いえろ〜の極短編集

いえろ~

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大空

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 今、目の前にある板書は、何のためなんだろうか。
 何のために勉強しているんだろうか。
 「このままじゃおめーら大学行けねーぞ。もっと身を入れて勉強しろ!」
 怒鳴られたくないから、やっているのだろうか。
 何のために勉強しているんだろうか。

 みんな、必死に上を目指そうと勉強している。努力している。
 その行為に、何の意味があるのだろうか。
「何でやってるか? 何でだろうな。勝手に体が動くというか、もうそれがきっと生活のルーティンに組み込まれているんだろうな」
 もはや、ただの作業ではないか。
 その行為に、何の意味があるだろうか。

 何で、人間関係を守ろうとしてしまうのか。
「ただいまー」
「あら、今日も遅かったじゃない。何処ほっつき歩いていたの? 少し早く帰ってきなさい。最近寒いんだし」
「いいじゃん、勉強ちゃんとしてるんだし。いい大学さえ行けばいいんだろ? プライベートぐらい好きにさせてくれよ」
「ちょっと、何よその言い方! 私はあなたを心配してるの! わからないの?」
 ごめん。たったこの三文字で解決することだ。でも、いざその状況になると人は我を忘れてしまう。そうして、何でああしなかったんだ、と後悔するのだ。その繰り返しだ。
 省みないのなら、いっそのこと、関係自体を壊してしまえばいいのに。


 いい高校入ります。
 いい成績取ります。
 いい大学行きます。
 いい会社勤めます。
 いい家庭作ります。
 いい子供育てます。
 いい老後暮します。
 いい臨終迎えます。

 ――――――――――――その先は?


 人間、いつしか死んでしまうものだ。死んで、成仏してしまえば、あとに残るのは“入れ物”だけだ。それ以外は何も残らない。
 名誉も、財産も、憎悪も、いずれ皆姿かたち残らず、灰になる。


 じゃあ、何で人間は求めようとするのか。
 何で求められようとするのか。



 
 僕の、人間の、存在意義はなんだろうか。

 存在価値はなんだろうか。




 それでも、頭上に広がる大空は、いつでも気丈で、荘厳で、包容的で、そして美しい。


 無関係な真っ白い雲、大自然を感じる山々までも、自身のものにしてしまう。意義など価値などないことを、まるで、開き直って振る舞っているようである。
 たった一回の機会を最大限やっているようでもある。

 ただ仰ぐだけで、色々と、どうでもよくなってしまう。この大空のもつメッセージの虜になってしまう。



 そうだ。



 この大空のように、生きてみればいいのかもしれない。
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