アラフォー主婦が異世界に行ったら同じアラフォーの魔法使でした。

ぺこたま

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 帰国したら身の振り方を考えてもいいかもしれない。ちょっともやもやした気分で馬車に戻って考えていたら。
 ピコーンピコーン。
 と馬車につけた防犯ブザーがなった。先日の魔物襲来後、敵意あるものが近づくと警告がなるようにつけてみたのだ。まさか作動するとは。我ながらいい仕事してるわ~。
 馬車のスピードが落ちた。ドアをあけると(窓ほしい、不便)団長デレスが伴走していた。
「なんだ、あの屋根についてる赤いランプは!」
「敵襲ですよっ」
 答えずに馬車の上によじ登る。そんなにスピードでてないから大丈夫。ポシェットからオペラグラスを取り出す。観光用に作っておいたのだ。こんなところで役に立つとは。
「たぶん、盗賊?」
 人相悪いし、いやいやお話に出てくる盗賊そのまんまだよ。
「バカな。ここ辺りで盗賊」
「団長ー、盗賊です!数およそ30!」
 後ろについていた騎士がかけてきた。30は多いのか少ないのか相場がよくわからないけど、結構な人数だ。
 デレスはすぐ表情をひきしめ騎士たちに指示をとばした。
 逃げずに応戦ですね、了解。
 敵はうしろからだけなのか、一応周囲を確認。おっと、早速発見した。
「こっちからもくるよ!」
 安全な街道じゃなかったの?作戦上はそうだったんだろう。だって予想外みたいだし。王女様の視察って秘密じゃないんだよね?そんなに公でもなさそうだけど。単に運が悪かったのか、意図的なのか私には関係ないので考えないことにした。
 とりあえず前かけたプロテクトとスピードを騎士たちにかけとこう。ストレングスはどうしよ。スパンといってもいいものか?こういうのって捕らえて尋問するんじゃなかったっけ?じゃあ気絶の方がいいのかな。となると…雷か。
「サンダーレイン」
 広範囲だから魔力をいつもよりこめる。後ろとさっき見つけた横の両方。できるかな、と思ったらこれまたあっさりできてしまった。おう、ディタすごいね。
 雷撃であっさり全滅したっぽい。あ、馬がびっくりしてる、ごめん。大丈夫だからー君たちにはあてないよ。
 あっという間に所々煙がたっている盗賊たちが騎士たちによって捕縛されていく。転がって意識のない人間をしばるだけの簡単なお仕事です。
 落ち着いたようなので馬車から降りる。
「これ、どうするの?」
「近くの街の警備隊に引き渡す。戻った方が早いか、先の街か。隊を分散させないといかんな」
 渋い表情で返答がきた。
 そうだよね、時間がかかる。引き渡して調書とって報告して。

 なぜ、悪党のためにこっちがそこまでしなくちゃいけない?わざわざ手間暇かけてさ。礼金がでたとしても騎士団として受け取るのはどうか。ある意味治安を守ったという当たり前の仕事だし。私は持ってるし。時間の方が勿体ない。今後こういうことがあるかもしれない。戦力は減らしたくないはずだ。ディタがいたとしても。
 辺りを見回す。うってつけの木々がある。
「こんなのどうですか?”ハングマン”」
 魔力をつかって木々ロープで縛られた盗賊たちを吊す。
 足下にいき、「よいしょっ」とラオンの死体をポシェットから出して地面に置く。
「…なにしてるか聞いていいか?」
 いつの間にか周りが静かになっているのに気がついた。
「え?こうしたら他の魔物がよってくるでしょ?そしたら逃げられないかなぁ、と。見張りたてずに放っておいても」
 折角血が出ないようにしとめたのにさ。おいしい肉を。おまえたちのせいだぞ。
「二度とこんなことしないようにトラウマつくろうかと」
「ええ?!」
 おいしい肉なんだぞ、それを手放さなくてはいけない恨みだ。
「ラ、ラオン?!」
 早速気づいた吊された盗賊たちが騒ぎ出した。思ったより早く気がついたな。かなり軽めだった、てことか。普通にやったら雷で死んじゃうから確かにそうしたけど。加減が難しい。
「なんでこんなとこに?!」
「てめぇらおぼえとけよ!」
 はあ?
「あと何体必要ですか?今から狩ってきていいですか?新たにいるのですものねぇ。さすがに一人一体は難しそうなので。あ、日がくれる前に血をふりまきますか。いっぱい寄ってきますよね、新たな魔物たちが続々と」
 にっこり笑いかける。そしてすぐにたたみかける。
「まっすぐ北はオゾドの森ですね。そこに場所かえてもいいですよ?面倒ですけど、またこんなことされても二度手間ですし。世のため人のためですね」
 オゾドの森は魔物のランクが高い。それこそラオンだって普通にいるらしいし、大型の魔物が共存している。人が踏み入れない森だ。よっぽどの高ランク冒険者でないと。帝国の地図をみていたら載っていたので覚えている。どこの国にも属していない珍しい土地。そりゃどこもいらないよね。危険度の星が三つついてた。
 周りどん引きである。あれ?おかしいな。賛成じゃないの?
「時間がおしいので、あと十秒で決めてください。全員は無理かなぁ。ところで誰が頭ですかー?」
 一斉に一人の男をみる。なるほど、それっぽい。
「な、なにを」
「サンダーボルト」
 そりゃリーダーはアウトでしょう。
 黒こげ頭をおそろしそうに見下ろす盗賊たち。ちょっと手加減間違えたかな。大丈夫、死んではないよ。
「一命様~オゾドの森にごあ~んな~い」
「まっまて、オレがはなすっ」
「いや、オレがっ」
 次々に話し出す。だが、一国の姫を襲ったのだ、普通に考えても死刑は免れないでしょうに。厳しいこの世界で。
 裏のある話っぽいな。あとはデレスたちに騎士団にまかせよう。ラオンが出たり、盗賊がでてきたり、偶然ではすまされない気がする。
「本当にオゾドの森につれてくつもりだったのか?」
 馬車の中に戻ろうとしたところで話しかけられた。
「さすがに人の転移はできませんよ」
「はったりかよ」
「その代わり幻影みさせておく、て方法にしようかと。気持ちは同じでしょ?」
 本当のオゾドの森がどんな風景かはわからないけど、想像はできる。安全だと本人たちがわかっていないだけならやりようはある。
「こえーな」
 悪人には容赦しません。
 そう思うとやっぱりラオンが惜しくなってきた。あ、昨日の頭はどうしたんだろう。はねた頭は。確か食べる場所はないと言っていた。
「ラオンの頭も回収してましたよね?」
「あぁ。牙は素材になるからな。俺が預かってる」
「あっちの牙あげるのでそれと交換してくれません?」
 食べられないところはいらないし。
「…肉のおすそわけありか?」
「仕方ありませんね」
 そもそも一人で食べきれない量だ。
 交渉成立。早速私のラオンを回収して、ヨゾンのマジックバッグから頭だけのラオンを出して交換、と。
 安堵を浮かべた盗賊たちが血だらけのラオンの頭を見て一瞬で全員青くなった。こっちの方が怖いよね、そりゃ。頭だけだし。見上げる角度にしておいた。いい仕事したわ~。 
 クリーンをかけて馬車に戻る。あ、頭だけでも牙は今とってもいいんじゃない?ま、いっか。多分ヨゾンたちがうまく後で回収するでしょう。
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