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第17章 変化の時
17.想いの宝箱
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買い物を終えて軍の建物に戻ってくると、ディズの部屋の前には紐でまとめられた書類の束を抱えるファズ様が待っていた。その様子から、ディズは私の側にいる時間が長いから、仕事が溜まっているのだろうと申し訳なく思った。
「私は隣の部屋にいますので、お茶が飲みたい、お菓子が食べたいなど、何かあったら部屋の壁を叩いて下さいね」
「お茶は自分で用意出来るし、お菓子は私が持ってるのがあるから大丈夫だよ。ディズは仕事を優先してね」
「私の一番の仕事はシェニカの側に居て、少しでも快適なものになるように取り計らうことです。今は処理する必要のある仕事を部屋でやりますが、シェニカが最優先なのですから遠慮なく呼んで下さい。夕食の時に声をかけますが、それまではゆっくりしていて下さいね」
「うん、ありがとう」
ルクトとディズに見守られながら自分の部屋に入ると、姿見の前に移動して自分の姿をもう一度眺めてみた。
正面からだけでなく、手鏡を持ってあわせ鏡の要領で後ろ姿や、ズボンを脱いだワンピース姿も確認してみると、まだ見慣れない感じはするけど、意外とおかしな感じはしない。自分じゃ選ばない大人っぽいローブと旅装束だけど、旅をしている内に、こういうのが似合うくらい少し大人の女性になったのだろうか。もしそうだとしたら、自分自身が成長していると実感出来て嬉しくなった。
「ローブも素敵だけど、このワンピースが特に好きだなぁ。うふふっ。なんか生まれ変わったみたい。
本当にローズ様みたいになれるかな。そうだ。今回のことでローズ様は心配してるだろうから、明日街を出る前にフィラを飛ばそうかな」
鞄から便箋を取り出してローズ様への手紙を書こうとすると、色々なことを書きたくなってきた。
まずは状況説明をしようと、私がトラントによる『聖なる一滴』の使用を証明した経緯から書き始め、私の『聖なる一滴』がトラントに狙われたこと、ウィニストラ軍に同行してトラントの首都まで行ったこと、鍾乳洞で私自身が『聖なる一滴』を使用したことなどを書いた。
そして、今はトラント国王と協力した『白い渡り鳥』達を連れて、ウィニストラの首都に向かっていること。トラント国王の白魔法の適性が高いため、フェアニーブでの尋問には『白い渡り鳥』が必要なこと。その役割を担うことになった私は、ウィニストラで国王に説明を終えたらフェアニーブに向かう、と書いたら手紙は結構な枚数になった。
ローズ様には、私に恋人が出来たことをまだ報告していない。ルクトやディズのことで悩んでいると、思い切って書いてみようか。でも、ローズ様に余計な心配をかけるだろうし……。
そういえば。ローズ様ならこうするだろうと予想した選択や行動をしてみたり、今までの自分自身なら耳を貸さなかった意見や考え方を聞いてみたりすると良いとディズは言っていたっけ。心機一転したし、ローズ様ならこうするかな~と考えてみよう。
恋愛の話をしたことはないけど、怒ると怖いローズ様だから、ルクトがやったことを考えると別れるという選択をしそうだ。
でも、ローズ様は厳しくも優しい人だし、自分で言ったことは必ず守る人だ。願いを叶えるという約束をして、彼がやり直したいと願えば、条件付きで救いの手を与えるような気がする。でも、どんな条件をつけるだろうか。
考え込んでも分からないし、まずは自分の気持ちを整理しようと、新しい便箋を1枚机の上に置いた。紙の真ん中に線を引き、片方にルクト、もう片方にディズの名前を書いて、職業や出身国などの知っていることや、自分の気持ちをそれぞれの欄に書き始めた。
「えっと、ルクトへの気持ちはハテナで、ディズは好き。関係性はルクトは恋人?で、ディズはお友達で共犯。ディズは信用できるけど、ルクトは……」
色々書き込んでいたけど、そこで手は止まってしまった。
「そういえば、ソルディナンド様は信頼関係が崩れたら離婚する罰を与えるって言ってたよね。あの晩のことは思い出したくないけど、悲しかったし、側にルクトがいるだけで何をされるんだろうと思って怖かった。だから、ソルディナンド様がそういう結論に至るのは理解できる……かな」
ルクトの欄に『別れという罰』と書き込むと、ではどうすれば彼を許せるのだろうか?私は彼を許したいのだろうか?という疑問が湧きあがった。自分の気持ちを確認してみようとすると、
『シェニカが彼を許せると思った時、許せると思えるような何かを彼が行った時に、結論を出せばいいのではないでしょうか。慌てて答えを出すような簡単な話ではないと思います』
『シェニカが受けた乱暴は強姦と同じこと。心身を深く傷つけ、信頼関係を破壊する罪深いことです。だから、彼がどんなにもうしないと言っても、シェニカがその言葉を信用しきれないのは当然だと思います。
シェニカが約束したことを履行しようとするのは立派なことだと思いますが、彼が願った関係の再構築は、2人の信頼関係がきちんとあること、2人の間で好きだと思う確かな気持ちがなければ、難しいのではないでしょうか』
とディズが言っていたのを思い出した。
確かに恋人になるってことは、お互い信頼しあって、好きだと想い合わないと成立しない関係だけど、ルクトはディズに心変わりした私を今でも信頼して、好きだと思っているのだろうか。
私がディズを好きになったことを受け入れるって言ったけど、どうしてそこまで思えるのだろうか。
ルクトが私と別れたくないと言うのはどうしてだろう?
神殿の人みたいに私を利用してやろうとか思っているのだろうか?と考えてみても、彼とは元々偶然の出会いだし、ドルトネアに行こうなんて言わないし、今までの旅で私を利用しようなんて言動は取らなかったから、それはないと素直に思える。
じゃあ、ディズを受け入れるという悪条件を飲んでも、本当に私とやり直したいと思っているのだろうか?
過去を振り返ってみても、彼は好きだと口に出すこともなく、デートするわけでもない。『性欲の悪魔』だから宿に泊まる時はいつも求めてくるけど、人目がない時、寒い時以外は手も繋いでくれない。彼がそんなに好きでいてくれていたなんて、実感したことはなかった気がする。
言葉にしない彼だけど、胸の内では想っていてくれたのだろうか。トラント国王のように強制催眠で心の中を覗くっていうことも出来るけど、信頼関係が崩れたとはいえ、恋人として親しい関係だった彼の心の中を暴いて、知りたくない事実を知ってしまうのが怖い。
「う~ん……考えても分からないから、これも置いといて。次は距離感を考えてみよう。2人きりになるのはディズは大丈夫だけど、ルクトは人目のあるところとか、逃げ場があるところなら大丈夫かな?隣を歩くのは、ディズは大丈夫だけど、ルクトは真横に居られるよりはちょっと距離を空けて欲しいかなぁ」
具体的な場面を思い浮かべてみると、私はルクトとは人目のある場所なら近くにいても大丈夫だけど、ディズのような近い距離は難しいのだと認識出来た。
こんな状態で、もう一度恋人という関係に戻れるのだろうか。
溜息を吐いて何もない白い天井を見上げ、ルクトと出会った時からのことを振り返ってみた。
彼と初めて会った時は生々しい戦場跡で、バルジアラ将軍に呪いを受けて血まみれになっていた。護衛が欲しかった私は、主従の誓いを条件にして呪いを解いて。そして旅が始まったんだっけ。
私が突き落とされるという事件があったものの、盗賊を倒したり、ナンパを遠ざけたり、リズソームの時は元副官の強い人を倒してくれた。
こうしてみると、彼は護衛という役目を十分果たしてくれていたと思う。色々あったけど、私を守ってきてくれたルクトに感謝したいと思う。
視線を机の上の紙に戻すと、ルクトの欄に『護衛として優秀。感謝してる』と書いた。
そして、改めて自分の書いた内容を読んでみると、私の彼への好きだという気持ちは随分と薄れている感じがする。
ルクトはあの晩のことを後悔しているみたいだけど、私の気持ちが薄れている上に信頼関係が崩れている状態では、やり直したとしてもお互いのためにならない気がしてきた。
紙を前にして悩んでいると
『手に負えなくなったら、遠慮なく股間を蹴り上げて。蹴り潰しても構わないわ。ルクトが土下座して謝れば、シェニカちゃんが元に戻してくれるでしょうし』
というファミさんの言葉がフッとおりてきた。神殿に入る前、クラスの友達とボールを使った鬼ごっこをしていたら、強く投げられたボールをそこで受け止めてしまった男の子が、冷や汗と涙を流して悶え苦しんでいた記憶がある。
治療してあげられるとはいえ、流石に痛い思いをするのは……。うーん。これも大人になる一歩ということで、やったことがないことに挑戦してみた方が良いのだろうか。
とりあえず蹴る練習をしてみようかと立ち上がった時、扉を控えめにノックする音が聞こえた。
誰だろうかと思いながら扉に近付くと、「食事を持ってきました」とディズの声がした。ドアを開けると、肩にユーリくんを乗せ、食事のトレイを持ったディズがいるけど、なぜかしょんぼりした顔をしている。その後ろには、トレイを持ったルクトが無表情で立っている。
「まだ書類を処理しなければならないので、夕食を共にすることが出来ないのです。すみません」
「ううん、大丈夫だよ」
「私のかわりに、ユーリがシェニカと食事を共にしてくれます。ユーリ、シェニカをよろしくお願いしますね。夕食のクルミはここに置いておきますね」
「チチ!」
ユーリくんに手を伸ばすと、彼は私の肩まで一気に駆け上ってきた。ディズからクルミと食事が乗ったトレイを受け取ると、ルクトが一歩前に出て私をジッと見てきた。
「良かったら一緒に食べないか?」
「うん、いいよ。じゃあ、そこのテラスで食べようか。ディズ、ユーリくんをしばらく預かるね」
少し整理出来た私の気持ちを見極めるためにも、ルクトともう少し話がしたいと思った。ルクトと同じ部屋での食事は難しいけど、ディズの部屋の隣のテラスなら、何かあったら声を出せば来てくれるだろう。
「後で迎えに行きますね」
ディズに見送られながらテラスに入ると、一瞬風が吹き抜けてローブとスカートの裾がふわりと膨らんだ。耳の裏に桜貝があたるのを感じながらガーデンテーブルにトレイを置き、ルクトと向き合う形で椅子に座ると、私の肩にいたユーリくんがテーブルの上に下りて、私に「ご飯頂戴!」とおねだりを始めた。クルミはユーリくんのすぐ隣のトレイに乗ったままだから、すぐに食べられる状況なのに。ちゃんと私におねだりするなんて、ユーリくんはなんて賢くて、お行儀の良い子なのだろうか。
「じゃ、私達も食べようか。いただきます。ユーリくん、素敵なスカーフありがとう。似合ってるかな?」
「チチ!」
「ユーリくん、スカーフ大事にするね。さ、クルミをどうぞ~♪」
ユーリくんにお礼を言ってクルミを渡すと、彼は受け取ってすぐに一心不乱に食べ始めた。
私も食べようとトレイを見てみれば、数種類のきのこを使った炊き込みご飯、クルミの入ったほうれん草のおひたし、チキンサラダ、根菜と魚のすり身のハンバーグ、わかめスープ、スイートポテトと盛り沢山だ。
「ご飯、何だか豪華だね」
「この街はデカイから周辺地域から食材が集まるんだろうな」
彼の顔を見てみると、炊き込みご飯を片手にハンバーグを美味しそうに食べている。ギスギスした空気はないけど、何を喋ったら良いか分からないまま私も食べ始めた。
居心地の悪さを感じている時、目の前にいるクルミを頬張るユーリくんを見ると、一気に気持ちがほわほわと和んだ。
「ユーリくん、可愛いなぁ」
「いつもナンパしてはフラレてるのに、そのリスはよく懐いたな」
「羨ましいでしょ」
「懐かれるなら、リスよりスザクワシの方が断然良い」
「メロディちゃんも可愛いけど、ユーリくんも可愛いよ?ルクトはメロディちゃんと仲良くなりたいの?」
「そりゃそうだろ。スザクワシに限らず、あそこにいた全部人に懐くことなんてない奴らだぞ」
「じゃあ、ルクトはスザクワシになりきれる服を着たらいいよ」
「なんだ『なりきれる服』って。着ぐるみでも着るのか?そんなの絶対怪しんで近付いてこないか、怪しい敵とみなして攻撃してくるぞ」
「そうかなぁ?『動物と接する時、警戒心を解き、親近感をもってもらうために、その動物になりきることが必要だ!』ってお父さんが言ってたよ?実際、実家の牧場で羊の着ぐるみを着て育てたら、みんな立派な羊に育ってくれたし!」
「へぇ。お前の実家って牧場やってるのか?」
「うんそうだよ。小さな牧場だけど、羊を育ててるんだ」
「そんな育て方してるのって、お前の牧場だけじゃないのか?」
「そんなことないよ。お父さんの提唱した『なりきり飼育』は、他の牧場も良いねって言ってくれて、みんなそこにいる動物の着ぐるみを着てやってるんだよ?」
「もしかして。お前はそれを見てるから、服を選ぶ時に着ぐるみみたいなのを選ぶのか?」
「なりきれる服って可愛いじゃん。ねぇ、ユーリくん」
クルミを頬袋に詰めていたユーリくんに声をかけると、彼は詰め込むのを止めて私を見てきた。片方だけ膨れたほっぺが、とっても可愛い!
「私がオオカミリスになりきれる服を着たら、親近感が湧いてもっと仲良くしてくれるよね?」
「ジジッ!」
私は自信満々に声をかけたのに、なぜかユーリくんは警戒したような声を出した。毛を逆立てていないし、牙や爪を見せて威嚇しているわけじゃない。となると、この反応は私の問いかけに否定の返事をしたのだろうか。
「じゃあ、ユーリくんの大好きなクルミになりきれる服がいいかな?恋するクルミの服だったらもっといい?……あれ?」
私の再度の問いかけに、ユーリくんは私に背を向けてクルミの詰め込みを再開する、という返事をくれた。この感じ、なんだか私が可愛い子にナンパしてフラれた時と同じ空気が流れているような気がする。私のなりきり作戦は駄目なのだろうか。
「着ぐるみを着ても警戒されるだけだと思うぞ。上手くいくのは、お前の地元の動物が寛大なだけだろ」
「そんなことないと思うけど。オオカミリスの生息地に行く時、私はどんな格好で行けばいいかな?」
「その格好で良いんじゃないのか?」
「そうかなぁ。ユーリくんはどう思う?この格好はとっても素敵だけど、オオカミリスのみんなと仲良くなれるかなぁ?」
「チチ!」
ユーリくんに話しかけたら、振り向いた彼の両頬は歪に膨んでいた。そんな可愛い彼がいつもと同じ鳴き声で返事をしたということは、この格好が良いと返事をしてくれたようだ。
ほかでもないオオカミリスのユーリくんがそう言うのだから、きっとこの格好の方が良いのだろう。でも、なりきり作戦にも未練が残る。
食事を食べながら、久しぶりにルクトと他愛のない会話をポツリポツリと繰り返す。会話が途切れた時、ユーリくんが毛繕いをする姿や、テーブルから下りてテラスを駆け回っている姿を眺めているだけで和むから、沈黙は気にならない。緊張が解れて少し長い会話が出来るようになった頃に、ルクトに遅れて私も食事を食べ終えた。
ルクトとこうして食事をしている間、目を見て話すことが出来た上に彼を怖いと思わなかった。ディズやユーリくんが近くにいるからだろうか。それとも、彼自身が穏やかな気持ちでいたからなのだろうか。
「あの……さ」
静かな沈黙が落ちた時、ルクトが言いにくそうに言葉を切り出した。私の膝の上でくつろいでいたユーリくんからルクトに視線を移すと、彼はなんだか視線が泳いでソワソワしている。
「どうしたの?」
「その~」
ルクトは落ち着かない様子で言い淀んでいるけど、言いにくいことがあるのだろうか。何を言うのか分からないけど、彼のタイミングで話せるようにと黙って待っていることにした。
「あの~。なんだ。……その、旅装束とローブにスカーフ、似合ってる。そのワンピース姿、か、か、可愛いよ」
開いた口がそのまま固まってしまうくらい、彼らしからぬ台詞に思わず目が点になった。尻すぼみになりながらも言い終えたルクトは、照れているのか視線を床に落としている。
今までそんなこと言う人じゃないと思っていたけど、随分と言いにくそうだったし、彼の耳が少し赤くなっていることを考えると、彼なりに変わろうと頑張ろうとしているのだろうか。
私よりも大きな身体を縮こまらせてモジモジしている姿を見ると、彼にこんな一面があったのかとビックリした。
私がすぐに返事をしないことで不安になったのか、ルクトは下を向いたまま今度はソワソワし始めた。その姿はまるで、イタズラをした子供が、お母さんから何を言われるのかと落ち着かない様子で待っているのと似ている気がする。その姿を見ていると、目の前の景色やルクトがフッと消えて、自分の周囲が真っ白なモヤに包まれた感覚に襲われた。
視線を下に移すと私の膝の上にいたユーリくんは消えて、入れ替わるように小さな宝箱を乗せている。その箱がパカッと開くと、真っ白なモヤが音もなく吸い込まれ始めた。ゆっくりと吸い込まれるモヤを眺めていると、血まみれの中で悪態をつくルクトが映し出された。これは彼と出会った時だな~なんて懐かしく思っていると
女性傭兵に突き落とされて、目を覚ました時に見た切羽詰まったルクト。
治療院で仕事をしている時、私の後ろで護衛の仕事をするルクト。
レストランでレオンと一緒に私を指さしながら大笑いするルクト。
コロシアムで見た鋭い表情をしたルクト。
落ち着くおまじないをして、裸財布を倒してくれた頼りがいのあるルクト。
初めて愛し合った時に見た、色気を醸し出しながら嬉しそうな顔をしていたルクト。
今に至るまでの旅の順番で、色んなルクトの顔が映っては宝箱に吸い込まれていく。
そして場面がラーナに移った時、あの晩見たルクトの怖い顔が映った。その表情を見るのは胸が痛かったけど、鍾乳洞から戻ってきた私に見せた焦った顔、安心したような泣きそうな顔、私に頭を下げて謝る姿、ディズといる私を寂しそうに見ている姿が映し出されると、彼の後悔や寂しさを感じて私も悲しくなる。
そして、たった今見たモジモジするルクトの姿を映したモヤが宝箱に吸い込まれると、宝箱はパタンと閉じた。それを見届けた私も目を閉じてみると、胸に広がっていたモヤモヤが消えて何かが残っている。それが何なのかを感じて目を開けると、膝の上には宝箱ではなくユーリくんが居て、目の前ではルクトが居心地悪そうにしたままだった。
「ありがとう。ルクトに買ってもらった旅装束、大事にするね。それと。私の返事を言っても良い?」
「あぁ」
ルクトはゆっくりと視線を上げて、不安そうな目をして私の目を見た。
「私は隣の部屋にいますので、お茶が飲みたい、お菓子が食べたいなど、何かあったら部屋の壁を叩いて下さいね」
「お茶は自分で用意出来るし、お菓子は私が持ってるのがあるから大丈夫だよ。ディズは仕事を優先してね」
「私の一番の仕事はシェニカの側に居て、少しでも快適なものになるように取り計らうことです。今は処理する必要のある仕事を部屋でやりますが、シェニカが最優先なのですから遠慮なく呼んで下さい。夕食の時に声をかけますが、それまではゆっくりしていて下さいね」
「うん、ありがとう」
ルクトとディズに見守られながら自分の部屋に入ると、姿見の前に移動して自分の姿をもう一度眺めてみた。
正面からだけでなく、手鏡を持ってあわせ鏡の要領で後ろ姿や、ズボンを脱いだワンピース姿も確認してみると、まだ見慣れない感じはするけど、意外とおかしな感じはしない。自分じゃ選ばない大人っぽいローブと旅装束だけど、旅をしている内に、こういうのが似合うくらい少し大人の女性になったのだろうか。もしそうだとしたら、自分自身が成長していると実感出来て嬉しくなった。
「ローブも素敵だけど、このワンピースが特に好きだなぁ。うふふっ。なんか生まれ変わったみたい。
本当にローズ様みたいになれるかな。そうだ。今回のことでローズ様は心配してるだろうから、明日街を出る前にフィラを飛ばそうかな」
鞄から便箋を取り出してローズ様への手紙を書こうとすると、色々なことを書きたくなってきた。
まずは状況説明をしようと、私がトラントによる『聖なる一滴』の使用を証明した経緯から書き始め、私の『聖なる一滴』がトラントに狙われたこと、ウィニストラ軍に同行してトラントの首都まで行ったこと、鍾乳洞で私自身が『聖なる一滴』を使用したことなどを書いた。
そして、今はトラント国王と協力した『白い渡り鳥』達を連れて、ウィニストラの首都に向かっていること。トラント国王の白魔法の適性が高いため、フェアニーブでの尋問には『白い渡り鳥』が必要なこと。その役割を担うことになった私は、ウィニストラで国王に説明を終えたらフェアニーブに向かう、と書いたら手紙は結構な枚数になった。
ローズ様には、私に恋人が出来たことをまだ報告していない。ルクトやディズのことで悩んでいると、思い切って書いてみようか。でも、ローズ様に余計な心配をかけるだろうし……。
そういえば。ローズ様ならこうするだろうと予想した選択や行動をしてみたり、今までの自分自身なら耳を貸さなかった意見や考え方を聞いてみたりすると良いとディズは言っていたっけ。心機一転したし、ローズ様ならこうするかな~と考えてみよう。
恋愛の話をしたことはないけど、怒ると怖いローズ様だから、ルクトがやったことを考えると別れるという選択をしそうだ。
でも、ローズ様は厳しくも優しい人だし、自分で言ったことは必ず守る人だ。願いを叶えるという約束をして、彼がやり直したいと願えば、条件付きで救いの手を与えるような気がする。でも、どんな条件をつけるだろうか。
考え込んでも分からないし、まずは自分の気持ちを整理しようと、新しい便箋を1枚机の上に置いた。紙の真ん中に線を引き、片方にルクト、もう片方にディズの名前を書いて、職業や出身国などの知っていることや、自分の気持ちをそれぞれの欄に書き始めた。
「えっと、ルクトへの気持ちはハテナで、ディズは好き。関係性はルクトは恋人?で、ディズはお友達で共犯。ディズは信用できるけど、ルクトは……」
色々書き込んでいたけど、そこで手は止まってしまった。
「そういえば、ソルディナンド様は信頼関係が崩れたら離婚する罰を与えるって言ってたよね。あの晩のことは思い出したくないけど、悲しかったし、側にルクトがいるだけで何をされるんだろうと思って怖かった。だから、ソルディナンド様がそういう結論に至るのは理解できる……かな」
ルクトの欄に『別れという罰』と書き込むと、ではどうすれば彼を許せるのだろうか?私は彼を許したいのだろうか?という疑問が湧きあがった。自分の気持ちを確認してみようとすると、
『シェニカが彼を許せると思った時、許せると思えるような何かを彼が行った時に、結論を出せばいいのではないでしょうか。慌てて答えを出すような簡単な話ではないと思います』
『シェニカが受けた乱暴は強姦と同じこと。心身を深く傷つけ、信頼関係を破壊する罪深いことです。だから、彼がどんなにもうしないと言っても、シェニカがその言葉を信用しきれないのは当然だと思います。
シェニカが約束したことを履行しようとするのは立派なことだと思いますが、彼が願った関係の再構築は、2人の信頼関係がきちんとあること、2人の間で好きだと思う確かな気持ちがなければ、難しいのではないでしょうか』
とディズが言っていたのを思い出した。
確かに恋人になるってことは、お互い信頼しあって、好きだと想い合わないと成立しない関係だけど、ルクトはディズに心変わりした私を今でも信頼して、好きだと思っているのだろうか。
私がディズを好きになったことを受け入れるって言ったけど、どうしてそこまで思えるのだろうか。
ルクトが私と別れたくないと言うのはどうしてだろう?
神殿の人みたいに私を利用してやろうとか思っているのだろうか?と考えてみても、彼とは元々偶然の出会いだし、ドルトネアに行こうなんて言わないし、今までの旅で私を利用しようなんて言動は取らなかったから、それはないと素直に思える。
じゃあ、ディズを受け入れるという悪条件を飲んでも、本当に私とやり直したいと思っているのだろうか?
過去を振り返ってみても、彼は好きだと口に出すこともなく、デートするわけでもない。『性欲の悪魔』だから宿に泊まる時はいつも求めてくるけど、人目がない時、寒い時以外は手も繋いでくれない。彼がそんなに好きでいてくれていたなんて、実感したことはなかった気がする。
言葉にしない彼だけど、胸の内では想っていてくれたのだろうか。トラント国王のように強制催眠で心の中を覗くっていうことも出来るけど、信頼関係が崩れたとはいえ、恋人として親しい関係だった彼の心の中を暴いて、知りたくない事実を知ってしまうのが怖い。
「う~ん……考えても分からないから、これも置いといて。次は距離感を考えてみよう。2人きりになるのはディズは大丈夫だけど、ルクトは人目のあるところとか、逃げ場があるところなら大丈夫かな?隣を歩くのは、ディズは大丈夫だけど、ルクトは真横に居られるよりはちょっと距離を空けて欲しいかなぁ」
具体的な場面を思い浮かべてみると、私はルクトとは人目のある場所なら近くにいても大丈夫だけど、ディズのような近い距離は難しいのだと認識出来た。
こんな状態で、もう一度恋人という関係に戻れるのだろうか。
溜息を吐いて何もない白い天井を見上げ、ルクトと出会った時からのことを振り返ってみた。
彼と初めて会った時は生々しい戦場跡で、バルジアラ将軍に呪いを受けて血まみれになっていた。護衛が欲しかった私は、主従の誓いを条件にして呪いを解いて。そして旅が始まったんだっけ。
私が突き落とされるという事件があったものの、盗賊を倒したり、ナンパを遠ざけたり、リズソームの時は元副官の強い人を倒してくれた。
こうしてみると、彼は護衛という役目を十分果たしてくれていたと思う。色々あったけど、私を守ってきてくれたルクトに感謝したいと思う。
視線を机の上の紙に戻すと、ルクトの欄に『護衛として優秀。感謝してる』と書いた。
そして、改めて自分の書いた内容を読んでみると、私の彼への好きだという気持ちは随分と薄れている感じがする。
ルクトはあの晩のことを後悔しているみたいだけど、私の気持ちが薄れている上に信頼関係が崩れている状態では、やり直したとしてもお互いのためにならない気がしてきた。
紙を前にして悩んでいると
『手に負えなくなったら、遠慮なく股間を蹴り上げて。蹴り潰しても構わないわ。ルクトが土下座して謝れば、シェニカちゃんが元に戻してくれるでしょうし』
というファミさんの言葉がフッとおりてきた。神殿に入る前、クラスの友達とボールを使った鬼ごっこをしていたら、強く投げられたボールをそこで受け止めてしまった男の子が、冷や汗と涙を流して悶え苦しんでいた記憶がある。
治療してあげられるとはいえ、流石に痛い思いをするのは……。うーん。これも大人になる一歩ということで、やったことがないことに挑戦してみた方が良いのだろうか。
とりあえず蹴る練習をしてみようかと立ち上がった時、扉を控えめにノックする音が聞こえた。
誰だろうかと思いながら扉に近付くと、「食事を持ってきました」とディズの声がした。ドアを開けると、肩にユーリくんを乗せ、食事のトレイを持ったディズがいるけど、なぜかしょんぼりした顔をしている。その後ろには、トレイを持ったルクトが無表情で立っている。
「まだ書類を処理しなければならないので、夕食を共にすることが出来ないのです。すみません」
「ううん、大丈夫だよ」
「私のかわりに、ユーリがシェニカと食事を共にしてくれます。ユーリ、シェニカをよろしくお願いしますね。夕食のクルミはここに置いておきますね」
「チチ!」
ユーリくんに手を伸ばすと、彼は私の肩まで一気に駆け上ってきた。ディズからクルミと食事が乗ったトレイを受け取ると、ルクトが一歩前に出て私をジッと見てきた。
「良かったら一緒に食べないか?」
「うん、いいよ。じゃあ、そこのテラスで食べようか。ディズ、ユーリくんをしばらく預かるね」
少し整理出来た私の気持ちを見極めるためにも、ルクトともう少し話がしたいと思った。ルクトと同じ部屋での食事は難しいけど、ディズの部屋の隣のテラスなら、何かあったら声を出せば来てくれるだろう。
「後で迎えに行きますね」
ディズに見送られながらテラスに入ると、一瞬風が吹き抜けてローブとスカートの裾がふわりと膨らんだ。耳の裏に桜貝があたるのを感じながらガーデンテーブルにトレイを置き、ルクトと向き合う形で椅子に座ると、私の肩にいたユーリくんがテーブルの上に下りて、私に「ご飯頂戴!」とおねだりを始めた。クルミはユーリくんのすぐ隣のトレイに乗ったままだから、すぐに食べられる状況なのに。ちゃんと私におねだりするなんて、ユーリくんはなんて賢くて、お行儀の良い子なのだろうか。
「じゃ、私達も食べようか。いただきます。ユーリくん、素敵なスカーフありがとう。似合ってるかな?」
「チチ!」
「ユーリくん、スカーフ大事にするね。さ、クルミをどうぞ~♪」
ユーリくんにお礼を言ってクルミを渡すと、彼は受け取ってすぐに一心不乱に食べ始めた。
私も食べようとトレイを見てみれば、数種類のきのこを使った炊き込みご飯、クルミの入ったほうれん草のおひたし、チキンサラダ、根菜と魚のすり身のハンバーグ、わかめスープ、スイートポテトと盛り沢山だ。
「ご飯、何だか豪華だね」
「この街はデカイから周辺地域から食材が集まるんだろうな」
彼の顔を見てみると、炊き込みご飯を片手にハンバーグを美味しそうに食べている。ギスギスした空気はないけど、何を喋ったら良いか分からないまま私も食べ始めた。
居心地の悪さを感じている時、目の前にいるクルミを頬張るユーリくんを見ると、一気に気持ちがほわほわと和んだ。
「ユーリくん、可愛いなぁ」
「いつもナンパしてはフラレてるのに、そのリスはよく懐いたな」
「羨ましいでしょ」
「懐かれるなら、リスよりスザクワシの方が断然良い」
「メロディちゃんも可愛いけど、ユーリくんも可愛いよ?ルクトはメロディちゃんと仲良くなりたいの?」
「そりゃそうだろ。スザクワシに限らず、あそこにいた全部人に懐くことなんてない奴らだぞ」
「じゃあ、ルクトはスザクワシになりきれる服を着たらいいよ」
「なんだ『なりきれる服』って。着ぐるみでも着るのか?そんなの絶対怪しんで近付いてこないか、怪しい敵とみなして攻撃してくるぞ」
「そうかなぁ?『動物と接する時、警戒心を解き、親近感をもってもらうために、その動物になりきることが必要だ!』ってお父さんが言ってたよ?実際、実家の牧場で羊の着ぐるみを着て育てたら、みんな立派な羊に育ってくれたし!」
「へぇ。お前の実家って牧場やってるのか?」
「うんそうだよ。小さな牧場だけど、羊を育ててるんだ」
「そんな育て方してるのって、お前の牧場だけじゃないのか?」
「そんなことないよ。お父さんの提唱した『なりきり飼育』は、他の牧場も良いねって言ってくれて、みんなそこにいる動物の着ぐるみを着てやってるんだよ?」
「もしかして。お前はそれを見てるから、服を選ぶ時に着ぐるみみたいなのを選ぶのか?」
「なりきれる服って可愛いじゃん。ねぇ、ユーリくん」
クルミを頬袋に詰めていたユーリくんに声をかけると、彼は詰め込むのを止めて私を見てきた。片方だけ膨れたほっぺが、とっても可愛い!
「私がオオカミリスになりきれる服を着たら、親近感が湧いてもっと仲良くしてくれるよね?」
「ジジッ!」
私は自信満々に声をかけたのに、なぜかユーリくんは警戒したような声を出した。毛を逆立てていないし、牙や爪を見せて威嚇しているわけじゃない。となると、この反応は私の問いかけに否定の返事をしたのだろうか。
「じゃあ、ユーリくんの大好きなクルミになりきれる服がいいかな?恋するクルミの服だったらもっといい?……あれ?」
私の再度の問いかけに、ユーリくんは私に背を向けてクルミの詰め込みを再開する、という返事をくれた。この感じ、なんだか私が可愛い子にナンパしてフラれた時と同じ空気が流れているような気がする。私のなりきり作戦は駄目なのだろうか。
「着ぐるみを着ても警戒されるだけだと思うぞ。上手くいくのは、お前の地元の動物が寛大なだけだろ」
「そんなことないと思うけど。オオカミリスの生息地に行く時、私はどんな格好で行けばいいかな?」
「その格好で良いんじゃないのか?」
「そうかなぁ。ユーリくんはどう思う?この格好はとっても素敵だけど、オオカミリスのみんなと仲良くなれるかなぁ?」
「チチ!」
ユーリくんに話しかけたら、振り向いた彼の両頬は歪に膨んでいた。そんな可愛い彼がいつもと同じ鳴き声で返事をしたということは、この格好が良いと返事をしてくれたようだ。
ほかでもないオオカミリスのユーリくんがそう言うのだから、きっとこの格好の方が良いのだろう。でも、なりきり作戦にも未練が残る。
食事を食べながら、久しぶりにルクトと他愛のない会話をポツリポツリと繰り返す。会話が途切れた時、ユーリくんが毛繕いをする姿や、テーブルから下りてテラスを駆け回っている姿を眺めているだけで和むから、沈黙は気にならない。緊張が解れて少し長い会話が出来るようになった頃に、ルクトに遅れて私も食事を食べ終えた。
ルクトとこうして食事をしている間、目を見て話すことが出来た上に彼を怖いと思わなかった。ディズやユーリくんが近くにいるからだろうか。それとも、彼自身が穏やかな気持ちでいたからなのだろうか。
「あの……さ」
静かな沈黙が落ちた時、ルクトが言いにくそうに言葉を切り出した。私の膝の上でくつろいでいたユーリくんからルクトに視線を移すと、彼はなんだか視線が泳いでソワソワしている。
「どうしたの?」
「その~」
ルクトは落ち着かない様子で言い淀んでいるけど、言いにくいことがあるのだろうか。何を言うのか分からないけど、彼のタイミングで話せるようにと黙って待っていることにした。
「あの~。なんだ。……その、旅装束とローブにスカーフ、似合ってる。そのワンピース姿、か、か、可愛いよ」
開いた口がそのまま固まってしまうくらい、彼らしからぬ台詞に思わず目が点になった。尻すぼみになりながらも言い終えたルクトは、照れているのか視線を床に落としている。
今までそんなこと言う人じゃないと思っていたけど、随分と言いにくそうだったし、彼の耳が少し赤くなっていることを考えると、彼なりに変わろうと頑張ろうとしているのだろうか。
私よりも大きな身体を縮こまらせてモジモジしている姿を見ると、彼にこんな一面があったのかとビックリした。
私がすぐに返事をしないことで不安になったのか、ルクトは下を向いたまま今度はソワソワし始めた。その姿はまるで、イタズラをした子供が、お母さんから何を言われるのかと落ち着かない様子で待っているのと似ている気がする。その姿を見ていると、目の前の景色やルクトがフッと消えて、自分の周囲が真っ白なモヤに包まれた感覚に襲われた。
視線を下に移すと私の膝の上にいたユーリくんは消えて、入れ替わるように小さな宝箱を乗せている。その箱がパカッと開くと、真っ白なモヤが音もなく吸い込まれ始めた。ゆっくりと吸い込まれるモヤを眺めていると、血まみれの中で悪態をつくルクトが映し出された。これは彼と出会った時だな~なんて懐かしく思っていると
女性傭兵に突き落とされて、目を覚ました時に見た切羽詰まったルクト。
治療院で仕事をしている時、私の後ろで護衛の仕事をするルクト。
レストランでレオンと一緒に私を指さしながら大笑いするルクト。
コロシアムで見た鋭い表情をしたルクト。
落ち着くおまじないをして、裸財布を倒してくれた頼りがいのあるルクト。
初めて愛し合った時に見た、色気を醸し出しながら嬉しそうな顔をしていたルクト。
今に至るまでの旅の順番で、色んなルクトの顔が映っては宝箱に吸い込まれていく。
そして場面がラーナに移った時、あの晩見たルクトの怖い顔が映った。その表情を見るのは胸が痛かったけど、鍾乳洞から戻ってきた私に見せた焦った顔、安心したような泣きそうな顔、私に頭を下げて謝る姿、ディズといる私を寂しそうに見ている姿が映し出されると、彼の後悔や寂しさを感じて私も悲しくなる。
そして、たった今見たモジモジするルクトの姿を映したモヤが宝箱に吸い込まれると、宝箱はパタンと閉じた。それを見届けた私も目を閉じてみると、胸に広がっていたモヤモヤが消えて何かが残っている。それが何なのかを感じて目を開けると、膝の上には宝箱ではなくユーリくんが居て、目の前ではルクトが居心地悪そうにしたままだった。
「ありがとう。ルクトに買ってもらった旅装束、大事にするね。それと。私の返事を言っても良い?」
「あぁ」
ルクトはゆっくりと視線を上げて、不安そうな目をして私の目を見た。
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