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第19章 再会の時
15.失恋祝い
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■■■前書き■■■
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2023年、あけましておめでとうございます。
頑張って更新していきますので、どうぞよろしくお願いします!
今回はルクト視点のお話です。
■■■■■■■■■
「おやすみ。2人は楽しんでね」
「おやすみ」
シェニカを部屋まで送ると、レオンと一緒に隣の部屋に入った。レオンは剣と荷物を置くと、早速酒が並んだ棚を開き、銘柄を確認しながら俺に聞いてきた。
「あんな手紙を寄越してきてどうしたんだ。『何も言わずにポルペアまでの護衛を引き受けて貰えないか。頼む』なんて見たときにはビックリしたぞ。何があった?」
「…別れたいと言われた」
「はぁ?また何で?」
どこから話せば良いのか悩んでいると、その姿に何か察したのかレオンは静かにため息をついた。
「それってフラれたってことか? じゃあなんで今も一緒にいるんだよ」
飲みたい酒を見つけたのか、3本の瓶とグラスを2個持ってくると、ドッカリと向かいのソファに座った。グラスに注がれる琥珀色を見ながら、大きく息を吐いた。
「別れたいって言われたけど、俺がやり直したいと頼んだ」
「頼んだって…。やり直したってことは、今でも付き合ってる仲なんだろ?」
「いや。今はただの護衛だ」
俺の答えに困惑したようで、青みの強い紺色の頭をガリガリと掻いた。
「ちょっと待ってくれ。そもそもだ。お前、前に送ってきた手紙の感じだと、嬢ちゃんと上手くやってたんだろ? なんでそうなったんだ?」
「トラントとウィニストラが戦争する前。俺達はウィニストラを経由してポルペアに向かってた。その道中、ウィニストラ領を移動している時に、ウィニストラとトラントの戦争が始まったんだが、立ち寄った街はちょうど軍の拠点になってた。
そこには厄介な毒が使われた奴らがいて、シェニカがその治療をすることになった。その時、ディスコーニもその毒を受けていたから、シェニカが治療したんだが。その時にバルジアラと再会したんだよ」
「お前の因縁の相手か」
その問に小さく頷くと、レオンは眉間にシワを寄せながら酒を飲んだ。
「細かいことは伏せるが、トラントがシェニカを攫いに来る可能性があるってことで、俺たちはウィニストラの保護下におかれ、侵攻するウィニストラ軍に同行することになった。
その時。俺は近くにいるバルジアラに対する憎悪が膨れて、自分の感情がコントロール出来なくなって…。シェニカに八つ当たりしてしまった。
そしたら、あいつは俺を怖がって、俺を避けるようになった。そのあと色々あって、あいつはディスコーニに心変わりして、別れたいって言われた」
「八つ当たりって。お前、嬢ちゃんを殴ったのか?」
「殴ってはない。ただ、その…」
「あぁ、察したから言わなくて良い。それで? 嬢ちゃんは許してくれたのか?」
「許してくれたのかは分からない。謝ったけど、信用できないって言われて。
……フラれた」
胸の中に渦巻く、なんとも言えない感情をごまかすように酒を一口飲むと、レオンは一気に酒を飲んだ。
「まぁ、普通に考えれば、一発アウトになってもおかしくないことだから、そうなってもおかしくはないが…。嬢ちゃんはお前を信用してないし、許してないかもしれないのに、どうして一緒にいるんだ?」
「俺達がトリニスタで最初に会った時、コロシアムに出ただろ? あの時、シェニカが褒章がてら俺に願いを1つ叶えてやるって言ってたんだよ。それを使って、やり直したいって頼んだ。
そしたら、恋人としてはやり直せないけど、護衛を追加した上で、ポルペアまでなら護衛としてやり直しても良いって言われた。俺はその条件を飲んで、俺の希望で主従の誓いを結んでもらった」
「なるほど。しかし、嬢ちゃんは将軍みたいな奴に近寄ろうとしないだろうし、信用もしそうにないが、本当にディスコーニに心変わりしたのか?」
「今回の一件で、あいつはずっと危険に晒され続けることになったわけだが。そういう状態はあいつにとって慣れない上に、俺を怖がってたから、ずっと精神的に不安定になってた。
そんな時に色々あって、最終的にディスコーニがあいつを守ったわけだが。恐怖や不安とか、そういうところをディスコーニに付け込まれたんだと思う」
「じゃあ嬢ちゃんは、いまディスコーニと付き合ってるのか?」
「イチャイチャしながら街を歩いているし、2人で部屋にこもることもあるけど。一応友達、らしい」
「深い関係ってことか?」
「シェニカはキスだけだと否定したし、ヤッてる気配はないけど…。そうなっていてもおかしくないと思ってる」
あんなにベタベタくっついて、イチャついているんだから、鍾乳洞で抱かれたと思っているが。手を繋いで人目を気にせず歩いたり、キスをすることはあっても、一緒の部屋にいるのにそれ以上のことをしている気配はない。
シェニカは気配を読めないながらも、周囲の目を気にしているのだろうか。それとも、本当にキスだけで、抱かれてないのだろうか。
キスからの流れで持ち込んでもおかしくないのに、ディスコーニは誘ってないんだろうか。それとも、シェニカが求めてないのだろうか。
そう考えてみて、俺はシェニカに求められたことはあったか?と疑問が浮かんだ。積極的に求める俺に対し、シェニカから「したい」と言われた記憶が出てこないし、行動で誘われたこともないような気がする。振り返ってみれば、俺はずっと一方的だったことに気付いた。そして。
『ルクトと一緒にいる時、不安を感じることが多くて、満たされてるって感じなかった気がする』
という言葉と同時に、夢で見たシェニカの寂しそうな後ろ姿がフッと頭に浮かんで、視線をグラスから酒瓶に移した。
「お前と嬢ちゃんは前と大して変わってないように見えたが、思った以上に深刻なんだな。でも、お前は嬢ちゃんをまだ好きなんだろ? 前みたいに、側にいながらずっと片想いする気か?」
しばらく黙っていたレオンが、視線も合わせずそう聞いてきた。
「今は大して動けないが…。時間がかかってもいいから、もう一度付き合いたい」
「嬢ちゃんはお前とやり直す気はあるのか? 勝算はありそうなのか?」
「お前に教えてもらった主従の誓いの研究者のところに行ったんだ。その研究者が言うには、あの誓いは互いに想い合うようになると、他のやつを見ない『夫婦の誓い』になるらしい。
何かあれば押さえつけられるからって、俺が主従の誓いを言い出したことなんだが、本当は夫婦の状態になれば良いと思ってのことなんだ」
「なんだそれ。他のやつを見ないって、浮気防止みたいなもんか?」
「そんな感じだと思う」
「まぁ、外野の俺が首を深くまで突っ込んで、引っ掻き回す気はないが。上手くいくよう見守ってるよ」
「あぁ、それで頼む」
レオンを介してシェニカとの関係を修復できればいいが、やり方を間違えればシェニカとレオンの関係も悪くなりかねない。傭兵業を続けるレオンにしてみれば、シェニカとの関係は良好のままがいい。
俺の話を聞いてもらえて、シェニカにも普通に接することのできるレオンがいてくれるだけで、かなり気が楽になる。それだけで十分すぎるほどだ。
「ほれ」
レオンは酒を入れたグラスを掲げ、乾杯するぞと言ってきた。どういうつもりなのかと目で問えば、なにか企んでいるのかいたずら顔になった。悪意はなさそうだと思って、促されるままグラスを掲げると、満足そうに頷いた。
「失恋祝いに乾杯だ」
「祝うことじゃねぇだろ」
俺がそう言うと、レオンは大きく笑った。馬鹿にするような笑いじゃないから何も言わなかったが、人の不幸話が楽しいのだろうか。
「そんなしみったれた顔をすんなよ。こういうのは笑い話にするのが一番なんだよ」
「うるせぇよ」
他の奴なら腹が立ちそうな誂う口調だったが、レオンだと不思議と苛立つことはなく、酒を一口飲んだ。
「結局のところ、お前が自分のことしか考えてなかったのが原因なんだろ? なら、まずは嬢ちゃんに見直してもらえるように、『自分がよければ良い』っていう傲慢な『赤い悪魔』を卒業しなきゃならねぇってわけだ」
「…そうだな」
レオンはグラスに注いだ酒を静かに飲むと、味わっているのか目を閉じた。レオンは味に集中したいのか、目を閉じたまま酒を飲むから、部屋にはしばらく沈黙が落ちた。
「お前が努力するればするほど、早く答えを知りたいって気分になるだろうが、嬢ちゃんに答えを焦らせないほうがいい。ロクなことにならんぞ」
「やけに具体的だが。お前もなんかあったのか?」
「まぁな。生きてりゃ色々ある。そんな顔してると味が落ちるぞ。ほら、飲め飲め」
レオンはそう言うと、笑いながら俺のグラスに酒を並々と注いだ。
「明日、シェニカがディスコーニと街を歩く予定なんだが。その間、俺はイチャイチャする姿を見続けなきゃいけねぇんだ。嫌な気分にもなる」
「なんで? ディスコーニがいるし、ウィニストラの警備もつくだろうから、俺たちは行く必要ねぇんじゃないのか?」
「主従の誓いの影響で、俺はシェニカから離れられないんだよ。宿にいても、気付いたら外に出てシェニカを追いかけてる。イチャつく姿なんか見たくもねぇけど、どうせ引っ張られるから、自分からついて行ってる」
明日、俺はまた影に隠れながら、コソコソついていくことになるだろう。今まで俺に見せることのなかったシェニカの楽しそうで、嬉しそうな顔を見るのは辛いが、仕方のないことだと諦めるしかない。
「…まぁ、物は考えようだ」
言ってる意味が分からなくてレオンを見ると、ソファから立ち上がって戸棚に向かい、酒瓶を選び始めた。
「ディスコーニと居る時、嬢ちゃんは喜んでるってことなんだろ? なら、ディスコーニをよく見て、何をしたら嬢ちゃんが喜ぶのか、自分ならどう出来るのか考えながら観察すればいい。鍛錬と同じだ。
とりあえずだ。名酒揃いなんだから、ここを出るまでに飲み尽くさねぇと損だぞ」
「そうだな」
希少性の高い酒を持ってきたレオンは、瓶を光に掲げて色を見たり、封を開けて匂いを楽しみ始めた。
■■■後書き■■■
2023年が皆様にとって良い年になりますように
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シェニカを部屋まで送ると、レオンと一緒に隣の部屋に入った。レオンは剣と荷物を置くと、早速酒が並んだ棚を開き、銘柄を確認しながら俺に聞いてきた。
「あんな手紙を寄越してきてどうしたんだ。『何も言わずにポルペアまでの護衛を引き受けて貰えないか。頼む』なんて見たときにはビックリしたぞ。何があった?」
「…別れたいと言われた」
「はぁ?また何で?」
どこから話せば良いのか悩んでいると、その姿に何か察したのかレオンは静かにため息をついた。
「それってフラれたってことか? じゃあなんで今も一緒にいるんだよ」
飲みたい酒を見つけたのか、3本の瓶とグラスを2個持ってくると、ドッカリと向かいのソファに座った。グラスに注がれる琥珀色を見ながら、大きく息を吐いた。
「別れたいって言われたけど、俺がやり直したいと頼んだ」
「頼んだって…。やり直したってことは、今でも付き合ってる仲なんだろ?」
「いや。今はただの護衛だ」
俺の答えに困惑したようで、青みの強い紺色の頭をガリガリと掻いた。
「ちょっと待ってくれ。そもそもだ。お前、前に送ってきた手紙の感じだと、嬢ちゃんと上手くやってたんだろ? なんでそうなったんだ?」
「トラントとウィニストラが戦争する前。俺達はウィニストラを経由してポルペアに向かってた。その道中、ウィニストラ領を移動している時に、ウィニストラとトラントの戦争が始まったんだが、立ち寄った街はちょうど軍の拠点になってた。
そこには厄介な毒が使われた奴らがいて、シェニカがその治療をすることになった。その時、ディスコーニもその毒を受けていたから、シェニカが治療したんだが。その時にバルジアラと再会したんだよ」
「お前の因縁の相手か」
その問に小さく頷くと、レオンは眉間にシワを寄せながら酒を飲んだ。
「細かいことは伏せるが、トラントがシェニカを攫いに来る可能性があるってことで、俺たちはウィニストラの保護下におかれ、侵攻するウィニストラ軍に同行することになった。
その時。俺は近くにいるバルジアラに対する憎悪が膨れて、自分の感情がコントロール出来なくなって…。シェニカに八つ当たりしてしまった。
そしたら、あいつは俺を怖がって、俺を避けるようになった。そのあと色々あって、あいつはディスコーニに心変わりして、別れたいって言われた」
「八つ当たりって。お前、嬢ちゃんを殴ったのか?」
「殴ってはない。ただ、その…」
「あぁ、察したから言わなくて良い。それで? 嬢ちゃんは許してくれたのか?」
「許してくれたのかは分からない。謝ったけど、信用できないって言われて。
……フラれた」
胸の中に渦巻く、なんとも言えない感情をごまかすように酒を一口飲むと、レオンは一気に酒を飲んだ。
「まぁ、普通に考えれば、一発アウトになってもおかしくないことだから、そうなってもおかしくはないが…。嬢ちゃんはお前を信用してないし、許してないかもしれないのに、どうして一緒にいるんだ?」
「俺達がトリニスタで最初に会った時、コロシアムに出ただろ? あの時、シェニカが褒章がてら俺に願いを1つ叶えてやるって言ってたんだよ。それを使って、やり直したいって頼んだ。
そしたら、恋人としてはやり直せないけど、護衛を追加した上で、ポルペアまでなら護衛としてやり直しても良いって言われた。俺はその条件を飲んで、俺の希望で主従の誓いを結んでもらった」
「なるほど。しかし、嬢ちゃんは将軍みたいな奴に近寄ろうとしないだろうし、信用もしそうにないが、本当にディスコーニに心変わりしたのか?」
「今回の一件で、あいつはずっと危険に晒され続けることになったわけだが。そういう状態はあいつにとって慣れない上に、俺を怖がってたから、ずっと精神的に不安定になってた。
そんな時に色々あって、最終的にディスコーニがあいつを守ったわけだが。恐怖や不安とか、そういうところをディスコーニに付け込まれたんだと思う」
「じゃあ嬢ちゃんは、いまディスコーニと付き合ってるのか?」
「イチャイチャしながら街を歩いているし、2人で部屋にこもることもあるけど。一応友達、らしい」
「深い関係ってことか?」
「シェニカはキスだけだと否定したし、ヤッてる気配はないけど…。そうなっていてもおかしくないと思ってる」
あんなにベタベタくっついて、イチャついているんだから、鍾乳洞で抱かれたと思っているが。手を繋いで人目を気にせず歩いたり、キスをすることはあっても、一緒の部屋にいるのにそれ以上のことをしている気配はない。
シェニカは気配を読めないながらも、周囲の目を気にしているのだろうか。それとも、本当にキスだけで、抱かれてないのだろうか。
キスからの流れで持ち込んでもおかしくないのに、ディスコーニは誘ってないんだろうか。それとも、シェニカが求めてないのだろうか。
そう考えてみて、俺はシェニカに求められたことはあったか?と疑問が浮かんだ。積極的に求める俺に対し、シェニカから「したい」と言われた記憶が出てこないし、行動で誘われたこともないような気がする。振り返ってみれば、俺はずっと一方的だったことに気付いた。そして。
『ルクトと一緒にいる時、不安を感じることが多くて、満たされてるって感じなかった気がする』
という言葉と同時に、夢で見たシェニカの寂しそうな後ろ姿がフッと頭に浮かんで、視線をグラスから酒瓶に移した。
「お前と嬢ちゃんは前と大して変わってないように見えたが、思った以上に深刻なんだな。でも、お前は嬢ちゃんをまだ好きなんだろ? 前みたいに、側にいながらずっと片想いする気か?」
しばらく黙っていたレオンが、視線も合わせずそう聞いてきた。
「今は大して動けないが…。時間がかかってもいいから、もう一度付き合いたい」
「嬢ちゃんはお前とやり直す気はあるのか? 勝算はありそうなのか?」
「お前に教えてもらった主従の誓いの研究者のところに行ったんだ。その研究者が言うには、あの誓いは互いに想い合うようになると、他のやつを見ない『夫婦の誓い』になるらしい。
何かあれば押さえつけられるからって、俺が主従の誓いを言い出したことなんだが、本当は夫婦の状態になれば良いと思ってのことなんだ」
「なんだそれ。他のやつを見ないって、浮気防止みたいなもんか?」
「そんな感じだと思う」
「まぁ、外野の俺が首を深くまで突っ込んで、引っ掻き回す気はないが。上手くいくよう見守ってるよ」
「あぁ、それで頼む」
レオンを介してシェニカとの関係を修復できればいいが、やり方を間違えればシェニカとレオンの関係も悪くなりかねない。傭兵業を続けるレオンにしてみれば、シェニカとの関係は良好のままがいい。
俺の話を聞いてもらえて、シェニカにも普通に接することのできるレオンがいてくれるだけで、かなり気が楽になる。それだけで十分すぎるほどだ。
「ほれ」
レオンは酒を入れたグラスを掲げ、乾杯するぞと言ってきた。どういうつもりなのかと目で問えば、なにか企んでいるのかいたずら顔になった。悪意はなさそうだと思って、促されるままグラスを掲げると、満足そうに頷いた。
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「祝うことじゃねぇだろ」
俺がそう言うと、レオンは大きく笑った。馬鹿にするような笑いじゃないから何も言わなかったが、人の不幸話が楽しいのだろうか。
「そんなしみったれた顔をすんなよ。こういうのは笑い話にするのが一番なんだよ」
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他の奴なら腹が立ちそうな誂う口調だったが、レオンだと不思議と苛立つことはなく、酒を一口飲んだ。
「結局のところ、お前が自分のことしか考えてなかったのが原因なんだろ? なら、まずは嬢ちゃんに見直してもらえるように、『自分がよければ良い』っていう傲慢な『赤い悪魔』を卒業しなきゃならねぇってわけだ」
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「やけに具体的だが。お前もなんかあったのか?」
「まぁな。生きてりゃ色々ある。そんな顔してると味が落ちるぞ。ほら、飲め飲め」
レオンはそう言うと、笑いながら俺のグラスに酒を並々と注いだ。
「明日、シェニカがディスコーニと街を歩く予定なんだが。その間、俺はイチャイチャする姿を見続けなきゃいけねぇんだ。嫌な気分にもなる」
「なんで? ディスコーニがいるし、ウィニストラの警備もつくだろうから、俺たちは行く必要ねぇんじゃないのか?」
「主従の誓いの影響で、俺はシェニカから離れられないんだよ。宿にいても、気付いたら外に出てシェニカを追いかけてる。イチャつく姿なんか見たくもねぇけど、どうせ引っ張られるから、自分からついて行ってる」
明日、俺はまた影に隠れながら、コソコソついていくことになるだろう。今まで俺に見せることのなかったシェニカの楽しそうで、嬉しそうな顔を見るのは辛いが、仕方のないことだと諦めるしかない。
「…まぁ、物は考えようだ」
言ってる意味が分からなくてレオンを見ると、ソファから立ち上がって戸棚に向かい、酒瓶を選び始めた。
「ディスコーニと居る時、嬢ちゃんは喜んでるってことなんだろ? なら、ディスコーニをよく見て、何をしたら嬢ちゃんが喜ぶのか、自分ならどう出来るのか考えながら観察すればいい。鍛錬と同じだ。
とりあえずだ。名酒揃いなんだから、ここを出るまでに飲み尽くさねぇと損だぞ」
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