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第3章 鍛練

第59話 勧誘

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「・・・何?」

 フリューゲスと名乗る男を訝しげに見ながら、僕は佇立する。

 警戒MAXだ。

 だいたいこのタイミングで出て来るこの手の男って、黒幕ってのがテンプレだ。

 にこやかに近付き誉め称え、仲間に勧誘する。で、仲間になったら使い潰されるんだろうな。

「君はすごいな。ランクは最下位でも十分冒険者としては大成する逸材だよ。どうかな、少し時間を・・・」

「ゴメンなさい」

 やっぱりな展開に僕はソッコーで断りを入れる。

 フリューゲスの額に青筋が立つが、すぐに 平常に戻る。

 その精神力はすごいけど、一瞬でも表情に出したらダメだろ。

「まぁまぁ心無い冒険者に絡まれて気が動転しているだろうし、今すぐとは言わないから、後で少し時間を・・・」

「ゴメンなさい」

 気が動転て何だよ。

 上から目線に僕はちょっとイラッとした。

「・・・だったら時間がある時でいいから、一度私を訪ねてくれないかな。コミュニティホームならいつでも構わ・・・」

「ゴメンなさい」

 しつこい。

 さりげなくホーム持ちって宣伝するのがうざい。

「・・・そうか。私のコミュニティなら、君を十分活かせると思ったんだがな」

「ゴメンなさい」

 再三再四の拒絶に、フリューゲスは表情を取り繕うコトすら止め、僕を睨み付けて来た。

「ではまた機会があれ・・・」

「ゴメンなさい」

 社交辞令すら被せ気味に拒絶した僕は、そのまま踵を返してギルドの中に入って行く。

 まだ何をやるかすら決まってないのに、時間を取りすぎた。

 ゆっくりじっくり時間をかけて、僕は掲示板の依頼を見ていった。

『薬草採集:エルドの森でタッキ草十株、エノコ草十株、カラ草五株、ククリ茸二株の採集。銀貨一。品質次第で上乗せ有り』

『手紙配達(町内):クリヨ村への即日配達。銅貨五十』

『ホーンラビット討伐:タパン村近郊。五匹以上。一匹銅貨五十。』

『壁修復:南東部防護壁の修復。銀貨三』

『買い物代行:家具の買い付け、運搬、設置。銀貨二』

 ここいらがランクF冒険者のソロへの依頼になるようだ。

 町周辺の掌握がまだだから、村の名前だけだと解らない。取り敢えず村の位置を聞いて、複数受けられるなら受けようか。

 最初の依頼だから、無理せず一件づつ片付けるか?

 僕が腕を組んで掲示板を睨み付けていたら、誰かが背中越しに一枚の依頼書を見せてきた。

 依頼書を無視して首を巡らすと、ニッカリと気持ちいい笑顔を見せる、女性冒険者だった。

「・・・どうも」

 最後までギルドを出るように促していた、赤髪のあの冒険者だ。
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