怪談カフェ

いかまる

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2話 突き当たりの家

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 これは某県某所にあるY地路の突き当たりの家で起きた出来事だ。
 この家はY地路の突き当たりというのもあって、形が少々特殊なのだ。普通の家ならば大体が長方形だが、この家は三角形の形をしていた。
 この家に3年前Aさん夫婦が引越しをしてきた。最寄りの駅からもさほど遠くはないし、閑静な住宅街だったので迷わずここに決めたらしい。
 住み始めてから半年が経った頃だった。
「おい、大丈夫か?」
 Aさんの奥さんは妊娠していてまだ予定日は遠いものの体調などには良く気を付けていた。
 そんな奥さんが体調不良を訴えたのだ。
「すごい熱じゃないか!今すぐ病院に行こう」
 奥さんを抱えAさんは車へと乗り込み病院へ急いで向かった。医者からの診断を待つ間、ふと奥さんが言っていた言葉を思い出す。
─これは、私の子供なの。
 この言葉を聞いた時、家には誰もいなかった。電話をしている様子もなかったし、何故「私の子供なの」などと言ったのだろうか。
 ガラガラ...とドアが開き看護師が出てくる。
「どうぞ中へお入りください」
 どうやら診断が終わったらしい。促されるまま部屋に入ると椅子に座っていた医師が
「まぁ、どうぞお掛けください」
と、少し曇った表情で告げる。
「あの、妻の身体は大丈夫なんでしょうか?」
「えぇ。体調は今は大丈夫ですが...その」
 コホン、と一つ咳払いをして続けた。
「妊娠していた赤ちゃんなんですが......残念ながら流産してしまいました」
 その一言に愕然とする。妊娠してまだ2ヶ月だというのに。産まれてくる子がどんな子か2人で想像していただけにショックは大きかった。
「......原因は?やっぱりあの体調不良のせいなんですか?!」
「......」
 少し考え込みゆっくりと医師は口を開く。
「それなんですがね。流産した途端熱も体調もすぐに治ったんです。考えられる原因は高熱を引き出したウイルスだと思い血液検査をしたんですが」
「結果は......?」
「何も、見つからなかったんです。一応通院して頂いて詳しく検査させて頂きたいと思っているのですが」
 医師からの提案にAさんは承諾した。その晩はAさんだけがあの家に帰宅することになったのだが、奥さんの事と赤ちゃんの事で精神的に来ていた彼はコンビニで酒を買った。
「ただいま」
 そう告げても誰もいるはずの無い家に大きなため息と共に入る。
 荷物を雑にソファに投げ捨てコンビニの袋からビールと日本酒を取り出し手を伸ばす。
ギィィィィ...
 何かが軋む音が聞こえた。真新しい家ではないし、どちらかといえば古い方なので気温の変化で木が軋んだだけだろうとこの時はあまり気にしなかった。
 買ってきたビール2本と日本酒3本を飲み終え、ソファで寝ていると
ドタドタドタ...
 人が歩く音が聞こえるのだ。寝ぼけていたAさんは奥さんの名前を呼ぶ。が、返事はない。
 ボーッとする頭で今日1日起きたことがフラッシュバックする。
「......あ」
 Aさんは気付いた。奥さんは今日は病院で1日入院しているのだと。
 じゃあ、今の足音は誰なんだ?
 リビングに置いていたゴルフバックからクラブを手に取り、ゆっくりと音がした方へ向かう。
「こんな時に強盗とか勘弁しろよ」
 独り言を言いながら1階の突き当たりにあるちょうど、三角形の先端部分の部屋の前に着いた時だ。
─...な.......るな
 低く男でも女でもない様な声が聞こえてくる。
「うわっ」
 思わずAさんは飛び退いた。誰もいないはずの家から見知らぬ声が聞こえたからだ。
 心做しか少し空気が冷たい気がする。ガクガクと震える足を掌で2回パンパン!と勢いよく叩いて襖に手をかける。
「何なんだよ、何なんだよ一体...!」
 Aさんは少し酔ってるという事もあって感情の振り幅がいつもより大きかった。その為、冷静さなどこの時は欠片も無かったのだ。
 怒りに任せ襖を勢いよく開けると、暗い室内の奥に何やら黒い影が佇んでいた。
「お、おい!誰だ!俺の家で何してる?!」
 Aさんはその影に話しかける。が、影は何も答えない。
「ちくしょう!何なんだよ!おい、お前どこから入ってきやがった?!」
 ゴルフクラブを片手にAさんは黒い影へと近づいていく。
 やがて影の前まで来た時、開けっ放しにしていた襖が勢いよく閉じた。
「えっ?!」
 真っ暗闇の中Aさんの身体はガクガクと震え異常な量の冷や汗をかいてたのでクラブを握る手により一層力が入る。
─...るな......の....だ
 どこからが聞こえてくるその声にAさんは反応するが声が出ない。
 必死にクラブを振り回していると急にゴンッと何か固いものに当たった感触が手に伝わった。
「そこかぁぁぁ!!」
 怒りと恐怖で感情がコントロール出来なくなったAさんは必死で何回もそこへゴルフクラブを振り落とした。
 嫌な音と共に広がる鉄分を含んだ匂い。
─触るな....えの...だ
「まだ喋れるのか!!もう喋るなよ!」
ピンポーンピンポンピンポン!!!
 今度は玄関からチャイムの音が鳴り響く。
ガンガンガンガン!
 ドアを叩く音も聞こえてきたのでAさんはクラブを引き摺りながら玄関まで行く。
「すみません、警察です。Aさん居ますか?!すみません!」
 警察、という言葉にハッと我に返ったAさんは勢いよくドアを開ける。すると玄関先にいた警官二人がAさんを見るなり青ざめた表情で
「あんた一体何したんだ?!」
問い詰めてきた。訳が分からないAさんはことの事情を説明して「強盗が入ってきて襲ってきたから抵抗した」と述べた。
 一瞬の沈黙の後ガタイのいい警官がAさんの腕に手錠をかける。
「お、おい!何するんだ?!」
「いいから車に乗って下さい!あなたは罪を冒した」
「どういう事だよ?!おい!」
 家の中に何人かの警官が乗り込む。ゴルフクラブに付いていた血が奥の部屋から玄関まで続いていたので犯行現場を特定するのにそう時間は要しなかった。
「これは...」
 警官が懐中電灯で部屋を照らすと壁一面に御札が貼られていてその中でAさんの奥さんがぐったりと倒れていた。
「何だこの部屋は?」
─触るな。次はお前の番だ。
 ハッキリとそう告げる声がこの部屋から聞こえてくる。警官は懐中電灯で四方八方確認するが誰もいない。
「......死亡してますね」
「救急車を呼べ。しかし、酷いなこれ」
 後日、警察の取り調べによるとAさんの奥さんは病院から脱走したらしい。そしてそれを強盗だと間違えたAさんがゴルフクラブで奥さんを殺害した、との事だ。
 奥さんの司法解剖をしてみると子宮の中に異物が入っていたと後の検察側の説明で明かされている。
 その異物は何だったのか。それは、小さくミイラ化した指だったそうだ。
 事件から間もなくして死体を発見し、脈確認の為触った警官はあの三角形の家で自殺しているのが発見された。

 あなたもどこか物件を探す時、もし三角形になっている間取りがあったら気をつけた方がいいかもしれません。
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