天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第18章 隆盛の大国

26.今までにない姿

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■■■前書き■■■

更新大変お待たせしました。
厳しい暑さが続くと身体がしんどいですね…。体力的にも精神的にも消耗する暑さには参ってしまいます。
まだ暑さは続くらしいので、皆様もどうぞお身体にはご自愛ください。

今回はシェニカ視点のお話です。

(お知らせ)
『小話 魔像と下僕たち』はよろず置き場へ移動しました。

■■■■■■■■■

開かれた窓から爽やかな風が流れる食堂に入ると、テーブルの拭き掃除をしていたエイマさんを見つけた。


「エイマさん。クッキーを作りたいのですが、キッチンをお借りしてもいいでしょうか?」
「もちろんでございます。どうぞお使い下さいませ。材料をご用意します」
「ありがとうございます」

突然の話だったはずなのに、エイマさんはニコニコとした笑顔を向けて大きく頷いた。その返事を確認したディズは、私に残念そうな表情を向けた。


「私は向こうの書斎にいるので、何かあったら声をかけて下さい」
「お仕事頑張ってね」

ディズは名残惜しいようで、何度も振り返りながら食堂を出ていった。



「こちらからお入り下さい」

エイマさんの案内で食堂から厨房に繋がるドアをくぐると、うっすらと残るパンの焼ける匂いが出迎えてくれた。
広い厨房は長方形の形をしていて、洗い場と勝手口がある壁、廊下に繋がるドアがある壁が面積が大きい2面だ。面積が小さい2面は、いま通った食堂に繋がるドアがある壁、ドアも窓もないけど大きなカーテンが両端にまとめられている壁で、そのカーテンは壁側に寄せられた折りたたみ椅子や脚立、食事を運ぶワゴン、氷で食材を冷やす大きな冷蔵庫などを見えないようにするためにあるようだ。
部屋の中央には大きなコの字型の作業台が1つと4脚の椅子が置かれていて、全ての壁が白とクリーム色を交互に嵌めたタイル張りでとてもキレイだ。


「あ!リス達がいる!」

洗い場と勝手口の間にカマドとオーブンが置かれていて、目線の高さに窓ガラスが3つある。その窓からリュゼットくんに飛びついて遊ぶリス達が見えるけど、彼らは私が窓に近付いたことに気付いても警戒することなく遊び続けている。


「リス達を見ながらお料理出来るっていいですね!」
「今までは枝の上を移動する姿を一瞬見る程度でしたが、シェニカ様がお越しになってから人形で遊んだり、クルミを食べたり、遊ぶ姿も見れるようになって私共も大変嬉しく思っております」

食堂側の壁と廊下に面した壁には私の腰くらいの高さの食器棚や、レシピ本や布巾などが置いてある棚、野菜を保管していると思われる木箱を乗せた棚が隙間なく置かれていて、エイマさんはその棚と作業台を行き来しながら教えてくれた。


「今からクッキー作るから楽しみにしててね!」
「アーモンドやチョコチップなどもお使いになりますか?」
「持ってきたクルミを使おうと思うので大丈夫です」
「かしこまりました」

窓越しにリス達に手を振ったりしている間に、エイマさんは作業台の上にボウルや計量スプーンに計量カップ、泡立て器などの道具類や、小麦粉や砂糖、バター、塩、牛乳などの材料を準備してくれた。


「窯には常に火が入っておりますので、すぐにお使い出来ます」
「ありがとうございます。遠慮なく使わせていただきます。お昼ごはんの支度もあるのに、急な話でご迷惑をおかけしました」
「仕込みは終えておりますので、まったく問題ございません。どうぞ楽しいひとときをお過ごしくださいませ。近くにおりますので、何か足りないもの、お手伝いすることがありましたら遠慮なくお声がけ下さい」

エイマさんが厨房から出ていくと、私はローブを脱いで椅子の上に乗せた。エイマさんは大丈夫だと言ってくれたけど、できるだけ早くクッキーを作ろう。
旅装束の袖をまくり、クッキーの作り方を思い出しながら材料を計量し、小さい頃はよくお母さんと一緒にパンやマフィン、クッキーを作ったりしていたことを思い出した。

今頃お父さんは羊の様子を見たり、犬たちのブラッシングをしているだろうか。お母さんは家で毛糸玉を作ったりしているだろうか。
お母さんの作るダークチェリーのカップケーキ、甘いけど少し苦味があって美味しかったな。

故郷での時間を思い出しつつ、大きめのボウルに入れたバターを初級の火の魔法をかけて溶かし、砂糖と塩、溶き卵を入れて混ぜていると、厨房の中を見回っていたルクトが近付いてきた。


「手伝うか?」
「ありがとう。じゃあ、今からこのボウルの上で私が小麦粉をふるいにかけるから、ルクトはクルミを入れながら混ぜてくれる?」
「分かった」

2人で作業しやすいように作業台の角に移動し、ルクトに木べらを渡した。そして早速ふるいをトントンと小さく叩くと、小麦粉が雪のように落ちていく。
最初は恐る恐るといった手付きで混ぜ始めていたけど、数分後には慣れたのか手際よく混ぜ始めた。


「ルクトってお菓子作りとか料理に興味ある?」
「ない。お前はこういうの得意なのか?」
「実家に居る時、お母さんと一緒にお料理してたんだ」
「そうなのか」

ーー会話が途切れちゃったけど、前は居心地悪いと感じていたこういう無言の時間が気になってない…。
リュゼットくんを作り始めてから普通に会話ができるようになったし、部屋に2人きりになっても大丈夫だったということは、私の中にあったルクトへの恐怖や怒りは落ち着いたのだろうか。
よく分からないけど、この状態ならポルペアまでは今までのような旅が出来る気がする。レオンもいるし、別れる時は笑顔で「今までありがとう。元気でね」ってバイバイ出来そうな気がする。


「疲れるだろ。代わるか?」

ふるいをトントンと叩きながら今後の護衛のこと、この先の旅のことなどを考えていると、ルクトが声をかけてきた。


「じゃ、お願い」

持っていたふるいを渡し、同じ体勢で強張った身体を伸ばしてみるとすごく気持ちが良かった。


「疲れたら交代しましょ」
「分かった」

ルクトは少しぎこちない手付きで、ふるいをトントンと小さく叩き始めた。彼のこういう一面は初めて見るけど、なんだか少し可愛らしく感じる。
ルクトがお菓子作りをするのって想像出来なかったけど、丁寧にやってくれるから料理をするのに向いているような気がする。



「そろそろ交代しよっか」
「まだ大丈夫だ」

ルクトにふるいを任せて結構な時間が経ったけど、彼は身体を伸ばすこともなく、ずっと地道にやってくれている。
リュゼットくん作りのお手伝いをしてくれる時もそうだったけど、地味な単純作業を長時間しても文句を口にすることも、飽きたという空気を出すことも、露骨な溜め息をつくこともしない。
こういうことも真面目にやる人なんだと思うと何だか新鮮で、不思議と心があったかくなった気がした。




「ありがとう。疲れたでしょ?座ってていいよ」
「全然大丈夫だ」

ルクトが頑張ってくれた結果、彼がすべての小麦粉を雪のように細かくしてくれた。言葉にすることはないけど、肩を抑えて首を左右に傾けているから少し肩が凝ったようだ。


「あっという間に終わる魔法があればいいのにね」
「便利な魔法でそういうのはないのか?」
「私が今まで読んだ魔導書にはなかったなぁ」

そういう魔法があったら、本当に便利で実用的だと思う。まだ読んだことのない魔導書には、そういう魔法が書いてあるといいんだけど。便利な魔法の魔導書はなかなかお目にかかれないから、この先も根気強く古書店に立ち寄らなければ。


「次は何をする?」
「ティースプーンで一杯分ずつ生地を取って、オーブン皿の上に形を整えて並べよっか。薄くなるようにスプーンで上からペタペタってやってね」
「分かった」

窯の様子を確認しようと蓋を開けてみると、クッキーを焼くには十分な熱が籠もっていた。この厨房ではたくさんの料理を作るからなのか、横長の窯と同じサイズのオーブン皿は家庭用の2倍くらいの大きさだ。
分量を多めにしたから2回に分けて焼くことになるかと思っていたけど、これなら1度で全部焼けそうだ。


「料理って楽しいね」
「……お前とするのは楽しい」

掬った生地をオーブン皿に並べながら、なんとなく口をついて出た言葉だったけど。ルクトの返事が意外過ぎて、思わず作業する手を止めてしまった。
しばらく動かずに彼を見ていたら、顔を上げることもせず、黙々と作業を続けていたルクトの耳が少し赤くなったことに気付いた。

ーーここ最近、ドレス姿がキレイだったとか、以前なら絶対言わなかったことを口にするようになった。恥ずかしい気持ちを抑えて、頑張って言葉にしているのが伝わってくるけど、どうしてそこまで頑張ってくれるんだろう。


「そういえば、レオンは料理をするって言ってたよね。今度何か作ってもらいたいね」

「自信があるみたいだったから、言えば作ってくれるんじゃないか?でも凝った料理は期待しない方が良いと思う」

「どんな料理するか知ってるの?」

「細かいことを気にする性格じゃないと思うから、味付けとか切り方とか適当な気がする」

「あははは!豪快って感じがするもんね。ルクトも料理とかしてたの?」

「マールを釣って焼く程度ならするけど。自分で作るよりどっかで食べたほうが美味いから、全然しなかった。お前はしてたのか?」

「私も同じ。わざわざキッチンつきの宿の部屋を取って作るよりも、外で済ます方が安いし」

宿の部屋にはキッチンつきのものもあるけど、そういう部屋があるのはだいたい値が張る宿のところで、ファミリー向けの広い部屋という場合が多い。
そういう部屋には調理器具や調味料などが用意されているから材料を買ってくればすぐに料理が出来るけど、少人数なら食堂で食べたほうが安上がりだ。


「この温度ならすぐに焼けそうね。よいしょ!」

あつあつのオーブン窯に皿を入れると、ルクトは椅子をオーブンの近くに持ってきてくれた。


「手伝ってくれてありがとう」

洗い物を終えると近くに置いてあったコップに水をいれ、彼に手渡すと小さく頷く返事をくれた。


「動物図鑑、もう全部読んだ?」

「とりあえず全部読んだけど何回読んでも面白い。読むか?」

「うん!」

ルクトが上着の内ポケットから取り出した図鑑を受け取ると、さっそく前回の続きから読んでみた。
鳥の囀りとリス達の楽しそうな声が聞こえる中に、クッキーが焼ける美味しそうな匂いが漂ってくる。そんな状況で本が読めるのは贅沢だなぁと思っていたら、どこかで何かをひっかくような小さな音が聞こえた気がした。


「何か音がした?」
「あそこだ」

ルクトが指差した窓を見ると、窓の外側の枠のところに1匹のオオカミリスが居る。その子は後ろ足で立ち上がっていて、私達の方を見たまま時折爪でガラスをひっかくような動きをしている。


「クッキーを焼く匂いが気になったのかな?」

可愛い姿を見ようとルクトの本を返して窓に近付くと、ガラスの向こう側に居たリスは隣の窓枠へ逃げてしまった。
さっきまでリスがいた窓を少しだけ開けると、クッキーの匂いが気になるのか、時折小さなお鼻がヒクヒクと動いている。ガラス越しで良いから向かいに立ちたいけど、すぐ逃げてしまいそうだ。


「もうすぐクッキーが焼けるんだ。出来たらみんなにあげるから、近くで待っててね」

優しく話しかけたけど、声に警戒してしまったのかリスは窓枠から地面へと飛び降りてしまった。でも、その子は窓の近くまで枝を伸ばした木に駆け上がり、窓から中を覗ける場所で動きを止めた。私をジーッと見下ろしているから、どうやらそこで待つつもりのようだ。
お利口さんで可愛いな~。ナンパしたいけど、無闇にナンパするのは我慢!と思っていたら、廊下に繋がるドアが開いて、手の上にユーリくんを乗せたディズが入ってきた。


「良い匂いがしますね。ユーリがソワソワしています」

「ユーリくん、戻ってきてたの?」

「早起きしすぎて眠くなったのか、戻ってきてお昼寝をしていました」

「そうなんだ!ユーリくん、もうすぐクッキーが出来るから待っててね。そこの木の枝にも待ってるお友達がいるんだよ」

ディズの手から飛び降りたユーリくんは、床を駆け抜けて枝の上のリスに近い窓まで移動すると、枝の上で待つ子をジーッと見ている。お互いジーッと見ているだけで鳴き声は上げていないけど、会話しているのだろうか。


「そろそろ焼けたんじゃないか?」

ルクトの声に弾かれるようにオーブンを開けてみると、薄くて丸い小さなクッキーは美味しそうな焼色になっていた。


「よし!ちゃんと焼けた!あとは冷めるのを待つだけね」
「外に置いておいた方が早く冷めるだろうから、皿に移して外に出すか?」
「そうしようか」

オーブンから熱々の皿を取り出すと、作業台の上でルクトと2人で大きめのお皿5枚にクッキーを移した。


「ルクトもその大きなお皿を2枚、持ってきてくれる?」
「この皿は私が持っていきましょうか?」
「ううん、そのお皿の分は人間わたしたちの分なんだ。お昼ごはんの時に一緒に出してもらえればと思ってるから、そこに置いておいて大丈夫だよ」
「では椅子を持っていきますね」
「ありがとう」

勝手口から外に出て、ディズが持ってきてくれた4脚の折りたたみ椅子の上に置いた。すると、クッキーの匂いが周囲に広まっているのか、待っててくれている子が居る木にたくさんのリスが集まり出し、たくさんの子たちがジーッと私達を見下ろす状態になった。


ーーみ、みんなのためにクッキーを作ったんだ!
ーー気に入ってくれたら!もし良ければ私と結婚してください!!
ーー結婚後はお友達とは離れてしまうけど、美味しいクッキーやパンを食べて、色々な場所に遊びに行けるよ!

そう言いたくなる気持ちを、鼻血を出して気絶したという苦い経験を思い出して一生懸命押し込む。でも。

みんなからたくさん期待されているのだと分かると、クッキーだけでなく私にも好意を向けてくれている気がして、ナンパしたくなっちゃうよ!!


「ユーリ、冷めたら食べられると伝えてきてはどうですか?」
「チッ!」

ユーリくんがみんなのいる木の下に来ると、枝の上にいた子たちが一斉に下りてきて、ユーリくんを取り囲む状態になった。
リスたちの間を縫うようにして戻ってきたユーリくんが椅子の上に登ると、クッキーの入ったお皿の横で、私に向かって両手をスリスリと動かしておねだりしてきた。


「このクッキーは全部みんなのだから仲良く食べてね。まずは冷めたか味見してみるね」

ユーリくんの小さな頭を指で撫でて一つ食べてみると、薄いからか表面も中も火傷しない程度に冷めている。
でも完全に冷めているわけではないから、ユーリくんには熱いと感じるかもしれない。


「私は食べられるけど。ユーリくんって熱くても大丈夫なの?」

「どうでしょうか。試したことがないので分からないですね。熱ければ無理して食べないでしょうから、試しに1つあげてみて下さい」

「はい、どうぞ。熱いと思ったら、冷めるまで待とうね」
「チッ!」

ユーリくんに1つあげると、こまめに持ち替えているものの、熱がることはせずにカリカリと食べている。口の周りにクッキーのカケラをつけ、足元に細かいカケラを落とす姿もまたかわいい。


「ユーリくん、美味しい?」
「チチチ~♪」

「熱さは気にならないようですね。私も食べて良いですか?」
「もちろん。ルクトも味見どうぞ」

ディズとルクトに1枚ずつあげると、パクっと食べたディズは私に嬉しそうに微笑んだ。


「塩味ですが甘さもほんのり感じられて美味しいですね。クルミは砕いた状態でもカリカリ感と香ばしさがあって美味しいです」
「本当?よかった!ルクトはどう?」
「美味い」

熱がることもな食べ終えたユーリくんは、またスリスリとおねだりポーズをしている。木の下にいる子達もこっちをジーッと見ているから、早くクッキーが食べたいようだ。


「みんなの方に持っていくから、一緒に食べてね」
「椅子持っていく」
「ありがとう」

ユーリくんを肩に乗せてお皿を2つ手に取ると、ルクトがお皿を乗せていた2脚の椅子を抱えてくれた。
待っててくれている子たちの方に数歩踏み出すと、やっぱり警戒されてしまったようで、全員があっという間に木に登って頭上の枝から私を見下ろした。


「ここに置いておくね。おかわりもあるから仲良く食べてね!」

木の下に椅子をくっつくように並べ、その上に置いたお皿にユーリくんを下ろしてディズの方に戻ると、枝の上にいたリス達がお皿に殺到し、クッキーを両手で掴むとカリカリと食べ始めた。出遅れたリス達は食べる子たちの頭を踏んづけ、僅かな隙間に顔を突っ込んでクッキーを咥えると、踏んづけたリスの背中の上で夢中で食べている。


ーーきゃぁぁ!リス達がお皿の上にモリモリ入ってる姿もかわいいっ!

クッキーが入ったお皿はリスが盛られた状態になったけど、みんなの分があるからか、喧嘩する声がしていないことに安心した。


「美味しそうに食べていますね」
「喜んでくれてるみたい。嬉しいなぁ」

ディズと他愛のない言葉を交わしていると、周囲から音もなくやってきたリス達の1団が椅子を登り、夢中で食べている子たちを押しのけ始めた。無理矢理割り込んだ1団のうち、数匹はクッキーを手に取ることが出来たけど、ほとんどの子たちは最初からそこにいた子を押しのけられず、お皿には入れなかった。すると、その子たちはお皿の端っこにいる子が食べるクッキーを奪い取り、喧嘩を始めてしまった。


「ジジジジッ!」
「ジジッ!」
「まだあるから喧嘩しなくても大丈夫だよ~」

残り2枚のお皿も持って行こうと立ち上がった途端、ほとんどリス達が枝の上に逃げてしまい、お皿の中には黙々と食べ続けるユーリくんと、手にクッキーを持ったまま私を凝視する3匹だけになってしまった。


「みんなと仲良くしたいから、イジワルなことなんてしないよ」

いつでも逃げ出せるように身構えている3匹に、ユーリくんは話しかけているのか「チチチ」と鳴いている。
お皿を持った私と椅子を持ったルクトが木に近付くと、お皿の中にいた3匹は警戒したようでクッキーを置いて木の上に逃げてしまった。
ユーリくんのいる椅子からちょっと離れた場所に静かに椅子を置き、みんなが食べていたお皿の中を見てみれば、クッキーは随分減っていた。


「これで全部だけど量はたくさんあるから、喧嘩しないように食べてね」

4枚のお皿の中身がだいたい同じ量になるように調整してディズの方へ戻ると、木の上にいた子たちが一斉に降りてきて、4つのお皿にリス達が盛られた可愛い情景が見れるようになった。


「椅子持ってきた」
「ありがとう」

厨房から折りたたみ椅子を3脚持ってきたルクトは、組み立てた椅子を横一列に並べてくれた。
真ん中に座った私の右にルクト、左にディズが座ってしばらくすると、姿は見えないけどチュンチュンとスズメの鳴き声が聞こえ始めた。


「食べこぼしを狙ってスズメたちも集まってきているようですね」
「どこにいるんだろう?」
「リュゼットくんを警戒して近寄ってきていませんが、屋根の上に集まっているようですよ」

屋根の方を見上げてみても、私の位置からはスズメは見えない。ディズも同じような位置にいるから見えないはずなのに、『屋根の上に集まっている』と分かるのは気配を読んでいるからなんだろう。


私も気配が読めるようになれればいいのにな~と思いながらリス達でいっぱいのお皿を見ていると、「フィー」という鳴き声がだんだん近づいてきていることに気付いた。
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