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第2章 ライフワーク
第24話 能力
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「さて、かかって来い」
翌朝、呼び出したシチローが道場に現れ、対面した途端に掛けた言葉がこれだ。
「まてまてまて!何がさてだ!何がかかって来いだ!?」
オレは首を傾げる。
「あ、言うておらんかったか」
「何も聞いてないし、意味もわからん」
慌てるシチローの様子に納得し、
「うむ。転生者の特徴として、何らかの能力があるハズなんだが、シチローにその徴候がないでな、技術的なものかも知れんと、それを確認しようと考えていた」
簡単に説明する。
首を捻るシチロー。
能力には身体系と技術系があり、能力の開花は本人の資質や環境が大きく左右する。
要は足が早いと自覚するか、指導で速くなるかだが、時間比較以外にそれを数値として確認は出来ないってコトだ。
身体系能力は体力向上や筋力強化、視覚強化など、主に肉体的に影響を与える能力とされる。
この世界の人種は少なからず能力を持って生まれる。その強弱が個人の価値となるのだ。
その強弱は生来のものだが、反則的に強い意思で能力に干渉する者たちがいる。
それが転生者だ。
能力に影響を与えるのが強い意思とするなら、この世界の人より前世の記憶を受け継ぐ転生者の能力が高いのも道理である。
しかし、誰しもがこの世界に転生して来る訳ではない。
「転生とは想いの力ではないかと、オレは考えている」
「想いの力?」
「オレの場合は兵法の極みだな。鍛練半ばで倒れたオレは、満足するコトなく強い想いが残ったのだろう。この世界で前世の記憶を残し、鍛練の続きを始められた。しかも、短命の人族より寿命が長い、エルフとしてな」
「クレイの想いが前世の記憶を引き継ぎ、種族を替えて転生を促したと?」
シチローの言葉に、オレは頷く。
転生の根本的な発現理由は謎だが、発現契機はそんなとこだろう。
シチローは腕組みで考え始め、『うーん』と唸っている。時間をかけてオレの言葉を反芻し、考えを纏めているのだろう。
「それだと、僕って存在はあてはまらないんだけど」
シチローの答えにオレは頷く。
「お前以外の転生者はそうなんだよ。シチローのように、転生する前の姿で、おそらく前世を継続して転生した例はない」
オレの言葉をじっくりと吟味し、
「この世界にどれだけの転生者がいる?」
シチローは当然の疑問を口にした。
「死者を含めて八十ってトコか」
「そんなに居んの!?」
ここは正直に言う。やはりシチロー驚いていた。
もちろん、この数字が正確なものではない。
他国の転生者をどれだけカバー出来ているか判らないからだ。
少なくとも、大戦時には敵国に転生者の部隊があったし、野盗として処分された者の中にそれらしい者がいたようである。
転生者の能力が権力に利用されるコトは多く、貴族が密かに囲うケースもある。
救助できる分は救助したが、救えなかった分もあるし、敵対する者もあった。
説得に応じた者は救えたが、なお敵対する者は・・・。
「うち八人はオレが斬った」
「だからサラッと言うな!!」
シチローはそう言うが、どうでもないコトはない。
敵対した者がすべて悪ではなく、人を信じられなかった者や精神的に壊れた者もいたのだ。
「まぁ犯罪に手を染めたヤツらだからな。オレたち転生者が始末を着けるのは当然だろう?」
シチローにそこまで詳しい話はしないが、ある程度の予想をしたのか、黙って頷いてくれた。
「男女比は?」
「比率は五分だが、人族以外の転生者が増えてきたな」
「人族以外!?」
そう。近年転生者は人族以外に転生するコトが多く、そのため人族に延ばした『裏柳生』のチェック機能を抜ける者が増えたのだ。
これまで薄かった多種族へ人員を割り振るコトで、なんとか体裁を整えるコトは出来た。
しかし、多種族へ配置した人員も、多くは人族なので、本当の意味で体制が整っている訳ではないのが現状だ。
人族以外で『裏柳生』として育つ転生者を待つか、人族以外で転生者ではない住人を『裏柳生』として受け入れるかだが、前者は基本的に時間がかかる。
転生者がすべて『裏柳生』に協力してくれる訳ではないし、長寿の種族は幼年期が人族より長いためだ。
後者の場合、転生に関係ない人は信頼感において安定しない。転生者の家族や関係者であればその範疇ではないが、それでも権力者の間者である可能性は否定出来ないのだ。
『裏柳生』が秘密裏に行動する組織である以上、誰でも迎え入れる訳にはいかない。
翌朝、呼び出したシチローが道場に現れ、対面した途端に掛けた言葉がこれだ。
「まてまてまて!何がさてだ!何がかかって来いだ!?」
オレは首を傾げる。
「あ、言うておらんかったか」
「何も聞いてないし、意味もわからん」
慌てるシチローの様子に納得し、
「うむ。転生者の特徴として、何らかの能力があるハズなんだが、シチローにその徴候がないでな、技術的なものかも知れんと、それを確認しようと考えていた」
簡単に説明する。
首を捻るシチロー。
能力には身体系と技術系があり、能力の開花は本人の資質や環境が大きく左右する。
要は足が早いと自覚するか、指導で速くなるかだが、時間比較以外にそれを数値として確認は出来ないってコトだ。
身体系能力は体力向上や筋力強化、視覚強化など、主に肉体的に影響を与える能力とされる。
この世界の人種は少なからず能力を持って生まれる。その強弱が個人の価値となるのだ。
その強弱は生来のものだが、反則的に強い意思で能力に干渉する者たちがいる。
それが転生者だ。
能力に影響を与えるのが強い意思とするなら、この世界の人より前世の記憶を受け継ぐ転生者の能力が高いのも道理である。
しかし、誰しもがこの世界に転生して来る訳ではない。
「転生とは想いの力ではないかと、オレは考えている」
「想いの力?」
「オレの場合は兵法の極みだな。鍛練半ばで倒れたオレは、満足するコトなく強い想いが残ったのだろう。この世界で前世の記憶を残し、鍛練の続きを始められた。しかも、短命の人族より寿命が長い、エルフとしてな」
「クレイの想いが前世の記憶を引き継ぎ、種族を替えて転生を促したと?」
シチローの言葉に、オレは頷く。
転生の根本的な発現理由は謎だが、発現契機はそんなとこだろう。
シチローは腕組みで考え始め、『うーん』と唸っている。時間をかけてオレの言葉を反芻し、考えを纏めているのだろう。
「それだと、僕って存在はあてはまらないんだけど」
シチローの答えにオレは頷く。
「お前以外の転生者はそうなんだよ。シチローのように、転生する前の姿で、おそらく前世を継続して転生した例はない」
オレの言葉をじっくりと吟味し、
「この世界にどれだけの転生者がいる?」
シチローは当然の疑問を口にした。
「死者を含めて八十ってトコか」
「そんなに居んの!?」
ここは正直に言う。やはりシチロー驚いていた。
もちろん、この数字が正確なものではない。
他国の転生者をどれだけカバー出来ているか判らないからだ。
少なくとも、大戦時には敵国に転生者の部隊があったし、野盗として処分された者の中にそれらしい者がいたようである。
転生者の能力が権力に利用されるコトは多く、貴族が密かに囲うケースもある。
救助できる分は救助したが、救えなかった分もあるし、敵対する者もあった。
説得に応じた者は救えたが、なお敵対する者は・・・。
「うち八人はオレが斬った」
「だからサラッと言うな!!」
シチローはそう言うが、どうでもないコトはない。
敵対した者がすべて悪ではなく、人を信じられなかった者や精神的に壊れた者もいたのだ。
「まぁ犯罪に手を染めたヤツらだからな。オレたち転生者が始末を着けるのは当然だろう?」
シチローにそこまで詳しい話はしないが、ある程度の予想をしたのか、黙って頷いてくれた。
「男女比は?」
「比率は五分だが、人族以外の転生者が増えてきたな」
「人族以外!?」
そう。近年転生者は人族以外に転生するコトが多く、そのため人族に延ばした『裏柳生』のチェック機能を抜ける者が増えたのだ。
これまで薄かった多種族へ人員を割り振るコトで、なんとか体裁を整えるコトは出来た。
しかし、多種族へ配置した人員も、多くは人族なので、本当の意味で体制が整っている訳ではないのが現状だ。
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転生者がすべて『裏柳生』に協力してくれる訳ではないし、長寿の種族は幼年期が人族より長いためだ。
後者の場合、転生に関係ない人は信頼感において安定しない。転生者の家族や関係者であればその範疇ではないが、それでも権力者の間者である可能性は否定出来ないのだ。
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