異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

文字の大きさ
25 / 84
第2章 ライフワーク

第24話 能力

しおりを挟む
「さて、かかって来い」

 翌朝、呼び出したシチローが道場に現れ、対面した途端に掛けた言葉がこれだ。

「まてまてまて!何がさてだ!何がかかって来いだ!?」

 オレは首を傾げる。

「あ、言うておらんかったか」

「何も聞いてないし、意味もわからん」

慌てるシチローの様子に納得し、

「うむ。転生者の特徴として、何らかの能力があるハズなんだが、シチローにその徴候がないでな、技術的なものかも知れんと、それを確認しようと考えていた」

 簡単に説明する。

 首を捻るシチロー。

 能力には身体系と技術系があり、能力の開花は本人の資質や環境が大きく左右する。

 要は足が早いと自覚するか、指導で速くなるかだが、時間比較以外にそれを数値として確認は出来ないってコトだ。

 身体系能力は体力向上や筋力強化、視覚強化など、主に肉体的に影響を与える能力とされる。

 この世界の人種は少なからず能力を持って生まれる。その強弱が個人の価値となるのだ。

 その強弱は生来のものだが、反則的に強い意思で能力に干渉する者たちがいる。

 それが転生者だ。

 能力に影響を与えるのが強い意思とするなら、この世界の人より前世の記憶を受け継ぐ転生者の能力が高いのも道理である。

 しかし、誰しもがこの世界に転生して来る訳ではない。
 
「転生とは想いの力ではないかと、オレは考えている」

「想いの力?」

「オレの場合は兵法の極みだな。鍛練半ばで倒れたオレは、満足するコトなく強い想いが残ったのだろう。この世界で前世の記憶を残し、鍛練の続きを始められた。しかも、短命の人族より寿命が長い、エルフとしてな」

「クレイの想いが前世の記憶を引き継ぎ、種族を替えて転生を促したと?」

 シチローの言葉に、オレは頷く。

 転生の根本的な発現理由は謎だが、発現契機はそんなとこだろう。

 シチローは腕組みで考え始め、『うーん』と唸っている。時間をかけてオレの言葉を反芻し、考えを纏めているのだろう。

「それだと、僕って存在はあてはまらないんだけど」

 シチローの答えにオレは頷く。

「お前以外の転生者はそうなんだよ。シチローのように、転生する前の姿で、おそらく前世を継続して転生した例はない」

 オレの言葉をじっくりと吟味し、

「この世界にどれだけの転生者がいる?」

 シチローは当然の疑問を口にした。

「死者を含めて八十ってトコか」

「そんなに居んの!?」

 ここは正直に言う。やはりシチロー驚いていた。

 もちろん、この数字が正確なものではない。

 他国の転生者をどれだけカバー出来ているか判らないからだ。

 少なくとも、大戦時には敵国に転生者の部隊があったし、野盗として処分された者の中にそれらしい者がいたようである。

 転生者の能力が権力に利用されるコトは多く、貴族が密かに囲うケースもある。

 救助できる分は救助したが、救えなかった分もあるし、敵対する者もあった。

 説得に応じた者は救えたが、なお敵対する者は・・・。

「うち八人はオレが斬った」

「だからサラッと言うな!!」

 シチローはそう言うが、どうでもないコトはない。

 敵対した者がすべて悪ではなく、人を信じられなかった者や精神的に壊れた者もいたのだ。

「まぁ犯罪に手を染めたヤツらだからな。オレたち転生者が始末を着けるのは当然だろう?」

 シチローにそこまで詳しい話はしないが、ある程度の予想をしたのか、黙って頷いてくれた。

「男女比は?」

「比率は五分だが、人族以外の転生者が増えてきたな」

「人族以外!?」

 そう。近年転生者は人族以外に転生するコトが多く、そのため人族に延ばした『裏柳生』のチェック機能を抜ける者が増えたのだ。

 これまで薄かった多種族へ人員を割り振るコトで、なんとか体裁を整えるコトは出来た。

 しかし、多種族へ配置した人員も、多くは人族なので、本当の意味で体制が整っている訳ではないのが現状だ。

 人族以外で『裏柳生』として育つ転生者を待つか、人族以外で転生者ではない住人を『裏柳生』として受け入れるかだが、前者は基本的に時間がかかる。

 転生者がすべて『裏柳生』に協力してくれる訳ではないし、長寿の種族は幼年期が人族より長いためだ。

 後者の場合、転生に関係ない人は信頼感において安定しない。転生者の家族や関係者であればその範疇ではないが、それでも権力者の間者である可能性は否定出来ないのだ。

 『裏柳生』が秘密裏に行動する組織である以上、誰でも迎え入れる訳にはいかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

最弱攻撃力スキルが実は最兇だったところで俺が戦いたくないのは変わらない

だんぞう
ファンタジー
2025年8月8日――今思えばあの日が人類の分岐点だった。たくさんの出会いも、別れも、今は全て遠い向こう側。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

処理中です...