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第19章 再会の時
19.2人の背中
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■■■前書き■■■
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今回はルクト視点のお話です。
■■■■■■■■■
アドアニザを出発した2日後、俺たちはマーゼルという地方都市にやってきた。
この街に到着したのは一昨日の昼だったが、領主の屋敷で各国との会談があるらしく、明日まで滞在すると聞いた。
「ここのパン美味しいね。2回もおかわりしちゃったや」
「だな。肉を挟んでも良し、スープに浸しても良し、パテやジャムをつけても良し、そのまま食べても良し。全種類制覇して満足だが、朝から食い過ぎちまった」
シェニカとレオンが食べ放題のパンの話で盛り上がっていると、レストランの奥にあるこの席まで、人の声や荷物を運び込む音などが聞こえてきた。どうやら、ロビーにどこかの御一行が到着したらしい。
「そういえばレオンって苦手な食べ物あるの?」
「特にはないけど、くっせぇ匂いのするやつは見た目が良くても食う気にならねぇな」
「そういうの食べたことあるんだ? 私はまだそういう料理に出会ったことないなぁ」
「サザベル領の南にミンドっていう港町があって、料理名は忘れたが、そこの郷土料理が強烈でな。地元の奴が『匂いに癖があるが、味は絶品』と言うから食べてみたが。見た目は普通の刺身なのに、腐敗臭がすごい。あれは衝撃的だった」
「美味しかったの?」
「匂いが強烈過ぎて、味の記憶がない。タダで良いからもう一度食べるか?と聞かれても、食べる気はしないな」
「へ~!そんな料理があるんだ。気になる!」
「やめとけ。美味いもん食った方が絶対良い」
レストランを出ると、ロビーで待っていたらしいディスコーニがこっちにやってきた。でかい街だから数日かけて見て回るのは分かるが、今日も飽きもせずぶらつくらしい。
「おはようございます。迎えに来ました」
「おはよう。ラダメール様、アヴィス様もおはようございます。じゃあ、行ってくるね」
シェニカがディスコーニの隣に行けば、奴は早速シェニカの手を取り、俺達に背を向け宿の外へ出ていった。
「俺たちも行くか」
「そうだな」
少し間をおいてから自分たちも街に出てみたが、警備の兵士がシェニカたちを取り囲んでいるから、どこにいるのかすぐ分かる。ただ、トゥーベリアスが直接指揮している影響か、以前に比べて警備の兵士の中にいる上級兵士の数が増えている。
「またイモ娘がいるわ!一体何なのよ!」
「きゃぁぁ!トゥーベリアス様もいる!やっぱり素敵~!」
「トゥーベリアスさまぁ~! こっち向いてくださ~い!」
「私はレア度の高いディスコーニ様の方を優先するわ!」
「そうなの?」
「ディスコーニ様は滅多に首都から出ないらしいって聞いたわ」
「ならこの機会を逃すのは損ね!」
「ディスコーニさま~! 握手してくださ~い!」
「ちょっとぉ!なんで邪魔するのよ!」
「滅多に見れない英雄様なのよ? ちょっとくらい良いじゃない!」
ディスコーニを見てキャーキャー言う女は他の街にもいたが、この街では人数が増えている。女達が現れると、シェニカ達の周囲にいる警備とは別の上級兵士が立ち塞がり、感情を一切込めない無表情と無言で威圧している。女達はその異様な様子に気が削がれるようで、しばらくすると文句を言いながら退散した。警備の連中はピリピリしているが、ここまでするのは何か理由があるのだろうか。
しばらく大通りを歩いていたシェニカたちは、通りから外れた道を進み始めた。この道には、椅子やソファを作る家具屋の工房、靴屋の工房、服屋の仕立て工房といった職人の店が並んでいて、2人はそれを珍しそうに眺めながら、時折店に入って店主と話をしている。何か買うわけではないようだが、店主が身振り手振りで伝えている様子から、作り方などを聞いているらしい。
「嬢ちゃんは本当にディスコーニと仲良いんだな。表情と言い、距離感と言い。なんか…」
意見を求めるレオンの視線に無言で答えれば、色々と察したレオンはそれ以上何も言わなかったが、なんとも言えない表情で身体を寄せ合う2人に視線を戻した。
市場に近い道を歩いていると、興味がひかれる物があったのか2人は土産物屋に入った。その間、自分たちは道を挟んだ向かいにある露天のパン屋で、野菜と鶏肉を包んだトルティーヤを買った。
見た目は至って普通だが、甘辛いチリソースと具がすごく合う。手頃な価格のわりにかなり美味いと思って食べていると、ショーウィンドウ越しに2人が羽ペンを手にとって眺めているのが見えた。
「あいつも嬢ちゃん狙いか?」
「そうみたいだな」
トゥーベリアスは、俺達から少し離れた場所で警備の指揮をしながら、シェニカに熱視線を送っている。ただ、奴はまったく気付かれない状況を苦々しく思っているらしく、時折ディスコーニを睨んでいる。
「嬢ちゃん、ディスコーニ以外にもあんな感じなのか?」
「ディスコーニの副官達には警戒心が薄れるが、それ以外には警戒するし、むやみに近付こうとしない」
「なんでディスコーニだけ信用しきっているのか知ってるか?」
「まぁ、大体は」
ーー1週間っていう短期間だったけど、一緒に困難を乗り越えて、共犯になって。好きって、愛してますって言って貰えて嬉しかったし、胸があったかくて、とっても満たされた
シェニカの言う『共犯』っていうのがよく分からないが、あいつを特別扱いするのはそこなんだろう。
落盤に巻き込まれたのが、ディスコーニじゃなくて俺だったら、今頃どうなっていたんだろう。そもそも、あの時、俺がもっと近くにいれば、落盤に巻き込まれずに済んだんじゃないか。
過去を仮定しても意味がないと分かっているのに、後悔する気持ちが今でも湧き上がる。それと同時に
ーー過去には戻れぬが、星が色々なものに影響されて軌道を何度も変えるように、お前さん次第で未来も変わるかもしれん
という、夢に出てきた婆さんのセリフも浮かんでくる。
シェニカはイルバに手紙を送ったみたいだし、このままだと本当に別れてしまいそうな気がする。でも、俺次第で流れを変えられるのだろうか。
夕方まで街を歩き回った2人は、宿に戻るとそのままレストランに入った。2人は衝立で区切られた席に座っているから姿は見えないし、2席挟んだ別テーブルに座る俺たちには、2人の声が小さな音にしか聞こえない。でも、楽しそうなのは雰囲気で伝わってくる。
「あれをずっと1人で耐えてきたわけか」
「もう慣れた」
レオンは2人を追いかける状況に飽きたようで、ため息交じりにそう言って酒を豪快に1口飲んだ。
あの2人の楽しそうな姿を見続けるのは俺も辟易しているが、シェニカの真剣に品定めする顔、気に入ったものを手にして一瞬でほころぶ顔、ふとした瞬間に見せる物憂げな顔など、隣にいたのに気付かなかった表情があった。今まではただ辛い、つまらないだけの時間だったが、その表情が何を意味するのか考えるようになってから、時間の経過が早くなった気がする。
「嬢ちゃんを諦めるってことは考えていないのか?」
「考えてない」
「なんでそんなに嬢ちゃんにこだわるんだ。普通、あそこまで出来上がってるのを見たら諦めるぞ。女なんてそこら中にいるだろ?」
「あいつが良いんだ」
俺の返事に呆れたのか、レオンは大袈裟気味に溜め息を吐いた。
「それにしても。露骨なイチャつきはないが、嬢ちゃんも他の『白い渡り鳥』みたいだな」
「あいつは他の奴とは違う」
「そうか? この調子だと、近い将来には節操なしになってるかもしれねぇぞ?」
2人の後を追って街を歩くようになってから、夫婦や恋人と思われる男女が目につくようになった。どの街に行っても、そういう2人は堂々と手を繋いだり、身体を密着させて歩いていたりするが、本人たちはもちろん、周囲の人間も大して気にしていない。シェニカの特権がなくても、親しさを全面に出した今の2人の行動は、別におかしなことではないのだろう。
レオンの言葉に無言でいると、頭をガリガリと掻いた。
「すまん、言い過ぎた」
「あぁやってるのがディスコーニじゃなくて俺だったら、同じように思うか?」
「いや、思わないけど…」
レオンはディスコーニと何の関わりもないから、俺の味方をしてくれている。だから、あの2人の様子を見て眉を顰めるが、相手が俺だったら冷やかすだけだろう。
洪水に見舞われた町に行った時、暗がりだから手を繋いだことがあった。その時すごく喜んでいたし、ディスコーニと街を回っている時の様子からすれば、きっとこういうことがしたかったのだろう。もっと手を繋ぎ、街を歩いていれば…。何か違っていたのだろうか。
後悔していると、夢で見たシェニカの寂しそうな背中が思い浮かんだ。
「手を繋ぎたいって言われたことがある。けど、俺は人目を嫌って繋がなかった。最低限の買い物はするが、あんな風に街を見て回ってなかった」
「んじゃ何やってたんだ?」
「……宿に戻ってヤッてた」
レオンは大きな溜め息を吐いたが、かける言葉がないのか、俺に話の先を促すように酒を飲んだ。
「常にそばにいて、抱いてれば言葉なんて必要ない。俺はそれで満たされてたから、あいつもそうだろうと思ってた。でも、実際のところ、そう思っていたのは俺だけだった。
あの時のことも、今までのことも、許してもらえるまで謝りたいし後悔している、だからやり直したいって言いたくても、今の状況だと、それを言っただけで護衛をクビにされるかもしれない。そう思うと何も言えない」
「そうは言っても、嬢ちゃんはお前とやり直す気はなさそうだぞ? どうするんだ?」
「俺のことをどう思っているのか、どうすれば許してもらえるのか知りたい」
俺がそう言うと、レオンは心底面倒くさそうな目を向けてきた。
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アドアニザを出発した2日後、俺たちはマーゼルという地方都市にやってきた。
この街に到着したのは一昨日の昼だったが、領主の屋敷で各国との会談があるらしく、明日まで滞在すると聞いた。
「ここのパン美味しいね。2回もおかわりしちゃったや」
「だな。肉を挟んでも良し、スープに浸しても良し、パテやジャムをつけても良し、そのまま食べても良し。全種類制覇して満足だが、朝から食い過ぎちまった」
シェニカとレオンが食べ放題のパンの話で盛り上がっていると、レストランの奥にあるこの席まで、人の声や荷物を運び込む音などが聞こえてきた。どうやら、ロビーにどこかの御一行が到着したらしい。
「そういえばレオンって苦手な食べ物あるの?」
「特にはないけど、くっせぇ匂いのするやつは見た目が良くても食う気にならねぇな」
「そういうの食べたことあるんだ? 私はまだそういう料理に出会ったことないなぁ」
「サザベル領の南にミンドっていう港町があって、料理名は忘れたが、そこの郷土料理が強烈でな。地元の奴が『匂いに癖があるが、味は絶品』と言うから食べてみたが。見た目は普通の刺身なのに、腐敗臭がすごい。あれは衝撃的だった」
「美味しかったの?」
「匂いが強烈過ぎて、味の記憶がない。タダで良いからもう一度食べるか?と聞かれても、食べる気はしないな」
「へ~!そんな料理があるんだ。気になる!」
「やめとけ。美味いもん食った方が絶対良い」
レストランを出ると、ロビーで待っていたらしいディスコーニがこっちにやってきた。でかい街だから数日かけて見て回るのは分かるが、今日も飽きもせずぶらつくらしい。
「おはようございます。迎えに来ました」
「おはよう。ラダメール様、アヴィス様もおはようございます。じゃあ、行ってくるね」
シェニカがディスコーニの隣に行けば、奴は早速シェニカの手を取り、俺達に背を向け宿の外へ出ていった。
「俺たちも行くか」
「そうだな」
少し間をおいてから自分たちも街に出てみたが、警備の兵士がシェニカたちを取り囲んでいるから、どこにいるのかすぐ分かる。ただ、トゥーベリアスが直接指揮している影響か、以前に比べて警備の兵士の中にいる上級兵士の数が増えている。
「またイモ娘がいるわ!一体何なのよ!」
「きゃぁぁ!トゥーベリアス様もいる!やっぱり素敵~!」
「トゥーベリアスさまぁ~! こっち向いてくださ~い!」
「私はレア度の高いディスコーニ様の方を優先するわ!」
「そうなの?」
「ディスコーニ様は滅多に首都から出ないらしいって聞いたわ」
「ならこの機会を逃すのは損ね!」
「ディスコーニさま~! 握手してくださ~い!」
「ちょっとぉ!なんで邪魔するのよ!」
「滅多に見れない英雄様なのよ? ちょっとくらい良いじゃない!」
ディスコーニを見てキャーキャー言う女は他の街にもいたが、この街では人数が増えている。女達が現れると、シェニカ達の周囲にいる警備とは別の上級兵士が立ち塞がり、感情を一切込めない無表情と無言で威圧している。女達はその異様な様子に気が削がれるようで、しばらくすると文句を言いながら退散した。警備の連中はピリピリしているが、ここまでするのは何か理由があるのだろうか。
しばらく大通りを歩いていたシェニカたちは、通りから外れた道を進み始めた。この道には、椅子やソファを作る家具屋の工房、靴屋の工房、服屋の仕立て工房といった職人の店が並んでいて、2人はそれを珍しそうに眺めながら、時折店に入って店主と話をしている。何か買うわけではないようだが、店主が身振り手振りで伝えている様子から、作り方などを聞いているらしい。
「嬢ちゃんは本当にディスコーニと仲良いんだな。表情と言い、距離感と言い。なんか…」
意見を求めるレオンの視線に無言で答えれば、色々と察したレオンはそれ以上何も言わなかったが、なんとも言えない表情で身体を寄せ合う2人に視線を戻した。
市場に近い道を歩いていると、興味がひかれる物があったのか2人は土産物屋に入った。その間、自分たちは道を挟んだ向かいにある露天のパン屋で、野菜と鶏肉を包んだトルティーヤを買った。
見た目は至って普通だが、甘辛いチリソースと具がすごく合う。手頃な価格のわりにかなり美味いと思って食べていると、ショーウィンドウ越しに2人が羽ペンを手にとって眺めているのが見えた。
「あいつも嬢ちゃん狙いか?」
「そうみたいだな」
トゥーベリアスは、俺達から少し離れた場所で警備の指揮をしながら、シェニカに熱視線を送っている。ただ、奴はまったく気付かれない状況を苦々しく思っているらしく、時折ディスコーニを睨んでいる。
「嬢ちゃん、ディスコーニ以外にもあんな感じなのか?」
「ディスコーニの副官達には警戒心が薄れるが、それ以外には警戒するし、むやみに近付こうとしない」
「なんでディスコーニだけ信用しきっているのか知ってるか?」
「まぁ、大体は」
ーー1週間っていう短期間だったけど、一緒に困難を乗り越えて、共犯になって。好きって、愛してますって言って貰えて嬉しかったし、胸があったかくて、とっても満たされた
シェニカの言う『共犯』っていうのがよく分からないが、あいつを特別扱いするのはそこなんだろう。
落盤に巻き込まれたのが、ディスコーニじゃなくて俺だったら、今頃どうなっていたんだろう。そもそも、あの時、俺がもっと近くにいれば、落盤に巻き込まれずに済んだんじゃないか。
過去を仮定しても意味がないと分かっているのに、後悔する気持ちが今でも湧き上がる。それと同時に
ーー過去には戻れぬが、星が色々なものに影響されて軌道を何度も変えるように、お前さん次第で未来も変わるかもしれん
という、夢に出てきた婆さんのセリフも浮かんでくる。
シェニカはイルバに手紙を送ったみたいだし、このままだと本当に別れてしまいそうな気がする。でも、俺次第で流れを変えられるのだろうか。
夕方まで街を歩き回った2人は、宿に戻るとそのままレストランに入った。2人は衝立で区切られた席に座っているから姿は見えないし、2席挟んだ別テーブルに座る俺たちには、2人の声が小さな音にしか聞こえない。でも、楽しそうなのは雰囲気で伝わってくる。
「あれをずっと1人で耐えてきたわけか」
「もう慣れた」
レオンは2人を追いかける状況に飽きたようで、ため息交じりにそう言って酒を豪快に1口飲んだ。
あの2人の楽しそうな姿を見続けるのは俺も辟易しているが、シェニカの真剣に品定めする顔、気に入ったものを手にして一瞬でほころぶ顔、ふとした瞬間に見せる物憂げな顔など、隣にいたのに気付かなかった表情があった。今まではただ辛い、つまらないだけの時間だったが、その表情が何を意味するのか考えるようになってから、時間の経過が早くなった気がする。
「嬢ちゃんを諦めるってことは考えていないのか?」
「考えてない」
「なんでそんなに嬢ちゃんにこだわるんだ。普通、あそこまで出来上がってるのを見たら諦めるぞ。女なんてそこら中にいるだろ?」
「あいつが良いんだ」
俺の返事に呆れたのか、レオンは大袈裟気味に溜め息を吐いた。
「それにしても。露骨なイチャつきはないが、嬢ちゃんも他の『白い渡り鳥』みたいだな」
「あいつは他の奴とは違う」
「そうか? この調子だと、近い将来には節操なしになってるかもしれねぇぞ?」
2人の後を追って街を歩くようになってから、夫婦や恋人と思われる男女が目につくようになった。どの街に行っても、そういう2人は堂々と手を繋いだり、身体を密着させて歩いていたりするが、本人たちはもちろん、周囲の人間も大して気にしていない。シェニカの特権がなくても、親しさを全面に出した今の2人の行動は、別におかしなことではないのだろう。
レオンの言葉に無言でいると、頭をガリガリと掻いた。
「すまん、言い過ぎた」
「あぁやってるのがディスコーニじゃなくて俺だったら、同じように思うか?」
「いや、思わないけど…」
レオンはディスコーニと何の関わりもないから、俺の味方をしてくれている。だから、あの2人の様子を見て眉を顰めるが、相手が俺だったら冷やかすだけだろう。
洪水に見舞われた町に行った時、暗がりだから手を繋いだことがあった。その時すごく喜んでいたし、ディスコーニと街を回っている時の様子からすれば、きっとこういうことがしたかったのだろう。もっと手を繋ぎ、街を歩いていれば…。何か違っていたのだろうか。
後悔していると、夢で見たシェニカの寂しそうな背中が思い浮かんだ。
「手を繋ぎたいって言われたことがある。けど、俺は人目を嫌って繋がなかった。最低限の買い物はするが、あんな風に街を見て回ってなかった」
「んじゃ何やってたんだ?」
「……宿に戻ってヤッてた」
レオンは大きな溜め息を吐いたが、かける言葉がないのか、俺に話の先を促すように酒を飲んだ。
「常にそばにいて、抱いてれば言葉なんて必要ない。俺はそれで満たされてたから、あいつもそうだろうと思ってた。でも、実際のところ、そう思っていたのは俺だけだった。
あの時のことも、今までのことも、許してもらえるまで謝りたいし後悔している、だからやり直したいって言いたくても、今の状況だと、それを言っただけで護衛をクビにされるかもしれない。そう思うと何も言えない」
「そうは言っても、嬢ちゃんはお前とやり直す気はなさそうだぞ? どうするんだ?」
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俺がそう言うと、レオンは心底面倒くさそうな目を向けてきた。
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