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第3話 癖になる
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正直、僕が今いる場所は現実なのかそれとも違う世界なのか分からなくなっていた。
佐藤の話に期待しこの怪談カフェに辿り着いた僕だったが正直こんなものだと思わなかった。
スクリーンに映し出されるのは文字だけだと思っていた。否、再現VTRか何かだと。しかし、そうじゃないと気付いた。
「演技ではない」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返るとそこには先程のマスターらしき男性が立っていて、
「そう思ったんじゃないんですか。お客様」
と、少し口角を上げて言った。
「......本物だとしたら誰がこの動画を撮っていてそして誰がこの店に提供したのか。なに、難しい事ではありません。僕はあなた方が熱を入れて作った作品だと思ってますよ」
確かにクオリティは高い。が、本物ならば普通動画に収めるだろうか。否、収めないはずだ。そんな余裕はないし、そんな事をする意味も分からない。
北山が男に考えを述べると少し考え込んだ様子で沈黙する。たが、その表情に焦りはなくむしろ楽しんでいるのが窺い知れた。
「なるほど。お客様は面白いお方ですね。今まで当店を訪れたお客様は皆、映像を見るなり血相を変えて出ていく方ばかりでした」
一歩、北山に近づき続ける。
「信じない方というのは違うのですね。これは興味深い」
じわじわと近付いてくる男に不気味さを感じ視線を逸らす。アイスコーヒーを飲み、緊張から乾いた喉を潤す。
カフェインの苦味と冷たさとでスッキリし、冷静さを取り戻していくのを感じた。
「......別に信じない訳じゃないですよ」
少し冷えてしまったハニートーストを手に取り頬張る。
うん、ほのかに甘い蜂蜜が美味しい。アイスコーヒーとの相性は抜群に良いらしい。
「この目で見たものは信じますし、逆に見た事ないものは信じない。ただそれだけです」
淡々と食事をする北山を見ながら男は顎に手を当てる。視線は北山の方を見ているのか、奥にあるスクリーンを見ているのか定かではないが興味を持っている事には間違いない。
「そのハニートースト、アイスコーヒーと相性良いでしょう?」
「え、まぁ、はい」
「貴方も同じなんです。信じない者と怪談は相性が悪い様に見えて実は良いんですよ」
そう言うと男は紙でできた5枚綴りのチケットを北山に差し出す。照明が薄暗いせいでハッキリとは見えないが「怪談券」と書かれているのだろう。
「......これは?」
「まぁ、喫茶店で言うコーヒー券の様なものです。そしてこちらは今回の代金になります」
伝票には690円と書かれている。コーヒー代とハニートースト代と考えるとまぁ、安いと思う。
「お客様の様な若い兄さんが来てくれて嬉しいですよ」
「は、はぁ」
返答に困り適当に相槌を打ちながら財布から小銭を取り出す。食事を最初に運んで来た女性がお金を置くようのトレイを持って来る。
「では、690円丁度ですね。毎度ありがとうございます。またのご来店お待ちしております」
「......気が向いたらまた来ますよ」
そう言い残して店を出る。外に出ると空はすっかり暗くなっていて、帰宅ラッシュなのか駅から人がどんどん出てくる。
「んー、はぁっ...」
空気が美味しい。店の中は息苦しいというか重苦しいというか呼吸がしにくかったけど外は全然そんな事はなくて。
ポケットに手を入れマスターらしき男性から貰った「怪談券」を見る。
「夢じゃなかった、か。佐藤に言ったら凄い勢いで食いつくだろうな」
僕はこうして怪談カフェと出会ってしまったのだが回数券なる物を貰ってしまったせいでまた行かざるを得ない気がする。
それも悪くないか、と思い北山は見慣れた風景を見ながら帰るのだった。
佐藤の話に期待しこの怪談カフェに辿り着いた僕だったが正直こんなものだと思わなかった。
スクリーンに映し出されるのは文字だけだと思っていた。否、再現VTRか何かだと。しかし、そうじゃないと気付いた。
「演技ではない」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返るとそこには先程のマスターらしき男性が立っていて、
「そう思ったんじゃないんですか。お客様」
と、少し口角を上げて言った。
「......本物だとしたら誰がこの動画を撮っていてそして誰がこの店に提供したのか。なに、難しい事ではありません。僕はあなた方が熱を入れて作った作品だと思ってますよ」
確かにクオリティは高い。が、本物ならば普通動画に収めるだろうか。否、収めないはずだ。そんな余裕はないし、そんな事をする意味も分からない。
北山が男に考えを述べると少し考え込んだ様子で沈黙する。たが、その表情に焦りはなくむしろ楽しんでいるのが窺い知れた。
「なるほど。お客様は面白いお方ですね。今まで当店を訪れたお客様は皆、映像を見るなり血相を変えて出ていく方ばかりでした」
一歩、北山に近づき続ける。
「信じない方というのは違うのですね。これは興味深い」
じわじわと近付いてくる男に不気味さを感じ視線を逸らす。アイスコーヒーを飲み、緊張から乾いた喉を潤す。
カフェインの苦味と冷たさとでスッキリし、冷静さを取り戻していくのを感じた。
「......別に信じない訳じゃないですよ」
少し冷えてしまったハニートーストを手に取り頬張る。
うん、ほのかに甘い蜂蜜が美味しい。アイスコーヒーとの相性は抜群に良いらしい。
「この目で見たものは信じますし、逆に見た事ないものは信じない。ただそれだけです」
淡々と食事をする北山を見ながら男は顎に手を当てる。視線は北山の方を見ているのか、奥にあるスクリーンを見ているのか定かではないが興味を持っている事には間違いない。
「そのハニートースト、アイスコーヒーと相性良いでしょう?」
「え、まぁ、はい」
「貴方も同じなんです。信じない者と怪談は相性が悪い様に見えて実は良いんですよ」
そう言うと男は紙でできた5枚綴りのチケットを北山に差し出す。照明が薄暗いせいでハッキリとは見えないが「怪談券」と書かれているのだろう。
「......これは?」
「まぁ、喫茶店で言うコーヒー券の様なものです。そしてこちらは今回の代金になります」
伝票には690円と書かれている。コーヒー代とハニートースト代と考えるとまぁ、安いと思う。
「お客様の様な若い兄さんが来てくれて嬉しいですよ」
「は、はぁ」
返答に困り適当に相槌を打ちながら財布から小銭を取り出す。食事を最初に運んで来た女性がお金を置くようのトレイを持って来る。
「では、690円丁度ですね。毎度ありがとうございます。またのご来店お待ちしております」
「......気が向いたらまた来ますよ」
そう言い残して店を出る。外に出ると空はすっかり暗くなっていて、帰宅ラッシュなのか駅から人がどんどん出てくる。
「んー、はぁっ...」
空気が美味しい。店の中は息苦しいというか重苦しいというか呼吸がしにくかったけど外は全然そんな事はなくて。
ポケットに手を入れマスターらしき男性から貰った「怪談券」を見る。
「夢じゃなかった、か。佐藤に言ったら凄い勢いで食いつくだろうな」
僕はこうして怪談カフェと出会ってしまったのだが回数券なる物を貰ってしまったせいでまた行かざるを得ない気がする。
それも悪くないか、と思い北山は見慣れた風景を見ながら帰るのだった。
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