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プロローグ
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共学になった女子高を受験した柳瀬旭は、そこが格差社会であると実感する。
いや、格差社会ではなく、偏向社会だな。
新入生120人の内、男子生徒は20人。
学校全体では400人中の20人だ。
男子生徒は3クラスに割り振られ、旭のクラスは女子生徒34人、男子生徒6人だった。
入学当初は中学時代の友人も羨ましがり、旭自身もドヤ顔で話ができていた。
物好きな上級生や他クラスの女子生徒が、連日廊下でお気に入りの男子生徒を観賞し、一挙一動に黄色い声をあげていた。
トイレや着替え場所等の環境整備は整ってなかったが、代替箇所は用意してあったため、利便性はともかく大きな問題にはならなかった。
問題があったとすれば、特異な環境を特異と認識出来なかった一部の生徒に起因するだろう。
ぶっちゃけ舞い上がって勘違いした、一部生徒の暴走である。
詳しい話は省くが、その結果は戦慄を男子生徒にもたらした。
あれほど賑やかだった廊下は閑散とし、男子生徒に向けられた黄色い声も鳴りを潜め、遠目にコソコソと話す女子生徒が増えたのだ。
旭が一番堪えたのは、クラスメート女子の態度の急変である。
環境が環境だけに、女子生徒のサポートがなければ逼迫するのが、旭たち男子生徒の学校生活だった。
敵意か無視か警戒か。
クラスメート女子にあったのは、そのいずれかだった。
もちろん、中には中立的の子もいるが、環境を変えるだけの力はない。
旭自身、今は何も言わず、クラスメート女子の怒りが鎮まるのを、耐えながら待つしかないと諦めていた。
旭は二人の姉と一人の妹に囲まれ、ある程度はこうした状況に慣れていた。
そのお蔭もあり、他の男子生徒より精神的に病むコトはなかったが、二年生になる前に、男子生徒の数は半数以下になっていた。
二年生になって以降は、徐々に中立的なクラスメート女子が増え、男子生徒に理解を示すようになっていた。
それでも頑なに男子生徒に敵意を向けるクラスメート女子がいたのも確かで、必然的にグループとなり、ともすればやり過ぎと言えるコトを嗤いながらやったりする。
それに旭が巻き込まれたコトはなかったが、事件は終業式の日、唐突に起こった。
原因が何かまでは分からないが、男子生徒に敵意を持つグループが、いつもの調子で一人の男子生徒に絡んでいた。
二年生最後の日までと呆れながら、何気なく男子生徒を観ていた旭は、男子生徒の動きにギョッとする。
机の中から、ゆっくりとサバイバルナイフを出していたのだ。
そこからは一瞬だった。
グループのリーダーが男子生徒に刺され、旭が男子生徒を殴り、男子生徒は旭に向かってサバイバルナイフを・・・。
すべてが夢だったかのような微睡みの中で、旭の意識がゆっくりと覚醒していった。
「気が付いたか」
寝ぼけた感覚を意識しながら、旭は声の主を探した。
「・・・誰?」
声の様子から女性であるのは間違いないが、それが母親のようであり、姉のようであり、また妹のようにも思え、それでいてクラスメート女子の誰かと言われても納得しそうな妙な感覚に、旭は困惑した。
「誰でもない。お主の知覚に合わせて顕現しただけの存在よ」
「夢・・・か」
「お主の感覚ではそうでもある」
「ふぅん・・・で、どこから夢?」
「お主の状況で言うなら、お主が害されて以降か」
「マジかぁ・・・アレは現実かぁ・・・だったら、夢から覚めたら病院ってコトだよな・・・」
旭は自分が刺されたと理解していた。
信じたくないが、胸に入ってきた冷たい異物を、何故か熱いと感じたことも。
そう。痛いではなく、熱いだ。
「お主が柳瀬旭として目を覚ますことはない。害されたのだ」
「それは・・・死んだってコトか?」
「肉体的には、そうだ。が、精神的には違う」
「そうか・・・それじゃあ此処は天国か?」
「天国という場所はない。それは人が得た概念でしかない」
「難しくて分かんねぇよ」
「肉体の死後を説明するため考えられただけのもの」
「俺はどうなるんだ?」
「魂は塊となり、混ざり、新たな魂となって世界に生まれる。その繰り返しである」
「風情がないな」
「世界とはそうしたものだ」
「なるほど。リアルは異世界転生とかチート能力が入る余地すらないな」
「不測事項はある」
「どういうコト?」
「塊に混ざることなく、塊から出た魂と混ざることなく、新たな肉体を得た魂は、稀に記憶と能力を引き継ぐこともある」
「へぇ」
「一時輪廻より解かれることを望むか」
「望めば叶うの?」
「理を外れかけた世界がある。糺す一助となるのであれば」
「つまり交換条件だね。・・・いいよ」
「世界が望む力を与える」
「チート能力だね?どんな?」
「誰しもが冀う力だ」
結局詳しい説明がないまま、旭は深い眠りに堕ちていった。
柳瀬旭はエリオス・マリュスとして、新たな生を受けた。
いや、格差社会ではなく、偏向社会だな。
新入生120人の内、男子生徒は20人。
学校全体では400人中の20人だ。
男子生徒は3クラスに割り振られ、旭のクラスは女子生徒34人、男子生徒6人だった。
入学当初は中学時代の友人も羨ましがり、旭自身もドヤ顔で話ができていた。
物好きな上級生や他クラスの女子生徒が、連日廊下でお気に入りの男子生徒を観賞し、一挙一動に黄色い声をあげていた。
トイレや着替え場所等の環境整備は整ってなかったが、代替箇所は用意してあったため、利便性はともかく大きな問題にはならなかった。
問題があったとすれば、特異な環境を特異と認識出来なかった一部の生徒に起因するだろう。
ぶっちゃけ舞い上がって勘違いした、一部生徒の暴走である。
詳しい話は省くが、その結果は戦慄を男子生徒にもたらした。
あれほど賑やかだった廊下は閑散とし、男子生徒に向けられた黄色い声も鳴りを潜め、遠目にコソコソと話す女子生徒が増えたのだ。
旭が一番堪えたのは、クラスメート女子の態度の急変である。
環境が環境だけに、女子生徒のサポートがなければ逼迫するのが、旭たち男子生徒の学校生活だった。
敵意か無視か警戒か。
クラスメート女子にあったのは、そのいずれかだった。
もちろん、中には中立的の子もいるが、環境を変えるだけの力はない。
旭自身、今は何も言わず、クラスメート女子の怒りが鎮まるのを、耐えながら待つしかないと諦めていた。
旭は二人の姉と一人の妹に囲まれ、ある程度はこうした状況に慣れていた。
そのお蔭もあり、他の男子生徒より精神的に病むコトはなかったが、二年生になる前に、男子生徒の数は半数以下になっていた。
二年生になって以降は、徐々に中立的なクラスメート女子が増え、男子生徒に理解を示すようになっていた。
それでも頑なに男子生徒に敵意を向けるクラスメート女子がいたのも確かで、必然的にグループとなり、ともすればやり過ぎと言えるコトを嗤いながらやったりする。
それに旭が巻き込まれたコトはなかったが、事件は終業式の日、唐突に起こった。
原因が何かまでは分からないが、男子生徒に敵意を持つグループが、いつもの調子で一人の男子生徒に絡んでいた。
二年生最後の日までと呆れながら、何気なく男子生徒を観ていた旭は、男子生徒の動きにギョッとする。
机の中から、ゆっくりとサバイバルナイフを出していたのだ。
そこからは一瞬だった。
グループのリーダーが男子生徒に刺され、旭が男子生徒を殴り、男子生徒は旭に向かってサバイバルナイフを・・・。
すべてが夢だったかのような微睡みの中で、旭の意識がゆっくりと覚醒していった。
「気が付いたか」
寝ぼけた感覚を意識しながら、旭は声の主を探した。
「・・・誰?」
声の様子から女性であるのは間違いないが、それが母親のようであり、姉のようであり、また妹のようにも思え、それでいてクラスメート女子の誰かと言われても納得しそうな妙な感覚に、旭は困惑した。
「誰でもない。お主の知覚に合わせて顕現しただけの存在よ」
「夢・・・か」
「お主の感覚ではそうでもある」
「ふぅん・・・で、どこから夢?」
「お主の状況で言うなら、お主が害されて以降か」
「マジかぁ・・・アレは現実かぁ・・・だったら、夢から覚めたら病院ってコトだよな・・・」
旭は自分が刺されたと理解していた。
信じたくないが、胸に入ってきた冷たい異物を、何故か熱いと感じたことも。
そう。痛いではなく、熱いだ。
「お主が柳瀬旭として目を覚ますことはない。害されたのだ」
「それは・・・死んだってコトか?」
「肉体的には、そうだ。が、精神的には違う」
「そうか・・・それじゃあ此処は天国か?」
「天国という場所はない。それは人が得た概念でしかない」
「難しくて分かんねぇよ」
「肉体の死後を説明するため考えられただけのもの」
「俺はどうなるんだ?」
「魂は塊となり、混ざり、新たな魂となって世界に生まれる。その繰り返しである」
「風情がないな」
「世界とはそうしたものだ」
「なるほど。リアルは異世界転生とかチート能力が入る余地すらないな」
「不測事項はある」
「どういうコト?」
「塊に混ざることなく、塊から出た魂と混ざることなく、新たな肉体を得た魂は、稀に記憶と能力を引き継ぐこともある」
「へぇ」
「一時輪廻より解かれることを望むか」
「望めば叶うの?」
「理を外れかけた世界がある。糺す一助となるのであれば」
「つまり交換条件だね。・・・いいよ」
「世界が望む力を与える」
「チート能力だね?どんな?」
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柳瀬旭はエリオス・マリュスとして、新たな生を受けた。
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