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第九十三話 ゴーミ、ゲスザンス、その後1
しおりを挟む朝食後すぐに出ようとなった。とっとと回れば一日にで済むかも?と思って。
まずゴーミ。海岸線を南から北上。ほぼひとけは無い。北から川沿いに内陸に入る。平野部には田畑が広がる。生育はほどほど。悪くなさそうだ。人が畑に入って働いているのを多く見る。なんか、多め?
森のヘリが新しく開拓されているようだ。
大きな街の上空は姿を消して低めに飛ぶ。
人の動きは特に少なくも遅くもない。人の顔がわかるくらい低く飛んで見る。
まぁ悪くはなさそう?ここの領主がいいのか?
他の大きな街を幾つか見てみた。そのままゲスザンスに入り、やはり大きな街を中心に見ていく。
街は必ず姿を消して低く飛び、人びとの顔を確認した。
街によって違いが見えたから。
人びとの顔から判断して、赤、青、黄色、とそれぞれにマーカーを付けておいた。
そして一番近い安全地帯なドラゴニア側に入り北の森の街に降り、喫茶店に入り休憩。
「どう思う?」ドーラ
ケーキを食べて茶を飲んで一息ついた所で話し始める。
「あー、領主?」ユータ
「ああ、だよな、、あんだけの違いってのは。」
「ただ、、あとでギルドに行ってみよう」ドーラ
ギルドの入り口で、ストレージからマントを出す。テイナが作ってくれたドラゴニアの刺繍が在るやつ。
ユータと2人、それを羽織ってギルドに入る。
受付で、
「ドラゴニア王国の者だが、ゲスザンスについて調べている。あそこの国を通ってきたものとかいたら話を聞きたいのだが、いるか?」ドーラ
ここにいる冒険者たちは、一応、盲目的に権力に従順というものはいないはず。
だが、バカもいないはずだ。合理的な理由ない悪意は持ってないはずなので、話せばわかるはずだと思う。
ただ、事の重大さをわからせるために、このマントを羽織り、国の名を出した。
受付の者がロビーに居る冒険者を見渡すと、中から2人出てきた。
「俺らはゲスザンス出身だ」
彼らをロビーの隅の席に座らせ、飲み物を頼む。何でもいいと言うと、エールを望んだ。
ユータは?と見るとうなずく。へぇ、エール飲めるの?
冷えているやつを4つ頼んだ。値段が少し違うだけだ。
ぐびぐびぐびぐびぐびぐびっ!っぷはぁー!
「さて、、何でも聞いてくれ。答えられることは答える」背の高い方の冒険者。
「・・兄弟?」ユータ
「ああ、そうだ。こいつは弟。」と、背の低い方を指す。
「どのへんから来たんだ?どこに住んでいた?」ドーラ
国の南西部、この森の北東から1-2日ほどのところらしい。王家、王都が潰されて良くなるかな?と思ったが、更にひどくなったので即逃げ出してきたという。親は居ない。物心着いた頃には王都の北の領の領都の孤児院にいたという。酷い系の孤児院で、逃げ出す子供も少なくなかったらしい。
「俺が冒険者に登録できる7歳になった時、弟を連れて逃げ出した。そして放浪して、一番マシな街だったここの近くの街に住んでいた」という。
苦労したのか?とドーラが訊くと、
「苦労?よくわからんが、少し大変な時期はあった。でも盗みとかしないでどうにか過ごせた。あんときはひもじかった。」
「ああ、厳しかったねぇ、、」
良い冒険者に助けられ、いろいろ教わり、自分達でどうにかできるまでになったという。
「ジョニー、とか言ってなかったか?」
「・・・いや、、違った名前だと、、ゴとかザとかがあったような」
「うん、そんな感じの名前。俺ら覚えるの苦手だから」
「んじゃ、どの魔獣がカネになるとか覚えられないのか?」
「それは姿で覚えているから大丈夫だ。名前とか、そういうのがダメ」
「ああ、わかる、、実生活でできる奴なのに勉強がダメなタイプだね」ユータ
2人は学校に行ったことないのだろう、キョトンとしている。
「どこの街がダメだったか、人が良くなかったとか、どこの街が人が良かったとか、覚えてるか?」ドーラ
「うーん、、行ってみないと思い出せないな、、」
「んじゃ、良い領主の噂とか聞かなかったか?」
「・・・・どうだろう
「にい、あの、北?のかな?辺境の領主、」
「ああ、そう言えば、結構皆言っていたな、ここのそばの街で」
マシな街の住人が言うのだから、まぁ、それなりなのかもしれない。
「お前たち、こっちに来てどのくらい経つ?」
「二ヶ月?」
「お前たちの国と比べて、どうだ?」
「全然違う。なぜもっと早くこっちに来なかったのかって、、」
「悪かったな、ここの街を作ったのも最近なんだ。それまでは森の道もなかった。冒険者達をこっちに逃がすために作ったんだよ」
・・・・・
「それまでは、まともなものは皆ゴンザールに逃げていた。あそこの王はいい人だ。冒険者は皆あの王と、あそこの魔物の森の領主を悪く言わない。」
「あー、そっちでもよかったんだ、、、」兄
そういう情報も分け合わないんだ、、、ゲスザンスの奴等、、
「お前らを助けてくれた冒険者、なんか言っていなかったか?」
「・・・あ、そう言えば、、東に行って南に行けとか言ってたかな?」弟
「武力は兄、おつむは弟、いいコンビだな」
「「だろう!」」
ぐー、と兄が腹を鳴らしたので、食事を頼んだ。
食っている時は他愛の無い事を話した。
食事を食い終わった後、給仕に「ケーキは在るか?」と訊くと、少し待ってくれれば買ってくると言ってくれたので頼んだ。
食べ終わってから、冒険者の技量を聞いた。戦果を見るとほとんど初心者。よくここまで来たものだ。それだけいろいろ努力したのだろう。
「おまえら、冒険者として稼ぐのきついだろ?」
「・・・ああ、まだ、な、でも
「提案が在る。お前らに仕事を紹介できる。幾つか在る。
1つめ。ゴンザールの宿か、馬車屋。
2つめ。西に行くとうちのダンジョンの入り口の街がある。でも魔物のダンジョンじゃないので稼げない。でもその街にいくつか店が在るんでそこで働く。そこだと午前中は学校に言って勉強し、午後は仕事だ。読み書き計算、知識、剣技、魔法の勉強だ。生きていく上で必要なことを学ぶ。
・・おまえら、幾つだ?」
「ホントの歳はわからない。今は俺は12歳と言っている。弟は11だ。」
「・・・・ぎりぎりだな、、どうだろう?」ユータに訊くドーラ
「うん、本人達に選ばせれば?」ユータ
「3つめ。ウチの孤児院に入る。お前たちは歳は12かもしれないけど、一所懸命ガンバッてきたのはわかる。ここまで生きてきたんだ。よくガンバッたな。えらいぞ。
だから、ウチの孤児院に1-2年いて勉強しろ。最低でも食う分を狩ることができるようになるまで、または、どっかの店で余裕で働けるようになるまで。
もちろん今のままでもいい。別にウチの国にいるから俺に仕事まで従わなければならないなんてこと無い。このまま冒険者やってもいい。
・・・
どうする?」
となりの席でエールを飲んでいた中年の冒険者が口を出した。
「おまえら、チャンスだ。学校通え。お前らの人生に絶対に必要だ。この歳の俺が言うんだ、それだけは間違いない。」
「「「そうだそうだ、、」」」
という声が、そこここから聞こえる。
兄は弟を見る。弟は頷く。
「ああ、んじゃ世話になる。3つめ、頼むわ」
「おっさん、ありがとな、、心配して隣に来たんだろ?」ドーラ、その中年に礼をいいつつも、その中年がその子供冒険者2人が心配で隣に座ったことを言った。
「人のいいおっさん達のために!今日はここは俺のおごりだ!ドラゴニア国王のおごりだ!食って飲んで暴れろー!!」
いや、、最後のはなんなんだ?
一瞬皆停まった。
は?
なんてった?
国王?
こくおーってなんだっけ?
そりゃ、こくおーだろ?
子供が?
ドーラ、ユータの手を握り、(魔力をいただいて、、)
ボン!
天井ギリギリの大きさのドラゴンになった。
「もんくねーだろ?」
「「「「ありませーん!!」」」」
「ドーラはね、いい人が好きなんだよ。」説明するユータ。
「悪い奴らはもっとでっかくなって踏み潰すかブレスで炭にするけどな!」ドーラ
「僕らの他の仲間もすごいの多いけどね!」ユータ
「「あっはっはっはっは!!」」ドーラとユータ
あっはっはっはと、いっしょになって、でも乾いた笑い声のみんな。
「みんな笑いがしょぼいぞー!!飲んで食って楽しんで笑えー!給仕、ドンドンいいもん持ってコーイ!ユータ、会計頼むな!」
「ボクかい!」
あっはっはっはっは!!
全く関係ないおっさんが、見ず知らずの子供たちのために心配し、助言したのが気持ちよかったドーラ。
ユータも同じ気持ちだった。
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