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よりにもよってあんなやつに浮気しないでよぉ!
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憧れの彼女、花崎さんと恋仲になった。それはとても喜ばしいことで、嬉しいことだったけど、やっぱり僕は女の子が好きなんだなぁと思う。
「……はあ」
朝から何度目になるかわからないため息をつきながら通学路を歩く。
その隣には僕の彼女がいて、僕にだけ見せる笑顔を浮かべている。そんな幸せがいつまでも続くように願いつつ、僕は今日も学校へと足を運ぶのだ。
教室に入ってすぐ友達に手を振り、自分の席へと向かう。するとそこには見慣れた幼馴染の姿があった。
「おはよう、結衣ちゃん」
そう挨拶をするけれど、彼女はいつものように明るい返事をしてくれない。それどころか不機嫌そうな表情で僕を見るばかりだ。……え?なんで怒ってるの?
「彼女とは上手くやってるそうじゃん。」「え?ああうん……」
「良かったね。これでようやく私も安心して眠れるわ」
「ん?」……あれ?なんか思ってた反応と違うぞ? 僕が首を傾げてると、彼女の手が僕の頬に触れた。
バチン!という音が教室内に響き渡る。どうやら彼女にビンタされたようだ。
「いった!?いきなり何をするんだよ!」
「…何となく。」「理由になってないんだけど……。」
「うるさいバカ。あんたが幼馴染じゃなかったら今頃殴ってるところだよ。」
「えぇ……」理不尽すぎるだろ……。
不満を口にしようとすると、彼女がやってきた。
「龍太郎くん、大丈夫?」
「は、花崎さん。ありがとう。大丈夫だよ。」
恋人って素敵だなぁ。
しかし、結衣ちゃんと花崎さんが言い争いを始めてしまった。二人ともお淑やかな見た目をしているから喧嘩している姿はとても新鮮だ。
二人の言い合いを眺めていたら、いつの間にか予鈴が鳴っていたらしい。先生が入ってきたので、僕は慌てて自分の席に戻った。
昼休みになり、恋人の花崎さんと一緒にご飯を食べる。今日の弁当は卵焼きにハンバーグなど、定番のおかずが入っている。美味しい。
「あのさ、花崎さん。一つ聞いていいかな?」
「うん。なんでも言って?」
「なんでさっき結衣ちゃんと言い争いしてたの?」
「私にとっては、好きな男子が他の女子とイチャイチャしてたらいい気がしないの。当たり前でしょう?」
うーむ、そういうものなのかな?でもまあ、気持ちはわかるかも。
「そっか、ごめんね」
「別に謝ることじゃないよ。それよりさ、これから毎日一緒に食べようよ。」
「もちろん。喜んで」こうして僕たちは毎時間ごとに一緒に過ごすようになった。
そして放課後、僕たちが帰ろうとすると、結衣ちゃんがやってきた。
「ちょっと待った!私も一緒に帰る!」
「えっと、どして?」「私がそうしたいから。ダメ?」上目遣いでこちらを見つめてくる。くっ、かわいい。
「わかったよ。3人で帰ろうか」結局押し切られて了承してしまった。
帰り道、僕たち三人は無言だった。気まずいなと思っていたら、花崎さんのほうから口を開いた。
「ねえ、二股はよくないと思うんだよね」……はい?どういうこと?僕には意味がわかんなかったけど、結衣ちゃんはすぐに理解したらしく、怒りを露わにして反論していた。「だからそれは誤解だって言ったじゃん!私は龍太郎君の恋人じゃないし、そもそも付き合ってすらいないんだよ!」
「嘘つかないで。彼氏彼女の関係にしか見えなかったもん。」
「嘘なんてついてない!私たちの間には恋愛感情とかないし、恋人なのはあなたの方じゃん。」
「だからこそ言ってんのよ!」僕を置いてけぼりにして二人はヒートアップしていく。……これ、止めるべきなのかな?
「それにあなたのせいで私は失恋したんだからね!私の初恋を返せこの泥棒猫!!」
「……は?何それ、知らないんですケド」「ふざけんな!ずっと好きだったのに!告白する前にフラれたの!それが全部あんたのせいなんだからね!」
「……え?もしかして、結衣ちゃんって僕が好きだったの?」
「そうだけど悪い!?」顔を真っ赤にしながら彼女は叫んだ。ええ……全然知らなかったんだけど……。
「……あのさ、本当に申し訳ないとは思うけど、僕は結衣ちゃんのことそんな風に見たことはないよ」
「わかってる。それでも好きなものはしょうがないの!」「そう言われても……」
「ねえ、もう終わりにしましょう。これ以上話しても無駄だと思うわ」
「……それもそうだね」花崎さんの言葉を聞いて、結衣ちゃんも同意してくれた。
「はぁ…もういい。」
結衣ちゃんは走って逃げてしまった。僕たちも追いかけようとするけれど、花崎さんに止められる。
「ほっときなさい。あんな女より私を優先してほしいわ」
「えぇ……」どうしようか迷っていると、彼女は僕の腕を取ってきた。柔らかい感触が伝わってきてドキドキしてしまう。
「さ、早く行きましょ?」「う、うん……。」
次の日、朝起きると花崎さんが隣にいた。
「おはよう。」「おはよう。あの、どうしてここにいるのかな?」「昨日のことで話がしたいの。」
「ああ……。」そういえば昨日から一緒に登校してるんだよな……。すっかり忘れてた。
「とりあえず着替えるから出て行ってくれない?」
「やだ。」即答されてしまった。えぇ……。「お願いだよ。」「嫌。」またもや拒否される。これは困ったな……。
「どうしても出て行かないなら、僕も実力行使に出るしかないんだけど……」「へぇ、やってみれば?」挑発的な笑みを浮かべながら彼女が言う。どうなってもしらないぞ?
「じゃあ遠慮なくいくよ。えいっ!」彼女の手を引いてベッドに押す。そのまま抱きしめると、彼女は抵抗しようとしてきた。
「ちょ、離してよ!セクハラで訴えるよ?」「恋人同士なのに?」「関係ないだろうがっ!」しばらく言い争いをしていたが、不意打ち気味にキスをする。すると、彼女の力が抜けていくのを感じた。
「はい、おしまい。いい加減諦めてくれるかな?」「うぅ……。ずるいぃ……。ち、遅刻するわよ…」「少しぐらいいいじゃん。」と言いつつ再び唇を重ねる。今度は入れてみると、彼女もそれに応じてくれた。
「ん……ふぁ……。はあ、はあ……。」息切れしている。やりすぎちゃったかな?「ごめん、大丈夫?」「だ、だいじょうぶじゃない……。」「じゃあ学校行くよ。」「は、はい…」こうして僕は彼女を家に置いて登校することにした。
昼休みになり、いつものように花崎さんと一緒にご飯を食べる。今日の弁当には唐揚げが入っていたためテンションが上がる。美味しい。
「ねえ、花崎さん。一ついいかな?」「うん。なんでも言って?」
「もう結衣ちゃんと喧嘩しないでね」「……善処します。」花崎さんの返事を聞いて安心した僕は、卵焼きを頬張るのであった。
放課後、花崎さんは結衣ちゃんを探しに行った。一人で帰るのは寂しかったが、仕方ないので帰ろうとした時、結衣ちゃんが僕を呼び止めた。
「あの…昨日のこと、ごめん。忘れて。」彼女はバツの悪そうな表情で言った。
「気にしなくていいよ。僕も急に変なことしてごめんね。」
「いや、別にいいけどさ……」
「ところで花崎さんと何かあった?」
「…喧嘩した。」その言葉を聞いて僕は苦笑いをしてしまった。仲直りしてくれるといいな。
「もう喧嘩しないでね。」
「わ、私…あなたのことが…好き…なの。…ずっと…前から。だから、花崎さんが…あなたを…あなたと、恋人になったのを見て…私、悔しくて……それで……あんなことを……言っちゃって……。」
彼女は泣き出してしまい、上手く喋れなくなっていた。僕は彼女の背中をさすって落ち着かせる。しばらくして、彼女は落ち着いたらしく、僕に質問を投げかけてきた。
「……ねえ、なんで、私のこと、好きになってくれなかったの?」
「えっと……」僕は正直に話すことにした。結衣ちゃんのことを好きになれなかったこと。そして、花崎さんに告白された時のこと。
「私なんか、振り向いて貰えなくて普通だよね。」結衣ちゃんの顔は悲痛なものになっていた。
「……結衣ちゃんは可愛いと思うよ」「嘘つき……」
「本当だってば。僕は結衣ちゃんの笑顔が好きだよ」
すると突然、結衣ちゃんが抱きついてきた。
「え?ちょっと?」
「ごめん。ちょっとだけ。」そう言うと、彼女は僕の胸に顔を埋めた。
「私、あなたに振られたんだよね。それなのにさ、こんなこと言うのおかしいってわかってるんだけどさ……」
彼女はそこで一度言葉を切った。
「やっぱり、諦めきれないよぉ……。」そう呟いた後、彼女の嗚咽が聞こえてくる。
「花崎さんと付き合ってるのは事実だけど、結衣ちゃんのことも大切な友達だとは思ってるよ。」そう言って頭を撫でると、彼女はゆっくりと離れた。
「ありがとう。」
その日は一人で帰っているのだが、急に花崎さんが来た。
「私、見てたから。」何がだろうと思ったけれど、すぐに察することができた。どうやら、結衣ちゃんと話していたところを見られていたらしい。
「そっか……。あのね、全然問題ないから。一緒に帰ろう。」
「抱きしめてたじゃん!問題アリアリだよ!」「あれは慰めようとしてやっただけだよ。」
「……本当に?」不安げな瞳で見つめられる。うっ……そんな目で見られると、罪悪感が湧いてしまう。
「ほ、ほんとうに……」
「よりにもよってあんなやつに浮気しないでよぉ!」「浮気じゃないよ!ただのスキンシップじゃないか……。」
「…」
「うぅ……じゃあこうしようか。今度二人っきりの時に、好きなようにしていいよ。」
僕がそう言うと、花崎さんは満面の笑みを浮かべていた。どうやら機嫌が良くなったようだ。良かった……。
翌日、いつものように二人で登校する。今日は花崎さんが先に教室に入った。その後、彼女が僕の手を引いて、自分の席まで連れて行く。
「はい、ここに座って。」「うん?」僕は言われた通りに座った。すると、花崎さんが後ろから抱きしめてきて、そのままキスをしてきた。
「んっ……」「ちょ、花崎さん!?」「いーじゃん別にぃ。誰もいないし。」
恥ずかしいんだよ、全くもう。
「……はあ」
朝から何度目になるかわからないため息をつきながら通学路を歩く。
その隣には僕の彼女がいて、僕にだけ見せる笑顔を浮かべている。そんな幸せがいつまでも続くように願いつつ、僕は今日も学校へと足を運ぶのだ。
教室に入ってすぐ友達に手を振り、自分の席へと向かう。するとそこには見慣れた幼馴染の姿があった。
「おはよう、結衣ちゃん」
そう挨拶をするけれど、彼女はいつものように明るい返事をしてくれない。それどころか不機嫌そうな表情で僕を見るばかりだ。……え?なんで怒ってるの?
「彼女とは上手くやってるそうじゃん。」「え?ああうん……」
「良かったね。これでようやく私も安心して眠れるわ」
「ん?」……あれ?なんか思ってた反応と違うぞ? 僕が首を傾げてると、彼女の手が僕の頬に触れた。
バチン!という音が教室内に響き渡る。どうやら彼女にビンタされたようだ。
「いった!?いきなり何をするんだよ!」
「…何となく。」「理由になってないんだけど……。」
「うるさいバカ。あんたが幼馴染じゃなかったら今頃殴ってるところだよ。」
「えぇ……」理不尽すぎるだろ……。
不満を口にしようとすると、彼女がやってきた。
「龍太郎くん、大丈夫?」
「は、花崎さん。ありがとう。大丈夫だよ。」
恋人って素敵だなぁ。
しかし、結衣ちゃんと花崎さんが言い争いを始めてしまった。二人ともお淑やかな見た目をしているから喧嘩している姿はとても新鮮だ。
二人の言い合いを眺めていたら、いつの間にか予鈴が鳴っていたらしい。先生が入ってきたので、僕は慌てて自分の席に戻った。
昼休みになり、恋人の花崎さんと一緒にご飯を食べる。今日の弁当は卵焼きにハンバーグなど、定番のおかずが入っている。美味しい。
「あのさ、花崎さん。一つ聞いていいかな?」
「うん。なんでも言って?」
「なんでさっき結衣ちゃんと言い争いしてたの?」
「私にとっては、好きな男子が他の女子とイチャイチャしてたらいい気がしないの。当たり前でしょう?」
うーむ、そういうものなのかな?でもまあ、気持ちはわかるかも。
「そっか、ごめんね」
「別に謝ることじゃないよ。それよりさ、これから毎日一緒に食べようよ。」
「もちろん。喜んで」こうして僕たちは毎時間ごとに一緒に過ごすようになった。
そして放課後、僕たちが帰ろうとすると、結衣ちゃんがやってきた。
「ちょっと待った!私も一緒に帰る!」
「えっと、どして?」「私がそうしたいから。ダメ?」上目遣いでこちらを見つめてくる。くっ、かわいい。
「わかったよ。3人で帰ろうか」結局押し切られて了承してしまった。
帰り道、僕たち三人は無言だった。気まずいなと思っていたら、花崎さんのほうから口を開いた。
「ねえ、二股はよくないと思うんだよね」……はい?どういうこと?僕には意味がわかんなかったけど、結衣ちゃんはすぐに理解したらしく、怒りを露わにして反論していた。「だからそれは誤解だって言ったじゃん!私は龍太郎君の恋人じゃないし、そもそも付き合ってすらいないんだよ!」
「嘘つかないで。彼氏彼女の関係にしか見えなかったもん。」
「嘘なんてついてない!私たちの間には恋愛感情とかないし、恋人なのはあなたの方じゃん。」
「だからこそ言ってんのよ!」僕を置いてけぼりにして二人はヒートアップしていく。……これ、止めるべきなのかな?
「それにあなたのせいで私は失恋したんだからね!私の初恋を返せこの泥棒猫!!」
「……は?何それ、知らないんですケド」「ふざけんな!ずっと好きだったのに!告白する前にフラれたの!それが全部あんたのせいなんだからね!」
「……え?もしかして、結衣ちゃんって僕が好きだったの?」
「そうだけど悪い!?」顔を真っ赤にしながら彼女は叫んだ。ええ……全然知らなかったんだけど……。
「……あのさ、本当に申し訳ないとは思うけど、僕は結衣ちゃんのことそんな風に見たことはないよ」
「わかってる。それでも好きなものはしょうがないの!」「そう言われても……」
「ねえ、もう終わりにしましょう。これ以上話しても無駄だと思うわ」
「……それもそうだね」花崎さんの言葉を聞いて、結衣ちゃんも同意してくれた。
「はぁ…もういい。」
結衣ちゃんは走って逃げてしまった。僕たちも追いかけようとするけれど、花崎さんに止められる。
「ほっときなさい。あんな女より私を優先してほしいわ」
「えぇ……」どうしようか迷っていると、彼女は僕の腕を取ってきた。柔らかい感触が伝わってきてドキドキしてしまう。
「さ、早く行きましょ?」「う、うん……。」
次の日、朝起きると花崎さんが隣にいた。
「おはよう。」「おはよう。あの、どうしてここにいるのかな?」「昨日のことで話がしたいの。」
「ああ……。」そういえば昨日から一緒に登校してるんだよな……。すっかり忘れてた。
「とりあえず着替えるから出て行ってくれない?」
「やだ。」即答されてしまった。えぇ……。「お願いだよ。」「嫌。」またもや拒否される。これは困ったな……。
「どうしても出て行かないなら、僕も実力行使に出るしかないんだけど……」「へぇ、やってみれば?」挑発的な笑みを浮かべながら彼女が言う。どうなってもしらないぞ?
「じゃあ遠慮なくいくよ。えいっ!」彼女の手を引いてベッドに押す。そのまま抱きしめると、彼女は抵抗しようとしてきた。
「ちょ、離してよ!セクハラで訴えるよ?」「恋人同士なのに?」「関係ないだろうがっ!」しばらく言い争いをしていたが、不意打ち気味にキスをする。すると、彼女の力が抜けていくのを感じた。
「はい、おしまい。いい加減諦めてくれるかな?」「うぅ……。ずるいぃ……。ち、遅刻するわよ…」「少しぐらいいいじゃん。」と言いつつ再び唇を重ねる。今度は入れてみると、彼女もそれに応じてくれた。
「ん……ふぁ……。はあ、はあ……。」息切れしている。やりすぎちゃったかな?「ごめん、大丈夫?」「だ、だいじょうぶじゃない……。」「じゃあ学校行くよ。」「は、はい…」こうして僕は彼女を家に置いて登校することにした。
昼休みになり、いつものように花崎さんと一緒にご飯を食べる。今日の弁当には唐揚げが入っていたためテンションが上がる。美味しい。
「ねえ、花崎さん。一ついいかな?」「うん。なんでも言って?」
「もう結衣ちゃんと喧嘩しないでね」「……善処します。」花崎さんの返事を聞いて安心した僕は、卵焼きを頬張るのであった。
放課後、花崎さんは結衣ちゃんを探しに行った。一人で帰るのは寂しかったが、仕方ないので帰ろうとした時、結衣ちゃんが僕を呼び止めた。
「あの…昨日のこと、ごめん。忘れて。」彼女はバツの悪そうな表情で言った。
「気にしなくていいよ。僕も急に変なことしてごめんね。」
「いや、別にいいけどさ……」
「ところで花崎さんと何かあった?」
「…喧嘩した。」その言葉を聞いて僕は苦笑いをしてしまった。仲直りしてくれるといいな。
「もう喧嘩しないでね。」
「わ、私…あなたのことが…好き…なの。…ずっと…前から。だから、花崎さんが…あなたを…あなたと、恋人になったのを見て…私、悔しくて……それで……あんなことを……言っちゃって……。」
彼女は泣き出してしまい、上手く喋れなくなっていた。僕は彼女の背中をさすって落ち着かせる。しばらくして、彼女は落ち着いたらしく、僕に質問を投げかけてきた。
「……ねえ、なんで、私のこと、好きになってくれなかったの?」
「えっと……」僕は正直に話すことにした。結衣ちゃんのことを好きになれなかったこと。そして、花崎さんに告白された時のこと。
「私なんか、振り向いて貰えなくて普通だよね。」結衣ちゃんの顔は悲痛なものになっていた。
「……結衣ちゃんは可愛いと思うよ」「嘘つき……」
「本当だってば。僕は結衣ちゃんの笑顔が好きだよ」
すると突然、結衣ちゃんが抱きついてきた。
「え?ちょっと?」
「ごめん。ちょっとだけ。」そう言うと、彼女は僕の胸に顔を埋めた。
「私、あなたに振られたんだよね。それなのにさ、こんなこと言うのおかしいってわかってるんだけどさ……」
彼女はそこで一度言葉を切った。
「やっぱり、諦めきれないよぉ……。」そう呟いた後、彼女の嗚咽が聞こえてくる。
「花崎さんと付き合ってるのは事実だけど、結衣ちゃんのことも大切な友達だとは思ってるよ。」そう言って頭を撫でると、彼女はゆっくりと離れた。
「ありがとう。」
その日は一人で帰っているのだが、急に花崎さんが来た。
「私、見てたから。」何がだろうと思ったけれど、すぐに察することができた。どうやら、結衣ちゃんと話していたところを見られていたらしい。
「そっか……。あのね、全然問題ないから。一緒に帰ろう。」
「抱きしめてたじゃん!問題アリアリだよ!」「あれは慰めようとしてやっただけだよ。」
「……本当に?」不安げな瞳で見つめられる。うっ……そんな目で見られると、罪悪感が湧いてしまう。
「ほ、ほんとうに……」
「よりにもよってあんなやつに浮気しないでよぉ!」「浮気じゃないよ!ただのスキンシップじゃないか……。」
「…」
「うぅ……じゃあこうしようか。今度二人っきりの時に、好きなようにしていいよ。」
僕がそう言うと、花崎さんは満面の笑みを浮かべていた。どうやら機嫌が良くなったようだ。良かった……。
翌日、いつものように二人で登校する。今日は花崎さんが先に教室に入った。その後、彼女が僕の手を引いて、自分の席まで連れて行く。
「はい、ここに座って。」「うん?」僕は言われた通りに座った。すると、花崎さんが後ろから抱きしめてきて、そのままキスをしてきた。
「んっ……」「ちょ、花崎さん!?」「いーじゃん別にぃ。誰もいないし。」
恥ずかしいんだよ、全くもう。
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