336 / 409
後後210 国境の町へ
しおりを挟むはじめて乗る直行便。
東の空が明るくなってきたらもう出発した。
「今日はダリーまで行く予定です。」
と、同乗の紳士は言った。
いや、同乗しているのは我々だ。
彼がこの馬車を借り切っている。費用を少しでも賄おうと、空いてる席を売ったという。
俺と泉さん以外に、あと2人に売れたようだ。
紳士の荷物は屋根に乗っている。重くもなくデカくもなく屋根の大きさくらいの広いだけ。
「なんかベッドのマットレスみたいだな。」泉さん
同乗の2人も、あーなるほど、とか頷く。
「・・・まぁ、、そうですね。新しい素材で作られた新製品の販売前のものです。領主様から依頼を受けて買い付けにね。」
へぇ、、
皆興味なさそう。
そうなるわな、、という顔の紳士氏。
「でも農国の金持ちはそういうとこにカネ惜しまないよな」泉さん
「ええ、いいことですねー」俺
マットレスのみではなく、紳士氏が滞在する費用、馬車代金、なども消費する。
また、高級品は注文生産だ。無駄がない。金持ち達は待つ楽しみを知っている。
また、ものを見る目があるので、待った日数にふさわしい出来かどうかくらいわかる。販売側も、嘘は付けない。工房が忙しいので待つのに5日、制作に5日の10日後と、制作に10日とでは全く違う。制作側はそれを先に言う。「今出ました」の蕎麦屋みたいな嘘は通用しない。
そのような日用高級品制作の費用の大半は素材調達、工員給金などだ。一般の者達の収入に大きくつながる。
意味のあまりない美術品や宝石類とは違うのだ。
農国の金持ちは、ブートッチで出会ったゴンザレスやマキシムみたいな金持ちボンボンのように、食ったり痩せたりすることにも惜しみなく自己の労力とおかねを使う。自分でも動くのだ。
そこらは泉やガクが気に入っているところだ。特に元の世界とはほぼ全く違う。
紳士氏はブートッチに拠点を置く少し大きめの商会主だと言う。
自分で始めた商会なので、今でも前線で働くのが好きだとのこと。
ブートッチ、北の国、それから王都スタリッツアまでの間で商売しているらしい。
「ブートッチは妖精が多いですな」泉さん
紳士氏は怪訝な顔をする。
「ええ、そういう話の土地ですね」
(知らないのか?)泉
(ええ、あまり知られていないんですかね?)俺
(あれだけになっても知られていないのか?)
(ゴンザレスとマキシムの身内達だけじゃないすか?あそこに通ってるの)
(ああ、なるほどな!やつらだけでも街に出入りしてる者達は多そうだもんなぁ)
「あの、、えっと、、、居るんですか?、その、、妖精?」紳士氏
「・・・・・・・・・・あ、、いえ、えーと、、どうっすかね?いないんじゃないの、かな?」俺
「ぐーすか、ぐーすか、すぴーー」わざとらしい寝息をたてる泉
とりあえず話を収めてくれた。
話に気を取られて気づかなかったが、
「泉さん、馬車うるさくないし揺れない!」俺
「え?あ、ホントだな。へぇ、、道も良くなってるんだな」泉さん
「ええ、この高速馬車は素晴らしいでしょう?道もこれに併せて良くしたらしいですよ」紳士氏
「「どうもありがとう!」」泉&ガク
???
「これ、俺らの村の製品だ」泉さん
「ここらにまで出回ってるとは、嬉しいですね」俺
「ああ、感無量ってやつだな!熊にも教えてやろうな」
「喜びますよ、祝うんじゃないですかね?」
「俺らで祝ってやるか?」
「いいっすね!祝、農国進出!」
「いや、それは農国王の離宮と、うちの将軍様の離宮をこっちに作った時に果たしているだろ?」
「ああ、そうか、、んじゃ製品進出ってことで」
「まぁそのへんだな!」
紳士氏、ほかの者達も唖然とし、、
(あ、、)
(まずかったのか?)
(みたいっすね、、反応見る限り)
泉さんの人の心をよむなんかの不思議な力も年季が入ってパワーアップ。語りかけることもいつのまにかできている。
結構前からだけど。
便利だね!!
一家に一台泉さん!!
出発してから3度の休憩をし、日も落ちて少し遅くなってからダリーに着いた。
停車場ではなく、御者の宿にそのまま入る。馬車も宿の裏に入れていた。
俺らもその宿に泊まる。他の2人もそこにしていたようだ。わざわざ他に行く理由がないのだろう。
明日は昼食をここで食べてから出発だという。楽だ。
遅かったが風呂屋はやっているというので行く。
以前も来たかな?ダリーはあまり記憶に残らない街だったから、、、
風呂から上がって宿の食堂でいっぱい飲みながら夕飯を食べる。記憶に薄い街でも、やはり食事は農国だけあって美味いと感じた。
翌朝、朝食は粥だった。副食がゆで卵、漬物、小魚の甘露煮、今の時期に?菜の花?のおひたし、味噌汁。
うん、農国なのに完全に中華か和食!
なんでも気にせず取り入れるのがこの国の面白さ。
美味かったです。
馬車は出発し、しかし昨日ほどは飛ばさない。昨日ほどの距離は無いからだろう。
それでも他の馬車を追い越していく。
たまに人の乗った馬を追い越していく。追い越された方もびっくり顔だ。
改めて思う、すげー乗り心地良い。やっぱウチの大工の熊はすげーと思う。
(泉さん、やっぱ熊ってすごいっすよね?)
(・・・ああ、ウチの熊な、、)
ほう、、泉さんは先に獲物の熊を想像するんだな?
昼休憩をした後、多分3時頃だろう、国境の町の停車場に着いた。紳士氏以外の同乗客はここで降りる。
紳士氏はそのまま馬車で納入先に行くとのこと。
で、
紳士氏に掴まった。
案の定、、あのときそれ以上聞かれなかったから、後から来るなーとは思ってたんだ。
泉さんを見ると、しかたがないな、と向こうの世界で白人がよくやる両手の手のひらを肩くらいの位置で上に向けてのポーズをした。ヲタさんからだな?いや、もしかしたら博子かも、、
「私の定宿に部屋を取りますから、」と、また馬車に載せられて宿まで。紳士氏は俺らの部屋を取ってから「納品したらすぐ戻りますので」と、出ていった。
中級宿。俺らの泊まるような宿の倍から3倍の値段。それなりに広い部屋、従業員や外部からの侵入への安全性は高そう。部屋にバスタブもある。
が、少し離れてる市場の近くの銭湯に行くことにした。帳場に声をかけて出ていく。紳士氏がその間に帰ってきたら、のために。
風呂は大きくて3つの湯船、薬湯もありサウナもあった。
気持ちよく浸かれ、出て外の縁台で待つ。ほどなくおばさんたちと出てきた泉さん。おばさん達に礼を言い、宿に戻る。
途中、串焼きを買う。
鹿の燻製をあぶったものだった。
「これはうまいな、、酒のつまみにあうだろうなぁ、、」
「ええ、武国酒にもこっちの酒(洋酒)にも合いますねぇ」
宿は商会などが集まる場所に近い方にある。市場から少し離れている高級街の方に近い。
ガク達にとっては少し不便。昼間、ビジネスする者には便利な立地。
なので、酒屋なども周囲には無い。
「明日は市場のほうに移ろうな」泉さん
「ですねぇ」
宿に帰って下のティールームに行く。
「あ、ケーキあるぞ!」
注文し席に着く。
ケーキが茶とともに来た。
さく、、ざく?あれぇ?
「・・・・ぱさついてないか?」
「ええ、朝から置きっぱなし?ここで作ってるんじゃないですね、、買ってきて置いてるみたいですねぇ」
「ちゃんとケーキ屋にいかねばだめなんだな」
「ですねー」
でもちゃんと全部食べた。ケーキ自体は美味いので。
もっと保存がうまけりゃ、パサツキとかなくなるんじゃないかなぁ、、
などとやってたら紳士氏が帰ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる