末路を。
彼女には世界レベルにファンクラブが結成されておりその運営方針に全てファンは従っている。もちろん、彼女に告白しようとするのは違反行為に当たる。だが彼女に想いを告げようとしたものは後を経たない。
ファンクラブの存在は決して千里に知られてはいけない。それを破ったらどうなるのかは想像もしたくない。
千里が小学生の時に好きになった男の子は最終的にファンクラブ幹部の説得を受けて街から引っ越すという選択を選び、その代わり年に一回街中で千里とすれ違って良いという契約を交わしたらしい。
中学生の時に好きになった男の子はファンクラブ幹部の説得を受け入れず、千里から指定された告白の場所に何とか行こうとして……詳しくは詮索しないが何かしらファンクラブの動きがあった関係で骨折を繰り返し最終的にリタイアした。
もちろん彼ら以外に告白しようとして闇に葬り出されたものたちは星の数ほどいるらしい。
千里の付き合う相手は細かくチェックされ、ファンクラブ幹部7名による満場一致の賛成を得なければならない。そして見事クリアしたものが千里のそばにいられる権利が得られるのだ。
千里に関わる人間はそれぞれチェックを通過したものたちなのだ。
それは友人に限らず、千里がよく行くスーパーの品出しや宅配、学校の用務員など言い出したらキリがないほどである。
もちろん、千里の友人である私も何かしらチェックされ通過したということだ。詳しいことは私にはわからないがあれよあれよと千里と仲良くなって今に至っている。
私は千里のファンではないので詳しい会員情報なるものはわからない。純粋な友人としている。他の子達は千里が授業中に寝ている時とかもの凄くアツイ眼差しで見守っていたり、千里の落としたハンカチを拾って律儀にファンクラブの幹部へと届けてたりする。そのハンカチを拾うのも素手ではなく手袋をした上でピンセットを使用するという徹底ぶりだ。正直これにはドン引きした。
確かに顔の造形に興味のない私でも千里のレベルが一般を高く超えていることはわかる。そして愛される子であることもわかる。だが、それにしてもやりすぎだと思う。
千里の境遇は普通の常識では考えられないことなのだが実際にファンクラブは世界にあり、本部はここ日本にある。毎月1月に会員限定の雑誌が発行されているらしい。
ここ数年、千里があまりにもモテないと嘆いているから少しでも暇つぶしになるようにと、なんとファンクラブ総出でゲームを作ることにしていた。第一作は格闘ゲームだった。その本格的な作り込みのお陰か知らないが一般の人にも受け、世界的大ヒットになった。2作目はRPGゲームを作っていた。それもたちまち大ヒットし、その両方に千里は見事ハマった。千里の暇つぶしを作りたいというその圧倒的な熱量のためかしらないが千里の暇つぶしのためのゲームを作っていた会社は今や有名なゲーム会社と世間でも認識されている。
ファンクラブの力半端ない。
怖すぎる。
その後千里が戦闘系のゲームに夢中になったのも束の間、また段々モテへの追求が高くなり戦闘系のゲームでは誤魔化せなくなったようだった。そのため大々的にゲームを作るためオーディションを募り、遂に乙女ゲームまで作ったようだ。そして見事千里はその乙女ゲームにハマって今に至る。
まんまと策略にハマった千里にも呆れるがそこまでするファンクラブのファンや幹部にも呆れる。
最近引っ越してきた藤井くんとやらもどうやら5才の頃から千里のファンで、同じ空間にいるだけで緊張してしまうらしい。同じ教室で授業を受ける同級生というポジションを得るためにずっと努力を重ねて今に至るとこの前、体育祭で千里を守るマニュアル説明会の時熱く語られた。放課後教室に残っているのは千里がいたという事実がある場所にこれたということを噛み締めているとのことだ。普通に気持ち悪い。私はその場で引き攣る顔を隠すことはできなかった。
数少ない私が持っている情報の最後は、お隣の幼馴染の彼は幹部で千里のお父さんは副会長らしいということだ。そこよりも奥の情報は何となく知ったら元に戻れない気が強いて深く詮索するのをやめた。
よく考えてみてもこの状況はいろいろぶっ飛んでいる。
「ねぇ、あおちゃん。私って何でモテないのかな。何でだと思う?それなりに清潔感はあるはずだし性格だってそこまで悪くはないと思うしさ。モテたいっていうか、ただ1人私のことが大好きな人と彼氏彼女になりたいだけだよ。いっつも一方的に私だけ好きになって一方的にアタックしてその末恋が始まった試しがないって悲しすぎるでしょ!」
それなりに清潔感あるどころではない。アンタ、周りの人間を観察してみなさいよ。あんなにキラキラした目で見つめちゃって。クラスの人間が私たちの会話をめちゃくちゃ注目して聞いてるよ。あ、1人のクラスメイトが千里の顔面に耐えきれずに鼻血を流して倒れた。ま、あとで救護班がくるでしょ。
全てのことをぶちまけてこの茶番みたいなよくわからない状況を変えたい気もするがグッと我慢する。
「千里、焦っても仕方がないよ。案外アンタのことが好きな人は近くにいるかもよ。」
私が言えるのはここまでだよ。
「そろそろ私部活に行ってくるから、じゃあね。………頑張りなよ。」
精一杯のエールを送っておこう。
はぁー。この子はいつになったら自分がものすごく「モテている」ことに気付くのだろうか。
今までのことを知ったらどう思うのだろうか。そのときは思いっきり千里が恋愛も含めて"本当の"平凡な人生を歩めることを願おう。
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