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第15章 大きな変わり目
7.誰もいない首都
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「まさか4人全員が重度の麻薬中毒になっているとは…。彼らを利用するつもりだと思っていましたが、トラントは何を考えているのか分かりませんね」
爺さん達が居なくなると、テントの隅に控えていたバーナンがため息混じりにそう言うと、それに応えるようにソルディナンドもため息を吐いた。
「本当ですよ。重度の麻薬中毒となると、『白い渡り鳥』様でも治療は無理だと知っているはずなのに。
シェニカ様。麻薬中毒となっても『聖なる一滴』は作れるものなのですか?」
「その状態になったことがないので分かりませんが、集中力さえ持続できれば、出来るのではないでしょうか」
「では、保存はどうやって?」
バーナンがシェニカに問いかけると、ソルディナンドやディスコーニと言った、その場にいる全員の視線がシェニカに集中した。
その視線に耐えきれなかったのか、シェニカはゆっくりと視線を地面に下げて俯いた。
「……私にしか使えない魔法を使っているからです。ですから、他の人は使えません」
「シェニカ様しか使えない魔法ということは、高難易度の白魔法ですか?我々に使えないかもしれませんが、呪文だけでも教えて頂けませんか?」
「申し訳ありませんが、それは教えられません」
他の『白い渡り鳥』にも使えなさそうだから、高難易度の白魔法というよりはシェニカにしか使えない便利魔法だろう。
だとしたら、シェニカはどうやって保存しているのだろうか。どこに持っているのだろうか。鞄は宿に置きっ放しにすることもあるから、ローブや旅装束のポケットの中だろうか。
シェニカの作る『聖なる一滴』がそんなに高威力なら、シェニカから貰うか盗むかして俺がバルジアラに使ってやりたい。小馬鹿にした様子で俺を見る奴の苦しむ顔を見れば、ずっと俺の胸の中に渦巻いている憎悪やイライラもスッとするだろう。
今の俺達は会話することすら出来ない状態だが、仲直りした頃にそれとなく聞いてみるか。
「では、どのような形状で保存されているのか教えて貰えませんか?」
バーナンが食い下がっていると、テントの幕が開かれて青碧色のマントを靡かせたバルジアラの副官が入ってきた。
「ディスコーニ様。バルジアラ様が軍の施設を制圧し、エメルバ様が王宮内に入りました」
「トラント軍はどうなっていますか?」
「それが…。城壁の外に居た兵士は全滅していますが、城下町には兵士が1人も居らず、城下でのゲリラ戦も行われておりません。
また、王宮の周囲にも軍事施設内にもトラント兵は居ませんでした。軍の施設内の安全は確認しましたので、移動して欲しいとバルジアラ様からのご命令です。
先程の戦場で将軍を2人討ち取りましたが、戦場で姿を確認出来なかった将軍がいます。ですので移動の際には奇襲にご注意下さい」
「分かりました。では行きましょう」
ディスコーニとファズ、バルジアラの副官、キルレの連中と一緒に首都の城下町に入ると、人がいないので以前来た時のような活気のある街は当然なかった。
街の中の建物は破壊されているわけではないが、以前見た活気のある街並みが戦禍に巻き込まれ、誰もいないのはなんとも言えない虚しさがある。
グニャグニャしているが整えられていた大通りは、ところどころ地面に何か巨大な物を上から落としたような窪地が出来ているし、石畳は蛇行した線や直線、斜めを形作るようにヒビ割れていた。
重要施設である王宮周辺や軍事施設に誰も居ないということは、トラントはここを放棄したのだろうか?
将軍がどこかに潜んでいて、シェニカを攫おうと画策しているのだろうか。そうだとしたら、ここはトラントの敵陣本拠地。地の利のないウィニストラは不利だ。
ウィニストラの兵士達が店や家の中を一軒一軒確認するのを横目で見ながら、周囲を警戒しながら歩いた。
俺達は王宮の隣にある頑丈そうな石造りの軍事施設に入ると、2階の奥にある部屋に案内された。
その部屋は元々大人数が収容できる会議室だったらしく、中央に立派な円卓のデカイテーブルが置かれていた。部屋の一番奥にある椅子にバルジアラが座って、隣にいる自身の副官達がテーブルに広がった地図を見たり、慌ただしい様子で報告をしている。
部屋の外には銅の階級章を付けた奴がいたが、そいつらは中にいる副官を呼び出しているだけだから、この部屋に入れるのはどうやら副官以上らしい。
「軍事施設や城下に将軍や副官、兵士を残してないとはおかしい。お前、何か情報を持っているか?」
バルジアラは俺達の前に居たディスコーニそう尋ねたが、フードを被ったままの奴はすぐに首を横に振った。
「今までトラントには暗部を送っていなかったので、特に情報は掴んでいません」
「そうか。サザベルなら分かるが、トラントはなんでうちに宣戦布告してきたんだか…。あ、シェニカ様、休める場所の支度が整いましたらご案内しますので、そちらの椅子におかけ下さい」
バルジアラはそう言うと、部屋の壁側に並べられた椅子を手で指し示した。シェニカは小さく頷いて椅子に座ると、フードを引っ張って俯いてしまった。
俺はシェニカから少し離れた場所の壁に凭れかかって、横目であいつを見ながら話しかけるチャンスがないか伺った。
様々な報告がバルジアラにされるのを眺めていると、エメルバの副官の1人が慌ただしく入ってきた。
「バルジアラ様。エメルバ様からの報告です。王宮には国王どころか将軍も兵士も誰1人いません」
「どう言うことだ?」
「この期に及んで、どこかに身を隠したと言うところでしょうか」
考え込むバルジアラの横で、ディスコーニは胸ポケットから紙を取り出してテーブルの上に広げ始めた。
「エメルバ様が隠し通路などを探しておられますので、私も加勢に行って参ります」
報告を終えたエメルバの副官が急いで部屋から出て行くと、バルジアラは目の前のテーブルに広げられた紙を見続けるディスコーニに険しい顔を向けた。
「ディスコーニ、何か分かるか?」
「ジェベルの持っていたこの地図ですが、もしかしたら、この地図の場所が首都の地下にあるかもしれないと思いまして」
「地下にこんなの作ってたのか」
「いえ、この蟻の巣具合から考えると自然に出来た洞窟ではないでしょうか。
ですが、この地図には出入り口の記載が全くありませんし、混乱させるための罠かもしれません。そもそもこの地下洞窟が本当にあるのかすら確証はありません」
「暗部の報告だと、戦争が始まってから国王がここを出た様子はない。将軍らが手引して他国に逃げた可能性もあるが、それはみっともない屈辱だからプライドの高いあの国王はやらんだろ。
となると、ここに身を潜められる場所があって、そこに将軍達と反撃の機会を伺っていると考えるのが自然だな。
シェニカ様を攫う担当だったジェベルが持っていたこの地図なら、何かに利用していたと考えて良いだろう。
国王が身を隠すということは、王宮のどこかに出入り口がある可能性が高いな。出口を王宮の外に作っているはずだが……場所の特定をせねばならんな。
恐らくここに逃げ込んで反撃の機を見ている可能性が高い。兵士を使って探させよう」
戦争の責任者である国王が、将軍や兵士、国民を放ったらかして逃げ出すのは、臆病者のすることだとみなされる。
そんな臆病者の国王が他国に亡命した場合、自分の国を捨てたのだから当然王族の身分は失くなって平民扱いで保護される。だが、保護された先の国民からは後ろ指をさされるし、元国王を恨んだ者達が居場所を突き止めて殺しに来るかもしれないが、平民なのだからその国の王族からは何の配慮もされない。
身の危険と居心地の悪い環境が待ち受けているのだから、亡命するなど屈辱の未来しか無い。
トラントの国王は領土を広げられない戦争だろうが、自ら戦地で指揮を執るような奴だったと聞いているから、他国に逃げるなどしないだろう。
ならばどこに逃げ込んだのだろうか。やはり地下なのだろうか。
そういえば。
あの夜襲の時、俺の前に現れた副官は『どうせ我々がどこにいるか分からないだろう』と言っていた。ということは、どこかに潜んでいるのは確実だ。
その情報をバルジアラ達に教えてやる気もないが、シェニカを攫われないように注意しなければ。
しばらくすると、ディスコーニとファズがシェニカに近付いて来た。
「シェニカ様、バーナン神官長、ソルディナンド殿。安全な場所を用意しましたので、お休みになって下さい。ご案内します」
ファズの案内で裏口から軍の建物を出ると、木も何もない砂地の先にある外壁近くの建物に向かって歩き始めた。
歩いていると、砂埃がまき上げられるほどの強い風が吹き抜けてくる。目深に被ったフードの下から、砂が駆け上がってくるように目に入って来た。
俺の5歩先を歩くシェニカも、砂埃がフードの中に入ったらしく目をこするような動作をしている。
砂埃をきっかけに『大丈夫か?』って隣に行って声をかけてやりたいが、俺のすぐ後ろにはソルディナンドがいる。こいつは隙あらばシェニカに近付こうとするから、俺が声をかければこいつも絶対に声をかけようとするだろう。
シェニカは当然こいつとの接触を嫌がっているから、ソルディナンドがシェニカに近寄らないように。そして何より、こいつらの前でシェニカに拒絶されている情けない姿を晒されたくなくて、小さな背中を見ているだけにしておいた。
「何だかこの辺、砂埃が凄いですね」
「言われてみればそうですね。地質が違うのかは分かりませんが、この辺は草が生えていませんね。ここから足場の悪い窪地になっていますので、足元にはご注意下さい」
ファズの後ろを歩くディスコーニとシェニカの会話を聞きながら足元や来た道を確認してみれば、確かに裏口を出てしばらくは短い草が生えていた道だったが、草一本も生えていない砂地になっていた。
ゆるく凹んだ窪地にディスコーニが足を踏み入れ、その2歩後ろを歩くシェニカがそこに足を一歩踏み入れた時、どこからか耳に響く重低音が響いてきて、そこに居た全員が立ち止まった。
その内、ゴゴゴという低い大きな地響きを近くで感じた時、グラグラと立っていられないほど大きな揺れが襲ってきた。
「何?地震!?何か音が……!!!!!」
揺れに耐えれずにシェニカが砂地に座り込んだ時、すぐそばでミシミシ、ガラガラと何かが軋んで崩れ落ちるような音が響き始めた。
「シェニカ様っ!」
激しい揺れはそのままに、ズズズズ…という聞いたことが無い低い音が響いたかと思うと、シェニカを取り囲むように窪地の一部が轟音を立てながら1段陥没した。
俺も先に居るファズも立っているのがやっとな状態なのに、シェニカの前にいたディスコーニは揺れや足場の悪さなんて気にも留めずにシェニカに近寄った。
ディスコーニがシェニカの手を掴んで立ち上がらせたと同時に、2人が居た場所は底が抜けたバケツから水が一気に溢れるように、窪地に吸い込まれたのを俺はスローモーションで見た。
「シェニカっ!!」
「「「シェニカ様!!」」」
「シェニカ様!ディスコーニ様っ!」
そこに居た全員で2人の吸い込まれた場所を覗き込むと、人一人が立ち上がっても姿が見えないくらいの深い穴が出来ている。その穴の1番上には、割れて崩れた地面が瓦礫の様に折り重なっていた。
「シェニカっ!!!」
フードを外して地面に膝をつき、穴の上からひたすらシェニカの名前を呼び気配を探すが何も感じられないし、返事が返ってくることもない。
穴に下りて砂や土の塊をかき分けてみるが、シェニカの黒い髪も着ていた白いローブも、あいつの黒い髪も手も足も何も見えない。
「何だ今の揺れと音は…。貴方方は一体何をなされているのか?」
そこに居た全員で穴に下りて必死に砂や土の塊を穴の外に出していると、バルジアラが様子を見に来たのか、副官を引き連れて穴の中にいる俺達を見下ろした。
「地震で出来たこの穴に、シェニカ様とディスコーニ様が巻き込まれました」
ファズが掘り出す手を止めてそう言ったが、俺はシェニカを早く助け出したくて、あいつを飲み込んだこの穴を掘る手を止められなかった。
シェニカが埋まっているのなら、早く見つけて土を退けて呼吸をさせないと死んでしまう。そう思うと、手の痛みなんて気にならないくらい必死に掘った。
「はあっ?!すぐに人を寄越すから状況を説明しろ。おいお前。念のためにちゃんとフード被ってろ」
それからすぐに下級兵士達が大量に集められ、地面が掘り返された。
こういう作業は手慣れているのか、大量の土や砂が手際よく掘り出されて穴の上に山を作っていく。でも、その山が1つ、2つと増えていってもシェニカやディスコーニの痕跡になるような物は出てこなかった。
兵士による穴を掘り返す作業は継続しているが、俺達は軍の建物のさっきまで居た部屋に移動してこれからのことを話し合うことになった。
「陥没した以上の砂や土を掘り出してるのに何も出てこないとなれば、本当にこの下に地下洞窟がありそうだな。そうとなれば2人は生きている可能性は十分ある。となると、手がかりはこのジェベルの地図だな」
「貸せ」
俺はバルジアラから強引に地図を取って、テーブルの上にいくつも置いてあるこの街の地図と見比べた。
バルジアラが持っていた地図は、大きな地図に細かく枝分かれした蟻の巣が描かれていた。ところどころの分岐点に、何か目印になるようなマークがされているが、出入り口の記載は全く無い。
この街の地図と共通点を探しても 、一致するような場所はなかった。
「この2つの地図だけじゃ何も分かんねぇよ。この国の地理に詳しい奴がいないと話にならん」
バルジアラは俺から地図を奪い返し、座っていた椅子にドカリと座った。
「この国は元々学者の集まり。どこかに地質学者の屋敷や研究所なんかないのでしょうか?」
ソルディナンドがバルジアラにそう言うと、奴はわざとらしい大きな溜息を吐いた。
「我々は軍人ですので、そう言ったことに詳しい者は残念ながらここにはおりませんね」
バルジアラが丁寧ながらも苛立ちを交えた返事をした時、俺の脳裏に以前ここに来た時の記憶が蘇った。
ーー王宮へ続く門のそばに、今は使われていない空き家があります。そちらを治療院として使えるように準備いたしましょう。
随分前に地質学者が使っていた屋敷で、いまだに書籍などが置いてありますが、気にせずにお使い下さい。
確か…。王宮に挨拶に行った時に宰相がこう言っていたし、治療院に使った空き家には、本棚から溢れるように床に本が積み上げられていた。あの時は本を見なかったが、もしかしたらあの空き家に何か手がかりがあるかもしれない。
「前にここにシェニカと来た時、治療院に地質学者が使っていた空き家を使った。本もかなり置いてあった」
教えてやるのは癪だが今はそんなこと言ってる場合じゃない。置いてあった本も本棚もかなりの数があったから人手が必要だ。
「どこだ?」
「王宮に続く門の側の空き家だ。俺が行く」
その部屋を飛び出てシェニカが民間人や傭兵の治療に使った空き家に行くと、鍵はかかっていたがこじ開けて入った。
前回来た時と変わらず本棚に入りきれなかった大量の本が、本棚の前や部屋の片隅に無造作に山積みになっていた。
「『鍾乳洞が出来るまで』『水脈と洞窟』『地底湖と地層』『トラント国史』か。確かに地質学者の読みそうな本が多いな。おいお前ら、トラントの地下についての記載のあるものを探せ」
「我々も手を貸しましょう」
バルジアラがその辺にあった本を手に取りながらそう命令すると、ファズやバルジアラの副官達は一斉に本を手に取り、俺やキルレの連中も同じ様に本を読み始めた。
フードがうざったいが、バルジアラに『俺達の存在を知らない連中が来るかもしれないからローブを被ったままにしろ』と念を押されたため、腹は立つが仕方なくフードを被ったまま本を読んだ。
それから部屋は静かになり、本のページをパラパラと捲る音、窓の外で兵士達が会話する声がよく聞こえていた。
「それらしい記述は見つかりませんね」
バーナンがパタンと本を閉じると、周囲にいたソルディナンドやその副官達も本を閉じて顔を上げた。
「鍾乳洞の本は大量にありますが、この地の鍾乳洞ではないから手がかりになりませんね。もし、地下に鍾乳洞があって、そこに国王や将軍が潜んでいるとしたら。ディスコーニ殿とシェニカ様が彼らと鉢合わせにならなければいいのですが…」
「シェニカ様の作る『聖なる一滴』は、他の方の作る物とは違い、保存が可能な上に無色透明の無臭ですからね。何に混ぜられても分からない。
トラントはシェニカ様を攫いに来ましたし、起死回生とばかりにシェニカ様の『聖なる一滴』を使われると大変なことになりますね」
ソルディナンドとバーナンがそう言うと、ファズやバルジアラの副官達の表情が一気に強張った。
「心配には及びませんな。ディスコーニはシェニカ様を連れて必ず戻ります」
部屋に入って来たバルジアラが、自信に満ちた顔でそう言い切った。
「バルジアラ殿は自信がおありのようですね。もうすぐここにサザベルの将軍らが来るというのに」
俺と同じでバルジアラのその顔が気に食わないらしいソルディナンドが、嫌味を含めた口調で言い放った。
「ディスコーニの実力は私が保証します。あれは簡単に死ぬような男ではありませんから、必ず生き延びてシェニカ様を守り抜きます。
それに、サザベルの軍勢が来ようと、肝心の国王が見つかりませんので条件は大して変わらないでしょう」
バルジアラが空き家から出て行った後も本を読み漁っていると、あっという間に夜になった。途中やって来たディスコーニの副官のセナイオルとアヴィスも本を見ているが、今だに手がかりになるような情報は出てこない。
シェニカのように長時間本を読むのに慣れていない俺も一生懸命に読んだ。食事を取る気も起きないし、休憩する時間も惜しかった。
シェニカが土に埋もれて死んだなんて考えたくない。それなら地下空間に落ちて生きていると信じたい。
運良く地下空間に落ちているとしたら、暗い空間に閉じ込められて不安で泣いているのではないか。
ディスコーニが死んでシェニカだけ生き残った場合、孤独で心細い思いをしているだろう。早く助け出して、この手で生きているのを確認したい。
色々な可能性を考えていると、どうしても生命を落としたことが脳裏をよぎる。そのことは考えたくないのに、その最悪の事態は頭の中にこびりついて、底知れぬ不安と焦りが俺の正常な思考を奪っていく。
不安と焦りをかき消すように夢中で本を読んだが、空き家にある地質学者の残した本と研究資料はかなり多く、思ったほど捗らなかった。
シェニカ。頼むから生きていてくれ。俺の所に帰ってきてくれ。
焦る気持ちと祈る気持ちで頭がいっぱいになる中、手がかりを求めて本を読み続けた。
爺さん達が居なくなると、テントの隅に控えていたバーナンがため息混じりにそう言うと、それに応えるようにソルディナンドもため息を吐いた。
「本当ですよ。重度の麻薬中毒となると、『白い渡り鳥』様でも治療は無理だと知っているはずなのに。
シェニカ様。麻薬中毒となっても『聖なる一滴』は作れるものなのですか?」
「その状態になったことがないので分かりませんが、集中力さえ持続できれば、出来るのではないでしょうか」
「では、保存はどうやって?」
バーナンがシェニカに問いかけると、ソルディナンドやディスコーニと言った、その場にいる全員の視線がシェニカに集中した。
その視線に耐えきれなかったのか、シェニカはゆっくりと視線を地面に下げて俯いた。
「……私にしか使えない魔法を使っているからです。ですから、他の人は使えません」
「シェニカ様しか使えない魔法ということは、高難易度の白魔法ですか?我々に使えないかもしれませんが、呪文だけでも教えて頂けませんか?」
「申し訳ありませんが、それは教えられません」
他の『白い渡り鳥』にも使えなさそうだから、高難易度の白魔法というよりはシェニカにしか使えない便利魔法だろう。
だとしたら、シェニカはどうやって保存しているのだろうか。どこに持っているのだろうか。鞄は宿に置きっ放しにすることもあるから、ローブや旅装束のポケットの中だろうか。
シェニカの作る『聖なる一滴』がそんなに高威力なら、シェニカから貰うか盗むかして俺がバルジアラに使ってやりたい。小馬鹿にした様子で俺を見る奴の苦しむ顔を見れば、ずっと俺の胸の中に渦巻いている憎悪やイライラもスッとするだろう。
今の俺達は会話することすら出来ない状態だが、仲直りした頃にそれとなく聞いてみるか。
「では、どのような形状で保存されているのか教えて貰えませんか?」
バーナンが食い下がっていると、テントの幕が開かれて青碧色のマントを靡かせたバルジアラの副官が入ってきた。
「ディスコーニ様。バルジアラ様が軍の施設を制圧し、エメルバ様が王宮内に入りました」
「トラント軍はどうなっていますか?」
「それが…。城壁の外に居た兵士は全滅していますが、城下町には兵士が1人も居らず、城下でのゲリラ戦も行われておりません。
また、王宮の周囲にも軍事施設内にもトラント兵は居ませんでした。軍の施設内の安全は確認しましたので、移動して欲しいとバルジアラ様からのご命令です。
先程の戦場で将軍を2人討ち取りましたが、戦場で姿を確認出来なかった将軍がいます。ですので移動の際には奇襲にご注意下さい」
「分かりました。では行きましょう」
ディスコーニとファズ、バルジアラの副官、キルレの連中と一緒に首都の城下町に入ると、人がいないので以前来た時のような活気のある街は当然なかった。
街の中の建物は破壊されているわけではないが、以前見た活気のある街並みが戦禍に巻き込まれ、誰もいないのはなんとも言えない虚しさがある。
グニャグニャしているが整えられていた大通りは、ところどころ地面に何か巨大な物を上から落としたような窪地が出来ているし、石畳は蛇行した線や直線、斜めを形作るようにヒビ割れていた。
重要施設である王宮周辺や軍事施設に誰も居ないということは、トラントはここを放棄したのだろうか?
将軍がどこかに潜んでいて、シェニカを攫おうと画策しているのだろうか。そうだとしたら、ここはトラントの敵陣本拠地。地の利のないウィニストラは不利だ。
ウィニストラの兵士達が店や家の中を一軒一軒確認するのを横目で見ながら、周囲を警戒しながら歩いた。
俺達は王宮の隣にある頑丈そうな石造りの軍事施設に入ると、2階の奥にある部屋に案内された。
その部屋は元々大人数が収容できる会議室だったらしく、中央に立派な円卓のデカイテーブルが置かれていた。部屋の一番奥にある椅子にバルジアラが座って、隣にいる自身の副官達がテーブルに広がった地図を見たり、慌ただしい様子で報告をしている。
部屋の外には銅の階級章を付けた奴がいたが、そいつらは中にいる副官を呼び出しているだけだから、この部屋に入れるのはどうやら副官以上らしい。
「軍事施設や城下に将軍や副官、兵士を残してないとはおかしい。お前、何か情報を持っているか?」
バルジアラは俺達の前に居たディスコーニそう尋ねたが、フードを被ったままの奴はすぐに首を横に振った。
「今までトラントには暗部を送っていなかったので、特に情報は掴んでいません」
「そうか。サザベルなら分かるが、トラントはなんでうちに宣戦布告してきたんだか…。あ、シェニカ様、休める場所の支度が整いましたらご案内しますので、そちらの椅子におかけ下さい」
バルジアラはそう言うと、部屋の壁側に並べられた椅子を手で指し示した。シェニカは小さく頷いて椅子に座ると、フードを引っ張って俯いてしまった。
俺はシェニカから少し離れた場所の壁に凭れかかって、横目であいつを見ながら話しかけるチャンスがないか伺った。
様々な報告がバルジアラにされるのを眺めていると、エメルバの副官の1人が慌ただしく入ってきた。
「バルジアラ様。エメルバ様からの報告です。王宮には国王どころか将軍も兵士も誰1人いません」
「どう言うことだ?」
「この期に及んで、どこかに身を隠したと言うところでしょうか」
考え込むバルジアラの横で、ディスコーニは胸ポケットから紙を取り出してテーブルの上に広げ始めた。
「エメルバ様が隠し通路などを探しておられますので、私も加勢に行って参ります」
報告を終えたエメルバの副官が急いで部屋から出て行くと、バルジアラは目の前のテーブルに広げられた紙を見続けるディスコーニに険しい顔を向けた。
「ディスコーニ、何か分かるか?」
「ジェベルの持っていたこの地図ですが、もしかしたら、この地図の場所が首都の地下にあるかもしれないと思いまして」
「地下にこんなの作ってたのか」
「いえ、この蟻の巣具合から考えると自然に出来た洞窟ではないでしょうか。
ですが、この地図には出入り口の記載が全くありませんし、混乱させるための罠かもしれません。そもそもこの地下洞窟が本当にあるのかすら確証はありません」
「暗部の報告だと、戦争が始まってから国王がここを出た様子はない。将軍らが手引して他国に逃げた可能性もあるが、それはみっともない屈辱だからプライドの高いあの国王はやらんだろ。
となると、ここに身を潜められる場所があって、そこに将軍達と反撃の機会を伺っていると考えるのが自然だな。
シェニカ様を攫う担当だったジェベルが持っていたこの地図なら、何かに利用していたと考えて良いだろう。
国王が身を隠すということは、王宮のどこかに出入り口がある可能性が高いな。出口を王宮の外に作っているはずだが……場所の特定をせねばならんな。
恐らくここに逃げ込んで反撃の機を見ている可能性が高い。兵士を使って探させよう」
戦争の責任者である国王が、将軍や兵士、国民を放ったらかして逃げ出すのは、臆病者のすることだとみなされる。
そんな臆病者の国王が他国に亡命した場合、自分の国を捨てたのだから当然王族の身分は失くなって平民扱いで保護される。だが、保護された先の国民からは後ろ指をさされるし、元国王を恨んだ者達が居場所を突き止めて殺しに来るかもしれないが、平民なのだからその国の王族からは何の配慮もされない。
身の危険と居心地の悪い環境が待ち受けているのだから、亡命するなど屈辱の未来しか無い。
トラントの国王は領土を広げられない戦争だろうが、自ら戦地で指揮を執るような奴だったと聞いているから、他国に逃げるなどしないだろう。
ならばどこに逃げ込んだのだろうか。やはり地下なのだろうか。
そういえば。
あの夜襲の時、俺の前に現れた副官は『どうせ我々がどこにいるか分からないだろう』と言っていた。ということは、どこかに潜んでいるのは確実だ。
その情報をバルジアラ達に教えてやる気もないが、シェニカを攫われないように注意しなければ。
しばらくすると、ディスコーニとファズがシェニカに近付いて来た。
「シェニカ様、バーナン神官長、ソルディナンド殿。安全な場所を用意しましたので、お休みになって下さい。ご案内します」
ファズの案内で裏口から軍の建物を出ると、木も何もない砂地の先にある外壁近くの建物に向かって歩き始めた。
歩いていると、砂埃がまき上げられるほどの強い風が吹き抜けてくる。目深に被ったフードの下から、砂が駆け上がってくるように目に入って来た。
俺の5歩先を歩くシェニカも、砂埃がフードの中に入ったらしく目をこするような動作をしている。
砂埃をきっかけに『大丈夫か?』って隣に行って声をかけてやりたいが、俺のすぐ後ろにはソルディナンドがいる。こいつは隙あらばシェニカに近付こうとするから、俺が声をかければこいつも絶対に声をかけようとするだろう。
シェニカは当然こいつとの接触を嫌がっているから、ソルディナンドがシェニカに近寄らないように。そして何より、こいつらの前でシェニカに拒絶されている情けない姿を晒されたくなくて、小さな背中を見ているだけにしておいた。
「何だかこの辺、砂埃が凄いですね」
「言われてみればそうですね。地質が違うのかは分かりませんが、この辺は草が生えていませんね。ここから足場の悪い窪地になっていますので、足元にはご注意下さい」
ファズの後ろを歩くディスコーニとシェニカの会話を聞きながら足元や来た道を確認してみれば、確かに裏口を出てしばらくは短い草が生えていた道だったが、草一本も生えていない砂地になっていた。
ゆるく凹んだ窪地にディスコーニが足を踏み入れ、その2歩後ろを歩くシェニカがそこに足を一歩踏み入れた時、どこからか耳に響く重低音が響いてきて、そこに居た全員が立ち止まった。
その内、ゴゴゴという低い大きな地響きを近くで感じた時、グラグラと立っていられないほど大きな揺れが襲ってきた。
「何?地震!?何か音が……!!!!!」
揺れに耐えれずにシェニカが砂地に座り込んだ時、すぐそばでミシミシ、ガラガラと何かが軋んで崩れ落ちるような音が響き始めた。
「シェニカ様っ!」
激しい揺れはそのままに、ズズズズ…という聞いたことが無い低い音が響いたかと思うと、シェニカを取り囲むように窪地の一部が轟音を立てながら1段陥没した。
俺も先に居るファズも立っているのがやっとな状態なのに、シェニカの前にいたディスコーニは揺れや足場の悪さなんて気にも留めずにシェニカに近寄った。
ディスコーニがシェニカの手を掴んで立ち上がらせたと同時に、2人が居た場所は底が抜けたバケツから水が一気に溢れるように、窪地に吸い込まれたのを俺はスローモーションで見た。
「シェニカっ!!」
「「「シェニカ様!!」」」
「シェニカ様!ディスコーニ様っ!」
そこに居た全員で2人の吸い込まれた場所を覗き込むと、人一人が立ち上がっても姿が見えないくらいの深い穴が出来ている。その穴の1番上には、割れて崩れた地面が瓦礫の様に折り重なっていた。
「シェニカっ!!!」
フードを外して地面に膝をつき、穴の上からひたすらシェニカの名前を呼び気配を探すが何も感じられないし、返事が返ってくることもない。
穴に下りて砂や土の塊をかき分けてみるが、シェニカの黒い髪も着ていた白いローブも、あいつの黒い髪も手も足も何も見えない。
「何だ今の揺れと音は…。貴方方は一体何をなされているのか?」
そこに居た全員で穴に下りて必死に砂や土の塊を穴の外に出していると、バルジアラが様子を見に来たのか、副官を引き連れて穴の中にいる俺達を見下ろした。
「地震で出来たこの穴に、シェニカ様とディスコーニ様が巻き込まれました」
ファズが掘り出す手を止めてそう言ったが、俺はシェニカを早く助け出したくて、あいつを飲み込んだこの穴を掘る手を止められなかった。
シェニカが埋まっているのなら、早く見つけて土を退けて呼吸をさせないと死んでしまう。そう思うと、手の痛みなんて気にならないくらい必死に掘った。
「はあっ?!すぐに人を寄越すから状況を説明しろ。おいお前。念のためにちゃんとフード被ってろ」
それからすぐに下級兵士達が大量に集められ、地面が掘り返された。
こういう作業は手慣れているのか、大量の土や砂が手際よく掘り出されて穴の上に山を作っていく。でも、その山が1つ、2つと増えていってもシェニカやディスコーニの痕跡になるような物は出てこなかった。
兵士による穴を掘り返す作業は継続しているが、俺達は軍の建物のさっきまで居た部屋に移動してこれからのことを話し合うことになった。
「陥没した以上の砂や土を掘り出してるのに何も出てこないとなれば、本当にこの下に地下洞窟がありそうだな。そうとなれば2人は生きている可能性は十分ある。となると、手がかりはこのジェベルの地図だな」
「貸せ」
俺はバルジアラから強引に地図を取って、テーブルの上にいくつも置いてあるこの街の地図と見比べた。
バルジアラが持っていた地図は、大きな地図に細かく枝分かれした蟻の巣が描かれていた。ところどころの分岐点に、何か目印になるようなマークがされているが、出入り口の記載は全く無い。
この街の地図と共通点を探しても 、一致するような場所はなかった。
「この2つの地図だけじゃ何も分かんねぇよ。この国の地理に詳しい奴がいないと話にならん」
バルジアラは俺から地図を奪い返し、座っていた椅子にドカリと座った。
「この国は元々学者の集まり。どこかに地質学者の屋敷や研究所なんかないのでしょうか?」
ソルディナンドがバルジアラにそう言うと、奴はわざとらしい大きな溜息を吐いた。
「我々は軍人ですので、そう言ったことに詳しい者は残念ながらここにはおりませんね」
バルジアラが丁寧ながらも苛立ちを交えた返事をした時、俺の脳裏に以前ここに来た時の記憶が蘇った。
ーー王宮へ続く門のそばに、今は使われていない空き家があります。そちらを治療院として使えるように準備いたしましょう。
随分前に地質学者が使っていた屋敷で、いまだに書籍などが置いてありますが、気にせずにお使い下さい。
確か…。王宮に挨拶に行った時に宰相がこう言っていたし、治療院に使った空き家には、本棚から溢れるように床に本が積み上げられていた。あの時は本を見なかったが、もしかしたらあの空き家に何か手がかりがあるかもしれない。
「前にここにシェニカと来た時、治療院に地質学者が使っていた空き家を使った。本もかなり置いてあった」
教えてやるのは癪だが今はそんなこと言ってる場合じゃない。置いてあった本も本棚もかなりの数があったから人手が必要だ。
「どこだ?」
「王宮に続く門の側の空き家だ。俺が行く」
その部屋を飛び出てシェニカが民間人や傭兵の治療に使った空き家に行くと、鍵はかかっていたがこじ開けて入った。
前回来た時と変わらず本棚に入りきれなかった大量の本が、本棚の前や部屋の片隅に無造作に山積みになっていた。
「『鍾乳洞が出来るまで』『水脈と洞窟』『地底湖と地層』『トラント国史』か。確かに地質学者の読みそうな本が多いな。おいお前ら、トラントの地下についての記載のあるものを探せ」
「我々も手を貸しましょう」
バルジアラがその辺にあった本を手に取りながらそう命令すると、ファズやバルジアラの副官達は一斉に本を手に取り、俺やキルレの連中も同じ様に本を読み始めた。
フードがうざったいが、バルジアラに『俺達の存在を知らない連中が来るかもしれないからローブを被ったままにしろ』と念を押されたため、腹は立つが仕方なくフードを被ったまま本を読んだ。
それから部屋は静かになり、本のページをパラパラと捲る音、窓の外で兵士達が会話する声がよく聞こえていた。
「それらしい記述は見つかりませんね」
バーナンがパタンと本を閉じると、周囲にいたソルディナンドやその副官達も本を閉じて顔を上げた。
「鍾乳洞の本は大量にありますが、この地の鍾乳洞ではないから手がかりになりませんね。もし、地下に鍾乳洞があって、そこに国王や将軍が潜んでいるとしたら。ディスコーニ殿とシェニカ様が彼らと鉢合わせにならなければいいのですが…」
「シェニカ様の作る『聖なる一滴』は、他の方の作る物とは違い、保存が可能な上に無色透明の無臭ですからね。何に混ぜられても分からない。
トラントはシェニカ様を攫いに来ましたし、起死回生とばかりにシェニカ様の『聖なる一滴』を使われると大変なことになりますね」
ソルディナンドとバーナンがそう言うと、ファズやバルジアラの副官達の表情が一気に強張った。
「心配には及びませんな。ディスコーニはシェニカ様を連れて必ず戻ります」
部屋に入って来たバルジアラが、自信に満ちた顔でそう言い切った。
「バルジアラ殿は自信がおありのようですね。もうすぐここにサザベルの将軍らが来るというのに」
俺と同じでバルジアラのその顔が気に食わないらしいソルディナンドが、嫌味を含めた口調で言い放った。
「ディスコーニの実力は私が保証します。あれは簡単に死ぬような男ではありませんから、必ず生き延びてシェニカ様を守り抜きます。
それに、サザベルの軍勢が来ようと、肝心の国王が見つかりませんので条件は大して変わらないでしょう」
バルジアラが空き家から出て行った後も本を読み漁っていると、あっという間に夜になった。途中やって来たディスコーニの副官のセナイオルとアヴィスも本を見ているが、今だに手がかりになるような情報は出てこない。
シェニカのように長時間本を読むのに慣れていない俺も一生懸命に読んだ。食事を取る気も起きないし、休憩する時間も惜しかった。
シェニカが土に埋もれて死んだなんて考えたくない。それなら地下空間に落ちて生きていると信じたい。
運良く地下空間に落ちているとしたら、暗い空間に閉じ込められて不安で泣いているのではないか。
ディスコーニが死んでシェニカだけ生き残った場合、孤独で心細い思いをしているだろう。早く助け出して、この手で生きているのを確認したい。
色々な可能性を考えていると、どうしても生命を落としたことが脳裏をよぎる。そのことは考えたくないのに、その最悪の事態は頭の中にこびりついて、底知れぬ不安と焦りが俺の正常な思考を奪っていく。
不安と焦りをかき消すように夢中で本を読んだが、空き家にある地質学者の残した本と研究資料はかなり多く、思ったほど捗らなかった。
シェニカ。頼むから生きていてくれ。俺の所に帰ってきてくれ。
焦る気持ちと祈る気持ちで頭がいっぱいになる中、手がかりを求めて本を読み続けた。
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