異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第3章 鍛練

第51話 初伝(仮)

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「違うわ!」

「あいたっ!」

 スパーンと小気味いい音が道場に響き、僕は頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「柄の握りは両手とも龍ノ口を開け」

 左掌にスリッパを叩きながら、クレイが宣う。

「大袈裟に痛がるな。そんなに痛くはなかろう」

「いやいや、痛いから。素人じゃないんだから、十分痛いから」

 一般人と剣の達人の膂力を一緒にしないで。

 僕は頭をさすりながら立ち上がり、不平を洩らす。

 どうもクレイは昨日の僕の転生理由が気に入らなかったらしく、僕を鍛え直すと息巻いている。

 本人不在のまま弟子が確定したらしい。

 今朝は早朝から道場に引き出され、新陰流の術理を説明されながら、何度か頭をしばかれた。

 まぁうつらうつらと舟を漕ぎ始めた僕が悪いんだろうけど。

 基本的な話として、新陰流は三学から入る。

 三学は『戒』『定』『慧』の教えからなり、『戒』は禁戒。身を謹みうむコトなく繰り返し鍛練する事。身の構え。『定』は禅定。思慮深く熟達してなお迷わない心を育てる事。太刀路。『慧』は知慧。突発的な物事や敵に対して閃くごとく対処する事。手足。

 これに内伝として『一刀両段』『斬釘截鉄』『半開半向』『右旋左転』『長短一味』の円之太刀五本。

 上泉信綱考案の転を主軸とした勢法でまとめられ、後の先で打ち乗り攻めて詰める勝ちを解く。

 孫子の「渾々沌々として形円にして不可敗」の意を用い、円転して留まる事なく動き続ける形を取るという意味で、円之太刀と銘打ったらしい。

 三学円之太刀は初伝であり、入門者はここから入る。

 内伝を使い、奥伝を修めて次の段階に入るのを、位が上がるという。

 とはいえ、僕はその初伝ですらない段階で頭を叩かれているんだが。

 クレイが言うには、まず、身の構えらしい。

 姿勢を正して手足を自由に使えるようにしないと、太刀筋が乱れて怪我に繋がる。

 だからこそ、新陰流では最初に学ばせる。

 また、三見の大事として相手の太刀先、拳、顔を観るコトで、間合い・特徴・懸かり出しを観取るように教える。

 あと、三磨の位というのがあり、極意口伝らしいが、今の僕には遠すぎてまだ覚える必要はないようだ。

 つくづく新陰流は『三』が好きらしい。

「足は三点、膝はたわめ・・・違う!」

 スパーンともう一度。

 何だこのコント。

 僕は龍ノ口・・・つまり親指と人差し指を開いた形のまま、中指、薬指、小指の三指で蟇肌竹刀の柄を握り、膝は関節を若干曲げて、足は肩幅に開き、親指を上げて指元、小指、踵を地面に着ける。

 冗談抜きでツラいです。
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