異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第3章 鍛練

第58話 実力

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「ぐぼっ」

 僕が正面のリーダーっぽいヤツに向かった時、後方に回り込み退路を断つ役割だったのだろう、左のロングソードの腹に回し蹴りを放ち、僕はロングソードを奪う。

 遊撃が役割とはいえ、構えもせずに突っ立つとか、舐めすぎだろ。

 もっとも他の四人の対応も似たり寄ったりだったが、リーダーっぽいヤツだけは僕が来ると思っていたんだろうな。

 僕が動いた瞬間に全身を緊張させたものの、僕が身を翻して左を襲ったため、呆然としてしまった。

 ロングソードを手にした僕は、やっぱり呆然と僕を見ていたショートソードの女性の横面を、ロングソードの腹で殴りつけ、リーダーっぽいヤツに肉薄する。

 リーダーっぽいヤツはここでやっと正気に戻り、何やら喚きながらロングソードを振りかぶって僕に切りつけてくる。

 急停止した僕の目の前を、リーダーっぽいヤツのロングソードが過ぎていく。

 僕はロングソードの柄頭をリーダーっぽいヤツのコメカミに叩き付けた後、リーダーっぽいヤツの身体が邪魔で魔法を使えなかった魔法使いに蹴りを浴びせる。

 残ったハルバードは長さを活かした振り回しで僕の間合いの外から襲ってきたが、そのスピードはお世辞にも早いとは言い難かった。

 過ぎた瞬間に踏み込み、頭にロングソードの腹を叩き込む。

 瞬殺である。

「・・・あれ?」

 瞬殺って何だ?

 たかだか技の一つ、それも素振りの仕方を教わっただけの僕が、何で五人相手に瞬殺出来るんだ?

 て言うか、殺してないし!

「すごいすごい」

 軒並み呆然として声もない人垣の中から、極めて暢気な称賛と、ぺちぺちというだらけきった拍手が届く。

 見ると一人の青年が、人垣から出て来るところだった。

 密集した人垣が、青年を境に割れるといった状況に、僕は眉をひそめた。

「・・・誰?」

 オールバックの金髪にスラリとした体型、冒険者というより役所の職員って感じの男で、僕に見覚えはない。

 青を基調とした服を着、僕を見ながら近付いてくる。

 顔は整い、美形と呼べるし、柔和な笑みを湛える口元は小さく、ともすれば少女のそれに見える。

 台無しにしているのは、目だ。

 表面は笑っているが、実際は冷静に・・・いや、ねぶるように僕を見ていた。

 進んで関わり合いたい人ではない。

「私はフリューゲス。ヨハネ・フリューゲス。金札のコミュニティ『清廉の焔』でリーダーをしています」

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