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「え、ない?」
浮かれていた分、気持ち下がるスピードが速い。よく考えればわかることだ。風呂自体、王城や上級貴族くらいしか持ってない。いくら王女様が泊まるとはいえ国の中心から外れた街の宿にあるはずもない。いや、簡易なのはあった。勿論王女様が使う。
ていうか、もっといいところ泊まったりしないのだろうか。実は貧乏王国?それとも地位の低さゆえの予算不足?あえて、なの?庶民の生活を経験したいだけとか?
「そ、そんなに驚かれるとは。我々はお湯とタライが使えるだけで充分ですよ」
「ムリ。家に帰りたい」
ああ、なんで○こでも○ア作ってなかったんだ。さすがんい空間つなげるのは無理だけど、思わずにはいられない。今私の頭の中はお風呂のことでいっぱいなんだよー。
「まさか。ディタ殿の家にはお風呂が?」
「ディタでいいよ。小さいけど作ったよ」
ああ、愛しのマイホーム。
こうなったら簡易風呂を作るしかない!そう。これは前にも作ったことのある樽風呂。今度から持ち歩こう。
「マミヤ。宿の人に大きな樽余ってたらもらえるかきいてくれない?!」
「あ、はい」
私の必死さを哀れとと思ったのか、動揺しながらも聞きに行ってくれた。
そして。やっほーやったね!!ゲットだぜー。
それからの行動は早い。さすがに部屋の中では許可が下りなかったので、野外に作りました。魔法便利すぎ!
樽を”クリーン”で除菌(なんて万能)して水を魔法で入れて、温めた。天幕を借りて設置。
優しく手伝ってくれたマミヤたちにも感謝。意外にもみなさん興味津々だった。うら若き乙女たちのために囲いも木で作ってみた。おばちゃんはいいんだけどね。なんでだろ、出産後ますます羞恥心とやらがうすれていくのは気のせいかしら。
贅沢にローズも入れてみた。
「あ~至福なり~」
でちゃうよね、声が。
「そんなにいいですか?」
「当然だよっ次替わるね。一番風呂ありがとう」
「えっいいのですか?」
「勿論。見張りは任せて」
どこに不埒な奴がいるとも限らないからね。
ジャジャーン。見守りガーゴイル君三号です。
「え、と。交代で見張りたてるので、隊の皆を入らせてもらってもいいでしょうか」
なぜか不評だった。よく見たら愛嬌あるよ?おかしいな。
短い時間だったけど皆さん満足されたようでよかったです。ローズの香りも好評でした。露天風呂最高~。
翌日。ヨゾンに会うなり文句を言われた。
「なんで誘ってくれなかったんだよ」
「なんで誘うと思ったんですか?!」
きけば奥さんの実家である地方が温泉街らしく慣れているというのだ。なんとうらやましい。今度行かせてもらおう。
ていうかこれも初日から作ればよかったじゃん。ま、あ、初日は孤独だから無理だったか。うん。
仕方ないので、材料があればねえ~と逃げてたら、宿を出発するぎりぎりの時間になって、他の店から樽をもらって戻ってきた。またもや職権乱用。周りの騎士ひいてるじゃん。樽を転がし走ってくるおっさん。運動会の競争か?!
「はぁはぁ。もう一個くらいもってるだろ?」
恐喝されてマジックバッグをあげました。嘘。ちゃんと温泉の件を条件に渡したよ。
樽を入れて嬉しそうに肩からバッグをかけるご機嫌なおっさん。大丈夫か、魔導局?
四日目は何もなく平和にすすんだ。いや、昼にパンケーキ争奪戦があった。甘い匂いをさせたのがいけなかったわ。
初めはいつものごとく騎士一人だったんだけど、わらわらとわいてきた。そう文字通り。さすがに全員分は焼けなかったので、ジャンケン大会となったのだ。地位は関係ないので、ヨゾンとデレスは負けて悔しがっていた。にらまれた騎士は視線の届かないところで、でも食べていた。
バターとシロップがほしかったな。あれば完璧。今度探しておこう。使い終わった食器類をまとめて”ディッシュウォッシャー”かけてたらヨゾンが寄ってきて宝石を出してきた。
おかしいな、予定外に仕事ばかりしてない?!
五日目。今日も快晴、いい天気で何よりだ。旅は天候によって気分左右されからね。よかった、雨じゃなくて。主に食事関係の理由で。
今日のおやつは何にしようかんと昼過ぎに考えていたら、珍しい人物が来た。侍女アデルだ。
「ほら、あれをわたくしたちにもかけなさい」
突然そう言われて「は?」と聞き返さなかった自分を褒めてほしい。あれ、ってなんだ?主語がないよ。
「マミヤたちや騎士団にかけてる魔法よ」
無反応なディタにいらだたしそうに言う。そして顔が赤いのはきのせいではないだろう。いくら一昨日宿で風呂に入ったからといっても、それはいつもとはだいぶ違う。周りに臭いがないと自分たちの匂いが気になってくるのは普通。それが高貴な人たちならなおさらか。
「まず、わたくしにしなさい。何もなかったらセリカ様にもしてちょうだい」
「は?」
だめだ、二回目は抑えられなかった。ごめんねぇ、おばちゃん小娘にこんな風に言われるの初めてでさ。耐性ないわー。
「なぜですか?みなさん自分でやっているのですよ」
=自分でやれよ、そのくらい。
「!な、なんですって?セリカ様の命令に逆らうというの!」
はあ。多分王女様は命令なんてしてないでしょ。いいとこ気になってはいるけど、くらいじゃないの?しかも、逆らう、ておかしくない?
「今回の仕事契約内容は『護衛』ですので」
「でもあの人たちに」
「ああ、友人として一度教えただけですよ」
君は友人じゃなからねえ。しかもそんな態度とられて教える、とでも?かたくなな態度だと主審の立場も危うくする、てわかってるのかなぁ。
さすがに「覚えておきなさいっ」みたいな捨てゼリフははかれなかったけど、怒って帰って行った。
さて、どうでるかな。正直ディタとしてはこのままあの国にいなきゃいけない理由はない気がする。愛着もないし、しがらみもないんじゃないかなぁ。惰性でいるだけのような。
浮かれていた分、気持ち下がるスピードが速い。よく考えればわかることだ。風呂自体、王城や上級貴族くらいしか持ってない。いくら王女様が泊まるとはいえ国の中心から外れた街の宿にあるはずもない。いや、簡易なのはあった。勿論王女様が使う。
ていうか、もっといいところ泊まったりしないのだろうか。実は貧乏王国?それとも地位の低さゆえの予算不足?あえて、なの?庶民の生活を経験したいだけとか?
「そ、そんなに驚かれるとは。我々はお湯とタライが使えるだけで充分ですよ」
「ムリ。家に帰りたい」
ああ、なんで○こでも○ア作ってなかったんだ。さすがんい空間つなげるのは無理だけど、思わずにはいられない。今私の頭の中はお風呂のことでいっぱいなんだよー。
「まさか。ディタ殿の家にはお風呂が?」
「ディタでいいよ。小さいけど作ったよ」
ああ、愛しのマイホーム。
こうなったら簡易風呂を作るしかない!そう。これは前にも作ったことのある樽風呂。今度から持ち歩こう。
「マミヤ。宿の人に大きな樽余ってたらもらえるかきいてくれない?!」
「あ、はい」
私の必死さを哀れとと思ったのか、動揺しながらも聞きに行ってくれた。
そして。やっほーやったね!!ゲットだぜー。
それからの行動は早い。さすがに部屋の中では許可が下りなかったので、野外に作りました。魔法便利すぎ!
樽を”クリーン”で除菌(なんて万能)して水を魔法で入れて、温めた。天幕を借りて設置。
優しく手伝ってくれたマミヤたちにも感謝。意外にもみなさん興味津々だった。うら若き乙女たちのために囲いも木で作ってみた。おばちゃんはいいんだけどね。なんでだろ、出産後ますます羞恥心とやらがうすれていくのは気のせいかしら。
贅沢にローズも入れてみた。
「あ~至福なり~」
でちゃうよね、声が。
「そんなにいいですか?」
「当然だよっ次替わるね。一番風呂ありがとう」
「えっいいのですか?」
「勿論。見張りは任せて」
どこに不埒な奴がいるとも限らないからね。
ジャジャーン。見守りガーゴイル君三号です。
「え、と。交代で見張りたてるので、隊の皆を入らせてもらってもいいでしょうか」
なぜか不評だった。よく見たら愛嬌あるよ?おかしいな。
短い時間だったけど皆さん満足されたようでよかったです。ローズの香りも好評でした。露天風呂最高~。
翌日。ヨゾンに会うなり文句を言われた。
「なんで誘ってくれなかったんだよ」
「なんで誘うと思ったんですか?!」
きけば奥さんの実家である地方が温泉街らしく慣れているというのだ。なんとうらやましい。今度行かせてもらおう。
ていうかこれも初日から作ればよかったじゃん。ま、あ、初日は孤独だから無理だったか。うん。
仕方ないので、材料があればねえ~と逃げてたら、宿を出発するぎりぎりの時間になって、他の店から樽をもらって戻ってきた。またもや職権乱用。周りの騎士ひいてるじゃん。樽を転がし走ってくるおっさん。運動会の競争か?!
「はぁはぁ。もう一個くらいもってるだろ?」
恐喝されてマジックバッグをあげました。嘘。ちゃんと温泉の件を条件に渡したよ。
樽を入れて嬉しそうに肩からバッグをかけるご機嫌なおっさん。大丈夫か、魔導局?
四日目は何もなく平和にすすんだ。いや、昼にパンケーキ争奪戦があった。甘い匂いをさせたのがいけなかったわ。
初めはいつものごとく騎士一人だったんだけど、わらわらとわいてきた。そう文字通り。さすがに全員分は焼けなかったので、ジャンケン大会となったのだ。地位は関係ないので、ヨゾンとデレスは負けて悔しがっていた。にらまれた騎士は視線の届かないところで、でも食べていた。
バターとシロップがほしかったな。あれば完璧。今度探しておこう。使い終わった食器類をまとめて”ディッシュウォッシャー”かけてたらヨゾンが寄ってきて宝石を出してきた。
おかしいな、予定外に仕事ばかりしてない?!
五日目。今日も快晴、いい天気で何よりだ。旅は天候によって気分左右されからね。よかった、雨じゃなくて。主に食事関係の理由で。
今日のおやつは何にしようかんと昼過ぎに考えていたら、珍しい人物が来た。侍女アデルだ。
「ほら、あれをわたくしたちにもかけなさい」
突然そう言われて「は?」と聞き返さなかった自分を褒めてほしい。あれ、ってなんだ?主語がないよ。
「マミヤたちや騎士団にかけてる魔法よ」
無反応なディタにいらだたしそうに言う。そして顔が赤いのはきのせいではないだろう。いくら一昨日宿で風呂に入ったからといっても、それはいつもとはだいぶ違う。周りに臭いがないと自分たちの匂いが気になってくるのは普通。それが高貴な人たちならなおさらか。
「まず、わたくしにしなさい。何もなかったらセリカ様にもしてちょうだい」
「は?」
だめだ、二回目は抑えられなかった。ごめんねぇ、おばちゃん小娘にこんな風に言われるの初めてでさ。耐性ないわー。
「なぜですか?みなさん自分でやっているのですよ」
=自分でやれよ、そのくらい。
「!な、なんですって?セリカ様の命令に逆らうというの!」
はあ。多分王女様は命令なんてしてないでしょ。いいとこ気になってはいるけど、くらいじゃないの?しかも、逆らう、ておかしくない?
「今回の仕事契約内容は『護衛』ですので」
「でもあの人たちに」
「ああ、友人として一度教えただけですよ」
君は友人じゃなからねえ。しかもそんな態度とられて教える、とでも?かたくなな態度だと主審の立場も危うくする、てわかってるのかなぁ。
さすがに「覚えておきなさいっ」みたいな捨てゼリフははかれなかったけど、怒って帰って行った。
さて、どうでるかな。正直ディタとしてはこのままあの国にいなきゃいけない理由はない気がする。愛着もないし、しがらみもないんじゃないかなぁ。惰性でいるだけのような。
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