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第18.5章 流れる先に
6.キケンな人物
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第18.5章は色んな名前が飛び交うため、少しでも分かりやすくなればと、出てくる人達を整理しておきます。ご参考までにどうぞ。
(バルジアラの副官)
●リスドー ※腹心
●イスト
●ヴェーリ
●モルァニス
●アルトファーデル
(下級兵士)
●ライン(リスドーの部隊所属)
●ロア(イストの部隊所属)
●マルア(ヴェーリの部隊所属)
●ロンド(ヴェーリの部隊所属)
●ワンド(アルトファーデルの部隊所属)
(銅の階級章を持つ上級兵士)
●リーベイツ(モルァニスの部隊所属)
■■■■■■■■■
「体術も随分上手くなったな」
「ありがとうございます」
「状況判断が的確になってきたのはいいが、次の行動に移すまでの時間をもう少し短縮したい。明日はそこを重点的にやるぞ。今日はこれで終わりだ」
「明日は休暇日なので、明後日ですね。今日もありがとうございました」
自分がそう言うと、バルジアラ様は表情を消した真顔でこちらをジッと見据えた。殺気も怒気も感じないが、何となく嫌な予感がする。
「お前、休暇日は何してんだ?」
「部屋でゆっくりしていますが…」
「そうか。これからは休日返上で鍛錬する。明日の朝、いつもと同じ時間にここに来い」
1日ダラダラできる休暇日を楽しみに毎日頑張っているのに。それをなぜ取り上げてしまおうとするのか。
「毎日の鍛錬で疲れが溜まっているので、しっかり身体を休めたいのですが」
「1年の差を埋めるために悠長に構えている暇はない。それに、お前は休暇日でもほとんど部屋で過ごしてるって、ワンド達から聞いたぞ。予定がないなら問題ないだろ」
確かに父に給料を預ける時、ラインやワンドといった独身者で食事や飲みに行く時以外は最低限の外出しかしない。
休暇日に何をしようと自由だと思うが、なぜバルジアラ様と朝から晩まで個人鍛錬をしなければならないのだろうか。
「予定があることもあります」
「どんな予定だ?」
「家族に会うとか、城下を散策するとか…」
「なら、予定がある時はその時間だけ中断してもいい。でも戻ってきたら鍛錬再開だ」
このままでは休暇日がなくなってしまうと思い、なんとか抵抗出来ないかと考えた時。バルジアラ様がリスドー様に責められ小さくなっていた状況を思い出した。
「私への鍛錬に付き合っていただきとても感謝していますが、バルジアラ様はデスクワークに励む日もあった方が良いと思いますが…」
「そ、そんなことお前が心配する必要ないんだよ。とりあえず!明日から休日返上だ。寝坊するなよ」
バルジアラ様にとって『デスクワーク』というのは非常に耳の痛いことらしく、動揺を隠すように一方的に宣言すると、いつもより速いスピードで鍛錬場から去っていった。
休日返上で個人鍛錬なんてしたくないものの、バルジアラ様からの命令となると拒むことは出来ない。バルジアラ様の今の反応を見る限り、リスドー様に助けを求めたら多少の力を貸してくれると思うが。サザベルとの演習は『特別なもの』と位置づけられているようだから、決定は覆られないかもしれない。
「はぁ…」
きっとどうにもならないと諦め、鍛錬場の隅で自主鍛錬をしながら自分を待ってくれていた仲間たちの元に向かった。
「お疲れ様。早速メシ食いに行こうか。さっきからいい匂いがしてるから腹が減ってたんだよな」
「ですね!今日は唐揚げ定食にしようかな」
「俺はチキンステーキ定食にするよ」
「俺はカレーにします!今日は辛口に挑戦っ!」
「辛口でも結構辛かったぞ? まぁ、舌が痺れたりしたら俺が治療魔法かけてやるからな」
「そ、そんなに?」
いつも通りの彼らを見ると、暗い気持ちも軽くなるのだが。
ーーお前に危険が及べば自分を盾にしてでもお前を守ろうとする。
ーーお前が死ねば『すみません』って俺に言いに来るのが目に見える。
ーー自分の目の前で、自分をかばって仲間が死んだら、間接的に自分が殺したといつまでも罪悪感に苛まれる。
バルジアラ様から言われた言葉が頭から離れないことに加え、頭が疲れているのか、彼らといる時に『地面に倒れた自分を庇おうと、飛び出してきた仲間が剣で刺し抜かれ、その血を全身に浴びる』という幻覚を見る時がある。庇おうとする人はその時々で違うのだが、喉や胸を貫かれた瞬間の顔、血まみれになりながら微笑を浮かべて見下ろす顔、降り注ぐ血に温かさを感じるといったところまで、やけに具体的な幻を見てしまう。
病気だろうか、知らない間に呪われたのかと心配して、白魔法も得意なリーベイツ様に診てもらうと、呪われているわけでも病気でもないと言われた。
どうしたら良いのか助言を求めると、『ディスコーニは具体的にイメージを捉え、瞬時に思い浮かべることに長けているんだと思う。想像力が豊かなことは、黒魔法を使う上ではとっても便利で上達が速い証拠だ。それは決して悪いことじゃないけど、こうなってほしくないという気持ちが想像力と混ざると、話してくれたような幻覚を見るのかもしれない。でも、実際のところ、仲間の死を目の当たりにすることはあり得ない話じゃない。そんな未来が来ないように、何かが警告してくれているのかもしれないよ』とアドバイスされた。
自分の力不足で仲間を死なせないように、自分が彼らを助けられるように。何度も心の中で繰り返しながら、仲間たちと肩を並べて食堂へ向かった。
「本日の講義は以上ですが、これから昨日作成してもらった報告書の講評を行います」
とある日の午後。周辺国の特徴と関係性を学ぶ講義の終わりに、教壇に立つアルトファーデル様が1人1人に講評を始めた。
「マルア。貴方の作った報告書は読みやすくて良いのですが、考察をもう少し深くして下さい。考察がきちんと出来ていれば、もうすこし文量は少なくても構いません」
「リーベイツ。きちんと結論を出しているのは良いのですが、途中から話がそれて関係のない内容が書かれています。もっと要点を絞って書いて下さい」
「ディスコーニ。結論に至るまでの内容構成、問題点の洗い出しと対処法の考察が的確で良いですね。簡潔にまとめられているので、とても読みやすかったです。特に指摘することはありません。ではこれで終わりです。お疲れ様でした」
全員の講評が終わると、アルトファーデル様と入れ替わるようにバルジアラ様が講義室にやってきた。
いつもなら自主鍛錬を行うラインやロア達と一緒に鍛錬場に行って、しばらく経ってからいらっしゃるのに。どうしたのかとマルア達と顔を見合わせていると、バルジアラ様は自分だけ残るように命じた。
「鍛錬場に行く前に、お前に教えておくことがある。まぁ、そこに座れ」
人払いをするような形になり、何か深刻な話でもされるのかと思っていると、バルジアラ様は懐から出した傭兵新聞を机の上に置き、ページの角が少し折られた場所を開いた。
「最近国境が騒がしくなってきた。近いうち俺達も出陣することになるから、お前に教えておくことがある」
そこには傭兵の名前が小さな字でびっしりと記載されているが、1人だけ四角で囲まれて強調されていた。
「そいつは『桃色宣教師』と言われる傭兵だ。そいつが戦場に現れたら、何も考えずに撤退し、そいつにもピンク色のマスカレードマスクをつけた男にも決して関わるな。間違っても奴や取り巻きと殺り合おうとしたり、怒らせたり、ちょっかいをかけるんじゃない。いいな?」
その人物についてまったく知らないが、ランクが高くなり目立った戦績を上げると、戦場詩人がその活躍を讃えて二つ名をつけると父から聞いている。二つ名がつく軍人はほとんどが副官以上の上級兵士だから、傭兵で二つ名がつくのはすごいことなんだ、と言っていたと思う。
「戦場では敵に背を向けて撤退することは負けを意味するが、奴は例外だ。どの国の副官も、将軍も、筆頭将軍も、奴が来ると撤退を判断する。そんな傭兵だ」
「そんなに危険な傭兵なんですか。一体どんな人物なのでしょうか」
「黒魔法の適性が極端に高い奴って知ってるか?」
「ロスカエナのアミフェルや、サザベルのディネード、ドルトネアのフォードロアと習いました」
自分座る前の席の椅子を掴んだバルジアラ様は、その背もたれが自分の正面にくるような格好で跨り、机を挟んで向かい合うように座った。
「その全員が将軍職に就いているが、下級兵士の頃から黒魔法の高い適性を発揮して、凄まじい威力で敵を殲滅してきた。だから黒魔法の適性が極端に高ければ将軍になれる素質がある。それはどの国も同じだというのに、そいつはその素質を持ちながら傭兵になることを選んだ」
「そんなに黒魔法の適性が高ければ、国が放っておかないと思うのですが…」
「そいつの出身国はアビテードだからな。国王を選挙で決める変わった国だし、侵略戦を仕掛けることもないから軍に入らせなくても良いって考えてんだろ」
「ですが、彼を雇った国は大きな戦果を得ることができそうですね」
黒魔法の適性が極端に高い人物はそう多くはない。なのに、それが金で雇える傭兵にいるのなら、雇った国は多大な恩恵を受けることが出来るだろう。
「奴の実力を見込んで雇おうとする国もあるが、金にも戦果にも困っていない奴は、命令に従わないどころか、気に入った男なら敵味方関係なく手駒にするまで追いかけ回す。コントロール不能だから、どの国も雇えない」
「手駒にするまで追いかけ回す?どういう意味でしょうか?」
自分がそう質問すると、向かいにいるバルジアラ様は深い溜め息を吐いた。
「奴は呪いこそ使えないが、黒魔法以外にも剣術、体術、暗殺術といったすべてに高い技術を持っている。だからすんげー強い。文句なしに強い。
奴の実力も恐ろしいが、一番恐ろしいのは、奴と殺り合っている内にその強さに魅入られ、将軍だろうが忠誠を誓ったはずの国を捨てる。そして奴のために動く『姿の見えない手駒』になるか、オネエにされて奴の経営するマッサージ店で働くことになることだ」
「え?オネエ?マッサージ店?どういうことでしょうか?」
「奴は男が好きなんだよ。それも強い男が大好物。女には全く興味を示さず、ターゲットにするのは将軍や副官クラス。傭兵なら高ランクと決まっている。
その身に何が起こったのか考えたくもないが、マッサージ店で働くことになると、娼婦のような薄い服を着て男好きという性癖に変化している」
「そんなことが…」
「ターゲットにした男が戦場に行くと、どこからともなく現れて、その男を手に入れるまで延々と追いかけ続ける。邪魔をしなければ奴も取り巻きも攻撃してこないが、攻撃しようものなら壊滅的な被害を出す反撃に遭う。
世界中の戦場を恐怖のドン底に陥れてきた結果、奴に関わらないのが一番ということで、『奴が現れた場合、背を向け撤退することは恥ずべきことではなく最善である』という暗黙のルールが生まれた」
「すごいですね…。たった1人の傭兵のために、世界中の戦場で暗黙のルールが出来上がるなんて」
「それだけ奴は危険だと広く認識されている。ピンクを好み、狙った男を洗脳してきたから『桃色宣教師』という二つ名がついているが、『戦場の異端者』『人の皮を被った猛獣』『ピンク災害』『大魔王』『疫病神』とも言われている」
「そんなに危険な人なら暗殺はしないのですか?」
戦争が近い時、敵軍の戦力を削ぐために、敵軍に味方しそうな傭兵を暗殺することもあると講義で習った。それだけ脅威の人物なら、暗殺対象になっていてもおかしくないと思うのだが。
「小国だけでなく、ウチも含めた4強から暗部を出したことはある。だが魅入られて手駒になるか、マッサージ店送りにされるか、利用価値なしと判断されて殺された。生きて帰った者は1人もいない」
「魅入られてしまった人が分かる場所で働いているのなら、洗脳を解いてしまえばいいのでは?」
自分の問いにバルジアラ様は諦めた様子で首を横に振ると、また溜息を吐いた。
「洗脳を解こうにも、白魔法に本人の認識を変えるような魔法はないし、説得しても逆に報告されて奴を呼び出してしまうだけだ。情報の漏洩を防ごうとしたのか、マッサージ店送りにされた元副官を暗殺した国はあるが、その行動は奴の逆鱗に触れた。その結果どうなったと思う?」
「想像がつきません…」
「奴は手駒を多数引き連れて、首都にある軍の本拠地に乗り込んだ。その時、手のつけられない激昂状態だったらしくてな。総力戦になったと思うんだが、筆頭将軍を含む上級兵士すべてが魅入られるか殺された。奴が国を出た直後、防衛の要を失ったその国は隣国から呆気なく滅ぼされた」
「傭兵が一国の軍を壊滅させるなんて、ありえるのでしょうか」
「近付くことさえ危険極まりない鬼熊に、こっちの魔法を飲み込むような黒魔法が使えたらどう思う?」
「非常に危険だと思います」
「そんな奴は単体でも危険なのに、どっかの国の副官や将軍、筆頭将軍達を多数引き連れてきたと考えてみろ。ありえない話ではない」
「では、毒を使ってみるのはどうでしょうか」
「致死量の倍の量を使った毒殺もやってみたらしいが、顔に吹き出物が出来る程度の異変しか起こらず死ななかった。だが、それもまた奴の逆鱗に触れて、毒を盛った国は激昂した奴によって壊滅状態に陥り、隣国からあっけなく滅ぼされた。
致死量を超える毒を与えても死なないとか。もはや人間じゃない」
「どうにか出来る人は……」
「フォードロアやディネード、アミフェルなら互角に殺り合えるかもしれないが。魅入られてしまえば機密情報や、適性の高い奴しか使えない魔法も知られてしまう上に、奴の手駒になった場合国内外に多大な影響が出る。
それに、普段姿を見せない手駒ならまだしも、誰だって気持ちの悪いオネエになりたくない。絶対勝てると言い切れない以上、少しでもリスクを下げるためにも逃げるのが一番正しい判断なんだよ。
だから、奴が現れた場合、『突然の自然災害が発生した時と同様に引き分け』ということになっている。1日でも早く老いて力を失い、寿命が尽きるのを祈るしかない」
「そこまでやっても、その人が国を取ることはないんですね…」
「奴は縛られるのが嫌いらしく、国を乗っ取ることはしないらしい。だが『奴の逆鱗に触れれば、国が滅ぶ』という教訓は世界中に知られているから、誰も奴の店にいる人物や奴のために働く手駒に関わろうとしなくなった。
奴はゲームをひっくり返すジョーカーを体現したようなもんだ。厄介極まりない存在だが、奴の店は野放しにしておく方が旨味があるからな。関わらずに静観するのが最善だろう」
「旨味?」
「奴のマッサージ店は、かなりの利益があるから多額の税金を取れると有名でな。手駒になった奴らは大人しく働いて、高額の税金を遅れることなくきっちり納税する。どの国も奴の入国は防ぎたいが、関わらなければすごく魅力的な財源になるから奴の店は拒否しない。
奴はふざけた言動をしているが、頭が回るし、能力も高くて弱点がない。手駒達も実力のある奴ばかりで、全体が強い結束力で結ばれているから、遊び半分で手を出せば奴だけでなく手駒にも食い殺される。
奴を倒すか撤退させることが出来れば、それだけで筆頭将軍になれるレベルの非常に危険な人物だ」
「バルジアラ様は会ったことがあるのですか?」
自分がそう質問すると、目の前の上官はピシリと石のように固まった。とんでもない質問をしてしまったのかと思ったら、硬直していたバルジアラ様は嫌そうに顔をしかめた。
「俺もそのターゲットにされてる」
「え」
「俺がターゲットにされたのは昇進直前の副官の頃で、運が良くてどうにか1人で逃げ切れたし、その後出陣してないから遭遇せずに済んでいるが。色んな国にターゲットにされている男はいるが、奴のしつこさを考えればこの先どこかの戦場に乗り込んでくるだろう。だが、次も逃げ切れるか断言できない」
「バルジアラ様でも、ですか?」
「奴から逃げるのは将軍でも至難の業だ。ターゲットの代替品になるレベルの相手がいれば一時的に気が逸れるから、確実に逃げるなら生贄を捧げるしかない。だがそれはあくまで一時的。その後も追いかけ回されるのは変わらないから、問題の解決にならない」
「生贄、ですか。でも、ターゲットにされるのが将軍や副官クラス、傭兵なら高ランクと決まっているのなら、代替品になるレベルの生贄というと…」
傭兵1人から確実に逃げ切るために『生贄』を捧げる、という話は思った以上に壮大だ。でも将軍や副官クラスの代替品というのは、果たしてどのレベルになるのだろうか。
「奴が満足しそうな高ランクの傭兵が近くにいれば、そいつを生贄にすれば良いんだが、傭兵が軍人の近くにいることなんてないからな…。
将軍がターゲットにされた時、機密を扱う将軍が手駒になるよりマシだと判断して、副官を生贄にすることが多い。副官がターゲットにされた場合、上官が自ら生贄となってくれればいいが、立場が下の副官が上官に生贄になってほしいと言えるわけもない。となると同僚副官に身代わりになってもらいたいところだが、みんな嫌だから頼んでも当然拒否される。
将軍でも倒せるか怪しいレベルの奴に副官が勝てるわけもなく、結局奴の手駒になって『事実上の戦死』として処理される」
「生贄のレベルに達しない者が、囮になることは出来ないのでしょうか」
もしバルジアラ様がその人物と遭遇してしまった場合、生贄になることは出来なくても、逃げる時間稼ぎの囮になれるのではないかと思ったのだが、バルジアラ様は首を横に振った。
「奴は目の前に立ちふさがる者がターゲットの替わりにならないと判断すると、瞬殺して追いかけ続ける。無駄な死者が出るだけだから、周囲の者は猛獣が来たと思って、巻き込まれないようにしながら撤退するしかない。
お前が敵う相手じゃない。オネエ言葉の巨体の男やピンクのマスカレードマスクをつけた男を見たら逃げろ。いいな?」
「はい」
どんなに高ランクで実力のある傭兵でも、軍人の頂点である将軍や筆頭将軍に敵うことなどないと思っていた。
それは誰もが認識している『常識』だと思うが、それを覆すとんでもない傭兵がいたものだと、世界の広さを実感した。
■■■後書き■■■
「はやく会いたいわぁ♪ 今度は逃さないわよ。うふっ!」
そんな声が聞こえてきます…。
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●ヴェーリ
●モルァニス
●アルトファーデル
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●マルア(ヴェーリの部隊所属)
●ロンド(ヴェーリの部隊所属)
●ワンド(アルトファーデルの部隊所属)
(銅の階級章を持つ上級兵士)
●リーベイツ(モルァニスの部隊所属)
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「体術も随分上手くなったな」
「ありがとうございます」
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「明日は休暇日なので、明後日ですね。今日もありがとうございました」
自分がそう言うと、バルジアラ様は表情を消した真顔でこちらをジッと見据えた。殺気も怒気も感じないが、何となく嫌な予感がする。
「お前、休暇日は何してんだ?」
「部屋でゆっくりしていますが…」
「そうか。これからは休日返上で鍛錬する。明日の朝、いつもと同じ時間にここに来い」
1日ダラダラできる休暇日を楽しみに毎日頑張っているのに。それをなぜ取り上げてしまおうとするのか。
「毎日の鍛錬で疲れが溜まっているので、しっかり身体を休めたいのですが」
「1年の差を埋めるために悠長に構えている暇はない。それに、お前は休暇日でもほとんど部屋で過ごしてるって、ワンド達から聞いたぞ。予定がないなら問題ないだろ」
確かに父に給料を預ける時、ラインやワンドといった独身者で食事や飲みに行く時以外は最低限の外出しかしない。
休暇日に何をしようと自由だと思うが、なぜバルジアラ様と朝から晩まで個人鍛錬をしなければならないのだろうか。
「予定があることもあります」
「どんな予定だ?」
「家族に会うとか、城下を散策するとか…」
「なら、予定がある時はその時間だけ中断してもいい。でも戻ってきたら鍛錬再開だ」
このままでは休暇日がなくなってしまうと思い、なんとか抵抗出来ないかと考えた時。バルジアラ様がリスドー様に責められ小さくなっていた状況を思い出した。
「私への鍛錬に付き合っていただきとても感謝していますが、バルジアラ様はデスクワークに励む日もあった方が良いと思いますが…」
「そ、そんなことお前が心配する必要ないんだよ。とりあえず!明日から休日返上だ。寝坊するなよ」
バルジアラ様にとって『デスクワーク』というのは非常に耳の痛いことらしく、動揺を隠すように一方的に宣言すると、いつもより速いスピードで鍛錬場から去っていった。
休日返上で個人鍛錬なんてしたくないものの、バルジアラ様からの命令となると拒むことは出来ない。バルジアラ様の今の反応を見る限り、リスドー様に助けを求めたら多少の力を貸してくれると思うが。サザベルとの演習は『特別なもの』と位置づけられているようだから、決定は覆られないかもしれない。
「はぁ…」
きっとどうにもならないと諦め、鍛錬場の隅で自主鍛錬をしながら自分を待ってくれていた仲間たちの元に向かった。
「お疲れ様。早速メシ食いに行こうか。さっきからいい匂いがしてるから腹が減ってたんだよな」
「ですね!今日は唐揚げ定食にしようかな」
「俺はチキンステーキ定食にするよ」
「俺はカレーにします!今日は辛口に挑戦っ!」
「辛口でも結構辛かったぞ? まぁ、舌が痺れたりしたら俺が治療魔法かけてやるからな」
「そ、そんなに?」
いつも通りの彼らを見ると、暗い気持ちも軽くなるのだが。
ーーお前に危険が及べば自分を盾にしてでもお前を守ろうとする。
ーーお前が死ねば『すみません』って俺に言いに来るのが目に見える。
ーー自分の目の前で、自分をかばって仲間が死んだら、間接的に自分が殺したといつまでも罪悪感に苛まれる。
バルジアラ様から言われた言葉が頭から離れないことに加え、頭が疲れているのか、彼らといる時に『地面に倒れた自分を庇おうと、飛び出してきた仲間が剣で刺し抜かれ、その血を全身に浴びる』という幻覚を見る時がある。庇おうとする人はその時々で違うのだが、喉や胸を貫かれた瞬間の顔、血まみれになりながら微笑を浮かべて見下ろす顔、降り注ぐ血に温かさを感じるといったところまで、やけに具体的な幻を見てしまう。
病気だろうか、知らない間に呪われたのかと心配して、白魔法も得意なリーベイツ様に診てもらうと、呪われているわけでも病気でもないと言われた。
どうしたら良いのか助言を求めると、『ディスコーニは具体的にイメージを捉え、瞬時に思い浮かべることに長けているんだと思う。想像力が豊かなことは、黒魔法を使う上ではとっても便利で上達が速い証拠だ。それは決して悪いことじゃないけど、こうなってほしくないという気持ちが想像力と混ざると、話してくれたような幻覚を見るのかもしれない。でも、実際のところ、仲間の死を目の当たりにすることはあり得ない話じゃない。そんな未来が来ないように、何かが警告してくれているのかもしれないよ』とアドバイスされた。
自分の力不足で仲間を死なせないように、自分が彼らを助けられるように。何度も心の中で繰り返しながら、仲間たちと肩を並べて食堂へ向かった。
「本日の講義は以上ですが、これから昨日作成してもらった報告書の講評を行います」
とある日の午後。周辺国の特徴と関係性を学ぶ講義の終わりに、教壇に立つアルトファーデル様が1人1人に講評を始めた。
「マルア。貴方の作った報告書は読みやすくて良いのですが、考察をもう少し深くして下さい。考察がきちんと出来ていれば、もうすこし文量は少なくても構いません」
「リーベイツ。きちんと結論を出しているのは良いのですが、途中から話がそれて関係のない内容が書かれています。もっと要点を絞って書いて下さい」
「ディスコーニ。結論に至るまでの内容構成、問題点の洗い出しと対処法の考察が的確で良いですね。簡潔にまとめられているので、とても読みやすかったです。特に指摘することはありません。ではこれで終わりです。お疲れ様でした」
全員の講評が終わると、アルトファーデル様と入れ替わるようにバルジアラ様が講義室にやってきた。
いつもなら自主鍛錬を行うラインやロア達と一緒に鍛錬場に行って、しばらく経ってからいらっしゃるのに。どうしたのかとマルア達と顔を見合わせていると、バルジアラ様は自分だけ残るように命じた。
「鍛錬場に行く前に、お前に教えておくことがある。まぁ、そこに座れ」
人払いをするような形になり、何か深刻な話でもされるのかと思っていると、バルジアラ様は懐から出した傭兵新聞を机の上に置き、ページの角が少し折られた場所を開いた。
「最近国境が騒がしくなってきた。近いうち俺達も出陣することになるから、お前に教えておくことがある」
そこには傭兵の名前が小さな字でびっしりと記載されているが、1人だけ四角で囲まれて強調されていた。
「そいつは『桃色宣教師』と言われる傭兵だ。そいつが戦場に現れたら、何も考えずに撤退し、そいつにもピンク色のマスカレードマスクをつけた男にも決して関わるな。間違っても奴や取り巻きと殺り合おうとしたり、怒らせたり、ちょっかいをかけるんじゃない。いいな?」
その人物についてまったく知らないが、ランクが高くなり目立った戦績を上げると、戦場詩人がその活躍を讃えて二つ名をつけると父から聞いている。二つ名がつく軍人はほとんどが副官以上の上級兵士だから、傭兵で二つ名がつくのはすごいことなんだ、と言っていたと思う。
「戦場では敵に背を向けて撤退することは負けを意味するが、奴は例外だ。どの国の副官も、将軍も、筆頭将軍も、奴が来ると撤退を判断する。そんな傭兵だ」
「そんなに危険な傭兵なんですか。一体どんな人物なのでしょうか」
「黒魔法の適性が極端に高い奴って知ってるか?」
「ロスカエナのアミフェルや、サザベルのディネード、ドルトネアのフォードロアと習いました」
自分座る前の席の椅子を掴んだバルジアラ様は、その背もたれが自分の正面にくるような格好で跨り、机を挟んで向かい合うように座った。
「その全員が将軍職に就いているが、下級兵士の頃から黒魔法の高い適性を発揮して、凄まじい威力で敵を殲滅してきた。だから黒魔法の適性が極端に高ければ将軍になれる素質がある。それはどの国も同じだというのに、そいつはその素質を持ちながら傭兵になることを選んだ」
「そんなに黒魔法の適性が高ければ、国が放っておかないと思うのですが…」
「そいつの出身国はアビテードだからな。国王を選挙で決める変わった国だし、侵略戦を仕掛けることもないから軍に入らせなくても良いって考えてんだろ」
「ですが、彼を雇った国は大きな戦果を得ることができそうですね」
黒魔法の適性が極端に高い人物はそう多くはない。なのに、それが金で雇える傭兵にいるのなら、雇った国は多大な恩恵を受けることが出来るだろう。
「奴の実力を見込んで雇おうとする国もあるが、金にも戦果にも困っていない奴は、命令に従わないどころか、気に入った男なら敵味方関係なく手駒にするまで追いかけ回す。コントロール不能だから、どの国も雇えない」
「手駒にするまで追いかけ回す?どういう意味でしょうか?」
自分がそう質問すると、向かいにいるバルジアラ様は深い溜め息を吐いた。
「奴は呪いこそ使えないが、黒魔法以外にも剣術、体術、暗殺術といったすべてに高い技術を持っている。だからすんげー強い。文句なしに強い。
奴の実力も恐ろしいが、一番恐ろしいのは、奴と殺り合っている内にその強さに魅入られ、将軍だろうが忠誠を誓ったはずの国を捨てる。そして奴のために動く『姿の見えない手駒』になるか、オネエにされて奴の経営するマッサージ店で働くことになることだ」
「え?オネエ?マッサージ店?どういうことでしょうか?」
「奴は男が好きなんだよ。それも強い男が大好物。女には全く興味を示さず、ターゲットにするのは将軍や副官クラス。傭兵なら高ランクと決まっている。
その身に何が起こったのか考えたくもないが、マッサージ店で働くことになると、娼婦のような薄い服を着て男好きという性癖に変化している」
「そんなことが…」
「ターゲットにした男が戦場に行くと、どこからともなく現れて、その男を手に入れるまで延々と追いかけ続ける。邪魔をしなければ奴も取り巻きも攻撃してこないが、攻撃しようものなら壊滅的な被害を出す反撃に遭う。
世界中の戦場を恐怖のドン底に陥れてきた結果、奴に関わらないのが一番ということで、『奴が現れた場合、背を向け撤退することは恥ずべきことではなく最善である』という暗黙のルールが生まれた」
「すごいですね…。たった1人の傭兵のために、世界中の戦場で暗黙のルールが出来上がるなんて」
「それだけ奴は危険だと広く認識されている。ピンクを好み、狙った男を洗脳してきたから『桃色宣教師』という二つ名がついているが、『戦場の異端者』『人の皮を被った猛獣』『ピンク災害』『大魔王』『疫病神』とも言われている」
「そんなに危険な人なら暗殺はしないのですか?」
戦争が近い時、敵軍の戦力を削ぐために、敵軍に味方しそうな傭兵を暗殺することもあると講義で習った。それだけ脅威の人物なら、暗殺対象になっていてもおかしくないと思うのだが。
「小国だけでなく、ウチも含めた4強から暗部を出したことはある。だが魅入られて手駒になるか、マッサージ店送りにされるか、利用価値なしと判断されて殺された。生きて帰った者は1人もいない」
「魅入られてしまった人が分かる場所で働いているのなら、洗脳を解いてしまえばいいのでは?」
自分の問いにバルジアラ様は諦めた様子で首を横に振ると、また溜息を吐いた。
「洗脳を解こうにも、白魔法に本人の認識を変えるような魔法はないし、説得しても逆に報告されて奴を呼び出してしまうだけだ。情報の漏洩を防ごうとしたのか、マッサージ店送りにされた元副官を暗殺した国はあるが、その行動は奴の逆鱗に触れた。その結果どうなったと思う?」
「想像がつきません…」
「奴は手駒を多数引き連れて、首都にある軍の本拠地に乗り込んだ。その時、手のつけられない激昂状態だったらしくてな。総力戦になったと思うんだが、筆頭将軍を含む上級兵士すべてが魅入られるか殺された。奴が国を出た直後、防衛の要を失ったその国は隣国から呆気なく滅ぼされた」
「傭兵が一国の軍を壊滅させるなんて、ありえるのでしょうか」
「近付くことさえ危険極まりない鬼熊に、こっちの魔法を飲み込むような黒魔法が使えたらどう思う?」
「非常に危険だと思います」
「そんな奴は単体でも危険なのに、どっかの国の副官や将軍、筆頭将軍達を多数引き連れてきたと考えてみろ。ありえない話ではない」
「では、毒を使ってみるのはどうでしょうか」
「致死量の倍の量を使った毒殺もやってみたらしいが、顔に吹き出物が出来る程度の異変しか起こらず死ななかった。だが、それもまた奴の逆鱗に触れて、毒を盛った国は激昂した奴によって壊滅状態に陥り、隣国からあっけなく滅ぼされた。
致死量を超える毒を与えても死なないとか。もはや人間じゃない」
「どうにか出来る人は……」
「フォードロアやディネード、アミフェルなら互角に殺り合えるかもしれないが。魅入られてしまえば機密情報や、適性の高い奴しか使えない魔法も知られてしまう上に、奴の手駒になった場合国内外に多大な影響が出る。
それに、普段姿を見せない手駒ならまだしも、誰だって気持ちの悪いオネエになりたくない。絶対勝てると言い切れない以上、少しでもリスクを下げるためにも逃げるのが一番正しい判断なんだよ。
だから、奴が現れた場合、『突然の自然災害が発生した時と同様に引き分け』ということになっている。1日でも早く老いて力を失い、寿命が尽きるのを祈るしかない」
「そこまでやっても、その人が国を取ることはないんですね…」
「奴は縛られるのが嫌いらしく、国を乗っ取ることはしないらしい。だが『奴の逆鱗に触れれば、国が滅ぶ』という教訓は世界中に知られているから、誰も奴の店にいる人物や奴のために働く手駒に関わろうとしなくなった。
奴はゲームをひっくり返すジョーカーを体現したようなもんだ。厄介極まりない存在だが、奴の店は野放しにしておく方が旨味があるからな。関わらずに静観するのが最善だろう」
「旨味?」
「奴のマッサージ店は、かなりの利益があるから多額の税金を取れると有名でな。手駒になった奴らは大人しく働いて、高額の税金を遅れることなくきっちり納税する。どの国も奴の入国は防ぎたいが、関わらなければすごく魅力的な財源になるから奴の店は拒否しない。
奴はふざけた言動をしているが、頭が回るし、能力も高くて弱点がない。手駒達も実力のある奴ばかりで、全体が強い結束力で結ばれているから、遊び半分で手を出せば奴だけでなく手駒にも食い殺される。
奴を倒すか撤退させることが出来れば、それだけで筆頭将軍になれるレベルの非常に危険な人物だ」
「バルジアラ様は会ったことがあるのですか?」
自分がそう質問すると、目の前の上官はピシリと石のように固まった。とんでもない質問をしてしまったのかと思ったら、硬直していたバルジアラ様は嫌そうに顔をしかめた。
「俺もそのターゲットにされてる」
「え」
「俺がターゲットにされたのは昇進直前の副官の頃で、運が良くてどうにか1人で逃げ切れたし、その後出陣してないから遭遇せずに済んでいるが。色んな国にターゲットにされている男はいるが、奴のしつこさを考えればこの先どこかの戦場に乗り込んでくるだろう。だが、次も逃げ切れるか断言できない」
「バルジアラ様でも、ですか?」
「奴から逃げるのは将軍でも至難の業だ。ターゲットの代替品になるレベルの相手がいれば一時的に気が逸れるから、確実に逃げるなら生贄を捧げるしかない。だがそれはあくまで一時的。その後も追いかけ回されるのは変わらないから、問題の解決にならない」
「生贄、ですか。でも、ターゲットにされるのが将軍や副官クラス、傭兵なら高ランクと決まっているのなら、代替品になるレベルの生贄というと…」
傭兵1人から確実に逃げ切るために『生贄』を捧げる、という話は思った以上に壮大だ。でも将軍や副官クラスの代替品というのは、果たしてどのレベルになるのだろうか。
「奴が満足しそうな高ランクの傭兵が近くにいれば、そいつを生贄にすれば良いんだが、傭兵が軍人の近くにいることなんてないからな…。
将軍がターゲットにされた時、機密を扱う将軍が手駒になるよりマシだと判断して、副官を生贄にすることが多い。副官がターゲットにされた場合、上官が自ら生贄となってくれればいいが、立場が下の副官が上官に生贄になってほしいと言えるわけもない。となると同僚副官に身代わりになってもらいたいところだが、みんな嫌だから頼んでも当然拒否される。
将軍でも倒せるか怪しいレベルの奴に副官が勝てるわけもなく、結局奴の手駒になって『事実上の戦死』として処理される」
「生贄のレベルに達しない者が、囮になることは出来ないのでしょうか」
もしバルジアラ様がその人物と遭遇してしまった場合、生贄になることは出来なくても、逃げる時間稼ぎの囮になれるのではないかと思ったのだが、バルジアラ様は首を横に振った。
「奴は目の前に立ちふさがる者がターゲットの替わりにならないと判断すると、瞬殺して追いかけ続ける。無駄な死者が出るだけだから、周囲の者は猛獣が来たと思って、巻き込まれないようにしながら撤退するしかない。
お前が敵う相手じゃない。オネエ言葉の巨体の男やピンクのマスカレードマスクをつけた男を見たら逃げろ。いいな?」
「はい」
どんなに高ランクで実力のある傭兵でも、軍人の頂点である将軍や筆頭将軍に敵うことなどないと思っていた。
それは誰もが認識している『常識』だと思うが、それを覆すとんでもない傭兵がいたものだと、世界の広さを実感した。
■■■後書き■■■
「はやく会いたいわぁ♪ 今度は逃さないわよ。うふっ!」
そんな声が聞こえてきます…。
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