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第19章 再会の時
3.師の所懐
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■■■前書き■■■
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今回もシェニカ視点のお話です。
■■■■■■■■■
ーー複数の相手を持てるという特権がなかったら。シェニカの相手が王族か将軍でない限り、すぐに死んでしまいますよ。
思いもよらぬ答えで言葉が出なかったものの、なぜ?という気持ちはローズ様に伝わったようだった。
「私達を利用したいと思う人は多くいますので、配偶者を1人にしてしまうと、その椅子を巡って必ず争いが起こります。
いくらシェニカの寵愛があろうとも、貴女の見えないところで暗殺するなんて簡単なことです。そうなれば簡単に暗殺されない将軍か、高い身分に守られ、将軍のような強い者を護衛に出来る王族くらいしか結婚出来なくなります。でも、それでは結婚相手を自由に選べないでしょう?」
「はい…」
ルクトとバルジアラ様が手合わせをした時の結果を見れば、もしルクトと結婚したとしても、彼を疎ましく見る人が将軍だったら簡単に殺してしまうかもしれないと想像出来る。ディズを好きになったのは、将軍という立場に関係なく、誠実で優しいところに惹かれたからだけど、彼であれば簡単には殺せないのだろうなと思う。
「シェニカは結婚相手と一生添い遂げたいと思っていますか?」
「はい」
「なら、なおさら複数の相手を持ったほうがいいですね。
『白い渡り鳥』になる人が少ない分、誰もが繋がりを作ろうと考えているのは十分わかるでしょう。そういう人たちは私たちに近付く足がかりとして、親兄弟、友人、恋人、配偶者、伴侶、愛人といった近しい者を利用しようとするのです。
親兄弟、友人は一緒に旅をするわけではないので、私達と会話する時に『ご両親とお会いしまして』『ご友人の誰々さんと親しくなりまして』と話の種にしたり、自分を愛人や結婚相手として薦めてほしいとお願いする程度ですが、決まった相手を作ると、『白い渡り鳥』本人がその場にいなくても、配偶者や伴侶という肩書があるだけで身分や地位を保障されたり、権力者に会えたり、商売がしやすくなったり、越境の審査が早くなるなどの様々な便宜が図られるのです。ただし、他の『白い渡り鳥』達のように相手を流動的にしていると、繋がりを作る前にその人が捨てられるかもしれないので、そのようなことはしません。
そういう甘い蜜が1ヶ所に集中すれば、その座を奪おうと野心のある者から命を狙われやすくなります。しかし、複数の椅子があれば危険を犯してまで殺す必要がなくなるので、危険がゼロになるわけではありませんが、可能性はぐっと減ります。
複数の相手がいれば、相手の出身国と深い繋がりができる、血の偏りを避けれる、未来につながる子が期待出来るという世界のメリットもありますが、私たちにもメリットがあるからこそ、この特権があるのですよ」
「そう、なんですか…」
「それに。結婚していても、複数の相手を持てるというのは誰もが知っていること。諦めずに積極的に動く人が多いのも事実です。夫とどんなに強く結びついていても、純粋で情熱的な気持ちを長い間ぶつけてこられると、ぐらつくことだってあります。2人が同じ気持ちであるのなら、1人にしようとこだわらず伴侶として迎えた方が良いのです。
結論を急ぐ必要はないのですから、ゆっくり相手を見極めなさい」
「あの…。ローズ様は神殿が愛人を紹介していると、以前からご存知だったのですか?」
ローズ様は静かに頷くと、お茶をゆっくり一口飲んだ。
「私が現役の頃も色々理由をつけて紹介されましたが、今ほどしつこくなかったので相手にしないだけで済んでいました。
ジェネルド殿からも話を聞いていたので、貴女が旅立つ前に伝えても良かったのですが…。その中に、貴女が惹かれる人がいるかもしれないし、貴女を純粋に想ってくれる人がいるかもしれない、貴女を守ってくれる人がいるかもしれないと思いましてね。可能性を潰すのは良くないと思って、神殿に近付くな、王族や貴族、将軍、神官長といった人達をすぐに信用するな、と伝えていたのです」
「そうだったのですか…」
「今回の件で神殿がやってきたことが国王らの耳に入り、どの国の神殿も発言力は目に見えて低下しています。ですが、神殿は『再生の砂』の管理や引退した『白い渡り鳥』の身分の預かり、訪問した『白い渡り鳥』の予定や情報の把握などを担っているので、今後も変わらず存続していきます。
貴女も引退すれば必ず神殿に身を寄せることになりますから、信頼できる神殿関係者を作ることは悪いことではありません。貴女の仕事の役に立ちたいと希望する人と出会った時には、ダーファスの神殿に紹介しなさいな。貴女の味方となれるよう、私が色々教えてあげましょう」
「信頼できる神殿関係者…」
「誰か思い当たる人がいますか?」
「旅先の神殿から護衛にと紹介された方だったので、あまり話はしなかったのですが。ポルペアで彼と別れたら、護衛をお願いしてみようと思える人で…。もっと話しておけばよかったと後悔しています」
「どこの神殿の何という人ですか?」
「ギルキア領アネシスの神官長補佐イルバ様です」
「その人を知るには会って話をしなければ始まりません。手紙を書いて呼び出してみなさい」
「はい。分かりました」
ローズ様は視線を落としてふぅ、と小さく息を吐き出すと、少し悲しそうな微笑を浮かべて私を見た。
「今回の一件で、貴女を遠くから守ることに限界を感じました。
出来るだけ長生きして、貴女の幸せな結婚式を見届け、可愛い赤ちゃんを見たいものですが、私は必ず貴女よりも先に天へ召されます。
いま私が担っているのは貴女のご両親を守る役目、貴女を遠くから守る役目ですが、いずれ貴女の子を守る役目も加わるでしょう。引き継いで貰える者が私が生きている間に見つかれば、その人に色々と教えてあげられるので私自身も安心できます」
考えないようにはしていたけど、私が何かの事件や事故に巻き込まれなければ、ローズ様も両親も私より先に亡くなってしまう。改めてそう考えると、目に涙が滲んできた。
「何もいま私が死ぬわけではありませんよ。毎日自分に魔法をかけて元気いっぱいです。貴女のご両親も怪我も病気もなく元気に過ごしていますよ」
「はい。ありがとうございます」
ローズ様のきれいな笑顔を見ると、少しホッとした気持ちになれた。目に溜まった涙を指で拭い、小さく息を吐いてローズ様を見た。
「あと…。ローズ様にお聞きしたいことがあるんです」
「なんですか?」
「『聖なる一滴』を作ったのは誰なのか、どういうきっかけで作られたのかご存知ですか?」
「知らない、ですね。調べるなら、世界各地の神殿に資料が残っていないか尋ねるのが一番ですが…。取りまとめ役を任せられそうな神官長はいますか?」
「いいえ、いません。でも大丈夫です。これから先、今まで避けてきた人たちと関わっていこうと思っていますので、色々とやってみようと思います」
「神殿に行けば、神殿新聞に記載する滞在日数、行き先などを話すだけでなく、旅の話を強請られたり、かなりしつこく『再生の砂』を分けて欲しいとか、愛人を紹介されたりするでしょう。覚悟は出来ていますか?」
「はい。逃げてばかりではなく、立ち向かってみようと思います」
「随分と精神面でも成長したのですね。とても嬉しいですよ。
では、フェアニーブには世界中の首都の神官長も来ますから、その時に『聖なる一滴』が作られることになった経緯や最初の製作者などについて調査し、新たな事実が判明した場合は報せよ、と彼らに命じなさい」
「調査をお願いするのではなくて、命令ですか?」
「大昔は信仰の場所だった神殿は、今は白魔法を司る場所。そこで働く巫女や神官、神官長というのは、白魔道士の最高位の『白い渡り鳥』の手足でもあります。『聖なる一滴』は『白い渡り鳥』に関わることですので、神殿が統括することに含まれます。仕事の一つとして、遠慮せず命じれば良いのです。それに『聖なる一滴』は世界中の関心事ですから、貴女の命令を耳にしても嫌な顔をする国はないでしょう。
ただ、民衆に『聖なる一滴』の存在を知らせないため、どの国もこれに関わる一切の資料を持ち出し禁止にするはずですから、書面での報告を求めることは難しいでしょう。となれば、新たな事実が発見されたという報告を貴女が受けて、貴女自身が確認しに行くことになりますが…。
どの国も『白い渡り鳥』を呼びにくくなっている状況のなか、『新たな事実が判明した』と言えば貴女が来てくれるということは、神殿だけでなく国にとっても都合が良いはず。こちらが欲しい事実ではなく、本当に大したことのない事実であっても、発見したと報告してくるでしょう。こんな些細な情報で報告するなと言っても、『小さな情報の積み重ねが大きな事実の端緒となる可能性があります。何の情報が有益なのかはシェニカ様に確認していただくのが一番です』などと言い返してくるのが目に見えています。
本来の使命である治療の旅ではなく、確認しに行くだけの旅になるような収拾のつかない状況を避けるためにも、貴女が行くべき事実なのかを先に確認する取りまとめ役を決めておくことを強く勧めます」
「確かにそうですね…」
「任せる人が思い当たらないのなら、ひとまず私が務めますよ」
「ですが…」
「私は世界中の神官長だけでなく、王たちからも怖がられていますからね。私が取りまとめているとなれば、報告する内容は厳選し、注意を払うはずです。ですが、私は見ての通り高齢で、動き回れるだけの気力も体力もありません。信頼できる者を私の名代とし、確認へ行かせましょう」
「ローズ様はお忙しいのに…。良いのでしょうか」
「構いませんよ。私も『聖なる一滴』のことについて興味が湧きましたし、なにより愛弟子にちょっかいをかけていた神殿に、もっとお仕置きしてやりたいと思っていたところです。調査には時間がかかるでしょうから、良い生きがいになるかもしれませんね。ふふっ」
「では、お願いします」
ローズ様は面白そうに笑ったけど、そこにはちょっと恐ろしさを含んでいる気がする。お仕置きってどんなことをするのだろうか。興味はあるけど、何となく知らない方が良い気がして聞くのはやめた。
これからはローズ様に頼り切りにならないように、私自身で任せられる人を探さなければ。
「私が知っている情報としては、作り方と解毒薬のレシピ。あとは、『聖なる一滴』はずっと昔からあったものの、試験で使い始めたのは比較的最近というくらいでしょうか」
「その前はどのような試験だったのですか?」
「昔はね、『再生の砂』の改良が出来るかという試験と、ランクA、S、SSの3人を同席させ、どのランクの人に強制催眠がかかるのか、という2つの試験を行っていたのですよ」
「砂の改良と強制催眠ですか…」
「知っての通り、砂はランクS以上の白魔法の能力があれば改良が可能で、SSになれば改良の速度が目に見えて速くなります。強制催眠は相手の白魔法の能力が自分よりも低ければかかりますが、同等かそれ以上の者にはかからない特徴があります。
これらを利用して、『再生の砂』の改良は出来なくても、欠損部位の再生治療が可能で、ランクAの人に強制催眠がかからなければランクA。再生の治療に加えて砂の改良も可能で、強制催眠でランクAには術をかけることが出来てもランクSの人にかからなければランクS。再生の治療はもちろんのこと、砂の改良が目に見えて速くて、ランクSには強制催眠がかかるのに、ランクSSの人にかからなければランクSS。こんな風に試験をしていたそうです。
だから、その時は『聖なる一滴』は単なる身を守るための手段として、ひっそりと使用されていたそうです」
「どうしてその試験から今の試験に変わったのでしょうか」
「試験に同席できる『白い渡り鳥』がいなくなったからです。
今は『白い渡り鳥』になれる者自体が少なくなっていますが、昔はなれる全体数は減らずに、高いランクだと認められる人が減りました。そんな状況が続いた結果、SSがいなくなり、Sがいなくなり…となってしまったために、試験が出来なくなってしまったのです。そして新たになる者が減ってしまったので、見極める試験を行うこと自体が『めでたいこと』だと認識されるようになりました。
砂の改良も能力で差が出るのでランクの見当はつくのですが、国の中から新たな『白い渡り鳥』が生まれるハレの舞台には、砂の試験だけでは地味すぎて華がないという理由で、『聖なる一滴』も使われるようになったそうです。
ただ、『聖なる一滴』の効果を見るのは砂よりも分かりやすかったのか、次第に砂の改良は授業の中で確認するだけになって、『聖なる一滴』の使用だけで行う現在の形になったようです」
「あの試験が華、ですか?」
「黒魔法にはない『魔力が抜ける』という効果を、魅力的だと感じる者が多かったのでしょう。その頃はまだ解毒薬がありましたから、『華』だと思えたのかもしれません。
それに。旅立つ前にその効果を確認する意味はある、と言えるでしょう」
「意味がある…?」
「貴女が『聖なる一滴』の作り方だけを知った状態で旅に出て、盗賊の一味に襲われたとしましょう。貴女が身の危険を感じて『聖なる一滴』を初めて使ったら、あの時のようにショックで気絶してしまうかもしれません。そうなってしまえば、気絶した貴女を残った盗賊が監禁し、『聖なる一滴』をもっと作るように脅すかもしれません。
それに、事前に『聖なる一滴』の効果を他の人も知っていれば、その痕跡を見て貴女の身に異変が起きたと分かるのです。結果を公表すれば利用したいと思う人が出てきますが、メリットもありますから、限られた者だけに公表しておいたほうが良いと私は思いました」
「確かに、そうですね」
ラーナで『聖なる一滴』を受けた兵士達を前に白魔道士が困惑していたように、存在を知らなければ原因も治療法も分からない。そんな状況が起きれば、白魔法を司る神殿にも連絡が行くだろう。神官長がその特殊な痕跡を見て『白い渡り鳥』の身に何かが起きたと分かれば、確認しようと動いてくれる。
身を守ること、危険を知らせることのメリットと、『聖なる一滴』欲しさに狙われるデメリットが表裏一体なのだと思った。
「それと。私は貴女に謝まらなければいけないの」
「ローズ様に謝罪されるようなことを受けた記憶はありませんが…」
「貴女が神殿にいた6年間、外界から遮断した生活をさせたことを謝りたいのです。
神殿に進学した者がいると知られると、高い確率で『白い渡り鳥』になると周囲は察します。ダーファスは人の結び付きが強い田舎ですから、貴女の家族や友人知人以外に会いに来る人はいませんでしたが、貴女と早めに知り合いになることで将来有利になると考えた国内の貴族が、貴女が神殿に進学してすぐ挨拶にやって来ました。
出会いを狭めてしまうのは良くないと思っていましたが、そういう人は口が上手いので、良いように使われてほしくなくて会わせませんでした。ですが彼らも自分の出世に必死ですから、貴女の友人や知り合いを言いくるめて面会を申し込ませたり、手紙を渡そうとしてきました。
だから、ご両親に説明して接触を最低限にし、友人達との交流を遮断させたのです。寂しかったでしょう。ごめんなさい」
「確かに寂しさをはありましたが、そのおかけで私は友人達に嫌な感情を抱くことはありませんでした。ローズ様には感謝しています」
「そう言ってくれてありがとう。そうだ。シェニカがさっき言っていたイルバ様ですが、カケラの交換はしていますか?」
「いいえ、していません」
「では、ここに滞在している間に手紙を書きませんか? 私もギルキアの古い友人に手紙を出す予定だったので、一緒に届けさせましょう」
「いいのですか? ありがとうございます!
あ、でも待ち合わせ場所や日にちはどうしたら良いでしょうか…」
報告や連絡などの一方通行で済む内容なら問題ないのだが、日程調整などが必要な内容の手紙を人に届けてもらう場合、待ち合わせ場所と日時を予め指定しておく。受け取った相手は、都合が悪ければその返事と希望する日時と場所を指定した手紙を届けてもらったり、待ち合わせ場所に伝言を預けておいたりすることになる。
届くまでの時間と手紙のやり取りの手間を省くための慣習であるものの、フィラを使うことに慣れた今ではとても不便に感じる。
手紙と一緒に私のカケラを渡してもらうことも出来るけど、もう少しイルバ様を知ってからにしたいのでこうするしかない。
「フェアニーブに行った後、ポルペアに行くのでしたっけ」
「はい、そうです」
「正式な日程は覚えていませんが、4、5ヶ月後くらいにポルペアで建国の祝賀が予定されていたと記憶しています。その祝賀に近い日を指定してはどうですか? 祝賀当日は人が大勢集まりますから、1週間前の正午とかにするのが良いかもしれませんね。待ち合わせ場所は時計塔や神殿、宿やレストラン、小鳥屋などの分かりやすい場所にしてはどうでしょう?」
「では、『ポルペアで開催される建国祝賀の1週間前の正午、ポルペアの首都の小鳥屋でお待ちしています』と書こうと思います」
「シェニカから手紙を預かったら、すぐに使者を出しますね。そうそう、貴女のご両親から手紙を預かってきました」
「わぁ!ありがとうございます!ローズ様、いつも両親を助けて下さり、ありがとうございます」
ローズ様から差し出された手紙を受け取ると、封筒にあった『シェニカへ』という懐かしい筆跡を見て、心の中は喜びで一気に満たされた。
「シェニカが手紙を読んでいる間、護衛の彼と話をさせてもらえますか?」
「え?はい…」
ローズ様は初対面のルクトと何を話したいのだろうかと不思議に思いながら、椅子から立ち上がった。
■■■後書き■■■
web拍手の感想をありがとうございます!
1人黙々とPCのキーボードを打っている時間が多いので、感想を頂けると飛び上がるほど嬉しいです。
また、web拍手をポチりと押していただくだけでも、読んでくれる人がいるんだ!と実感でき、大変元気と意欲を頂いております。
今回の話はもう少し時間がかかりそうだったのですが、思った以上に早く更新出来たのは、ひとえに応援してくださる皆様のおかげです。
時間を割いて読んで頂き、本当にありがとうございます。m(_ _)m
追伸:web拍手ボタンはサイトからであれば表示されますが、アプリでは表示されないようです。涙
お気に入りや感想、web拍手、コメントをありがとうございます。
頂いた応援は更新の励みになっております!
今回もシェニカ視点のお話です。
■■■■■■■■■
ーー複数の相手を持てるという特権がなかったら。シェニカの相手が王族か将軍でない限り、すぐに死んでしまいますよ。
思いもよらぬ答えで言葉が出なかったものの、なぜ?という気持ちはローズ様に伝わったようだった。
「私達を利用したいと思う人は多くいますので、配偶者を1人にしてしまうと、その椅子を巡って必ず争いが起こります。
いくらシェニカの寵愛があろうとも、貴女の見えないところで暗殺するなんて簡単なことです。そうなれば簡単に暗殺されない将軍か、高い身分に守られ、将軍のような強い者を護衛に出来る王族くらいしか結婚出来なくなります。でも、それでは結婚相手を自由に選べないでしょう?」
「はい…」
ルクトとバルジアラ様が手合わせをした時の結果を見れば、もしルクトと結婚したとしても、彼を疎ましく見る人が将軍だったら簡単に殺してしまうかもしれないと想像出来る。ディズを好きになったのは、将軍という立場に関係なく、誠実で優しいところに惹かれたからだけど、彼であれば簡単には殺せないのだろうなと思う。
「シェニカは結婚相手と一生添い遂げたいと思っていますか?」
「はい」
「なら、なおさら複数の相手を持ったほうがいいですね。
『白い渡り鳥』になる人が少ない分、誰もが繋がりを作ろうと考えているのは十分わかるでしょう。そういう人たちは私たちに近付く足がかりとして、親兄弟、友人、恋人、配偶者、伴侶、愛人といった近しい者を利用しようとするのです。
親兄弟、友人は一緒に旅をするわけではないので、私達と会話する時に『ご両親とお会いしまして』『ご友人の誰々さんと親しくなりまして』と話の種にしたり、自分を愛人や結婚相手として薦めてほしいとお願いする程度ですが、決まった相手を作ると、『白い渡り鳥』本人がその場にいなくても、配偶者や伴侶という肩書があるだけで身分や地位を保障されたり、権力者に会えたり、商売がしやすくなったり、越境の審査が早くなるなどの様々な便宜が図られるのです。ただし、他の『白い渡り鳥』達のように相手を流動的にしていると、繋がりを作る前にその人が捨てられるかもしれないので、そのようなことはしません。
そういう甘い蜜が1ヶ所に集中すれば、その座を奪おうと野心のある者から命を狙われやすくなります。しかし、複数の椅子があれば危険を犯してまで殺す必要がなくなるので、危険がゼロになるわけではありませんが、可能性はぐっと減ります。
複数の相手がいれば、相手の出身国と深い繋がりができる、血の偏りを避けれる、未来につながる子が期待出来るという世界のメリットもありますが、私たちにもメリットがあるからこそ、この特権があるのですよ」
「そう、なんですか…」
「それに。結婚していても、複数の相手を持てるというのは誰もが知っていること。諦めずに積極的に動く人が多いのも事実です。夫とどんなに強く結びついていても、純粋で情熱的な気持ちを長い間ぶつけてこられると、ぐらつくことだってあります。2人が同じ気持ちであるのなら、1人にしようとこだわらず伴侶として迎えた方が良いのです。
結論を急ぐ必要はないのですから、ゆっくり相手を見極めなさい」
「あの…。ローズ様は神殿が愛人を紹介していると、以前からご存知だったのですか?」
ローズ様は静かに頷くと、お茶をゆっくり一口飲んだ。
「私が現役の頃も色々理由をつけて紹介されましたが、今ほどしつこくなかったので相手にしないだけで済んでいました。
ジェネルド殿からも話を聞いていたので、貴女が旅立つ前に伝えても良かったのですが…。その中に、貴女が惹かれる人がいるかもしれないし、貴女を純粋に想ってくれる人がいるかもしれない、貴女を守ってくれる人がいるかもしれないと思いましてね。可能性を潰すのは良くないと思って、神殿に近付くな、王族や貴族、将軍、神官長といった人達をすぐに信用するな、と伝えていたのです」
「そうだったのですか…」
「今回の件で神殿がやってきたことが国王らの耳に入り、どの国の神殿も発言力は目に見えて低下しています。ですが、神殿は『再生の砂』の管理や引退した『白い渡り鳥』の身分の預かり、訪問した『白い渡り鳥』の予定や情報の把握などを担っているので、今後も変わらず存続していきます。
貴女も引退すれば必ず神殿に身を寄せることになりますから、信頼できる神殿関係者を作ることは悪いことではありません。貴女の仕事の役に立ちたいと希望する人と出会った時には、ダーファスの神殿に紹介しなさいな。貴女の味方となれるよう、私が色々教えてあげましょう」
「信頼できる神殿関係者…」
「誰か思い当たる人がいますか?」
「旅先の神殿から護衛にと紹介された方だったので、あまり話はしなかったのですが。ポルペアで彼と別れたら、護衛をお願いしてみようと思える人で…。もっと話しておけばよかったと後悔しています」
「どこの神殿の何という人ですか?」
「ギルキア領アネシスの神官長補佐イルバ様です」
「その人を知るには会って話をしなければ始まりません。手紙を書いて呼び出してみなさい」
「はい。分かりました」
ローズ様は視線を落としてふぅ、と小さく息を吐き出すと、少し悲しそうな微笑を浮かべて私を見た。
「今回の一件で、貴女を遠くから守ることに限界を感じました。
出来るだけ長生きして、貴女の幸せな結婚式を見届け、可愛い赤ちゃんを見たいものですが、私は必ず貴女よりも先に天へ召されます。
いま私が担っているのは貴女のご両親を守る役目、貴女を遠くから守る役目ですが、いずれ貴女の子を守る役目も加わるでしょう。引き継いで貰える者が私が生きている間に見つかれば、その人に色々と教えてあげられるので私自身も安心できます」
考えないようにはしていたけど、私が何かの事件や事故に巻き込まれなければ、ローズ様も両親も私より先に亡くなってしまう。改めてそう考えると、目に涙が滲んできた。
「何もいま私が死ぬわけではありませんよ。毎日自分に魔法をかけて元気いっぱいです。貴女のご両親も怪我も病気もなく元気に過ごしていますよ」
「はい。ありがとうございます」
ローズ様のきれいな笑顔を見ると、少しホッとした気持ちになれた。目に溜まった涙を指で拭い、小さく息を吐いてローズ様を見た。
「あと…。ローズ様にお聞きしたいことがあるんです」
「なんですか?」
「『聖なる一滴』を作ったのは誰なのか、どういうきっかけで作られたのかご存知ですか?」
「知らない、ですね。調べるなら、世界各地の神殿に資料が残っていないか尋ねるのが一番ですが…。取りまとめ役を任せられそうな神官長はいますか?」
「いいえ、いません。でも大丈夫です。これから先、今まで避けてきた人たちと関わっていこうと思っていますので、色々とやってみようと思います」
「神殿に行けば、神殿新聞に記載する滞在日数、行き先などを話すだけでなく、旅の話を強請られたり、かなりしつこく『再生の砂』を分けて欲しいとか、愛人を紹介されたりするでしょう。覚悟は出来ていますか?」
「はい。逃げてばかりではなく、立ち向かってみようと思います」
「随分と精神面でも成長したのですね。とても嬉しいですよ。
では、フェアニーブには世界中の首都の神官長も来ますから、その時に『聖なる一滴』が作られることになった経緯や最初の製作者などについて調査し、新たな事実が判明した場合は報せよ、と彼らに命じなさい」
「調査をお願いするのではなくて、命令ですか?」
「大昔は信仰の場所だった神殿は、今は白魔法を司る場所。そこで働く巫女や神官、神官長というのは、白魔道士の最高位の『白い渡り鳥』の手足でもあります。『聖なる一滴』は『白い渡り鳥』に関わることですので、神殿が統括することに含まれます。仕事の一つとして、遠慮せず命じれば良いのです。それに『聖なる一滴』は世界中の関心事ですから、貴女の命令を耳にしても嫌な顔をする国はないでしょう。
ただ、民衆に『聖なる一滴』の存在を知らせないため、どの国もこれに関わる一切の資料を持ち出し禁止にするはずですから、書面での報告を求めることは難しいでしょう。となれば、新たな事実が発見されたという報告を貴女が受けて、貴女自身が確認しに行くことになりますが…。
どの国も『白い渡り鳥』を呼びにくくなっている状況のなか、『新たな事実が判明した』と言えば貴女が来てくれるということは、神殿だけでなく国にとっても都合が良いはず。こちらが欲しい事実ではなく、本当に大したことのない事実であっても、発見したと報告してくるでしょう。こんな些細な情報で報告するなと言っても、『小さな情報の積み重ねが大きな事実の端緒となる可能性があります。何の情報が有益なのかはシェニカ様に確認していただくのが一番です』などと言い返してくるのが目に見えています。
本来の使命である治療の旅ではなく、確認しに行くだけの旅になるような収拾のつかない状況を避けるためにも、貴女が行くべき事実なのかを先に確認する取りまとめ役を決めておくことを強く勧めます」
「確かにそうですね…」
「任せる人が思い当たらないのなら、ひとまず私が務めますよ」
「ですが…」
「私は世界中の神官長だけでなく、王たちからも怖がられていますからね。私が取りまとめているとなれば、報告する内容は厳選し、注意を払うはずです。ですが、私は見ての通り高齢で、動き回れるだけの気力も体力もありません。信頼できる者を私の名代とし、確認へ行かせましょう」
「ローズ様はお忙しいのに…。良いのでしょうか」
「構いませんよ。私も『聖なる一滴』のことについて興味が湧きましたし、なにより愛弟子にちょっかいをかけていた神殿に、もっとお仕置きしてやりたいと思っていたところです。調査には時間がかかるでしょうから、良い生きがいになるかもしれませんね。ふふっ」
「では、お願いします」
ローズ様は面白そうに笑ったけど、そこにはちょっと恐ろしさを含んでいる気がする。お仕置きってどんなことをするのだろうか。興味はあるけど、何となく知らない方が良い気がして聞くのはやめた。
これからはローズ様に頼り切りにならないように、私自身で任せられる人を探さなければ。
「私が知っている情報としては、作り方と解毒薬のレシピ。あとは、『聖なる一滴』はずっと昔からあったものの、試験で使い始めたのは比較的最近というくらいでしょうか」
「その前はどのような試験だったのですか?」
「昔はね、『再生の砂』の改良が出来るかという試験と、ランクA、S、SSの3人を同席させ、どのランクの人に強制催眠がかかるのか、という2つの試験を行っていたのですよ」
「砂の改良と強制催眠ですか…」
「知っての通り、砂はランクS以上の白魔法の能力があれば改良が可能で、SSになれば改良の速度が目に見えて速くなります。強制催眠は相手の白魔法の能力が自分よりも低ければかかりますが、同等かそれ以上の者にはかからない特徴があります。
これらを利用して、『再生の砂』の改良は出来なくても、欠損部位の再生治療が可能で、ランクAの人に強制催眠がかからなければランクA。再生の治療に加えて砂の改良も可能で、強制催眠でランクAには術をかけることが出来てもランクSの人にかからなければランクS。再生の治療はもちろんのこと、砂の改良が目に見えて速くて、ランクSには強制催眠がかかるのに、ランクSSの人にかからなければランクSS。こんな風に試験をしていたそうです。
だから、その時は『聖なる一滴』は単なる身を守るための手段として、ひっそりと使用されていたそうです」
「どうしてその試験から今の試験に変わったのでしょうか」
「試験に同席できる『白い渡り鳥』がいなくなったからです。
今は『白い渡り鳥』になれる者自体が少なくなっていますが、昔はなれる全体数は減らずに、高いランクだと認められる人が減りました。そんな状況が続いた結果、SSがいなくなり、Sがいなくなり…となってしまったために、試験が出来なくなってしまったのです。そして新たになる者が減ってしまったので、見極める試験を行うこと自体が『めでたいこと』だと認識されるようになりました。
砂の改良も能力で差が出るのでランクの見当はつくのですが、国の中から新たな『白い渡り鳥』が生まれるハレの舞台には、砂の試験だけでは地味すぎて華がないという理由で、『聖なる一滴』も使われるようになったそうです。
ただ、『聖なる一滴』の効果を見るのは砂よりも分かりやすかったのか、次第に砂の改良は授業の中で確認するだけになって、『聖なる一滴』の使用だけで行う現在の形になったようです」
「あの試験が華、ですか?」
「黒魔法にはない『魔力が抜ける』という効果を、魅力的だと感じる者が多かったのでしょう。その頃はまだ解毒薬がありましたから、『華』だと思えたのかもしれません。
それに。旅立つ前にその効果を確認する意味はある、と言えるでしょう」
「意味がある…?」
「貴女が『聖なる一滴』の作り方だけを知った状態で旅に出て、盗賊の一味に襲われたとしましょう。貴女が身の危険を感じて『聖なる一滴』を初めて使ったら、あの時のようにショックで気絶してしまうかもしれません。そうなってしまえば、気絶した貴女を残った盗賊が監禁し、『聖なる一滴』をもっと作るように脅すかもしれません。
それに、事前に『聖なる一滴』の効果を他の人も知っていれば、その痕跡を見て貴女の身に異変が起きたと分かるのです。結果を公表すれば利用したいと思う人が出てきますが、メリットもありますから、限られた者だけに公表しておいたほうが良いと私は思いました」
「確かに、そうですね」
ラーナで『聖なる一滴』を受けた兵士達を前に白魔道士が困惑していたように、存在を知らなければ原因も治療法も分からない。そんな状況が起きれば、白魔法を司る神殿にも連絡が行くだろう。神官長がその特殊な痕跡を見て『白い渡り鳥』の身に何かが起きたと分かれば、確認しようと動いてくれる。
身を守ること、危険を知らせることのメリットと、『聖なる一滴』欲しさに狙われるデメリットが表裏一体なのだと思った。
「それと。私は貴女に謝まらなければいけないの」
「ローズ様に謝罪されるようなことを受けた記憶はありませんが…」
「貴女が神殿にいた6年間、外界から遮断した生活をさせたことを謝りたいのです。
神殿に進学した者がいると知られると、高い確率で『白い渡り鳥』になると周囲は察します。ダーファスは人の結び付きが強い田舎ですから、貴女の家族や友人知人以外に会いに来る人はいませんでしたが、貴女と早めに知り合いになることで将来有利になると考えた国内の貴族が、貴女が神殿に進学してすぐ挨拶にやって来ました。
出会いを狭めてしまうのは良くないと思っていましたが、そういう人は口が上手いので、良いように使われてほしくなくて会わせませんでした。ですが彼らも自分の出世に必死ですから、貴女の友人や知り合いを言いくるめて面会を申し込ませたり、手紙を渡そうとしてきました。
だから、ご両親に説明して接触を最低限にし、友人達との交流を遮断させたのです。寂しかったでしょう。ごめんなさい」
「確かに寂しさをはありましたが、そのおかけで私は友人達に嫌な感情を抱くことはありませんでした。ローズ様には感謝しています」
「そう言ってくれてありがとう。そうだ。シェニカがさっき言っていたイルバ様ですが、カケラの交換はしていますか?」
「いいえ、していません」
「では、ここに滞在している間に手紙を書きませんか? 私もギルキアの古い友人に手紙を出す予定だったので、一緒に届けさせましょう」
「いいのですか? ありがとうございます!
あ、でも待ち合わせ場所や日にちはどうしたら良いでしょうか…」
報告や連絡などの一方通行で済む内容なら問題ないのだが、日程調整などが必要な内容の手紙を人に届けてもらう場合、待ち合わせ場所と日時を予め指定しておく。受け取った相手は、都合が悪ければその返事と希望する日時と場所を指定した手紙を届けてもらったり、待ち合わせ場所に伝言を預けておいたりすることになる。
届くまでの時間と手紙のやり取りの手間を省くための慣習であるものの、フィラを使うことに慣れた今ではとても不便に感じる。
手紙と一緒に私のカケラを渡してもらうことも出来るけど、もう少しイルバ様を知ってからにしたいのでこうするしかない。
「フェアニーブに行った後、ポルペアに行くのでしたっけ」
「はい、そうです」
「正式な日程は覚えていませんが、4、5ヶ月後くらいにポルペアで建国の祝賀が予定されていたと記憶しています。その祝賀に近い日を指定してはどうですか? 祝賀当日は人が大勢集まりますから、1週間前の正午とかにするのが良いかもしれませんね。待ち合わせ場所は時計塔や神殿、宿やレストラン、小鳥屋などの分かりやすい場所にしてはどうでしょう?」
「では、『ポルペアで開催される建国祝賀の1週間前の正午、ポルペアの首都の小鳥屋でお待ちしています』と書こうと思います」
「シェニカから手紙を預かったら、すぐに使者を出しますね。そうそう、貴女のご両親から手紙を預かってきました」
「わぁ!ありがとうございます!ローズ様、いつも両親を助けて下さり、ありがとうございます」
ローズ様から差し出された手紙を受け取ると、封筒にあった『シェニカへ』という懐かしい筆跡を見て、心の中は喜びで一気に満たされた。
「シェニカが手紙を読んでいる間、護衛の彼と話をさせてもらえますか?」
「え?はい…」
ローズ様は初対面のルクトと何を話したいのだろうかと不思議に思いながら、椅子から立ち上がった。
■■■後書き■■■
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