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冒険者へ
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…馬じゃないよね?馬って角がないはずだし。さっきは気づかなかったけど。今まで見たことない。
「見るの初めてか?」
「これ、何という種族ですか?」
「ニードル」
「え?うあ、本物だ!でけぇ」
まだぐったり気味の二人が降りてきた。ニードル?
「魔獣だ」
え!従わすことなんてできるの?確か魔物と魔獣との違いは、意志疎通が出来るか否かだっけ?
「テイマー?」
「あー、ちょっと違うな。一応契約はしているが、しがらみはないし」
ザシュは、すげぇすげぇを連発しながら、興味津々に近づいていく。
「いきなり触ったら、噛みつかれるから気を付けろよ?」
ザシュはびくっと手をひっこめた。
フルドラは笑って言うけどさ。怖くない?噛みつかれるってなんだ?!
「エサは人間ですか」
「んなわけあるかよ?!ミミはグルメなんだぞ」
ミミ。ミミちゃん?可愛い名前だった。女の子だったのか。
そして、人間はおいしくない、と。よかったよかった。ひとまず人は主食ではなさそうだ。普通に魔物を食べるらしい。黒い体躯は普通の馬の1.5倍はありそうだ。毛並みツヤツヤしている。焦げ茶のたてがみで角は真っ黒。串刺しされたら痛いどころじゃないだろうなぁ。ドリルだ。白だったらユニコーンだね。
この一頭でこの荷馬車を引っ張ってきたなんて、力持ちー。しかもスピードがハンパなく出てた。スタミナあるなぁ。うん、軽い魔物なんて吹っ飛ばせるのは納得だわ。
「直接乗ることもできるんですか?」
「ああ。認めたやつじゃないと乗せないがな」
ですよね~。そんな雰囲気醸し出してる。容赦なく振り落としそう。プライドは高そうだけど、認めた人だけは乗せるなんてかっこいい。信念だわ。
「魔物の他には、何食べるんですか?」
この際聞いちゃおう。
「まぁ、割と何でも。そういうの雑食っていうんだっけか?あ、イテッ、悪かったよ。冗談だよ。グルメだもんなー」
甘噛みされてる。いや、充分怖いけどその図。完全にザシュとファンクはひいてる。うん、絵柄がホラーになりかけてる。
歯ごたえある方がすき?そうだな。
お菓子はよくないよね。としたら、普通にフルーツか、肉か。この前お土産でステーキ肉もらったから、それにしてみようか。
「ステーキ食べますか?」
「ああ、肉は好きだが、焦げてるのは好きじゃない」
いや、誰でもそうだと思う。お米のコゲと肉のコゲは全然違うからね?なんで肉を焦がすかねぇ。この世界では普通なのか?
ちょうど昼ご飯だというし。
川辺でムジカさんが昼の用意をしていた。やっぱシートないのかー。そのまま石の上に座ろうとしていたネルさんを止めて、リュックを持ってきた。レジャーシートを広げる。石は冷えるからね。このシートは毛布を重ねているからマシなはず。ダンジョンで使った物の改良版よ。
「大きくなってる…」
あのダンジョンで使ったのは一人用だからねー。あ、でも拡大とか使えば広げられるのかな?そしたら荷物少なくていいね。ま、私の場合はこのバッグたちがあるからいいけどさ。えっへん。
「おしりいたくなーい」
でしょ?いつもの簡易キッチンを出して、フライパンを取り出し火を付ける。ノズからちゃんと適度に切ってもらった肉(切り口大事!)を軽く焼いていく。で、この前残らなかったオニオンソースを再度作った物をかける。皿に載せて、ミミの前へと。
お~匂いかいでる。いい匂いでしょ~。
「うまそうだな」
手を出そうとしたフルドラをミミが軽く体当たりする。びゅん、て風がおこった。
「うおっ」
と、Aランクが転がる。
「ミミちゃんの食事に手を出すからよ。ね~」
「ヒヒ~ンっ」
…鳴き声は馬なんだね。
「お疲れさま。熱いので気を付け」
て、を言う前に、ぺろりと。皿から肉が消えた。はやっ。
ハフハフ言ってるけど。熱いんだね…。大丈夫、誰もあなたの食事を邪魔しないよ。…怖くて。
ミミはもぐもぐしている。ちょっと分厚かったかな。それからさらに本当は、薄く切るつもりだったから。
「ミミっ」
「ヒヒーン」
ぐぬぬとフルグラがうめいている。大人げない。
「少しくらい残してくれてもいいじゃないか」
ミミは皿をきれいになめている。一滴も渡すまい、と。
オニオン、辛くないんだね。なんとなく動物は苦手かと思っていたけど。それともミミが違うのかな。
「ちなみに、何の肉だ」
「ハイオークの何とかって言ってた」
「あ?」
「それはきっと珍しい肉でしょうね。なんとか、が気になりますが。もしやニイナさんが?」
ムジカさんが聞いてきた。
「まさか!餞別にいただいただけですよ」
どうやら強い魔物らしい。オークの進化したのがハイオーク、というのは知っている。なんとか、は位?
ノズがスロウとがんばって探したかいがあった、と言ってたなぁ、そういえば。
「もらったのか?買った、ではなく?」
「う~ん、厳密に言うなら、物々交換的な?」
でも、きっとこの肉の方が高そうだな。
「ほう?じゃ、俺がその肉を捕ってきたら料理してくれんのか?」
「え、今?」
「さすがにここら辺にはいませんよ」
安全地帯だもんね。いたら困るっつうの。
「そこはミミの頑張りでちょいと移動して。な?」
ブルルとミミがうなづく。相性いいんだろうなー。
「さすがAランク!」
「あはは。どんだけ遠くまでいくつもり?!」
あこがれの声はファンクで、ザシュは遠い目だ。
そうか、遠いところなのか。そんな苦労までして捕ってきてくれたんだね、あの二人。思わず定期便したくなっちゃったじゃないか。
「えっと…あと少しなら手持ちあるので」
「恩にきる」
うわっ急に目の前に動いてきたよ。Aランクって普通の動きも早いの?
「みなさんの分を考えると、一切れですよ?」
「ありがとうございます。では、こちらは何を出しましょうかねぇ」
ムジカさんの声がうきうきしてるように聞こえる。馬車へ向かっていった。
「ええっ僕たち何もないよ。どうする、ザシュ。僕は絶対食べたいんだけどっ」
「わっ。あのな」
「ザシュはいらないからいいのか。僕は、えーと。う~ん」
「話きけよっ」
うんうん、律儀に考えてくれるのね、ありがとう。おばちゃん、その将来性を買うよ。
「俺はとりあえずコレをやろう」
ん?フルドラが腰に付けていた袋から、ビンを取り出した。あれってマジックポーチだ。コインが入ってる巾着財布かと思った。初めてつけてる人を見た。
「ポーション?」
「少し魔力が回復するらしい」
「!その話くわしくっ」
こんなところでまさかの魔力回復ポーションが出てくるとは。
「やっぱ魔法使だったんだな。まあ、これもお礼品でもらったやつなんだけどよ。元からの魔力に対して10%ほどと言ってたから気休めくらいだろうが、魔法使にとっては大切なんだろ?」
イエスイエス!
「俺はそこまで魔力ないし、使わねぇからさ」
どうみたってその大きい剣使う剣士ですよね。
「ありがとうございますっ」
いいモノが手には入ったぞ~。これは他のもサービスしなければ。
「じゃ、これどーぞ」
ナッツバーを手渡す。
ああ!と後ろで声がした。ザシュだな。
「携帯食か?見慣れないものだが。なんだ知ってんのか、坊主」
「すっごく甘くておいしくて力が出ますっお菓子ですよ。疲れも吹き飛ぶんですっ」
…力説してくれた。なんかうさんくさい代物になってるような。そんな魔法の効果はないけどね。
それを聞いたからか、セッテちゃんが来た。
「おかし?おかしくれるの?」
う~ん、お菓子ではないんだけどなぁ。
「セッテちゃんにはご飯が終わったら、別のをあげるね。これはね、旅の途中だと馬車じゃなきゃ食べ物をたくさん持ち歩くのも大変でしょう?その代わりなの」
クッキーをネルさんに渡す。…もう目がそっちにいってるよ。悪い人に誘拐されないでね?おばちゃん心配になってくるわ。
「甘いのが嫌だったらこっちを。好みがあるらしいので」
ノズはクッキータイプの方がいい、て言ってたしね。
「じゃあ、二つもらって手伝うことはありか?」
「OKです。肉を人数分切って下さい」
さくっと話が進むのは気持ちいい。
肉を薄く切るのは苦手なんだよね。ノコギリみたいに切っちゃうと味が落ちてしまうし。
さすがAランク。ノズなみにスパスパためらいなく、さくっと切ってくれた。
「なかなかい切り口だったな。ジスティでか?」
そんな名前だったような、あの街。一瞬なにを言ってるのかわからなかった。
「はい。ギルドのノズにやってもらいました」
奥さんにデレデレで弱いけど、腕はプロですよ。
「なるほどな。ハイオーク異種も捕ってこれるわけだ」
ギルドマスターの次に強いって言ってたからね。
よし、これでささっと焼いてしまおう。器用に7切れあった。ミミのはないのね。あとで蹴られきゃいいけど。
川辺で肉を焼くってバーベキューみたい。ついでに野菜も焼いてしまおう。栄養バランス大事。パンも出しておこうかな。あー、おにぎりが欲しいよ。焼きおにぎりがしたかった。
ダンジョンキノコも焼いてみた。自分用にね。うん、まずくもなく特別おいしいわけでもなかった。タレがおいしい(自画自賛)から、いけたけど。今度は醤油をマウシャで買って試してみよう。
その他にもムジカさんが馬車から食材を取ってきてくれたので追加で焼いた。思いもよらず、満腹だ。幸せ~。
なんの野菜かもわからないのもあったけど、おいしかった。
セッテちゃんは、やはり普通のクッキーが一番のようだった。今度からお肉はハイオークしか食べない、てならなくてよかったわ。責任感じちゃうよ。
ネルさんは生肉がダメだろうから、中まで火を通した。それで充分おいしいと言ってもらえたのでよかった。
案の定、フルドラはミミに肉をねらわれて、蹴りをかわしながら一口で食べてた。その早さにびっくりよ。普通の人だったら瞬殺なんですけどー。次は自分で捕ってきて下さい。焼き方を教えてみたけど。う~ん、どうかな。普段料理しないって言ってたし。
ファンクとザシュは、今後困ったときに助けてね、と言って肉をあげた。その時のザシュのキラキラ目におばちゃん眩しくて心がやられそうになったわ~。
ファンクは肉を食べた瞬間のびっくり顔が素直すぎて笑えた。もう、それ見れただけでいよ。
「ハイオーク、ハイオーク」とブツブツ言ってたけど、気にしないでおくことにした。
そして、ムジカさんはなんとブーツをくれた。靴は一足で心許なかったのですごく嬉しい。有名商会で取り扱ってることだけあってか、履き心地もよかった。防水をあとでかけておこう。大事に使わせていただきます。
「見るの初めてか?」
「これ、何という種族ですか?」
「ニードル」
「え?うあ、本物だ!でけぇ」
まだぐったり気味の二人が降りてきた。ニードル?
「魔獣だ」
え!従わすことなんてできるの?確か魔物と魔獣との違いは、意志疎通が出来るか否かだっけ?
「テイマー?」
「あー、ちょっと違うな。一応契約はしているが、しがらみはないし」
ザシュは、すげぇすげぇを連発しながら、興味津々に近づいていく。
「いきなり触ったら、噛みつかれるから気を付けろよ?」
ザシュはびくっと手をひっこめた。
フルドラは笑って言うけどさ。怖くない?噛みつかれるってなんだ?!
「エサは人間ですか」
「んなわけあるかよ?!ミミはグルメなんだぞ」
ミミ。ミミちゃん?可愛い名前だった。女の子だったのか。
そして、人間はおいしくない、と。よかったよかった。ひとまず人は主食ではなさそうだ。普通に魔物を食べるらしい。黒い体躯は普通の馬の1.5倍はありそうだ。毛並みツヤツヤしている。焦げ茶のたてがみで角は真っ黒。串刺しされたら痛いどころじゃないだろうなぁ。ドリルだ。白だったらユニコーンだね。
この一頭でこの荷馬車を引っ張ってきたなんて、力持ちー。しかもスピードがハンパなく出てた。スタミナあるなぁ。うん、軽い魔物なんて吹っ飛ばせるのは納得だわ。
「直接乗ることもできるんですか?」
「ああ。認めたやつじゃないと乗せないがな」
ですよね~。そんな雰囲気醸し出してる。容赦なく振り落としそう。プライドは高そうだけど、認めた人だけは乗せるなんてかっこいい。信念だわ。
「魔物の他には、何食べるんですか?」
この際聞いちゃおう。
「まぁ、割と何でも。そういうの雑食っていうんだっけか?あ、イテッ、悪かったよ。冗談だよ。グルメだもんなー」
甘噛みされてる。いや、充分怖いけどその図。完全にザシュとファンクはひいてる。うん、絵柄がホラーになりかけてる。
歯ごたえある方がすき?そうだな。
お菓子はよくないよね。としたら、普通にフルーツか、肉か。この前お土産でステーキ肉もらったから、それにしてみようか。
「ステーキ食べますか?」
「ああ、肉は好きだが、焦げてるのは好きじゃない」
いや、誰でもそうだと思う。お米のコゲと肉のコゲは全然違うからね?なんで肉を焦がすかねぇ。この世界では普通なのか?
ちょうど昼ご飯だというし。
川辺でムジカさんが昼の用意をしていた。やっぱシートないのかー。そのまま石の上に座ろうとしていたネルさんを止めて、リュックを持ってきた。レジャーシートを広げる。石は冷えるからね。このシートは毛布を重ねているからマシなはず。ダンジョンで使った物の改良版よ。
「大きくなってる…」
あのダンジョンで使ったのは一人用だからねー。あ、でも拡大とか使えば広げられるのかな?そしたら荷物少なくていいね。ま、私の場合はこのバッグたちがあるからいいけどさ。えっへん。
「おしりいたくなーい」
でしょ?いつもの簡易キッチンを出して、フライパンを取り出し火を付ける。ノズからちゃんと適度に切ってもらった肉(切り口大事!)を軽く焼いていく。で、この前残らなかったオニオンソースを再度作った物をかける。皿に載せて、ミミの前へと。
お~匂いかいでる。いい匂いでしょ~。
「うまそうだな」
手を出そうとしたフルドラをミミが軽く体当たりする。びゅん、て風がおこった。
「うおっ」
と、Aランクが転がる。
「ミミちゃんの食事に手を出すからよ。ね~」
「ヒヒ~ンっ」
…鳴き声は馬なんだね。
「お疲れさま。熱いので気を付け」
て、を言う前に、ぺろりと。皿から肉が消えた。はやっ。
ハフハフ言ってるけど。熱いんだね…。大丈夫、誰もあなたの食事を邪魔しないよ。…怖くて。
ミミはもぐもぐしている。ちょっと分厚かったかな。それからさらに本当は、薄く切るつもりだったから。
「ミミっ」
「ヒヒーン」
ぐぬぬとフルグラがうめいている。大人げない。
「少しくらい残してくれてもいいじゃないか」
ミミは皿をきれいになめている。一滴も渡すまい、と。
オニオン、辛くないんだね。なんとなく動物は苦手かと思っていたけど。それともミミが違うのかな。
「ちなみに、何の肉だ」
「ハイオークの何とかって言ってた」
「あ?」
「それはきっと珍しい肉でしょうね。なんとか、が気になりますが。もしやニイナさんが?」
ムジカさんが聞いてきた。
「まさか!餞別にいただいただけですよ」
どうやら強い魔物らしい。オークの進化したのがハイオーク、というのは知っている。なんとか、は位?
ノズがスロウとがんばって探したかいがあった、と言ってたなぁ、そういえば。
「もらったのか?買った、ではなく?」
「う~ん、厳密に言うなら、物々交換的な?」
でも、きっとこの肉の方が高そうだな。
「ほう?じゃ、俺がその肉を捕ってきたら料理してくれんのか?」
「え、今?」
「さすがにここら辺にはいませんよ」
安全地帯だもんね。いたら困るっつうの。
「そこはミミの頑張りでちょいと移動して。な?」
ブルルとミミがうなづく。相性いいんだろうなー。
「さすがAランク!」
「あはは。どんだけ遠くまでいくつもり?!」
あこがれの声はファンクで、ザシュは遠い目だ。
そうか、遠いところなのか。そんな苦労までして捕ってきてくれたんだね、あの二人。思わず定期便したくなっちゃったじゃないか。
「えっと…あと少しなら手持ちあるので」
「恩にきる」
うわっ急に目の前に動いてきたよ。Aランクって普通の動きも早いの?
「みなさんの分を考えると、一切れですよ?」
「ありがとうございます。では、こちらは何を出しましょうかねぇ」
ムジカさんの声がうきうきしてるように聞こえる。馬車へ向かっていった。
「ええっ僕たち何もないよ。どうする、ザシュ。僕は絶対食べたいんだけどっ」
「わっ。あのな」
「ザシュはいらないからいいのか。僕は、えーと。う~ん」
「話きけよっ」
うんうん、律儀に考えてくれるのね、ありがとう。おばちゃん、その将来性を買うよ。
「俺はとりあえずコレをやろう」
ん?フルドラが腰に付けていた袋から、ビンを取り出した。あれってマジックポーチだ。コインが入ってる巾着財布かと思った。初めてつけてる人を見た。
「ポーション?」
「少し魔力が回復するらしい」
「!その話くわしくっ」
こんなところでまさかの魔力回復ポーションが出てくるとは。
「やっぱ魔法使だったんだな。まあ、これもお礼品でもらったやつなんだけどよ。元からの魔力に対して10%ほどと言ってたから気休めくらいだろうが、魔法使にとっては大切なんだろ?」
イエスイエス!
「俺はそこまで魔力ないし、使わねぇからさ」
どうみたってその大きい剣使う剣士ですよね。
「ありがとうございますっ」
いいモノが手には入ったぞ~。これは他のもサービスしなければ。
「じゃ、これどーぞ」
ナッツバーを手渡す。
ああ!と後ろで声がした。ザシュだな。
「携帯食か?見慣れないものだが。なんだ知ってんのか、坊主」
「すっごく甘くておいしくて力が出ますっお菓子ですよ。疲れも吹き飛ぶんですっ」
…力説してくれた。なんかうさんくさい代物になってるような。そんな魔法の効果はないけどね。
それを聞いたからか、セッテちゃんが来た。
「おかし?おかしくれるの?」
う~ん、お菓子ではないんだけどなぁ。
「セッテちゃんにはご飯が終わったら、別のをあげるね。これはね、旅の途中だと馬車じゃなきゃ食べ物をたくさん持ち歩くのも大変でしょう?その代わりなの」
クッキーをネルさんに渡す。…もう目がそっちにいってるよ。悪い人に誘拐されないでね?おばちゃん心配になってくるわ。
「甘いのが嫌だったらこっちを。好みがあるらしいので」
ノズはクッキータイプの方がいい、て言ってたしね。
「じゃあ、二つもらって手伝うことはありか?」
「OKです。肉を人数分切って下さい」
さくっと話が進むのは気持ちいい。
肉を薄く切るのは苦手なんだよね。ノコギリみたいに切っちゃうと味が落ちてしまうし。
さすがAランク。ノズなみにスパスパためらいなく、さくっと切ってくれた。
「なかなかい切り口だったな。ジスティでか?」
そんな名前だったような、あの街。一瞬なにを言ってるのかわからなかった。
「はい。ギルドのノズにやってもらいました」
奥さんにデレデレで弱いけど、腕はプロですよ。
「なるほどな。ハイオーク異種も捕ってこれるわけだ」
ギルドマスターの次に強いって言ってたからね。
よし、これでささっと焼いてしまおう。器用に7切れあった。ミミのはないのね。あとで蹴られきゃいいけど。
川辺で肉を焼くってバーベキューみたい。ついでに野菜も焼いてしまおう。栄養バランス大事。パンも出しておこうかな。あー、おにぎりが欲しいよ。焼きおにぎりがしたかった。
ダンジョンキノコも焼いてみた。自分用にね。うん、まずくもなく特別おいしいわけでもなかった。タレがおいしい(自画自賛)から、いけたけど。今度は醤油をマウシャで買って試してみよう。
その他にもムジカさんが馬車から食材を取ってきてくれたので追加で焼いた。思いもよらず、満腹だ。幸せ~。
なんの野菜かもわからないのもあったけど、おいしかった。
セッテちゃんは、やはり普通のクッキーが一番のようだった。今度からお肉はハイオークしか食べない、てならなくてよかったわ。責任感じちゃうよ。
ネルさんは生肉がダメだろうから、中まで火を通した。それで充分おいしいと言ってもらえたのでよかった。
案の定、フルドラはミミに肉をねらわれて、蹴りをかわしながら一口で食べてた。その早さにびっくりよ。普通の人だったら瞬殺なんですけどー。次は自分で捕ってきて下さい。焼き方を教えてみたけど。う~ん、どうかな。普段料理しないって言ってたし。
ファンクとザシュは、今後困ったときに助けてね、と言って肉をあげた。その時のザシュのキラキラ目におばちゃん眩しくて心がやられそうになったわ~。
ファンクは肉を食べた瞬間のびっくり顔が素直すぎて笑えた。もう、それ見れただけでいよ。
「ハイオーク、ハイオーク」とブツブツ言ってたけど、気にしないでおくことにした。
そして、ムジカさんはなんとブーツをくれた。靴は一足で心許なかったのですごく嬉しい。有名商会で取り扱ってることだけあってか、履き心地もよかった。防水をあとでかけておこう。大事に使わせていただきます。
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