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猛獣との出会い
猛獣との再会②
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(この後、どうしよう……)
寝室のベットの上へジャケットを放り、深い息を吐く。
一夜の過ちを犯して、それっきりだと思っていた男が自宅へ不法侵入してくつろいでいるなど、明らかにおかしいことになっている。
今が警察へ通報するチャンスなのに、本能が素性を全く知らないクロードが普通の男ではないと通報などしても無駄だと、彼に従った方が無事に切り抜けられると訴えてくるのだ。
念のために、とスマートフォンの画面を見る。
「あれ?」
玄関までは電波は届いていたのに、画面に表示されていたのは圏外のマーク。
クロードが何かやったのかと疑いを抱くが、直ぐに首を横に振る。
数日前から、マンションの電波環境は悪くなっていたのだった。
(少し付き合って、帰ってもらおう)
スカートとストッキングを脱ぎ、クローゼットからスキニージーンズを取り出す。
深酒をしてまた雰囲気に流されてしまうかもしれない。
せめてもの自衛として、脱ぎにくいジーンズを選択した。
「お待たせしました」
戻って来た紗智子の頭の先から足の先まで見たクロードは、指を動かして自分の隣へ座るように促す。
躊躇した紗智子だったが、食欲には勝てずクロードと隙間を開けて座る。
「お腹が空いているので、遠慮なく頂きますね」
薄切りではなく厚切りのローストビーフを箸で取り一齧りする。
「美味しいー」
待ちに待った食事に紗智子は満面の笑みを浮かべた。
美味しい赤ワインと食事ですっかり警戒心は薄れ、ワインボトルを空にする頃にはクロードと笑顔で話すまで気を緩めていた。
話すといっても紗智子が一方的に喋り、クロードが相槌を打つ程度だったが。
何も言わず、ただ愚痴を聞いてもらえるのは有難かった。
カランッ、ワインからブランデーへ変えたクロードがグラスをテーブルへ置く。
「あれー? もう氷が無くなっちゃったんだ。取ってきます」
アイスペールの氷が無くなっていることに気付き、紗智子はブランデー用の氷を取りにほろ酔い気分でキッチンへ向かう。
腰を曲げて冷凍庫から氷を取り出してアイスペールへ入れる。
他に必要なものは有るかと、冷蔵庫の上段の扉を開けた。
「紗智子」
クロードの声に振り向くと、無表情の彼が背後に立っていた。
「はいはい、氷は今持っていきますよ~」
せっかちですね、と続く言葉はあたたかくてやわらかいものに唇を塞がれて発せられなかった。
「んぅっ」
突然のことに紗智子の目が大きく見開かれる。
視界いっぱいにクロードの端正な顔が入り込み、唇に密着する感触から彼にキスされているのだと、唇を食まれてようやく理解した。
アイスペールを持つ手とは逆の手でクロードの胸を押してもびくともしない。
閉じた唇を突き、開くようにとクロードの舌先が催促した。
首を振ってキスから逃れようとしているのに、彼は後頭部へ手を回して更に体を密着させようとするのだ。
「うぅ」
長いキスに息苦しくなり、小さく開いてしまった唇の隙間からクロードの熱い舌先が口腔内へ侵入する。
上の歯列をなぞり舌へ絡まりつくクロードの舌の動きに翻弄され、紗智子の唇の端からは飲み込めない唾液が零れ落ちた。
「んー」
キッチンの壁へ押し付けるように押さえ込まれたら、彼からのディープキスを受け入れるしかなかった。
舌と舌を絡ませ合う音が聞こえるのに、舌技に翻弄される紗智子には恥ずかしいと思う余裕はなく、必死で彼の舌の動きに応える。
舌を軽く吸われるキスに、息苦しい以外の気持ちよさを拾い始めた頃、クロードの舌が口腔内から出ていく。
互いの舌と舌を透明な唾液の糸が繋ぎ、プツリと切れた。
唇は離れても後頭部へ回された腕は離れず、荒い呼吸を繰り返す紗智子の体を支えていた。
「はぁ……なん、で?」
全身が熱くて堪らない。
アルコールによるものではないこの熱は、キスをされた興奮と羞恥によるもの。
熱は甘い疼きとなって紗智子の全身を支配していく。
「何故だと?」
クロードの長くて形の良い指が、下を向こうとする紗智子の顎を掴み上向けさせる。
見下ろしてくる赤い瞳には、捕らえた獲物の喉元へ今にも牙を突き立て食らおうとする、明らかな欲が浮かんでいた。
「氷はもういい。それよりも、俺に付き合えよ」
目を細めたクロードは口角を上げた。
彼の外見同様、内面からも肉食獣の獰猛さを感じ取った紗智子の背筋を寒気が走り抜ける。
激しいキスの快楽に蕩けていた思考が冷えていく。
「ちょっと、まって、んんっ」
怯えの表情で身を縮める紗智子の唇へ、クロードは噛みつくようなキスを落とした。
寝室のベットの上へジャケットを放り、深い息を吐く。
一夜の過ちを犯して、それっきりだと思っていた男が自宅へ不法侵入してくつろいでいるなど、明らかにおかしいことになっている。
今が警察へ通報するチャンスなのに、本能が素性を全く知らないクロードが普通の男ではないと通報などしても無駄だと、彼に従った方が無事に切り抜けられると訴えてくるのだ。
念のために、とスマートフォンの画面を見る。
「あれ?」
玄関までは電波は届いていたのに、画面に表示されていたのは圏外のマーク。
クロードが何かやったのかと疑いを抱くが、直ぐに首を横に振る。
数日前から、マンションの電波環境は悪くなっていたのだった。
(少し付き合って、帰ってもらおう)
スカートとストッキングを脱ぎ、クローゼットからスキニージーンズを取り出す。
深酒をしてまた雰囲気に流されてしまうかもしれない。
せめてもの自衛として、脱ぎにくいジーンズを選択した。
「お待たせしました」
戻って来た紗智子の頭の先から足の先まで見たクロードは、指を動かして自分の隣へ座るように促す。
躊躇した紗智子だったが、食欲には勝てずクロードと隙間を開けて座る。
「お腹が空いているので、遠慮なく頂きますね」
薄切りではなく厚切りのローストビーフを箸で取り一齧りする。
「美味しいー」
待ちに待った食事に紗智子は満面の笑みを浮かべた。
美味しい赤ワインと食事ですっかり警戒心は薄れ、ワインボトルを空にする頃にはクロードと笑顔で話すまで気を緩めていた。
話すといっても紗智子が一方的に喋り、クロードが相槌を打つ程度だったが。
何も言わず、ただ愚痴を聞いてもらえるのは有難かった。
カランッ、ワインからブランデーへ変えたクロードがグラスをテーブルへ置く。
「あれー? もう氷が無くなっちゃったんだ。取ってきます」
アイスペールの氷が無くなっていることに気付き、紗智子はブランデー用の氷を取りにほろ酔い気分でキッチンへ向かう。
腰を曲げて冷凍庫から氷を取り出してアイスペールへ入れる。
他に必要なものは有るかと、冷蔵庫の上段の扉を開けた。
「紗智子」
クロードの声に振り向くと、無表情の彼が背後に立っていた。
「はいはい、氷は今持っていきますよ~」
せっかちですね、と続く言葉はあたたかくてやわらかいものに唇を塞がれて発せられなかった。
「んぅっ」
突然のことに紗智子の目が大きく見開かれる。
視界いっぱいにクロードの端正な顔が入り込み、唇に密着する感触から彼にキスされているのだと、唇を食まれてようやく理解した。
アイスペールを持つ手とは逆の手でクロードの胸を押してもびくともしない。
閉じた唇を突き、開くようにとクロードの舌先が催促した。
首を振ってキスから逃れようとしているのに、彼は後頭部へ手を回して更に体を密着させようとするのだ。
「うぅ」
長いキスに息苦しくなり、小さく開いてしまった唇の隙間からクロードの熱い舌先が口腔内へ侵入する。
上の歯列をなぞり舌へ絡まりつくクロードの舌の動きに翻弄され、紗智子の唇の端からは飲み込めない唾液が零れ落ちた。
「んー」
キッチンの壁へ押し付けるように押さえ込まれたら、彼からのディープキスを受け入れるしかなかった。
舌と舌を絡ませ合う音が聞こえるのに、舌技に翻弄される紗智子には恥ずかしいと思う余裕はなく、必死で彼の舌の動きに応える。
舌を軽く吸われるキスに、息苦しい以外の気持ちよさを拾い始めた頃、クロードの舌が口腔内から出ていく。
互いの舌と舌を透明な唾液の糸が繋ぎ、プツリと切れた。
唇は離れても後頭部へ回された腕は離れず、荒い呼吸を繰り返す紗智子の体を支えていた。
「はぁ……なん、で?」
全身が熱くて堪らない。
アルコールによるものではないこの熱は、キスをされた興奮と羞恥によるもの。
熱は甘い疼きとなって紗智子の全身を支配していく。
「何故だと?」
クロードの長くて形の良い指が、下を向こうとする紗智子の顎を掴み上向けさせる。
見下ろしてくる赤い瞳には、捕らえた獲物の喉元へ今にも牙を突き立て食らおうとする、明らかな欲が浮かんでいた。
「氷はもういい。それよりも、俺に付き合えよ」
目を細めたクロードは口角を上げた。
彼の外見同様、内面からも肉食獣の獰猛さを感じ取った紗智子の背筋を寒気が走り抜ける。
激しいキスの快楽に蕩けていた思考が冷えていく。
「ちょっと、まって、んんっ」
怯えの表情で身を縮める紗智子の唇へ、クロードは噛みつくようなキスを落とした。
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